「同人誌を描きたい」  
 この言葉が彼に再び不幸を与えた。  
 言ったのは三千院ナギ。登校意欲は腐るほど無いのに、お金だけは有り余るほどある、畑健〇朗が生んだ最終兵器ニート。  
 そして彼女の手前に立っている彼の名前は綾崎ハヤテ。 現職の執事としての能力は一級品で、端から見ても人間性に特に非はない。  
 そんな万能ヒロインだが、唯一の欠点は、なぜか半端なく不幸を呼び寄せるところ。その欠点を象徴するかのように、彼はいま、不幸に直結しそうな出来事に直面している。  
 
「えっと、なぜ同人誌なのでしょうか?」  
「決まってる。漫画家になるためだ」  
 ナギはゼ〇の使い魔で聞いたような声を偉そうにして言った。  
「漫画家になるには、同人活動をするより、出版社の新人賞とかに応募したほうが…」  
「馬鹿者!」  
 ナギの一喝に(-_-;)顔のハヤテが驚いた。  
「新人賞は駄目だ。何度送っても同じような評価しかもらえん。これはもう情報操作を行っているとしか思えない」  
 ハヤテは懸賞とかでそう思うゆとりっているよなぁと心の中で思いつつも、決して口に出さないのは、やはり現職ゆえんのこと。  
 
「だから同人誌なのだ。私ほどの天才が同人デビューすれば、出版社のほうが頭を擦り付けて「ウチの出版社で是非!」と言ってくるに違いない!」  
 フフンと得意気に鼻を鳴らすナギ。取らぬ狸の皮算用という言葉とその意味を教えるかどうかを難しい顔で悩むハヤテ  
「どこの出版社がくるかな?やはり角〇系列かな?同人作家上がりが多いせいか、絵も荒く、背景も薄っぺらで、特にコ〇プ系なんて水で色をつける仕様の塗り絵なのかと見間違うくらいの作品がゴロゴロしている。そこに私がてこ入れとして…」  
 ナギの妄想は限りなく広がっていく。それを流し聞きながらハヤテは、マリアさん早く帰ってきてくれないかなとうっへりとした顔で立っていた。  
「そこでだハヤテ!」  
 名前を呼ばれてハヤテはおはぎの中に針を見つけたときの某少年と同じような顔で反応した。  
「協力してもらいたい」  
「イヤです」  
 ハヤテははっきりと拒絶した。  
「な…、そんな。主が困ってるのだぞ。それを助けるのが執事ではないのか!?」  
「それは…」  
 どんなに理不尽なことを言われても、主だの執事だの言われるとさすがに弱くなる。  
「なあ、お願いだハヤテ。出版社に情報操作をされ、漫画家の道が断たれそうなんだ。このままではマジカル☆デストロイが日の目を見ることなく潰えてしまう。私は生みの親として悲しいのだ」  
 正直、そんなふざけた不条理漫画など他人にとってはどうでもいいことだが、主が、その主が目に涙を溜める様子を目の当たりにすると、心が痛くなった。  
「協力してくれたら特別に報酬も出す。今は懐かしでもう手に入らない国宝、スピンアックスをあげるぞ」  
「僕はブロッケンG派なので猿の持ち物には興味がありませんね」  
「そんな…」  
 落胆するナギ。  
「ご安心ください。報酬なんかなくても協力はさせていただきます。僕は執事として、お嬢様の見方で居続けたいので」  
 にこりと微笑むハヤテ。その途端、ナギの顔は花が咲いたようにパッっと明るくなった。  
「ほ、ホントか!?」  
「はい」  
 ナギは喜び、ハヤテに近づくと目を輝かせて下から見上げた。  
「ところで僕は何をすればよいのでしょうか?」  
「ああ、それなんだけどな…バトルものが描きたいんだ。だから闘ってくれないかな?」  
「ええと、…まあいいですけど。相手はどうしましょう?いくら殴っても大丈夫そうな鉄道オタクの変態を知っていますが」  
「そんなパワーバランスがおかしそうな相手では駄目だ。やはり強い相手でないと」  
「そんな人、周りにいましたっけ?」  
「いるじゃないか。私たちの学校に」  
「?」  
 ハヤテは首を傾げる。  
「ヒナギクが」  
「!!」  
 戦慄がはしった。どてかいロボットを目の前にしても、小高い山のような学校から飛び降りたハヤテでも、その名前を出されたとき恐怖を感じざるをえなかったのは、単純に恐かったからだ。  
「い、いや、ヒナギクさんはまずいですって!」  
「協力してくれるんだろ?」  
「でもですね!」  
「…わかった。できれば使いたくなかったんだが」  
 そう言ってナギはすっと目を瞑り、そして目を開き、ハヤテを見た。いや、正確にはハヤテの目。ナギの左目には鳥のような紋様が紅い色をして浮かび上がった。  
「三千院ナギが命じる。ヒナギクを襲え!」  
紅いそれがナギの目の中で羽ばたき終えると、今度はハヤテの目が赤くなった。  
「わかりました…」  
 そう言ってハヤテはフラフラとした足取りで部屋を後にした。  
 
