とある昼下がり。  
 晴れきった空は高く、遠くを羽ばたく雀の鳴き声と、風に揺れる草木が擦れあう音だけが  
綾崎ハヤテの耳を頼りなく満たす。  
 ここは三千院家の庭にある池――と言っても広さが一般の規格外であるこの屋敷には池  
などいくつもあるが、やや屋敷から離れた池とだけ記述しておく――のほとり。  
 ハヤテはその草むらにごろりと寝転がり、流れる雲でも追おうかと思ったが一つもない  
ほど快晴なのでどうしようか悩むという、これ以上ないほど無為なことをしていた。  
「ハーヤテ」  
「……咲夜さん」  
 青しかなかった景色に、屈託のない笑顔が割り込んでくる。  
 中学の帰りなのだろう、アップルグリーンのブレザーに身を包んだ咲夜がお辞儀する  
ように体を曲げて、だらけたハヤテの顔を覗き込んでいた。  
「屋敷にも寄ってきたんやけど、……またやらかしたみたいやな」  
「ええ、まあ。……ナギお嬢様は?」  
「んー? まだプリプリしとったで。マリアさんがそれとなくなだめとった」  
「ああ、やっぱり……」  
 ハヤテは深い溜息をひとつ。  
「今度は何をやらかしたんや?」  
「ええ、話すと長くてしょうもないことなんですが、あ、ほんとにしょうもないことなので  
 >>673-を押して飛ばしてもらっていいですよ、……実はですね。  
 学校から帰って、お嬢様と星の○ービィスーパーデラックスをプレイしておりまして、  
 僕はポピー○ロスJr.を操っていたのですが、運悪く暴発した爆弾がお嬢様の操るカ○  
 ビィの背中を直撃してしまったんです。静かに切れたお嬢様は負けじとボムをコピーして  
 ボスをそっちのけで僕に爆弾を投げてくるのですが、僕はそうそう当たるものではないと  
 かわします。あ、もちろんAボタン押しっぱなしで逃げたりはしてませんよ。それに対し  
 お嬢様は爆弾を持ちすぎて自爆してさらに怒りゲージ上昇、それでも僕の体力はあと一歩  
 まで削られてしまったのですが、仲間に止めを刺さんとするカー○ィの頭上にウィス○ー  
 ウッズの放ったゴルドー(ウニみたいなやつですね)が飛来して、哀れカービ○の体力は  
 ゼロになりまして、今度は僕の頭上にお嬢様の雷が落ちることになったと相成ったわけです……」  
 
「……さよか」  
「さよなんです」  
 深刻に悩むハヤテをよそに、咲夜の表情は心底どうでもいいという風にフラットだった。  
「まあそんな悩みなや。それよりも、な、ハヤテ」  
 咲夜はよっと声を出して、ハヤテのすぐ隣に腰かける。寝そべるハヤテからは、年相応の  
小さな背中が見える。  
「何ですか?」  
「や、今は、二人きりやなって思って」  
「そう、ですね」  
 そう言って、なんとなくお互いに気の無いような素振りを見せる二人。  
 ややあって、思い出したように振り返ってハヤテと目を合わせた咲夜は、そのまま身を  
ねじりハヤテのほうに身をよせる。  
 ハヤテも少し上体を起こして、咲夜の体を引き寄せる。  
   
 そして、キス。  
 心地よい柔らかさが、お互いの唇を満たす。  
 
「……えへへ、なんや何回やってもこう、くすぐったいなぁ」  
 白い歯を見せてニシシと笑う咲夜の顔がすぐ近く。  
「ですね」  
 ハヤテもはみかみながら、首筋に回した手で咲夜の後ろ髪をサラサラと撫でる。  
 日光に照らされた咲夜の髪は温かく、指の間を通り抜ける感覚がなんとも言えずくせに  
なりそうだった。その手を取って頬に添えながら、咲夜はニヤッと笑う。  
「なーんやハヤテ、欲求不満なんか?」  
「いえ、そういうわけではないんですけど、何となくこうしてると落ち着きます」  
「ふふ……、や、もうくすぐったいて」  
 二人してクスクスと笑いあう。  
 今さらだが、ハヤテと咲夜は付き合っている。どこでどうギアが噛みあいフラグが立った  
のかはまた別の話なのだが、付き合いだして早1ヶ月。することも済ませているものの、まだ  
周りには知らせず、こうしてこそこそと逢瀬を重ねていたのだった。  
 
