「お晩!」  
「うわぁっ!」  
 窓の外はとっぷりと夜の闇に沈み、虫の声も聞こえない。  
 ペンが走る音だけが響いていたその部屋のドアを大きく開け放ち、その静寂をぶち壊した  
のは、大きな紙袋をたくさん抱えて満面に笑顔を浮かべる咲夜だった。  
「……お、おば〜ん……」  
 苦笑を浮かべながら、ハヤテは突然の来訪者に会釈を返す。  
「なーんやまだ着替えもしとらんの? 時差ボケ治ってないんとちがう?」  
 腰に手をあて、呆れ顔の咲夜に、参考書をパタンと閉じて執事服のハヤテは返す。  
「咲夜さんの方こそ、むちゃくちゃテンション高いですね……。ていうか、たとえ僕が寝て  
 いようが関係なく飛び込んできたわけですか」  
 ちなみに時刻は深夜1時過ぎ。草木も眠れば、ナギもマリアもすっかりご就寝。  
 お宅訪問するにしては、なかなかの非常識タイム。  
「あたり前やがなー。久しぶりにハヤテの顔を見れるんや・し♪」  
 ウインクしながら、咲夜は飛び乗るようにベッドに座り込む。「さっき空港に着いて、  
その足で来たんやで?」  
「そんなわざわざ……、あ、いや、ありがとうございます。1週間ぶりですね、咲夜さん」  
「うん、ハヤテもおかえりな」  
 そう言って、笑顔を交わす二人。  
   
 さて、二人の様子からもわかるかもしれないが、ハヤテと咲夜は今は恋人同士の仲である。  
 運命のねじれかフラグのバグか、紆余曲折な馴れ初めについてはまた別のお話だが、付き  
合ってはや数ヶ月が経つ。  
 周囲には出来るだけ内緒にしようという約束の下、ひっそりと仲を深めてきた。咲夜が  
こうしてハヤテの部屋にこっそり(?)1人で訪ねてくるのも初めてのことではないのだ。  
「詳しくはハヤテのごとくRevolveを読むか過去ログ参照、もしくは各自で脳内保管するんや!」  
「? 咲夜さんあさっての方向むいて何言ってるんですか?」  
 
「で? アテネはどうやったんや? 楽しかったん?」  
 ベッドの上で足をぶらぶらさせながら、咲夜はハヤテに問いかける。  
「ええと、そうですね……」  
 ハヤテは一呼吸置き、  
「まあ……、楽しかったですよ、って、うわっ!」  
 言葉を継ごうとしたハヤテの目の前に、いつの間に移動したのか、眉をVの字に寄せた  
咲夜の顔が迫っていた。  
「な、なな、なんですか!?」  
「……あんなぁ、ほんまに楽しかった人間は「まぁ」なんて枕詞使わへんねん。なーんか  
 あったんとちゃうん?」  
 むっすり顔をさらに寄せて、ハヤテを問い詰める咲夜。  
「いや、その、何かあったというほどのこともないことも……」  
「もう態度ですっかりバレバレやで?」  
「あう……」  
 そのままじ〜っとハヤテを睨むこと数十秒。キスでもしてしまいそうな距離で膠着状態は  
続く。  
「……ふぅ、まあええわ。こうなったら自分、テコでも話さんし」  
 溜息をつきながら、やっとハヤテを解放する咲夜。  
「さ、咲夜さん」  
「でもまた、おいおいでもええから話してな?」  
「すいません、いつか、ちゃんと話しますから……」  
「うんうん、期待しないで待っとるで」  
 茶化すように、けれど優しく咲夜は笑う。  
 なぜ恋人にも素直に言えない事があるのだろう。自分が情けなくなるハヤテだったが、  
咲夜の優しさがなんだかとても嬉しくて、今はそれに甘えようと思った。  
「ありがとうございます、咲夜さん」  
「ええってええって」  
「あ、そう言えば、咲夜さんはどうだったんですか? ラスベガス」  
「……えぇ? うん、まあ、楽しかったで?」  
「咲夜さんこそめちゃくちゃ言いよどんでるじゃないですか!」  
 