 桂ヒナギクは一人だけで家にいた。  
 両親は旅行で外出中、姉は学校で寄生虫。しんと静まりかえっている家の中で勉強をしていた。  
「そろそろお風呂に入ろうかしら」  
 そう言うと席を立ち、階段を下り、廊下を挟んでキッチンの隣にあるバスルームへ向かった。  
 胸のリボンを解く。着なれたセーラー服を脱ぎ、ヒナギクは必要性が感じられないブラジャー姿になった。そこに。  
「ヒナギクさん!」  
「きゃあっ!?」  
 ヒナギクはすっとんきょうな声を上げて背後に振り返る。そこには最近、気になっている学友、綾崎ハヤテがいた。  
「ど、どうしてここに…」  
 脱いだセーラー服で上半身を隠しつつ、ヒナギクは一応、有り体な言葉を口にした。  
「くっ…!」  
 途端、ハヤテは頭を抱えて床に膝をつき、そして苦しみだした。  
「だ、大丈夫!?」  
 ヒナギクが自身の上半身を気にしつつ駆け寄る。ハヤテは脂汗を垂らし、呼吸が荒くしていた。  
「一体どうしたの!?」  
 ヒナギクが問う。しかし、ハヤテは返答しない。というよりも、答えられなかった。  
「う、ぅあ…あ…」  
 ハヤテがうめく。顔から落ちる汗が床に小さな水溜まりを作っていた。この様子を見ていたヒナギクが立ち上がると、部屋を出ようとする。  
「待ってて。いま救急車を呼ぶから!」  
 ヒナギクはリビングへ行くと、電話を探したが、電話は見つからなかった。  
「あ…」  
 電話が無かった理由を思い出す。昨日、姉が酔っぱらって帰ってきては「まぶらほと扱いが違う!」と訳のわからないことを叫びながら、家の中のものを壊していったのだ。その被害の中には電話も含まれていた。  
「お姉ちゃんのバカ!」  
 苦々しく吐き捨てるとヒナギクは自身の携帯電話がある二階の自室に急いで向かった。  
 扉を開ける。携帯電話は机の上に置かれていた。ヒナギクは一安心してため息をついた。と、ヒナギクの体が急に傾く。  
「きゃあっ!」  
 