「ハヤテ……、もーいっかい……」  
「咲夜さ……、んむ」  
 先ほどよりさらに体を前にせり出し、積極的にハヤテの唇を奪う咲夜。  
 ハヤテも負けじと、常に「上」を取りあうように唇を重ねあう。  
「ん……、ちゅ、む、んんぅ、ハヤテぇ……」  
「咲夜さ、うわ、ちょっと、んっ!」  
 咲夜は次第に体重を預け、ついにはハヤテを押し倒してしまった。それでも唇は離さない。  
「んんっ、あむ、……ふふっ」  
 十分に味わった咲夜はハヤテに馬乗りになり、ぺろりと唇を舐めると、ゆっくりと  
 Yシャツに指をかけ……  
 
「こら」  
「うおっ!?」  
 ハヤテはイカサマを見破った雀鬼のごとき素早さで咲夜の手を掴む。  
「やりおるなハヤテ……、で、この手はなんや……?」  
「それはこちらのセリフですよ……」  
 一方は逃れようと一方は放すまいと、繋がった手は先ほどのまでの温かな触れ合いとは  
裏腹にプルプル震えている。  
「はぁ。咲夜さん、その……、しようと思ったでしょ」  
「そういうムードやなかった?」  
「それ以前にですね、ここは屋外です、もうちょっとモラルというものを考えてですね」  
「出た。もう、すぐそれや。メンタルがジジむさいなあ。ハヤテくらいの年やったら、  
なんちゅーの? リビドーがやら何やらがぁ、こう、溢れ出すぅ……」  
 上を向けた手のひらをわなわなと震わせ、いかにも溢れ出しそうな感じを醸しだす。  
 そんな咲夜を見て、ハヤテはさらにため息一つ。  
「何やらってなんですか、ていうか、咲夜さんのほうがオヤジくさいですよ……」  
「うん、ウチもおもた」  
 咲夜は反省して頭をかく。  
 
「……で?」  
「なんですか?」  
「いや、三千院家の執事様におきましては、この後どないしてくれるんやろなあ思て」  
「うーん、そうですねぇ、よっ」  
「わぷっ、きゃっ!」  
 ハヤテは少し考えた素振りをしたかと思うと、不意を突くように咲夜を抱きよせ、  
そのままごろりと体を返し、  
「やむ、む、んんんっ……、えぅ、んん……」  
 咲夜の柔らかい頬を両手で優しく包みこみ、唇に激しく吸い付く。  
「む、んんっ……、ぷは、はぁ、はぁ、は、ハヤテ……」  
「まあ、咲夜さんが、どうしても、と仰るなら僭越ながら仕方なくやぶさかでもない、  
 といったところですね」  
「し、したいんなら、正直にそう言え! もう、なんでそんなウチの隙をつくような  
 ことばっかするんや……」  
「そうしたほうが、咲夜さんがかわいいからですよ」  
 耳元で低くそう囁かれると、咲夜は自分でもわかるくらいに顔を火照らせた。  
「〜〜っ」  
「ほら♪」  
「言うようになったやんか、もぅ……。じゃあウチも攻めさせてもらうで」  
「へ? っ! う、うわ、ちょっと咲夜さん!」  
「んふふ、自分もなんだかんだ言うて、めっちゃ盛り上がってるやんか、うりゃ」  
 咲夜は、上になったハヤテの股間に手を伸ばし、ピンと山状に張ったスラックスを  
すりすりと、猫の頭にするように撫でる。手のひらが通り抜けるたび、ピクッ、ピクッと  
その奥の肉棒が跳ねる。  
「さ、咲夜さ、ん、んぁ」  
「変な声出してぇ……。自分かて相当したかったんちゃうん?」  
「さ、咲夜さんだって、ほら」  
「きゃぅ! や、ちょっとハヤテ、いや、あ」  
 
