残暑も過ぎ、だんだんと涼しくなってくる頃。  
週末だというのに今日も橘ワタルは暇そうに店のカウンターで雑誌を読んでいた。  
「はあ、せっかくの三連休なのに……。なんか面白いこと起こらないかなあ」  
今日は店にサキがいない。  
彼女は三連休を利用して実家に帰っているために今ワタルは一人きりで店を運営している。  
といっても客は誰一人来ないのだが。  
「暇つぶしにナギにでもビデオの返却催促でもするかな! はは……」  
わざと声を張り上げてみたものの余計に虚しくなりつつ気を取り直してワタルは電話をいれる。  
ところが電話に出たのはマリアで特に話が横にそれて長続きするわけでもなく通話を終えてしまった。  
「暇だなあ……」  
そんな折、自動ドアがガタガタと激しい音を立てながら開いた。  
何せ古い店だからどうも立て付けが悪いようだ。  
そよ風が紅葉の落ち葉と共に店内に入ってくる。  
ワタルは心の底から喜んだ。これが悪夢の始まりだったなんて夢にも思わずに……  
「いらっしゃいませ!」  
 
「こんにちは、ワタル君」  
「あれ? 愛歌の姉ちゃん? 珍しいな……。何しに来たんだ? ここはお嬢さまの来る店じゃねえぞ?」  
「そうねえ……」  
愛歌は答えながら店内を見回す。やはり金持ちのお嬢様にはこんな小さなスペースで店を開いているのが不思議に思えているのだろう。  
ワタルはカウンターに置いてあったマグカップを手に取りココアを啜りながらそれを待った。  
「サキさんは?」  
「サキぃ? サキなら三連休を利用して実家に帰ってるよ」  
「ふーん。じゃあワタル君も一人で留守番してるんだ」  
「ああ、お陰で夜更かししたりビデオ見まくったり遊んだりやりたい放題……。  
 そんな事より、[も]って事は姉ちゃんも連休一人きりなのか?」  
「ええ……。わりと親は普段、寝たきりの私を放任していて三連休も帰ってこないそうよ」  
「そりゃあラッキーだな。たまには一人きりにもなるのも良いもんだ」  
「そう?」  
愛歌はワタルの言った事には同意してはいなかったようで生返事を返した。  
誰に何も言われずに一人で過ごした方が楽しいじゃないかと思いながらもワタルは愛歌に問う。  
「で? 何しに来たんだよ姉ちゃん」  
「そうね、一人で暇だったから何となくワタル君で遊ぼうと思って会いに来ただけよ」  
「暇つぶしかよ……。まあいいか。俺も暇だったしちょっと待ってろよ」  
そう言いながらワタルはワタル自身の部屋へと向かう。何だかんだ言いつつも暇だったワタルにはこれは都合の良い事だった。  
【入ったら殺す】と記された張り紙をはった扉を開けて座敷にあがる。  
愛歌もそれに続いて靴を脱ぎ、布団が敷かれたままの散らかったワタルの部屋へとあがりこんだ。  
「うわ、散らかっているから待ってて欲しかったのに……」  
「ああ、ごめんなさい。でも私そう言うのはあまり気にしないから」  
「俺が気にするって……。まあいいや、姉ちゃんはどれがいい?」  
ワタルは床を適当に片付け、あぐらを掻きながら愛歌に棚を見せた。  
こげ茶色をした棚にはトランプやチェスからTVゲームに至るまで数多くの玩具があった。  
しかし、これらは全て今の愛歌には有象無象なガラクタにしかならない。  
愛歌の目的は――  
「ワタル君、言ったはずですよ。私は暇だったからワタル君で遊ぼうと思ってきたんですよ」  
 