 ぼふっという音を立ててヒナギクはベッドに投げられたように横たわった。  
 ヒナギクは自分が立っていたところを見る。そこには先程まで一緒にいたハヤテが息を切らして立っていた。  
「駄目じゃない、安静にしてな――むぅっ!?」  
 ふいにヒナギクの言葉が途切れる。ヒナギクの口をハヤテが口で塞いだのだ。 ハヤテの体重も加わり、ベッドはより軋んだ音を立てた。  
「んんぅ――!」  
 ヒナギクの上にはハヤテが覆い被さるように体を重ね、ヒナギクの両手首をがっしりと掴み、唇と体はヒナギクを貪るようにぐいぐいと押しつけていた。  
「んぅ、ぅむぅん…んむっ!?」  
 ヒナギクは驚きに目を開く。ハヤテの舌がヒナギクの口内に侵入し、暴れ回ったのだ。ハヤテが口内を犯すたびにベッドがギシギシと音を立てる。両者の体もどんどん隙間を埋めてく。  
 ハヤテの舌が伸びてはヒナギクの舌に絡もうとする。ヒナギクは上下左右に逃げるが、執拗に追われ、追い付かれると器用に絡み付かれた。  
 ヒナギクは頭がぼおっとしてきた。重なりあった口の隙間からはくちゃくちゃといやらしい音が漏れる。舌が逃げることに緩慢になってきた。そこにどろっとした液体が流し込まれる。ハヤテの大量の唾液だった。  
「んんぅっ!」  
 ヒナギクはキスをされたまま人口呼吸のときのようにあごを上げられる。重力によって流し込まれたハヤテの唾液がどろりと落ち、ヒナギクは喉を鳴らして大量の唾液呑んだ。  
 唇が離れる。両者とも荒い息づかいをしていた。  
「な…なんでこんな…」  
 ヒナギクは虚ろげな視線で見上げた。そこには目を紅色をちかちかさせていてさながらブリタニア第三皇女のようなハヤテの顔があった。口が動いてる。何か言ってるのだろう。でも聞こえない。ヒナギクは口の動きで読み取った。  
「え…!?」  
 ハヤテは何度も同じように口を動かしている。…ごめんなさい、と。  
「うぁぁあ…!」  
 ハヤテが再び苦しみ始めた。  
「ハヤテくん!?」  
「に、逃げて…」  
「…え!?」  
「ぼ、僕はこんな形でぇ…ヒナギクさんを…駄目、駄目、だぁ…!」  
 ハヤテはぎゅっと目を瞑る。それは体の中の悪霊とでも何かと闘っているように見えた。  
「ねぇ、どうすれば治るの!?」  
「え…?」  
「私に何か関係があるんでしょ!?どうすれば元のハヤテくんに戻るの?」  
 尋常ではないこの状況に流されることなく、気丈に振る舞うヒナギク。木刀正宗のような超常的なことへの免疫もあるし、それに学友が、好きな人が苦しんでいるのは辛かった。  
「ヒ、ヒナギクさんっ!」  
「ああっ!」  
 
 ヒナギクは両手首をハヤテの左手一本で掴まれ、ブラジャーを歯で引きちぎられる。  
「あ……」  
 ヒナギクは隠すものなく、上半身を外気にさらした。胸の隆起はほとんどない。動悸に比例して胸が上下する。蛍光灯が滴る汗を光らせて、やけにいやらしく見える。  
「あっ、いやぁっ、だめっ!」  
 ハヤテは口と右手で両の乳房を攻める。隆起はほとんどない。だが、柔らかさは確かに感じる。  
「あぁっ!」  
 ヒナギクが一際高い声を上げた。固くなった乳首を転がされ始めた。  
「ぁっ、だめ、だめぇ…」  
 よほど感度がいいらしく、指先と舌で強く転がすたびにヒナギクは体をよじって逃げようとする。だがハヤテは構わず乳房を攻め続ける。  
 どれくらいそうしていたのかは分からないが、ハヤテが攻めるのを止めて、馬乗りになりつつヒナギクを見下ろしたときには、ヒナギクは力が入らず体をビクビクさせて荒い息づかいをしていた。  
 ハヤテは体をヒナギクの下肢に移動させる。黒いニーソックスが足を隠している。ハヤテはニーソックスを乱暴に破ると、すらりと伸びた足が出てきた。ハヤテ傷ひとつない足に舌を這わす。するとヒナギクが反応する。  
「あぁっ…」  
 ふくらはぎから膝、膝裏、そして太もも。ここは他と比べて丹念に舐め上げた。そしてハヤテの頭と舌は徐々に上にのぼっていく。  
「んんっ!!」  
 ヒナギクが体を震わせた。スパッツごしに分かる。ヒナギクの秘部にハヤテの顔が密着しているのだ。  
「あっあぁっ、あっぁ…」  
 ハヤテが激しく口でねぶる。ハヤテの唾液でいやらしく光るヒナギクの足が反射的に股を閉める。感じるたびに腰を動かすが、ハヤテに秘部をくわえられていて、まったく動かない。  
「ほ、ホントに、だめぇ、だめぇ!!」  
 ヒナギクがハヤテの頭を上から押すが、まったく力が入らない。そのため、ハヤテの攻めは激しさを増すばかり。そして…。  
ビクッ、ビクッビク…。  
「あぁ…」  
 ヒナギクは絶頂をむかえてしまった。  
 ヒナギクは目を瞑り、顔を横に向け、顔を真っ赤にして目に涙を溜めていた。 ハヤテはヒナギクの体を転がし、仰向けからうつ伏せの体勢にする。  
「ひいっ!?」  
 ヒナギクは顔を強張らせる。スパッツとパンツを膝までずらされ、さらけ出された秘部にはいやに熱を持った固いものを擦り付けられていたのだ。  
 
