「ほら、しっかりしろよ!」  
「もう…、もう、呑めない〜…」  
「当たり前だっつの。あんだけ呑みゃ、もう十分だろうが!!」  
 
毒々しいネオンが煌びやかに瞬く繁華街の夜はまだまだこれからだったが、残念ながら、  
普段は呑めない高い酒を京ノ介に散々タカって飲み倒した雪路は、もうすっかり出来上がってしまっていた。  
京ノ介としては、好きな女と職場が同じというのは何かと便利で有難くて、それなりに安心ではあったが、  
しかし、その当然の結果として給料日まで丸分かりなのは、殊に今日のような状況では不都合極まりないものがある。  
 
「もう、帰る〜」  
「ああ、それがいい。じゃあ、タクシー相乗りで割り勘な!」  
「うん…」  
 
人目を全く気にもかけずに自分にしなだれ掛かってくる酒臭い女の頼りない肩を支えて人込みで賑わう歩道を横切りながら、  
京ノ介は、「(何が楽しくて俺はこんな女が好き何だろう…)」と、自分自身で自分のことが不思議でならなかった。  
 
京ノ介のアパートの前に停車したタクシーが、ハザードランプを点滅させる。  
 
「2780円ですね」  
「はい。有り難うございました」  
「運転手さん。この人を白皇学院の正門のところで降ろしてやってください」  
「分かりました」  
 
2割り増しの深夜料金とはいえ、この時間帯で3000円以内に収まったのはラッキーだった。  
ここで京ノ介は降りるが、白皇学院まではあとほんの600円分ほどの距離だ。  
 
「じゃあ、1400円な。ほれ、手、出せ」  
「あ〜い〜…」  
 
だるそうに目を瞑って座席に凭れたまま、  
京ノ介に握らされた紙幣と小銭をろくろく確かめもせずにギュッと握り締めるだけの雪路の余りにも正体の無い有様に、  
心配になった京ノ介は、へなへなに成り果てている雪路の身体を揺さぶって目を開けさせると、大きな声で確認を取った。  
 
「おい!」  
「なぁ〜に〜?」  
「お前、運転手さんに迷惑かけないように、ちゃんと一人で降りられるか?」  
「だぁ〜いじょ〜うぶぅ〜ですぅ〜」  
「ほんとかよ!?それから、降りた後だって、校門の前で寝込むような真似するなよ!お前だって一応、女なんだからな!」  
「大丈夫だってばぁ!!校門まで辿り着きゃあ、これこの通り、セキュリティーカードでピピッと…。…、あれ…?」  
「どうした?」  
 
バッグの中をゴソゴソ掻き回していた雪路の手がぴたりと止まったかと思うと、  
雪路は、その中に吐くんじゃないかと京ノ介が一瞬慌てるほどの勢いでバッグの中に顔を突っ込んだ。  
 
「無い…」  
「何が?」  
「通用門用の、セキュリティーカード…」  
 
バッグから顔を上げた雪路は、焦点の合わない虚ろな目で呆然と京ノ介を見る。  
さっきまで太平楽な紅色に染まっていたその頬は、今は哀れにも、されされと蒼褪めてしまっていた。  
 
運転手からの心配そうな「一旦、精算しますか?」という問い掛けに、京ノ介が「ちょっと待ってください」と返事をした瞬間、  
ダッシュボードの上に備え付けられている料金メーターの表示が、90円分上がった。  
 
「そのカードとやらが無きゃ、入れないのか?」  
「いえ、そういうわけじゃないけど…。あたし、カード、どこで無くしたんだろう?どっかで落としたのかしら?」  
 
目も当てられないほど狼狽しながら、  
決して明るいとは言えない車内灯を頼りにして服のポケットというポケットを必死に探り回っていた雪路が、不意に声を上げた。  
 
「あ!!」  
「あったか!?」  
「ううん。でも、思い出したわ!  
昨日の夜、お財布の中の小銭数えようとして、それで、ついでにポイントカードとか整理して、それで…」  
「それで?」  
「そのまま机の上に、出しっぱに…」  
「ああ…」  
 