「へ?」  
ジリジリと愛歌はワタルに歩み寄る。  
愛歌の放つ怪しげな雰囲気に思わずうわずった声でワタルは問う。  
「ど、どういう意味だ?」  
心なしか愛歌の目が黒く変色した様に感じたワタルはあぐらを崩し立ち上がろうとした。  
しかし、愛歌はワタルのすぐ前で前かがみになりワタルの両肩に手を乗せた。  
「私がそんなに怖いですかワタル君?」  
愛歌が肩に手を置いた瞬間、ワタルがビクッと震えたので彼女はしゃがみ込みワタルの顔を覗き込んだ。  
ワタルは余りの顔の近さに顔を反らせたが、愛歌は両手でワタルの顔を抑え無理矢理その小さな唇を奪った。  
「むぅ!」  
ワタルはあまりにも急な愛歌の行動に目を見開いて驚き、激しく抵抗した。  
愛歌の背中をパンパンと何度も叩くが愛歌は容赦なくワタルの口内を楽しんでいく。  
「うぅ・・・・・・くっ」  
嫌がるワタルをしつこく唾液を流し込みながら汚していく愛歌。  
やがてワタルの目もとろけて背中を叩かなくなったところで愛歌はワタルの唇を解放した。  
「あれ……?姉ちゃん……」  
「うふふ……ワタル君、コーヒーの味がしておいしかったですよ」  
「なっ――!」  
力なく口から一筋の涎を垂らし、今も惜しげに愛歌を見つめていたワタルは赤面し口を押さえた。  
そう言えばさっきカウンターでコーヒーを飲んだのだ。  
そんなワタルを見て再び愛歌は抱きしめる。  
 
「ワタル君は可愛いわねえ。小さくて細く痩せてて、お人形さんみたいよ?」  
「ふざけるな姉ちゃん、いい加減にしろよ! 俺だって男なんだ! 馬鹿にするな……あ……」  
瞬間、ワタルは固まった。反抗的なセリフもぴたっと止む。  
愛歌は相変わらず黒い目で妖艶に笑っている。  
服の上からとは言ってもワタルの股間へと手を伸ばしたのだ。  
「なるほど、ワタル君が男の子だと言うのは理解しました。  
何故かここだけは大きくなっているみたいで」  
「うあっ……そこはやめろって!」  
「いいじゃない、三連休にお互いの両親がいない事なんて滅多にないわよ?  
 一日くらい泊まっても良いわよね?」  
「ば、馬鹿!駄目に決まってるだろ!姉ちゃん、やめろって!」  
ワタルのズボンの留め金を外して手早くパンツと一緒にずりおろす愛歌。  
するともちろん下着の中で押さえつけられていたモノが勢い良く反りあがり露になってしまう。  
「うああ……」  
ワタルは慌てて足元までさがってしまったズボンをあげようとするがすぐに愛歌が片手で上半身を押さえつけてきて不可能だった。  
「ワタル君しまうこと無いじゃないですか? こんな可愛らしいおちんちん持っているのにねえ……」  
「見……た?」  
「というより見てますよ?こんなに大きくして……すぐに気持ち良くさせてあげますよワタル君」  
「あああうわっ……ふぁっ……」  
恥ずかしさでわなわなと震えているワタルの男性器を愛歌は直に握り締め上下に扱き始める。  
ワタルは一瞬、刺激に身体を震わせたがすぐに身体を起こそうと全力で愛歌に抵抗した。  
「動かないでワタル君、他の人にこうしてもらうのは気持ち良いはずよ?一人でやるより、ね?」  
「一人でなんか……やってねえ!」  
「嘘ね、どうせ愛しの伊澄さんの事を考えながらやってるんじゃないの?」  
「し、してねえよ!もうやめろよ!変態!」  
 