「そっ、それはだめぇ!」  
 先のことが頭に浮かび、声を上げるヒナギク。だがその声が聞き入れられることはなかった。  
 ぐちゅり…。  
「ひぅっ!?」  
 秘部の先に異常な熱さを感じる。それが何かは容易に想像がついた。ヒナギクは本能的に逃げようとした。だが、ハヤテに腰をがっしりと掴まれているため、逃げることはできない。  
 ずちゅっ!  
「ひぁああっ!?」  
 ハヤテの掌に力が込められたのを感じた刹那、ヒナギクの体は熱い肉棒で貫かれた。気が飛びそうになった。だがそれは痛みというより、絶頂を向かえたばかりのところに新たな刺激が加わったためだった。  
 ずぬぬ…ずちゅっ!  
「あぁっ!!」  
 ハヤテが膣の入口まで肉棒を引き、そしてヒナギクの中に激しく打ち付け、抵抗しようと必死に上半身を起こそうとしていたヒナギクの肩ががくっと下がった。  
「あっ!、ハヤテく…んっ!、もぅやめ…ぅっ!」  
 ヒナギクの中を蹂躙するハヤテのストロークが早くなる。そのため、ヒナギクの声は途切れ途切れになり、ちゃんとした言葉にはならない。  
 自分のお腹の中で熱く脈打つ汚ならしい男の肉棒。それが何度も何度も膣を行き来する。ヒナギクはただ耐えるしかなかった。  
「ヒナ、ギクさん…」  
「あっ、…え?、あぅぅっ!」  
「ほ…とに、ごめんなさい…で、でもこんな形だけど…僕はぁ…!」  
 ハヤテが何かを言っている。だが、その間も子宮に肉棒を打ち付けられていたため、よく聞こえない。  
 ハヤテがヒナギクの腰から手を離す。しかし、解放するのかといったら、そうではなく、ヒナギクの体を包み込むように後ろから覆い被さった。  
 