「あはは、いや、まあ色々あってんよ……」  
「……色々って?」  
「まあそれはおいおい……」  
「……」  
 ものすごい勢いで目を座らせて、ハヤテは咲夜を見つめる。  
「冗談やって、冗談! でもまあほんまに色んなことがあったさかい」  
「いえ、実は知ってるんですけどね」  
「へ?」  
 きょとんとする咲夜を前に、ハヤテは携帯を取り出す。  
「実はさっき帰国後のワタル君からメールがありまして。『爆笑画像』という件名で……、  
 いや、でもこれは僕としてもいかがなものかと……」  
「うわああああぁぁぁ!! おま、ちょ、まさかああああっっ!!?」  
 慌てて咲夜はハヤテの携帯をひったくろうとするが、ハヤテにひょいとかわされ全く  
手が出ない。  
 しかし咲夜は見てしまった。携帯の液晶に写る、肩と胸元を無駄に露出し、長く白い耳を  
生やした、自分のあられもない姿を。  
「わああぁぁぁ!? 消せハヤテ! 今すぐそんなもん消せぇ!」  
「いやぁ、前々から申しておりますとおり、僕は咲夜さんにはこういう年不相応な格好と  
 言うか妄りと言うか、ある意味可哀想という気すらしてくるような格好はして欲しくない  
 んですが、いや、こうして見てみるとそんな思いと裏腹に『だがそれがいい!!』と  
 感じてしまう自分に、先ほどとは違う情けなさと、言い知れぬ愉悦が込み上げてきたり  
 ですね」  
 なおも襲い掛かる咲夜の手からひょいひょいと携帯を守りつつも画面に向けた視線は  
けして崩さないという離れ業を見せながら、ハヤテは口元をいやらしく歪めて流暢にのたまう。  
「じぶん、めちゃめちゃヤな笑顔しとるぞ! はぁ、はぁ、あのガキ殺す! 1000回しばいて  
 殺すぅ!」  
 暴れたからか、はたまた恥ずかしさからか、咲夜は顔を上気させて14歳ビデオ店主に  
怨嗟の叫びを上げる。  
「はは、でもとっても楽しそうじゃないですか、あ」  
 
 油断したハヤテの手からまばたきの速さで携帯をひったくると、咲夜はこれまたミシンの  
ごときリズムでキーを叩き、ワタルの添付ファイルを消してしまった。  
「想い出は、形に残らないからこそ美しいんや……」  
「あーあ、またワタル君に送ってもらわないと」  
「その前に愛沢家総力を懸けてA○を潰す」  
「冗談ですよ冗談ー。ってうわちょっと、本気でお父さんに電話しようとしないで下さい!」  
 目がマジだった。  
「ふん、まったくハヤテは」  
「スミマセン……」  
「で?」  
「……で?」  
「だから、その、じぶんはウチのああいうカッコ見て、どう思たんや?」  
 少し目を逸らしながら、おずおずと咲夜は尋ねる。  
「え、だからさっきも言ったとおり、僕としてはああいう格好は」  
「だーっ、もう、そうゆうんやのうて!」  
 むきーっと咲夜は怒りだすが、ハヤテは咲夜の言いたいことがよくわからない。  
「だから、もっとこう、率直というか、パッと見ぃの意見を聞きたいねん!」  
 なるほど、そういうことか。  
 ハヤテはくすっと笑うと、  
「可愛かったですよ、咲夜さんのバニー姿」  
「むぐ……」  
 言われて、咲夜はさらに少し顔を赤く染め口ごもる。  
「……ほんまに?」  
「ええ、いろんな意味で反則ですホント。でも、ほんとにダメですよ、大勢の前であんな  
 格好」  
「あ、それもしかして焼きもち?」  
「……ええ! ほんと、ワタルくんが少し憎たらしいくらいです!」  
「ふーん?」  
 