その言葉に愛歌は怒ったのか眉をひそめる。そして彼女はさらにワタルに詰め寄って行く。  
「ワタル君、今ならその変態な女の子の胸をさわり放題よ?」  
「へ?」  
気がつけばお互いかなり密着している状態。  
愛歌はすこしだけ上着をずらし下着を露出させる。  
「な、なあ……!」  
「そうだ♪私の胸を赤ちゃんのようにしゃぶってくれるなら許しても良いわよ?」  
「ふ、ふざけるな……。あっ……できるわけが……」  
「私はどっちでもいいのよワタル君? ずっとこのままおしっこを我慢する小さい子みたいに悶えてるワタル君を見てても私は楽しいし……」  
「うぐ……」  
ワタルは愛歌の手コキから与えられる凄まじい快感を逃がそうと身体をくねらせていたが、<小さい子>扱いされては黙っているわけには行かなかった。  
「分かった……。言うこと聞くから手を離せよ……」  
「離せよ……?」  
「あうっ!」  
グ二ッとカリを中心に握り潰さんばかりに締め付けられたワタルは身体を大きく震わせる。  
いつの間にか愛歌の目はまた俗に言うSモードに戻っていた。  
キスした後のちょっとした恋人気分はどこへ行ったか。ワタルは再び震え出す。  
「……離してください」  
「いい感じね……。でもワタル君、私の胸を加えるのが先ですよ。噛まないようにね?」  
上着を捲り上げて、下着をずらして肩胸だけ露わにする愛歌。  
弾力性のありそうな胸に一点あるピンク色の突起は既にたっている。  
ワタルはやはり渋るので愛歌はいい加減にじれったそうだ。  
「あうっ!ああ!」  
「早く。どうせ誰も見てないんだから。二人だけの秘密……ひゃん!」  
ワタルは再び与えられた強い刺激についに決心を決めて、自から愛歌を引き寄せ肩胸に吸い付いた。  
愛歌はワタルの急な行動に一瞬だけ甘い声を出してしまったが堪える。  
「くうっ……良いわよワタル君。ふふ……」  
「んー!ふー!」  
愛歌はワタルが口を離さないようにしっかり後頭部から押さえつけ、さらに余った片手は未だに――  
「(ひ、ひでえよ!姉ちゃんの胸を吸ったら止めてくれるって言ったのにこんなあ……)」  
「うっ……ワタル君、気持ちいい?」  
言わずとも愛歌には分かっている事だった。  
ワタルの愛歌の腕を、上着の裾を握る力が強まっていき、足をジタバタとくねらせて必死に耐えているのが伺える。  
それを見て感じて愛歌も確実に満足しつつあった。  
「んっ!さすがに犯罪だから拘束とまでは行かないけど……。来た甲斐はあったわね」  
「ふう!んん――!」  
「こんにちは――!」  
「!」  
 
ガタガタとあの立て付けの悪い自動ドアが鳴り響いた。  
ワタルの爆発寸前、射精ギリギリの時の出来事である。  
思わず愛歌の動きが止まりワタルも胸から口を離す。  
「しゃ、借金執事?」  
「綾崎君……?予想外ね。ワタル君の店にお客様がくるなんて……」  
マリアが電話に出たあの電話。  
暇だったからナギに催促したあの電話が幸いした。  
良かった……。これで……。とワタルは安堵する。  
「見つかったらどうします?ワタル君?」  
「あ……」  
が助けてもらおうと思っていたワタルは甘かった。  
半裸状態で密着しているこの状況の中、ワタルは自ら声を出して助けを求める所だった。  
のどまで出かけた<助けて>を無理矢理飲み込む。  
「ワタル君――?ビデオ返しに来たんですけどいないんですか――?」  
ワタルがどうしたものかと悩んでいたその時に愛歌は別の事を閃いていた。  
「それよりもワタル君。私の胸をしゃぶるのやめちゃいましたね?」  
「へ?そ、それが……」  
「お仕置きです。声出したらどうなるか分かるわよね?我慢できるかしら?」  
「ううっ!」  
愛歌の閃きは新たなワタルの苛め方だった。ハヤテを使っての羞恥。  
限界が近づいていたワタルには酷な事だった。  
「ひゃ、やめてくれ!姉ちゃ……」  
「頑張って。綾崎君はすぐ帰るわ」  
愛歌の手の動きは最高速度ではないだろうか、ワタルを射精に導く気満々だ。  
「あっあっ、姉ちゃん。も、もう無理だから……」  
「頑張って♪」  
 ――悪魔の笑みだった――  
一瞬だけ手の動きを止めた愛歌だったが再び凄まじい速さで上下に動かす。  
そして……  
 