 いつの間に脱いだのか、ハヤテの上半身は裸だった。肌と肌が密着する。加えて、結合部分もより。  
「ヒ、ヒナギクさん…僕は…」  
「え…?」  
 ヒナギクは耳元で呟かれて、ようやくはっきりと聞こえた。  
「僕は、ヒナギクさんのことが…好きです!」  
「!?」  
 はっきりと聞こえた。好きな人が言ったのだ。「私のことが好き」だと。思考が停止する。絶頂をむかえ、いまハヤテのたぎった肉棒をくわえこんでいる秘部よりも、心臓のほうがはるか熱くなってきているのがわかり。  
 交際もしていないのに、処女を奪ってから好きだと告白する。順序が滅茶苦茶だ。それでも、やっぱり嬉しかった。この気持ちは部活を頑張っても、優秀な生徒を振る舞っていても得られない、その人しか持ってないものなのだから。  
「で、でも、こんなの間違ってる。それに―」  
 約束したのだ。彼女、はむ☆すたの恋を応援すると。好きになることは百歩譲ってもよしとしよう。しかし、体と体の繋がり、セックスは明らかな背徳だ。  
 ヒナギクは友情に厚く、それでいて芯もしっかりしている。その辺の感情が噛み合えば、彼女の力はより強く発揮する。  
 ヒナギクは力を振り絞ってハヤテから逃げようとする。散々肉棒で陵辱されつつも、その華奢な体で背中に覆い被さっている男一人を担ぎ上げた。だが。  
「うぁっぅ!!」  
 ヒナギクの体がベッドに沈む。ハヤテに一番の強さで感度の良い部分を抉られ、子宮を打たれたためだ。どんなに意思が強かろうが、弱い部分は弱い部分でしかないのだ。  
「ごめんなさぃ!…でも、好きなんですっ!好きなんです、ヒナギクさんっ!」  
「うぐぅっ、うぅっ、あぅっ!」  
 ハヤテはヒナギクのお尻を鷲掴みにして激しく腰を打ち付ける。そのたびにパンパンッと肌と肌がぶつかり合う音が部屋に響く。  
 ぐちゅり、ぐちゅぅ、ぐちゅ、ぐっちゅ…。  
 結合部分からいやらしい音が漏れる。愛液がベッドにシミをつくり、残りはヒナギクのお腹を伝ってへそまで垂れていく。  
「だ…出します。出して、いいですよね…?」  
 言われてヒナギクは目を大きく開いた。出す?それはもしかして――。  
「な、中は…膣はだめぇ!!」  
「ヒナギクさぁんっ!」  
「だめ、だめぇぇぇぇっ!!」  
 びくっ、びくっ!!  
 ハヤテはヒナギクの中で絶頂をむかえた。肉棒は脈打ち、たぎった精を先っぽから吐き出す。ヒナギクの膣から精が出ないよう、ヒナギクのお尻を痛々しいほどにがっちり掴んでは、隙間なく密着させた。  
「あぁ…」  
 自分の中でハヤテが脈打ってるのがはっきりと分かる。そして、肉棒では犯されなかった子宮が熱くドロドロした精で満ちていくのが分かる。  
 全て出し終えるとハヤテはヒナギクの中から肉棒を抜くと、ヒナギクと重なるように糸切れた。  
「な、なんでこんなことに…」  
 一部始終をこっそり見ていたナギが唖然とした表情で呟いた。静かにドアを閉め、逃げるようにヒナギクの家から出ていった。  
「なんで、なんで…あ、もしかして…」  
 ナギは数時間前のことを思い出す。ギアスをハヤテにかけたとき、確かに言った。「ヒナギクを襲え」と。  
「そっちの襲えじゃないのに…」  
 だが、過ぎてしまっては過失でしかない。しかし、幸いなことに、ギアスをかけた対象者の、そのときの前後の記憶は忘れ去られる。ということは、黙っていれば、過失にはならない。ナギは逃げた。それはもう、ボルト並の速さで。  
 
 
上記の出来事から1ヶ月ほど経ったある日。ハヤテは学校裏にいた。というのも呼び出されたのだ。  
 彼を呼び出したのは生徒会長、桂ヒナギク。ハヤテは滝のように冷や汗をかいていた。  
 ギアスがかけられてヒナギクを犯した記憶が曖昧とはいえ、朝起きたらヒナギクが自分の横で裸で寝ていれば、気まずくもなる。  
 くわえて、その日の朝に、ヒナギクが顔を真っ赤にしてハヤテに犯されたことを赤裸々に語り、泣き崩れられたのだ。どう考えても今日、殺されるのだろう。  
「ハヤテくん」  
 名前を呼ばれ、ハヤテはばっと振り向く。そこには自分を呼び出した本人、ヒナギクがいた。  
「ハヤテくん、あのね…」  
「すいませんでした!」  
 ヒナギクの姿を見るなりハヤテは土下座をした。  
「あのときは本当に気がふれてて…本当にすいませんでした!」  
 ハヤテは目を瞑って頭を下げているため、ヒナギクの表情はわからない。しばしの間が空く。この静寂でハヤテは心臓がおかしくなりそうだった。  
「ねえ、ハヤテくん」  
 声が近くなったのを感じた。ヒナギクが自分の手前で屈んだのだろう。  
「な、なんでしょうか?」  
 ハヤテは以前、土下座をしたままの体勢で口を開く。  
「私のこと、好き?」  
「え…?」  
「答えて。私のこと、好き?」  
 何かを試されているのだろうか?はたまた知らぬ間にスクイズを起動してしまったのだろうか。だが、そんなことよりも、ハヤテの本心は、ヒナギクを襲ったときと微塵も変わっていない。  
「す、好きです!」  
 ハヤテは覚悟を決め、顔を上げる。だが、垂れ下がるピンク色の前髪でヒナギクの表情はわからない。  
「本当に?」  
 ヒナギクの口だけが動く。  
「本気です!一緒に映画を見に行ったときから気になっていて…」  
「本当に本当?」  
「本当に本当です!」  
「じゃあ産んでもいいかな?」  
「え…?」  
「私のお腹に、ハヤテくんの子供がいるんだ――」  
 
 
 

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