京ノ介が頭を抱えたのと同時に、再び料金が90円上がる。  
 
「カードが無くても学校に入れるんだな?」  
「いやいや、それダメよ!だって、警備会社に電話して、私の職員証を見せて鍵開けてもらって…」  
「それでいいじゃないか」  
「ダメだって!カード使わないで誰が入ったか、後で警備会社から学院の事務に連絡があるのよ!!  
あたしが宿直の仕事もしないで飲み歩いてたって理事長に知られたら、宿直手当のカットだけじゃ済まないわ〜!」  
「自業自得だ」  
「ダメ〜!そんなのヤダ〜〜〜!!」  
 
更に90円上がった料金メーターの数字を睨みながら、京ノ介は最も合理的と思われる提案をする。  
 
「桂の家に行ったらどうだ」  
「へ?」  
「だから、桂ヒナギクの家、つまり、お前の実家に行って、今晩はそこで寝ろよ!」  
「それもダメ〜!」  
「何でだよ!」  
「あたしの、姉としての威厳が〜…」  
「そんなもん、当の昔に無くなってんじゃないのか!?」  
「うっ…、そんなにまで…、言わなくったって…、うっ…、いいじゃな〜いっ!」  
 
手の甲で涙を拭いながらウワーンと本気で泣き出す雪路の、とても名門私立校の教師とは思えない情け無い姿に、  
京ノ介は溜め息をつきながら、又90円上がってしまった料金の精算を、待ちくたびれていた運転手に申し出た。  
 
「ほら、さっさと入れ、この呑んだくれ!」  
「何でそういうこと言うの?」  
「お前が呑んだくれだからだよ!」  
 
玄関の鍵を開けてさっさと部屋に入ってしまった京ノ介が、  
ヒックヒックとしゃくり上げる雪路をわざと乱暴な言葉で急かせる。  
女を苛めて喜ぶような下卑た性癖など欠片も持っていない京ノ介ではあったが、今ばかりは、  
普段の雪路の「二次元ジゴロ」だの「ガンプラ以外の彼女が出来ない」だのという自分への酷い言い草の敵をとらせてもらった。  
 
「ほら、呑め」  
 
通された仕事部屋兼リビングで、壁一面に設えられた棚にずらりと並ぶロボットの模型やフィギュアに見守られるように、  
狭い床の真ん中に置かれたテーブルにしがみ付くようにしながら絨毯の上にへたり込んでいる雪路の赤らんだ鼻先へと、  
京ノ介が良く冷えたスポーツドリンクのペットボトルを突き付ける。  
 
「あんがと…」  
 
それを拝むようにして受け取った雪路が、喉をごきゅごきゅと大袈裟に鳴らしながらそれをラッパ呑みした。  
 
「俺はここのソファーで寝るから、お前は俺のベッド使え。今、シーツと掛け布団、換えてくるから」  
「うい〜す」  
 
身体に水分が行き渡った上に京ノ介の優しい言葉に安心した雪路からの半分ふざけた返事を背中に聞かせ、  
京ノ介は、雪路のためにベッドを整えに扉一つ隔てた寝室へと消えていった。  
 
「じゃあ、明日の朝は6時半に叩き起こすから、すぐ学校へ行って、宿直室でシャワー浴びろよな」  
「はーい」  
 
京ノ介は、部屋の明かりを消しながら、  
パジャマ代わりに京ノ介の少し大きめのジャージを借りて既にベッドに潜り込んでいる雪路に、  
素っ気無い「お休み」の挨拶を送る。  
 
「あのさ、京ノ介…」  
「何だ?まだ、喉、渇いてるのか?」  
「むふふふふ…」  
「何だよ!気色悪りぃな!!」  
「ベッド、男臭い…」  
「な、何だよそれ!つか、そんなのしょうがねぇだろう!贅沢言うなよ!!」  
 