 ハヤテは、ブレザーの上から咲夜の、その年齢に少し不釣合いなくらいの乳房を揉み  
しだく。厚い生地の上からでも、その柔らかさが感じられる。  
「こんなにピンと立てちゃって、ほら」  
「あ、いっ、ぅぅ、ハヤテ……」  
「どうですか、咲夜さん……?」  
「ちょ、ちょっと待って、ブラ擦れて痛い……」  
「え、あ、ああっ! すみません!」  
 ハヤテは慌てて手を放す。咲夜は苦笑しながら、胸元のしわをぱんぱんと払う。  
「やっぱ服着たままやとやりにくいな……」  
「そうですね……。でも脱ぐのはさすがに」  
「恥ずいよなぁ。じゃあ、もう、してまう?」  
「えぇ!? けど、大丈夫ですか? 僕はその、いつでもいけますけど、女の子っていう  
 のはそれなりにこう、準備というか何というかがいるのでは……」  
「まあそうなんやけどな。たぶんいけるんちゃうかな……、それに」  
「それに?」  
「あ、あんま外で長々いちゃついてんのも恥ずかしい言うか……」  
「……じゃあそんな無理してなくても」  
 
 と。今日も二人はマイペースに、二人だけの時間を過ごしていた。  
 誰にも内緒の、ちょっと後ろめたくも心地よいひと時。  
 そんな二人の様子を、池を取り囲む林の木陰に隠れて見つめる一つの人影があった。  
 
「やっ、あっ……、……ちょ、待って待ってタンマ! 痛、ちょっと痛い!」  
「ええっ!? す、すみません咲夜さん、すぐ抜きます!」  
「んんっ、そ、そーっとやで! そーっ、んっ……!」  
 
「……あらあら、綾崎君もまだまだ、ですね」  
 人影は、慌てふためく二人の様子を見てクスッと不敵に笑う。  
 この女性の正体は誰なのか? ほとんどモロバレのような気がするがここでタイトルコール。  
「……」  
 
『ハルさんは心配性 〜the Worrier Maid HAL〜』  
 
 
 その日の夜。  
 洗い物と翌朝の食事の仕込みと主人の寝つきのお付き合い(今度は対戦ゲームだったが  
さりげなく負けてあげた)を終えたハヤテは、自室で自分の時間を過ごしていた。  
 ベッドと机とテレビ以外、とくに目を引くものもない素っ気無い部屋だったが、ハヤテは  
満足していた。それに、部屋にいてもすることといえばもっぱら勉強くらいのものなので、  
このくらいシンプルな方がむしろ良い。  
 今も、明日の授業に向けての予習に励んでいる。もともと月並みの高校に通っていた身。  
普通の顔して超人クラスの知能をもった同級生についていくには、普段から知恵熱で湯が  
沸くくらいの努力をしなければならなかった。  
(xが199、yが3/2、zが−2で……、これを積分するから、A=398、Bが……)  
 ノートに数式をずらずらと書き連ねていく手の動きが、ふと止まる。398。  
「さくや……、咲夜」  
 不意に蘇る、昼間の記憶。  
(あっ、んっ、ん! ええ、ええよハヤテぇ、ウチ、気持ちえぇ、んん!)  
 普段は聞けない、喉の奥から絞り出てくるような喘ぎ声。誰も知らない、肉感的な体の  
触り心地。  
 思い返すと、顔が赤くなってあっと言う間にノートが目に入らなくなる。ハヤテは煩悩を  
振り払うように頭をぶるぶる震わせる。  
 実は、最近は授業中もこの調子だ。おかげで予習の時間が増えるわけだが、その予習の  
時間ですらこうなのだから、悪循環と言うよりドツボだった。  
(はぁ、順調に色ボケてるなあ僕……)  
 いっそ、毎日会って毎日体を交わらせれば、満足して呆けることもないのだろうか、  
なんてバカなことも考えたりする。しかし、二人きりになれる機会が限られているから  
こそ、燃え上がるものがあるというか、溜まり溜まったあれそれが発散できてよかったり  
するのかも、なんて思ったり。  
「Mなのかな……、えへへ」  
 咲夜さんも同じふうに思ってくれているかな、などと少し都合のいいことを考えながら、  
 ハヤテは勉強を再開する。  
「…………よしっ!」  
 最後の演習問題が正解であることを確かめると、ハヤテは力を込めて赤いマルをつけた。  
 