 やけになって本音を漏らすハヤテの周りを、咲夜はニヤニヤした顔持ちでくるくる  
歩き回る。  
「そっかそっか。……でな? 実はな?」  
「へ?」  
 
 
「ええかハヤテ! 『ええ』って言うまで振り返ったらあかんで! 乙女の着替え現場は  
 不可侵領域なんやからな!」  
「わ、わかってますよ! ……なんか僕、やたらこういうシチュに縁があるような」  
「なんか言うた?」  
「いえ、なんでも!」  
 部屋の隅っこに向かい、気をつけの姿勢で待機するハヤテ。  
 その後ろでは、しゅるしゅるとか細い衣擦れの音。  
「別に服の下だったら今までだって何回も見てるのに……」  
「な・ん・か・言・う・た・?」  
「いえ、なんでも!」  
 背筋をさらにピンと伸ばし、咲夜の「準備」が整うまでさらに待ちぼうけるハヤテ。  
「……よし、ええで、ハヤテ」  
「はい……、おお」  
 振り返ったハヤテの目に飛び込んできたのは、鎖骨のあたりを大きく開いたレオタード、  
手首にそれだけ独立したカフス、脚線に艶かしい彩りを与える目の荒いタイツ、そして、  
その何よりも特異で目を引く、頭に映えたすらりと長い兎耳。  
 先ほどまでとは違う、男のどうしようもない妄想を無理矢理現実に落とし込んだような、  
咲夜のバニーガール姿に、ハヤテは軽い酩酊感のようなものを憶えた。  
「おお、って、珍獣でも見たみたいに」  
「いや、字としてはある意味間違ってないと思いますよ……」  
 言いつつ、ハヤテはしげしげと咲夜の全身を見つめる。  
「……」  
「……あんな、ハヤテ。一つだけ言うとくわ」  
 
「へ?」  
 すっかり見とれ呆けてマヌケな返事を返すハヤテに咲夜がつっこむ。  
「このカッコはなぁ……、めっっっっっっっちゃくちゃ恥ずかしいねんぞ!!」  
「だ、だったらわざわざアメリカから持って帰って着替えなければいいでしょう!?  
 僕は見たいなんて一言も……」  
「でも見れたら見れたでうれしいんやろ?」  
「むぐ、んー、えっと、はい……」  
 素直に認めざるを得ないハヤテ。  
 それも無理ないくらい、咲夜の姿はなんとも言い知れぬ異質な魅力を備えていた。  
「そういうことやねん」  
「は?」  
「ウチも恥ずかしい、あまり人に見られとうない。でもちょっと見せてみたい。そんな  
 相反する心の葛藤。これぞ乙女心のジレンマっちゅうやっちゃな……」  
「乙女心ってもっとピュアい言葉だと思ってましたが」  
 なんだか妙に俗っぽいことで揺れるものらしかった。乙女心。  
「しかし、今さらなのですが」  
「ん?」  
「深夜に女子中○生を部屋に連れ込んでバニー服着せるって、僕、人として完全に道を  
 踏み外してはいませんでしょうか」  
「ほんま今さらやな☆」  
 このロリコンがー、とからから笑う咲夜に反して、ずーんと落ち込むハヤテ。  
「いや、部屋に入ってきたのも着替えたのも咲夜さんなんですけどね……」  
「そんな気にせん方がええて〜」  
 関西のおばちゃんよろしく、手をちょいちょいと振りながら朗らかに笑う咲夜。  
 と、連動するかのように動く頭に映えた白いうさ耳。  
「……あれ、なんかその耳、動いてません?」  
「んー、ああ。なんかこれもNA○Aの最新技術でな、なんや、バイオセンサーがミノ  
 フスキーでサイコミュするたらどうたらこうたら……」  
「……NA○A脅威のメカニズムですね」  
 