「うああぁぁあ――!はあ!」  
びゅるる!びゅく!びゅく!  
決壊……。  
ワタルはずるずる壁を擦れ付けて横に倒れる。  
「あー、何か拭くもの……」  
何の用意もなしにワタルが射精してしまった為にワタルの精液が直に愛歌の白い手とワタル自身の太股と下腹部に降りかかってしまった。  
愛歌は少し困ったような顔をしてワタルと自分の手を見ていた。  
 
 
「ワタル君!何ですか今の悲鳴は……」  
ガラッと襖を開けて和室に飛び込んだハヤテはまず異臭にひるんだ。  
なんて言うか鼻につんとくる青臭いにおい。  
そしてワタルが涙目であらぬ格好になっているのが目に飛び込んだ。  
「ワタル君……。これは一体?」  
「ちゃんと襖の扉に張り紙がありましたよね?」  
「へ?」  
ゴスッ!  
女の人の声を聞いたと思ってハヤテが振り返った瞬間、ハヤテは殴り倒された。  
何か白いもので手を汚し、はしたない格好で愛歌が立っていた。  
書いてあったな……。とハヤテは思い出す。  
「【入ったら殺す】と……ね?こうなったら二人まとめて弄んであげますよ」  
「これは一体?」  
「借金執事、ドンマイ……終わりだ……」  
まだまだ続く悪夢の三連休。  
 
 
『またのご来店お待ちしております』  
店を出る際、ハヤテとワタルはすっかり疲れ果てて放心状態で口にした言葉。  
「また来てくださいね、か……。ふふっ……」  
愛歌はすっかりそのつもりになっているようだった。  
「あの言葉をワタル君の本音と捉えている私って瀬川君以上の変態かも……」  
とは言っても愛歌は再び店を訪れるのは確定事項。  
彼女はビデオを一本借りたのだった。  
 
 
 
 
 
 
逆ver 〜ワタルがもしもヘタルじゃなければ〜  
 
「ワタル君、今ならその変態な女の子の胸をさわり放題よ?」  
「へ?」  
気がつけばお互いかなり密着している状態。  
愛歌はすこしだけ上着をずらし下着を露出させる。  
「な、なあ……!」  
「そうだ♪私の胸を赤ちゃんのようにしゃぶってくれるなら許しても良いわよ?」  
「わ、分かった……」  
ワタルが仕方なしに胸に吸い付いたその時だった。  
「ひゃん!」  
「……え?」  
甲高い声を愛歌が一瞬だけ漏らしたのでワタルは思わず驚いた。  
そして言われたように乳首をしゃぶりながらつんと舌先で突っついてみる。  
「ひゃっ……くぅ……」  
「(姉ちゃんって……ひょっとして感じやすいのか?)」  
愛歌はいつの間にかワタルの大きく反り立った性器からも手を離してしまっている。  
ドサッ……  
「え?」  
気がつけば逆に愛歌が床に倒されていた。  
「姉ちゃん、言っていたよな。三連休泊まってっても良いかって……」  
「あ……ちょっとワタル君どいて……」  
「姉ちゃんから誘ったんだからな?姉ちゃんのアソコも濡れてる様だし……」  
「ま、待って!こんなつもりじゃ……ひゃああ!」  
 
その後、借金執事が乱入して数時間にも及ぶ3Pになったとかならないとか……  
 
〜以下略〜  
 
 

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