 ハヤテは椅子から立ち上がると、大きく伸びをしてそのままベッドに倒れこむ。  
 体の疲れとは裏腹に、ハヤテの顔にはよい笑顔が浮かんでいた。  
(そうだ、執事の仕事も、学校のことも、そして咲夜さんのことも!   
 どれかだけに偏っちゃいけない、全て両立させてこそ執事ってもんだ!)  
「がんばらなきゃなー!」  
 ベッドの中で両拳を突き上げて、ハヤテは大きくガッツポーズをした。  
 
「……三千院家の執事さんというのは、独りでいる時も見ていて飽きないですね」  
「うわああぁぁっ!!?」  
 突然傍らで女性の声がして、ハヤテは天敵を警戒する猫のように飛び跳ね後ずさる。  
 ベッドの隣、まるで倉庫の隅に片付けられたマネキンのようにひっそりと佇んでいたのは、  
「は、ハルさん……?」  
「こんばんわ、綾崎君」  
 華奢な体型がよく映えるタイトで可愛らしいメイド服に身を包んだ、咲夜のメイド、  
ハルだった。胸元とホワイトブリムの両端に備わったリボンを揺らしながらニッコリと  
笑顔を浮かべて会釈する。  
「って、いつの間にこの部屋に忍び込んだんですか!」  
「あ、それはですね、実は最近、咲夜さんから免許皆伝をいただきまして……」  
「……ああ、例のライセンスですか」  
 そう誰しもに易々と神出鬼没されても困るのだが。  
「……で、どうしたんですかハルさん。こんな夜遅くに」  
「ええ、実は綾崎君に大事なお話がありまして」  
 ハルは笑顔を崩さず、しかし少しトーンを落として言葉を続ける。  
「実は、咲夜さんのことなんですけど」  
「は、はい、咲夜さんですか?」  
 その名前に少し後ろめたいことがあるハヤテは、わざとらしく聞き返す。  
 
「綾崎君……、咲夜さんと付き合ってますね?」  
「……はは、何のことやら」  
「というかヤっちゃってますね?」  
「ぶーっ!!?」  
 なおも笑顔で、実に直球で突っ込んでくるハルにハヤテはたじろぐ。  
「な、な、何を仰っていらっしゃって」  
「じつは、私見ちゃったんです。今日の夕方ごろ、こちらのお庭の片隅で、咲夜さんと  
 綾崎君が、ひっそりとしっぽりと」  
「わー! わー!」  
 ハヤテは大声を出してハルの言葉の先を遮る。  
 まずい。咲夜と付き合っていることは、もうこの際バレても構わない。しかし、彼女の  
清純を奪ったなどと、しかも愛沢家の側近のものに知られたとなってはハヤテの今後の  
窮達に関わる。  
「えーと、何かの見間違いじゃないですかね? 僕はささ咲夜さんと為替市場の動向に  
 ついて熱い議論を交わしていただけで」  
「ヤりましたね?」  
「ほら、あれですよ! 草の影がこう、か○し座の影絵の如き奇跡的芸術的な折り重なりを  
見せたとか」  
「ヤりましたね?」  
「あとはほら、僕と咲夜さんのドッペルゲンガーさんが同時多発的に」  
「ヤりましたね?」  
「ヤりました……」  
 ごまかしなど効くはずもなく、ハヤテは弱々しく負けを認めた。  
「いや、しかしですね! 僭越ながら、咲夜さんとは真剣な気持ちでお付き合いさせて  
 頂いていまして、その、本日のような不健全な行為も、道徳的にも法律的にも認められる  
 べき行為では無いとわかっていますが、けして刹那的な色欲だけで行なったものではなく」  
「言い訳なら結構です」  
「はい……」  
 ぴしゃりと言い放たれ、ベッドの上でしゅんとうなだれるハヤテ。  
「それに、私が今日こちらにお邪魔したのは、別にお二人のお付き合いにとやかく言うため  
 ではありませんよ?」  
「へ?」  
 