「んー、でもまあ、そんな動きの精度もようないでー? まだまだ発展途上やなあ。  
 うつべしうつべし」  
 シュシュ、シュシュ、と耳で華麗なワンツーを切りながら咲夜は興味なさげに話す。  
「……そのようで。そう言えば「これ『も』」ってなんですか? 他に何か仕掛けがわぷ」  
「そーんなことはともかくとしてや!」  
 うさ耳でハヤテの口をぴたと塞ぎ、咲夜は強引に話を変える。  
「どや、満足したかハヤテ? うちのバニースーツ」  
 手を頭の後ろで組んできゅっと胸をはり、いかにも誘惑的なポーズを取りながら、咲夜は  
あははと笑う。  
 満足か、と聞かれれば。そんなの。  
「うーん、そうですね」  
 ハヤテは口元だけに笑みを浮かべ、きょとんとする咲夜にゆっくりとした足取りで  
近づくと、  
「? どしたんハヤテ、あ、ちょっと、んんぅ!」  
 咲夜の懐に寄り添ったかと思うと、流れるような手つきで咲夜のレオタードに手を回し、  
抱き寄せ、ぐっと長いキスをした。  
「ぷあ、な、なんや自分、今日はやけに積極的、ん……っ」  
 一度離した唇を間髪入れずに塞いで、ハヤテは1週間ぶりの感触を味わう。  
 こんなに柔らかかっただろうか。たった1週間なのに。思い出すように何回もその  
桃色の唇をついばみ、吸い付き、重ね合わせる。  
「んっ、む、ぅぅ、……ん」  
「この服……、背中こんなに大きく開いちゃって、風邪引いちゃいますよ……」  
「あっ、こら、撫でな、ん、んあ……!」  
 むき出しの背中にハヤテは手のひらを這わせる。肋骨の下、平らですべすべとした  
皮膚の感触を目一杯に味わうと、背骨のラインを下から上に、中指と薬指で撫で上げる。  
 目と鼻の先に寄り添う咲夜の頬がぞわっと総毛立ち、遅れて甘い吐息が漏れるのが  
ハヤテの耳に伝わる。  
「やめっ……、あっ、どうしたんや自分、今日は、ほんまに、んんっ」  
 
 肋骨の上の薄い皮膚をわし掴むように愛撫する。  
 普段から何かと勝ち気な咲夜だが、こうして責められると弱いことをハヤテはよく  
知っている。  
 知ってはいるが、だからと言っておいそれと強気になれないのがハヤテの性分だった。  
普段から咲夜によく怒られることでもある。  
「だって、咲夜さんが悪いんですよ。久しぶりに会ったっていうのに、こんな夜中に  
 押し掛けてきて、こんなエッチな格好するなんて。残酷です」  
 しかし、今回ばかりはさしものハヤテも理性の緒が切れてしまったようだった。  
「あ、あのー、ハヤテ?」  
「覚悟してくださいね咲夜さん。嫌と言ってもやめませんよ! たぶん!」  
「やっぱり若干弱気なんかい! うわ、ちょ!」  
 ハヤテは咲夜の体を抱きしめるように持ち上げ、そのまま自分ごとベッドへと飛び込んだ。  
「っ、危ないやろがボケェ! んむっ! むむ、ん、んぅ〜!」  
 うさ耳を揺らしながら抗議しようとする咲夜の口を、ハヤテはまたも強引に塞ぐ。  
 抵抗できないように手首を押さえ、噛み付きそうな勢いで、ハヤテは咲夜に口づける。  
 舌を口内に滑り込ませ、咲夜のそれと上も下もわからないくらいに絡ませあう。  
「えう、んん、んむ、んぅぅ……」  
 熱い。咲夜の味がする。少しざらっとした味蕾(みらい)を擦り合わせていると、その  
まま溶けてなくなってしまうのではないかと思うくらい柔らかい。  
 ハヤテは一心不乱に咲夜の唇をむさぼる。口から伝わるその感触以外に何も考えられない  
くらいに。  
 例えばさっきから何かが頭をぽふぽふ叩いているような気がするがそんなことは――  
「……あれ? あ、すみません!」  
「ぷはぁっ! はぁ、はぁ、はぁ……、この……っ」  
 咲夜のうさ耳を使った猛抗議にやっと気づいたハヤテは、我に戻って唇を解放する。  
 咲夜の顔は先ほどとは違う理由で真っ赤になっていた。  
「殺す気かボケェ!」  
「す、すいません、僕3分くらい呼吸止めてても平気なもので……」  
「海女か!」  
 
