一般に夏に生まれた人は暑さに強く寒さに弱くて
冬に生まれた人はその逆である。
……とまあ小さい頃、僕はそう聞いたのだが
じゃあ、春や秋に生まれた人って、どっちに強く弱いんだろうって
詩人ではないが1年という歳月に組み込まれた四季はどれも趣があり素敵だと思う
そして、彼女に抱く思慕の情もまた年中普遍である。
タイトル「ゆめにっき」
場所は僕の部屋。
季節は冬の真っ只中で、部屋の嵌め込み式の窓ガラスが水滴で濡れていて
窓の向こうには深々と雪が降り注いでいた
更にもう少し奥の方に目をむけると、木々の枝が白銀色に染めている
風はやや強く時々、空気を切るような音が何度か聞こえた。
本格的な冬に入る前にお嬢さまから頂いた
こたつに体を更に埋め、首から上を除いては全身にほどよい熱気が感じられる
そして、等身大の抱き枕……じゃなくて、隣で一緒に横たわっている
好きな女の子を背後から起こさないように先ほどよりもやや強く抱きしめる
……マリアさん寝ちゃったのかな?
そっと彼女の温もりを感じながら
ひょい、と身を乗り出して寝ているマリアさんの横顔を眺めるが瞼が閉じて
やはり規則正しい寝言をたてながら夢の中に溶け込んでいた
うーん、我ながら彼……彼氏として言うのもなんだけど
やっぱり可愛いよなぁ……そのまま飽きるまで眺めていたいが
こんなところで寝てしまっては風邪を引いてしまう
仕事にも影響が出るといけないから
とりあえずマリアさんを起こさないと。
「マリアさん……こたつの中で寝たら風邪を引いちゃいますよ」
ポツリと耳元で小さな声で囁いてみるがやはり起きない
うーん、困りましたねぇ……仕方が無い
起きないマリアさんが悪いんですから。
そうやって、変に自己肯定をすると
僕はマリアさんの形の良い耳に顔を近づける
付き合ってそれなりの日数が経ち
常々機会を窺っていては実行しようと考えていたが
これをやるのは初めてだ。
一応、既に身体を何度も交わっているけど
やはり緊張するものは緊張する。
胸に手を当てながら数回深呼吸をすると意を決し
マリアさんの耳を歯を使わずに唇だけで甘噛みをして彼女の反応を確かめる。
まずはそっと起こさないように…
「んっ…」
彼女の細い体がピクリと反応する…が、やはり起きる気配はない
仕方ないですね…
僕は悪戯に近い好奇心を抑えられなく
今度は歯を使い耳を口全体を使って愛撫する。
どこまで強くしたら良いのか、弱くして良いのか
微妙な力加減に適度に配慮しつつ、彼女の反応を観察しながら開始する
「ん…ふっ……」
しばらく続けてみたが
多少、息を漏らすだけで特に先ほどと変わりが無い
僕は目覚めないマリアさんに多少の苛立ちを感じてしまい
耳を愛撫し続けると
抱きしめている腕に思わず力を入れてしまう。
「…っあっ!?」
口を漏らした時には既に遅かった
マリアさんが首だけこちらを向け
半分は眠気眼気味に、半分はやや不快…ジト目…と言ったところでしょうか?
僕の事を見据えていました。
「あ…は…はは……おはようございます、マリア…さん」
何事も無かったように営業スマイルをしてみる
しかし、抱きしめたまま笑顔というのはいかがなものだろうか
それにおはようございますって、今は深夜なのに何がしたいんだろうか…僕は……
マリアさん、突然起こされて怒っているだろうな…っっ!?
突然、目の前にマリアさんが圧し掛かり唇を奪われ
マリアさんの舌が僕の口内に侵入し好き勝手に暴れる
「うっ…ふっ!……んっんん!」
突然の出来事に驚いて
なんとか抵抗を試みようとするが
この狭いこたつの中、マリアさんと僕が縦に
二人分重なっているのだから、身動きはほぼとれなかった
それに下手に僕が無理に抵抗をするとマリアさんを傷つけるかもしれない
なんとか首だけ動かして逃れようとするが
マリアさんは器用に僕の動きに合わせて逃がしてはくれない
「くっ……はぁ…んっん……!」
たっぷりと数分間
僕は成す術もなくマリアさんに口内を犯され続けた
部屋は二人っきりで、助けを呼ぼうにも呼べるはずもなく…
……というかこの状況で助けをっ!
「やっ…はぁ!……あっあ!………あ…………マリ…ア……さん?」
ひゅるん……とやっと開放されました
目の前には顔がうっすらと上気した好きな人が僕の頬を優しく撫でてくれます
顔は艶かかり少し呆けた表情をして僕の事を見つめ口を開きます
「今度……」
ややくぐもった声から発せられるその声は
僕を一層不安にさせてくれます
今度って…次同じようなことをしたら許さないということでしょうか?
流石に悪いことをしたと思いました
誰だって睡眠の邪魔をされたら不快でしょう…
いくら相手が好きな人だからといって、調子に乗りすぎてしまいました……
「ハヤテくんっ!」
「はっはい?!」
しゅん、とネガティブな方向に考えている僕に
マリアさんの声が僕の耳元に届きます。
やはり…怒られ……
「今度は……私の番ですからね?」
―――ニッコリとその言葉を聞くと
先ほどのマイナス思考は消え、そっと彼女を優しく
抱きしめてあげました。