「私は、咲夜さんが誰と付き合おうが誰とキスしようが誰と交わろうが、それが咲夜さんの  
 決めたことならば何も口出しするつもりはありません」  
「ま、交わ……」  
「しかしですね、ただ一つ。どうしても認めがたいことがありまして」  
「はい……」  
 真剣に変わったハルの表情に、ハヤテは唇をきゅっと結ぶ。  
「ハヤテさん……、あなたは……、あなたのセックスはまるでなってません!!」  
「は、はい?」  
 全く予想外の一言が飛び出して、呆気に取られるハヤテ。  
「なんですか今日のお二人のまぐあいは? いくら青空の下、脱ぎにくい&脱がしにくい  
 制服姿だったとはいえ、ろくな前戯もなしに即挿入など! 綾崎君はお若いです。  
 焦り、逸る気持ちもわかりますが、執事である前に一人の紳士として、もっと女性は  
 優しく扱わなければなりません!」  
「いや、早くしてしまおうと言い出したのは咲夜さんのほ」  
「お屋敷に帰って来られたときのお嬢様のお姿と言ったら……。内股でもじもじしながら  
 『な、なんでもあらへんよ? ちょっと階段で転んで女性のデリケートな部分の悩みが  
 いろいろな?』と聞いてもいないのに言い訳なさって、ああ、なんていじらしい……」  
 人の話に聞く耳を持たないハルの表情には、何故か恍惚としたものが浮かんでいるが、  
ハヤテはとりあえず気にしないことにする。   
「というかですね、今日のアレはその、たまたまというか、いつもは決してそんなことは  
 ないというか、詳しくは過去ログ参照というか」  
「『今日は』? 『たまたま』? 執事のお仕事は日によって質が変わるのですか? いつ  
如何なるときも完璧を志してこそ、一流の名家に仕える執事としての矜持が保たれるという  
ものではないのですか?」  
「そ、それは」  
 いきなり正論でまくし立てられ、ハヤテはぐうの音も出ない。  
「それに、先ほどだって……」  
「へ?」  
「『咲夜、Mなのかな……、えへへ。よしっ、がんばらなきゃなー!』 ……いったい何を  
 頑張る気ですか何を!!」  
「独り言を器用につなげないでくださいっ!」  
 
 ハヤテのツッコミもスルーし、ハルはなおもマイペースに続ける。  
「とにかく、綾崎君は女の子の使い方がまるでなっていません。そんな方にお嬢様を任せる  
 のは、咲夜さん専属のメイドとして忍びない……。ですから」  
 ハルは、瞳の奥に妖しげな色を灯して、ゆっくりとベッドの上のハヤテに歩み寄る。  
 胸元のブローチを外し、タイをしゅるりと解きながら。  
「は、ハルさん……?」  
 訝しむハヤテのそこはかとない予感は、次の瞬間に的中した。  
 ハルはおもむろにブラウスのボタンを外すと、それが自然な流れであるかのようにバッと  
乳房をさらけ出した。  
「ちょ、なっ……!?」  
 チークのような色合いの乳首、乳白色の胸肌、少し小ぶりだがしっかりと丸みを帯びた  
乳房。はだけたブラウスと腰元をきゅっと結んだエプロンに囲まれて、そこだけぼんやりと  
光を帯びているように感じられた。  
「は、ハルさん何してるんですか、し、しまって……!」  
 ハヤテは必死に目を逸らそうとするが、その端正な造形にちらちらと視線を奪われてしまう。  
 ハルは靴を適当に脱ぎ散らかしてベッドに登ると、今度は這うようにしてハヤテに近づいて  
くる。  
 下を向いた乳房の微かな揺れさえ確認できるほどの距離、そして、少し紅潮したハルの  
扇情的な表情が目の前に迫ってきたかと思うと、  
 