 咲夜はわりと本気で怒ってる。無理もない。  
「じゃあ、お口はもうやめにしますね」  
「えっ、あ、や、んん……っ」  
 ハヤテはそのまま頭を下にスライドさせ、首元にちゅっとキスをする。  
 口付けたまま、猫をあやすように舌で喉元をちろちろと愛撫する。  
「ふわ、ん、……っ」  
 ノートにペンを走らせるように、舌を鎖骨のほうへと滑らせていく。  
「咲夜さんって、どこもすべすべですね」  
「っ、この変態MAX執事、ん……!」  
 鎖骨の表面はとくにつるっとしていて、ハヤテは執拗にそこを舐める。  
「……咲夜さん、ここ」  
「ひゃう!?」  
「もうすっかり、ですね」  
 レオタードのカップ部分に指を滑り込ませ、ぴんと膨らんだ乳首をそっとつまむ。  
 くにくにと優しくいじると、きゅっと咲夜の表情が縮こまる。  
「んんっ、だめ、そやって、いじるん……、あん!」  
「じゃあ、失礼して」  
 満足げな表情を浮かべると、ハヤテは一旦顔を離し、果実の皮をむくように胸を覆う  
布地をめくる。桃色の乳首と豊満な乳房が露わになる。  
「……なんか『ぷるん』っていいました?」  
「いうか!」  
 そんな擬音が出そうなほど大きな胸に、ハヤテはしゃぶりつく。  
 根元から揉み上げるようにして、つんとした先端をぱっくりとくわえ込む。  
「やん、ん、ああ、あっ! ハヤテぇ、んー!」  
 ちゅぴ、とわざと音を立てるようにして、ハヤテは乳首に吸い付いては離すのを繰り返す。  
 左胸が唾液でべとべとになると、今度は右を、今度はレオタードの上から舐める。  
 乳首が膨らんでいることを確かめるようにつんつんと舌でつつき、ぐに、と押し込む。  
「あぅ! だめ、それ、やめ、ハヤテ、んあ!」  
 
 布地の膨らみを嘗め回しながら、左手でもう片方の胸を揉みしだく。  
 人差し指でくりくりと乳首を弄り回すと、咲夜の体がびくっと跳ねた。  
「あっん! も、やぁ、あ、あっ!」  
「咲夜さん、今日、なんだかすごく感じてくれますね」  
「だって、ウチかて、久しぶりなんやも、ん!」  
「そうですか、じゃあ、ここ……」  
「ん……っ!」  
「ここ、ちゃんと、ほぐさないとですね」  
 
「ちょ、嫌やこんなカッコ!」  
「まあいいじゃないですか。これもジレンマですよジレンマ」  
「なにがじゃー! 適当ぬかすなー!」  
 咲夜が猛抗議をしているのは、ハヤテに強要させられたその体勢である。  
 ベッドに伏せ、膝を立ててお尻を突き出した、なんとも恥辱的な格好。  
「可愛いですよ、咲夜さんのお尻」  
「アホ、もうこんなド変態執事やったなんて、ひゃう!」  
 不平を漏らす咲夜の太腿を、ハヤテはべろりと舐め上げる。  
 網タイツの荒い目の一つ一つに押さえつけられ、ぷりっとなったももの肉は、段々と  
した感触を舌に与える。なんとも奇妙な感じだった。  
「……ハムみたいですね」  
「なんか言うたかこの変態!」  
「ついに執事じゃなくなりました!?」  
 しかしその感触に気をよくしたハヤテは、何回も咲夜の太腿に舌を這わせる。  
「あ、うん、もう、アホ、んっ、あっ……」  
「おしり」  
「へ、う、やん、もう!」  
 咲夜からハヤテの顔は見えない。だから、ハヤテのいやらしい口の目標がお尻に移ると、  
びくっと動揺してしまった。  
「お尻、ほとんど見えちゃってるじゃないですかこの衣装。いけませんねまったく」  
「お前全然いけませんて思てないやろ! ふあ、もう、そんな舐めるなあ!」  
 
