「いや〜ヒナギクさんと一緒に旅行に来れて良かったですよ〜」  
「……」  
「ヒナさん?」  
「……はぁ!」  
歩が何も喋らないヒナギクを不審に思い一歩近づいた途端、ヒナギクは歩をベッドに突き倒した。  
「っ……。一体、何をするんですか!」  
「ずっと待ってたのよね。ハヤテ君には告白したくない、でもハヤテ君が私に告白する前に歩がハヤテ君に告白しちゃう。  
 それを防ぐには歩にハヤテ君を諦めてもらうしかないなあって。だから……」  
ヒナギクはその俊敏さを活かしてすかさず歩の上に覆い被さり両手を掴む。  
ヒナギクの顔が目前に迫った事で歩は一瞬とは言え、ときめいてしまう。  
「ひ、ヒナさん。変な事、考えてないかな?冷静に!」  
「大丈夫よ。え〜っと……すぐにハヤ太君よりもヒナの方が好きになるようにしてあげるから」  
(↑実は美希の入れ知恵)  
ヒナギクはトドメの台詞を棒読みで呟いた後、すぐさまパジャマ姿だった歩の釦を外しにかかり胸を触りだす。  
が……数分経っても変化無し。  
「あれ?おかしいな……」  
「ヒナさん、もう満足しましたか?」  
「え?わっ!」  
歩はすぐにヒナギクの襟を掴み自分の元へ引き寄せて転がり、逆にヒナギクの上に覆い被さった。  
「あ…れ…?歩?」  
「それ良い案ですよね、ヒナさん。でもヒナさん正直言って下手すぎるんじゃないかな?」  
「ちょ、ちょっとどきなさいよ歩!」  
「ヒナさんが持ち掛けてきた勝負ですよ?様はライバルは自分でおとせって事ですよね。  
 散々、私の胸を弄んだんですから今更やめるとか言わないですよね?」  
「ま、待って!あん!」  
歩の目はもはや笑ってはいなかった。本気でハヤテを自分の物にするために――  
思いっきり、唇を重ねそうなほど顔を近づけて一言つぶやく歩  
「夜は長いですから……ハヤテ君の事なんか忘れちゃうくらいに私に夢中にしてあげますね……」  
 
――【私の】ヒナさん――  
 

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