「早く寝やがれっ!!」と詰りながら蛍光灯のスイッチ紐を素早くカチカチと引っ張って消して部屋を出ようとする京ノ介を、  
雪路が切ない声で制止した。  
 
「ごめん!待って、お願い…」  
「だから、どうしたんだよ!」  
「あの…、その…、ちょっとの間でいいから、話をしたかったり…、するかも…」  
「?」  
 
半分照れてはいるが、しかし半分真面目な雪路の声音に、  
京ノ介は蛍光灯の紐をもう一度カチリと引いて、部屋を再び明るくした。  
 
ベッドのすぐ横に胡坐をかいた京ノ介は、ベッドの上で半身を起こした雪路を見上げながら尋ねる。  
 
「で、どんな話をすりゃいいんだ?」  
「あのさ、何ていうか…、ありがとうね」  
「どうしたんだよ?改まって」  
「うん…。だってさ…、家でも、宿直室でも…、あたしのために誰かがベッドを整えてくれるなんてこと、無いから…。  
嬉しいなぁ…、なんて思ったりして、ね…」  
「…」  
 
まだ酒っ気が残っている赤い頬に似合わない寂しそうな雪路の横顔に、  
京ノ介は、ある時ふとした弾みに耳にした、雪路の家庭環境は“普通とは少し違う”という噂話を思い出した。  
 
「雪路…」  
 
自分でも全く意識せぬ内に口を衝いて出た雪路への呼び掛けに、  
京ノ介自信が驚くよりも先にそれに反応した雪路が顔を上げて京ノ介を見る。  
 
「あ…、いや、その…、あの…、そそ、そういうことをしてくれる男を、は、早く見つけたらどうだ?」  
「そんな奴、いないもん…」  
 
青菜に塩といった風情の雪路の顔を見て、京ノ介の眉間にキラキラリン!と青白い閃きが走った。  
 
「いやいや、探す努力もせずに諦めるのはどうかと思うぞ!」  
「そうかしら…」  
 
そうそう。このまま上手く誘導すれば、雪路に自分のことを男として意識させるきっかけを作れるかもしれない。  
 
「そうさ!お前は、いい女だからな!」  
「そう思う?」  
「ああ!」  
 
大きく頷いて請合う京ノ介を、雪路が複雑な眼差しで見詰める。あともう一押しか!?  
 
「ほんとにそう思う?」  
「もちろんさ!」  
 
京ノ介のこの返事を聞いた途端、雪路は酷く卑猥な笑みを浮かべると、あろうことか、  
京ノ介がその耳を疑うような台詞を言い放った。  
 
「あんた、私としたいんでしょ?」  
 
京ノ介は、さっきまで優しかった顔を全くの無表情に一変させると、やおら立ち上がり、  
明かりも消さず「おやすみ」の挨拶もなしに部屋から出て行こうとする。  
 
「あ!じょ、冗談よ!!ちょっと、待ってよ!!」  
 
自分の無神経な軽口が京ノ介を激しく怒らせたことに雪路が気付いたその時には、既に部屋の扉は完全に閉まっていた。  
 
「ごめんなさい!ねえ、京ノ介!!ごめんなさいったら!ねえ、返事してよ!!」  
 
仕事部屋に京ノ介がいる気配はするが、返事は全く無かった。  
 
「ほんとに悪かったわ!ごめんね。私の口が過ぎたわ!ほんとにごめん」  
 
だが、それでも雪路は必死に詫び続ける。  
 
「ごめんなさい。悪かったわ。私が悪かったから…、ねえ…、京ノ介…」  
 
仕事場と寝室を隔てるドアの前に座りこんで詫び続ける雪路の喉元から堪え切れない嗚咽が漏れ始めた、その時…  
カチャリ、とドアノブが静かに周り、ドアがゆっくりと開いた。  
 
「京ノ介!ごめんね!!ほんとに、私、馬鹿なことを言って…、ごめんなさい!!」  
 
雪路の身体をゆっくりと慎重に避けながら寝室に入ってきた京ノ介に、雪路は絨毯に手をついて深々と頭を下げる。  
 
「これ、見ろ…」  
 
すぐ横に膝をついてそっとしゃがんだ京ノ介が優しく差し出した指先に摘まれていた写真を見た雪路の表情が、  
一瞬「?」となった後、見る見るうちにとても柔らかく幸せそうに変化していく。  
 
「この写真って…」  
「そう、高校の時のだ」  
「覚えてるか?」  
「うん…。思い出した…」  
 
校門の前で、照れて横を向くガクラン姿の京ノ介と、その腕を取ってニッコリ微笑むセーラー服の雪路が、  
丁度校舎の天辺の時計塔を背にする構図で収まっている写真。  
 
高校生の時、既にオタクだった上に手先も器用な京ノ介がフルスクラッチして学校に持参したロボットを男子は褒めたが、  
女子の大部分は、それを遠巻きにしてヒソヒソ話し合うだけだった。  
だが、そんな女子の中で一人だけ、そのロボットを熱心に矯めつ眇めつして、こう言った者がいた。  
 