 咲夜も言葉を意に介さず、つるんとした臀部の感触を舌と手のひらで思う存分堪能する  
ハヤテ。  
「そろそろ、ここ」  
「ひぁん!?」  
「触りますよ、咲夜さん」  
「あ、ああ、んっ!」  
 心もとない布地に覆われ、少しぷくっと膨らんだ恥肉を人差し指でそっと押し込む。  
「あ……」  
「ふぇ?」  
「咲夜さん、ほら、これ」  
 ハヤテは、秘部に触れた指で、つっとお尻を撫でる。  
 その指は、湿っぽい。  
「あ……!」  
 ハヤテからは見えないが、咲夜の顔が羞恥でみるみる赤くなる。  
「もう大丈夫かもしれませんけど、一応」  
「あ、あかんて、ハヤテ、そんな強う、あっ!」  
 ハヤテは中指を股間の中心にあてがい、円を描くように咲夜の秘部をほぐす。  
 すでにそこは滲んだ愛液で湿っていたが、指で押すとさらにじわ……と、布地に染みが  
広がっていく。  
「どうですか、咲夜さん」  
「あっ、だ、だめっ、んっ! あっ、あああっ!」  
 中指をくいと曲げて、少しずつ込める力を上げていく。  
 動きも縦に、少しずつ割れ目に潜り込ませていくように。  
 中指が徐々に沈みこんでいくたび、染みの色は濃くなっていく。愛液が滲み出てくる  
様子が見て取れる。  
「ああっ、く、ぅん、やぁ、切な、い、!」  
「咲夜さん……」  
「んああっっ!」  
 
 ハヤテはおもむろに咲夜のお尻に顔を近づけ、しとどに濡れた陰部に吸い付くように  
口づける。  
「はむ、ん、ちゅっ」  
「やあ、は、ハヤ、ん、んっ! そんな、舐めちゃ、いやや、は、あんっ!」  
 身悶え、下半身を震わせる咲夜だが、ハヤテは口を離さない。  
 染み込んだ愛液を吸い取るように長いキスをすると、  
「……タイツ、すこし破きますね」  
 愛液でぴっちゃりと密着したタイツをつまみ上げ、びり……と少しずつ破いて穴を  
開けるハヤテ。  
「NA○Aの最新技術が……、まあどうでもええねんけど。ひゃ!」  
「指入れますよ、咲夜さん」  
「ま、待って、ハヤ、んっ、んんんぁ!」  
 レオタードをずらし、愛液でてらてら光る秘部に、ゆっくりと指を挿入していくハヤテ。  
 咲夜の中は熱く、きゅうっと締め付けてくるが、ゼリーのように柔らかい。  
 指を前後させると、くちゅ、くちゅと淫靡な音を立てる。動きに合わせてぴくぴくと  
圧力を変えるのがなんとも愛らしい。  
「ふぁ、あ、ああっ! ハヤ、い、あ!」  
「気持ちいいですか、咲夜さん。ここ、もうすっかり大丈夫みたいですね」  
「いちいち言わんで、ええ、あ、あんっ!」  
 びくっと跳ねる咲夜の尻。その頭頂で、白いボンボンのようなしっぽがふりふり揺れていた。  
「可愛いですねコレ。地味ながらけっこう重要なポイントだったりするんでしょうか」  
「し、知らんわ、アホぉ……」  
 咲夜は息も絶え絶えだった。  
 ハヤテはなんとなくそのふわふわしたしっぽを撫でてみる。ポリエステルか絹かわから  
ないが、さわさわした感触が何とも言えず気持ちいい――  
「ひん!?」  
「へ?」  
 その時、咲夜のほうから変な反応が返ってきた。  
 ちなみに、手も口ももうお尻には触れていない。  
 
