「…これ、本当にバナナなんですか?」  
牧村さんが生徒会室にに持ち込んだ『バナナ』の房を掴み、顔の高さまで運んで観察してみる。  
黄色というよりも肌に近い色の皮に包まれていますし、なんだか変わった香りもしますね…  
…どこからどうみても、これがバナナだっていう人はいないと思いますけど…  
「うん。何でも新種のバナナらしいよ〜。白皇の植物研究部が栽培したらしくて、是非会長に食べて欲しいって」  
バナナに疑いの目を向ける私とは逆に、副会長の牧村さんは目を輝かせてバナナを見ている。  
というよりも、バナナを持った私を見てるんでしょうか…?  
「それじゃあ私、この後用事があるのでしばらく出てきますね〜。あ、食べ方が書いてある紙もバスケットに入ってるから、食べる前に読んでね?」  
バスケットを指差しながら、机の上の書類を抱え慌しく出て行く。  
誰もいなくなった生徒会室で、私はバナナをおろしてバスケットに戻した。  
その時タイミングよく、くぅ、と可愛らしくお腹が悲鳴をあげた。  
誰もいないのは分かっているはずなのに、顔を赤らめて思わずキョロキョロ辺りを見回す。  
…やっぱり誰もいない。よかった……。  
もう一度視線をバナナに移す。  
植物研究会の皆さんが私に食べて欲しいとくれたバナナ…。  
「ちょっと不安ですけど、せっかくですし………」  
バナナを一本、房からちぎって取ってみる。  
一本だけで見ると、なおさらバナナには見えない気がします…。  
持ってみると、やけに堅くて熱い。ちぎったときにできた皮の隙間からは中身が見えるけど、普通のバナナの白ではなく、ちょっぴりグロテスクなピンク色をしている。  
「……本当にコレ、食べられるんでしょうか…?」  
ふっと、牧村さんの言葉を思い出してバスケットの中を見る。  
折りたたまれたリーフが一枚入っていて、それを開いてみると、食べ方と注意書きがボールペンで順序立てて書いてあった。  
 
 
 
1、普通のバナナのように裂いて皮を剥く事はできない。  
  手で握って、先っぽから皮を根元……じゃなくて下の方へ引っ張る事。  
  また、皮は最後まで剥く事はできない。  
 
2、皮が剥けたら、そのまま握ったまま皮ごとで上下にピストンさせてシゴく事。  
  それを続けていくと果肉はだんだん硬度を増していき、次第に潤滑性のある液体を出していく。  
 
3、液体が溢れ始めてもそのままシゴき続ければ、そのうちに突然先っぽが膨張し始める。  
  これを合図に先端の小さな穴からゼリー状の種子を吐き出すので、その間も扱き続けて搾り出す事。  
 
 
注、このバナナは普通のバナナのように果肉は柔らかくはない。  
  堅い果肉は食べることはできないので、中の甘いゼリー状の種子を食べるのである。  
  (勢いよく発射することから名称「勢子」〈セイシ〉、「勢液」〈セイエキ〉またその現象を「射勢」とする)  
  また途中で溢れる潤滑液も甘くて、食べられる。  
  (香りに特徴があり満足感を得られるので名称「香満」〈ガマン〉)  
   
  また、シゴきあげ射勢を促す際、直接口に含んだり舐める事でより多く搾る事が可能である。  
 
 
 
一通り読み終えると紙を畳み、バスケットに戻す。  
「なるほど……実は食べられないんですね〜…」  
なおさらバナナではない気が……と思いながらも、とりあえずは試しに食べてみようと思い、持っていた一本を両手に握る。  
「えっと、まずは………皮を剥かないといけないんですよね…」  
小さな両手で軽く硬い茎を握りながら片手を先端にまわし、皮の隙間から中身が出てくるようにゆっくりと皮を下へ引っ張っていく。  
皮をこれ以上剥けないという所まで剥いていきながら、中身のグロテスクなピンク色を見つめているうちに、何故か胸は変に高鳴ってしまう。  
「……なんだか、やけに恥ずかしいことをしているような気が……」  
 

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