「へえ〜。良く出来てるじゃん。これ、全部あんたが作ってんの?器用じゃん。カッコいいよ!」  
 
そう、それが雪路だった。そして、そんな雪路に京ノ介は一目惚れをしたのだ。  
 
「もしかして…、この時から、ずっと、私のこと…」  
「そ!」  
「…」  
「だから、『俺のベッドで酔っ払ったいい女が寝ているからムラムラ来た』なんていう単純なもんじゃないんだぞ!!」  
「そうなんだ…」  
「でもな…」  
「?」  
 
いきなり、何とも言えない悲哀の篭った表情と声音になった京ノ介の顔を、雪路が不思議そうに覗き込む。  
 
「この間、学校でこの写真見てたらさ」  
「うん」  
「一年の日比野文に見つかって、あいつが『先生、凄い美少女の写真を持ってます!』って言うから、  
『これは、俺が十数年も一途に思い続けている女性の写真だ』って教えてやったんだよ。だけど、そしたらさ…」  
「どしたの?」  
「『十数年もずっと一途に片思いなんて、確かにキモイ話ですッ』って言われたよ…」  
「あはははは…」  
 
ほんの近くに突き合せた顔を一頻り苦く綻ばせ合った二人は、そのままじっと互いの瞳の奥を見詰め合う。  
 
「だから…」  
「うん…」  
 
そっと瞼を閉じて形良く尖った顎先を上げた雪路の、まだまだ酒の匂いが抜けない唇に、  
京ノ介の唇が静かに優しく重なった。  
 
「シャワー、どうする?」  
「京ノ介は、私の匂い、嫌い?」  
「いいや」  
「じゃあ、シャワー、要らないわ…」  
 
十数年間思い続けた女の肌に初めて触れる瞬間について、京ノ介は京ノ介なりの理想やロマンを抱いていたが、  
今、己の身体の下に組み敷いた愛しい女の身体の柔らかさと生々しい匂いは、早くもそんな京ノ介をすっかり虜にしてしまう。  
 
「雪路…」  
「京ノ介…」  
 
甘い熱を帯びた瞳に吸い寄せられるように顔と顔を近付け合っては互いに唇を啄ばみ、  
その口付けは自然に深く強くなって、そのうち互いの舌を貪るのに疲れて口と口を離した二人は、優しく名を呼び合った。  
 
「ああ…、もっと…」  
「よし…、待ってろ…」  
 
京ノ介は、雪路のジャージの胸元を掻き分けてブラジャーをずり上げると、甘い汗の匂いが漂う豊かな乳房を揉みしだきながら、  
その天辺に既に真っ赤に色付いて凝り尖る乳首にむしゃぶりつき、思い切り吸い立てた。  
 
「ああッ!!」  
「ここかッ!ここがいいのか…?」  
「そうよッ!そこ…、いいッ…!!」  
 
堪らなくなった雪路がぐっと両腕を上げて自らが頭を乗せている枕の両側を握り締めると、  
すかさず京ノ介が、濃い汗が香り立つその腋窩に舌先を差し込み、生えかけの腋毛のざらつく感触を堪能しながら、  
くまなく舐め取った独特の芳香のある苦くて塩辛いその汗を、喉仏を鳴らしながら何度も飲み下した。  
 
「ダメ…、そんなとこ…」  
「雪路の汗…、凄く旨いよ…」  
「もう!馬鹿ッ…!!」  
 
乳房や腋を夢中で愛しながらも、京ノ介の片方の手は雪路の白い腹をそろそろと這って、  
汗に湿ったパンティーの縁を易々と潜り抜けると、美しい水色の巻き毛が茂る秘密の場所へと辿りついた。  
 
「ああ…、京ノ介…ッ!」  
「雪路ッ…」  
「なに…?」  
「俺、雪路が、今日が初めてだから…」  
「大丈夫よ…。だって…」  
「…?」  
「あたしも、同じようなもんだもん…。嫌だったり、ダメだったりしたら、言うから…」  
「雪路…」  
 