「ど、どうしたんですか咲夜さん?」  
「いや、なんか尾てい骨のあたりが無性にムズムズ……」  
「……まさか」  
「バイオセンサーが……」  
「サイコミュで……?」  
 そのふざけた推論を確かめるべく、ハヤテは再度しっぽを撫でてみる。  
「ふぁ、や、やめぇハヤテ、くすぐった、っ!」  
「なるほど、耳を自分の意思で動かせるということは、逆に刺激を受けるとその感覚まで  
 フィードバックされてしまうというわけなんですね。なんともSFな」  
「冷静に考察しとる場合か! ていうか何でしっぽまでそんなんなっとんねん!」  
「やはり魂が宿るからではないでしょうか……。うさぎの。もしくはバニーの」  
「宿るか! いっしょじゃ! ああもう、っ!? や、だめ、もうええて、ああ!」  
 咲夜のツッコミを受け流しながら、ハヤテは再び陰部を触り始める。  
 今度はいっしょに、しっぽも弄りながら。  
「いや、だめ、これ、変な感じ、する、ああ、触らんといて、も、や、あっ、ふああっ!」  
「さっきより、感じてます?」  
「そ、そんなこと、んっ、あっ……、ちょ、ほんま、ダメ、ハヤテ……!」  
 秘部に挿入した指に、きゅうっと一際圧力がかかる。  
「イキそうですか、咲夜さん?」  
「ん、うん、だから、もう、ん、ああっ! しっぽは、やめ、……っ」  
「いいですよ、イッてください咲夜さん。んっ……」  
「ふあぁっ、ダメ、舌、入れちゃ、あ、ああ、ああー……っ!」  
 ハヤテが陰部に舌を突き入れ、中をずりずりと舐めたその瞬間、咲夜は達した。  
「んぷ、咲夜さん、溢れてきますよ」  
「あぁ、や、舐めんといて、んっ、ん! はぁ、はぁ……」  
 ハヤテが股間を解放すると、そのまま咲夜はそのまま体を横に倒し、荒い息を上げた。  
「……じ、自分」  
「はい」  
「もう引き返せへんくらい立派な変態やと思うで……」  
「否定できない自分に泣けてきました……」  
 
 割と本気で自戒し始めたハヤテに、溜息一つついて咲夜はそっと寄り添う。  
「咲夜さ、ん!? んん……」  
「……っ、で、そのどうしようもない変態さんは、次は何してくれるんや?」  
 長く、優しいキスをして、咲夜は甘い声でハヤテに囁く。  
「……そうですね、僕もけっこう限界ですし」  
「あっ」  
 ハヤテは咲夜を優しく押し倒し、キスのお返しをすると、  
「……しますよ、咲夜さん」  
「うん、ウチも、欲しい」  
 にこっと二人して笑いあい、ハヤテはいそいそとズボンのチャックを下ろす。  
「……うっわ、ギンギンやん」  
「だから限界なんですって……」  
 いかにも臨界とばかりにぴくぴくと動くペニスを、レオタードを少しずらして咲夜の  
ぐっしょりとした陰部にあてがう。  
「入れにくない? 脱ごか?」  
「いや、それはいけないと大いなる意思が……」  
「?」  
「いえ、大丈夫です。いきますよ……」  
「へ、ん、あ、……んんっ!」  
 ハヤテはゆっくりと、咲夜の中に自分のいきり立った肉棒を挿入していく。  
 ややきついが、熱くぬめった内壁はハヤテのものを溶かしてしまうかと思うくらい、  
心地よく包み込んでくる。  
「動きますよ、咲夜さん」  
「待って、ゆっくりな、さっきの余韻が、ん……あ!」  
 指示通り、緩慢な動きで腰を上下に動かすハヤテ。ペニスが内面を滑るたびに、ぞわぞわ  
とじれったい快感が背骨を突き抜けていく。  
「ハヤテ、キスして……」  
 重なり合ったまま、ハヤテは咲夜に優しく口づける。と。  
 
「咲夜さん、ここ……」  
「え、わひゃ! な、ななな……」  
「やっぱり、ここも感じるんですね……」  
 ハヤテは咲夜の頭から生える、白く長い耳にそっと触れる。  
「だ、ダメ! そこはしっぽよりも格段にダメや!」  
「咲夜さん、耳弱いですもんね……」  
「そ、そんなこと、く、あ、あっ、あっ……」  
 うさ耳をさわさわと撫でながら、ハヤテは徐々にピストンのペースを上げる。  
 繋がった部分からぐちゅ、ぐちゅと水っぽい音が立ち始める。咲夜は喉元をわななかせ、  
「あっ、ん、んっ! ハヤ、テ、だめ、耳、変な、感じやから、や、めっ……!」  
「そうですか……、じゃあ、こっちは」  
「〜〜っ!」  
「本物の方は、どうですか?」  
 ハヤテは少し汗の匂いのする髪をかき分け、咲夜の耳たぶにぱくっと噛み付く。  
「咲夜さんの耳、可愛くて好きですよ」  
「もう、あう、んっ、だから、耳は、だ、あっ、うう、んっ!」  
 ぺろぺろと耳たぶを舐めるたび、咲夜の体が震えるのが伝わってくる。  
 膣内も刺激を強めるたびに、心地よい圧力を返してくる。ぐっと高まっていく性感。  
「咲夜さん、いいです。すごく……!」  
「うん、もっと、もっと感じて、ハヤテぇ、あっ、ああっ」  
 咲夜の腰を抱え、より力強くペニスを出し入れするハヤテ。咲夜はハヤテの首に手を  
回し、抱っこされているような体勢になった。  
「ハ、ヤテぇ、あっ、あっ、ウチ、いっ、ああっ!」  
「咲夜、さん、く、……っ!」  
「ふあ、あ、ああああぁ……っ!」  
 頭の中がしびれるような感覚が走ったかと思うと、びゅっ、びゅっ……と咲夜の中に  
思い切り精液を放っていた。  
「あ、あっ……」  
 何回も、止まらないかと思うくらい射精を繰り返した後、ハヤテはゆっくりとペニスを  
引き抜く。その瞬間に吐息とともにぴくっと震える咲夜の体をハヤテはぎゅっと抱きしめる。  
 
「……ふぅ、咲夜さん?」  
「はぁ、はぁ、久しぶりに会ったのに、ほんま先行きが楽しみになる変態ぷり見せて  
 くれるわ……」  
「だから、それは咲夜さんがそんな格好しちゃうからですよ」  
 苦笑しながら、ハヤテは咲夜の頭を、そしてうさ耳を撫でる。  
「や、もう、だから触りなて……。はあ、こりゃやっぱ封印せなあかんなコレ……」  
「そうですね。まったくもってけしからん衣装です」  
「ほんまにそう思うとるんかいな……」  
 咲夜は溜息をついて、くすくすと笑い始める。  
「……次はどんな衣装で来たろかな」  
「え」  
 二人のこれからに若干の不安を忍ばせながら、ゴールデンウィーク最後の日の夜は  
更けていった。  
 
 
「………………ハヤテ君、なぜ、どうして、こんなも、の、を……」  
 次の日。慌てて帰った咲夜が置いていったバニースーツをマリアが見つけ、三千院家での  
これからに多大な不安を残すことをハヤテはまだ知らない。  
 
-END-  
 

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