二人で一緒に絶頂を目指すと決まったからには、もう、下手な遠慮はかえって邪魔だ。  
京ノ介は、会話の間じゅう躊躇いながら巻き毛を撫でていた指先を一気に細長く腫れるクリトリスへと進め、  
こうと思い定めた方法でその包皮を捲り上げると、力加減に注意しながら優しくコリコリと揉んだ。  
 
「ひゃあッッ!!」  
 
カクンと妖しく揺れる雪路の腰の反応に、京ノ介は更にそれを攻め続ける。  
 
「ああっ!あああッ!!そっ、それッ!それぇッ!!」  
 
京ノ介は、まるで自分の指先から逃げ回るように艶かしくくねる雪路の細い腰を押さえ付けると、  
先ずジャージのズボンを、次に汗とあの汁でしっとりと湿り切っている黒いレースのパンティーを一気にずり下ろした。  
 
「あんまり…、見ちゃダメだぞ…」  
 
ダメが出たけれど、その言葉は甘ったるいばかりで全然迫力が無い。京ノ介は、自然に言葉攻めに移る。  
 
「雪路のここ…、もう…、ヌルヌルで…、ドロドロだぜ…」  
「嫌だ!もうッ…!」  
 
初めてで、まだ女の中心の本当の美味しさの味わい方を知らない京ノ介は、  
その場所が今日一日をかけてたっぷりと蓄えたムンムンと立ち上る牝の匂いのみにすっかり酔い痴れ、  
慌ててずり下げたジャージの中のトランクスからいきり立つ自分の男を解放すると、  
雪路の腰を自分の腰の正面に両手で固定し、最後の部分への進入の許可を求めた。  
 
「いいか…?雪路ッ!」  
「来てッ…、来て頂戴ッ!京ノ介ぇッ!!」  
 
雪路の処女の象徴である入り口の微かな引っ掛かりを突破し、今初めて牡を受け入れる雪路のまだ狭いが熱い襞壁を、  
赤黒く晴れ上がった京ノ介の先端がグイグイと押し分けながらその最奥を目指す。  
 
「ああ…ッ!!」  
「雪…、路…ッッ!!」  
 
一旦動きを止めた京ノ介の腰が今度は後ろへと動き出し、膨らみ切った雁首のエラが、  
ドロドロに蕩けた雪路の肉穴の内壁から、そこに熱く絡み付いている粘液をごっそりとこそげ取っていく。  
 
「もう…ッ、もう…、ダメッッ!!」  
「お、俺も…ッ!」  
「京ノ介ッ!一緒…ッ、一緒にッ…!」  
「雪路ッ…、雪路…ッ!雪路ッッ!!」  
 
この十数年の間、夜に昼に想い続けた愛しい女の中心を力の限りに突く京ノ介も必死なら、アッシーでもメッシ−でもない、  
本当にこの自分がその全てを愛し、そしてこの自分の全てを愛してくれる男に抱かれる喜びを全身に感じている雪路も、  
その腰を、力一杯振り立てた。  
 
「雪路ぃッ!!」  
「京ノ介ぇッ!!」  
 
二人の身体を同時に甘くて激しい痙攣が何度も何度も駆け抜け、その後、雪路も京ノ介も、  
腑抜けたようにベッドに倒れ込むと、互いの身体に腕や足をそっと絡め合い、やがて、スースーと幸せな寝息を立て始めた。  
 
 
ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!ピピピッ!  
 
「あ…、京ノ介…、おはよ…」  
「雪路…、おはよう…」  
 
 
腰の辺りに僅かな血の染みのあるくしゃくしゃなシーツの上で、  
ジャージが僅かに身体に纏わり付いているだけの半裸で目覚めた二人は、互いにハッと顔を見合わせると、  
先ほどから机の上で懸命に鳴っている目覚ましよりも大きな悲鳴を上げた。  
 
「あーーーーッ!!」  
「学校ッ!!」  
 
この日、慌てふためきながら始業ぎりぎりに仲良く揃って学校に到着した二人が、  
生徒会三人組を始めとする生徒たちからその理由を質問攻めにされたことは、言うまでも無い。  
 
 
END  
 

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