「私の体を好きにしていいですから、女性の体の扱い方、ちゃんと覚えてください」  
 
 温かな息を吹きかけながら、心臓を撫でるような声でそんなことを言ってのけた。  
「……っ、ちょ、ハルさん落ち着いてください! どうしてそうなるんですか!」  
 あまりに常軌を逸したセリフに頭の中がくらくらしつつも、ハヤテは必死にハルの接近を  
拒む。  
「言ったとおりです。ご心配なく、咲夜さんには決して漏らしませんから……」  
「漏らす漏らさないじゃなくてですね!」  
「それとも……、私の肢体は、そういう気持ちが沸き起こらないくらい、魅力に欠けて  
いますでしょうか?」  
「そ、そういう問題でも……、う」  
 
 反論しようとしたハヤテは、ばっちりと見てしまった。  
 もはや手を伸ばすまでもなく、少し首を前にせり出せば口が届く距離にハルの乳房が  
迫っていた。いつの間にかハルの腕が首の後ろに回され、跨がれたハヤテはすでに  
逃げられない状態だった。  
 電灯に影を落とされ、くっきりと形のわかる乳房。ハルの動きに合わせてぷるんと震え、  
触れなくても柔らかいとわかる。  
 ………………咲夜よりは、  
「いま、咲夜さんよりも少し小さいかな、と思いましたね?」  
「お、思ってません!」  
「思いましたね?」  
「思ってません!」  
「思いましたね?」  
「思いました……」  
 もはや完全にペースを掌握されていた。  
「まったく……、殿方はやっぱり、大きい方が好きなんでしょうか。綾崎君は色んな意味で  
 逆の派閥の方だと思っていたのですが」  
「その色んな意味の部分を詳しく聞きだしたいところではありますが……。決して、そんな  
 ことはないです。ハルさんの、その……、スタイルも、すごく、魅力的で……」  
「……そう思うのでしたら」  
「え?」  
 少しトーンの落ちたその声に、ハヤテは顔を上げる。  
 ハルの表情は、いつも通りの涼しげな笑顔に見えた。が、少し震える唇と上気した頬から  
それは今にも崩れてしまいそうだった。  
「あまり私に、恥をかかせないでください……」  
 いつもの飄々とした声色とは違った、必死の色が混じった声だった。  
「〜〜っ、じゃあ、本当に、触るだけですよハルさん……!」  
「え、んんっ……!」  
 ハルの様子と、なによりその体の魅力に耐えかね、ハヤテは目の前の双眸を手の平で  
きゅっと包み込んだ。  
 ふよふよとした、まるで杏仁豆腐のような感触の乳房は、少しひんやりとしていた。  
 くすぐったさを堪えるような顔をして、ハルは言う。  
「ダメですよ、これは『勉強』なんですから。ちゃんと私の胸……、愛撫していただか  
 ないと」  
 
「……わかりました」  
「ひゃっ! あ、そ、そうです、んっ、そっと、優しく……あ」  
 若干諦めも入ったのか、言われるがままにハヤテはハルの胸をそっと揉む。  
 親指と、それ以外の指でこねる様にして、上から下へ。乳首が緩慢な楕円運動を描く。  
「ハルさん、どうですか、僕のその……、触り方」  
「んっ、んんっ、わ、悪くないです、んぁっ……」  
 答える声に、微かな嗚咽が混じる。ツンとした釣り目が、少し心もとなく下がっていた。  
「そうですか、じゃあ……」  
「っ、ふああっ、あっ」  
 ハヤテは、ぷっくりと立っている乳首を人差し指でくりくりといじると、そのまま  
きゅっと押し込んでみた。  
 ぷるんと反発する乳首を、今度はつまんでそのまま乳房と一緒に揉みしだく。  
「きゃぅ! あっ、だめ、綾崎君、んっ! つよい、です! そんなことしたら、咲夜さん  
 痛がって……」  
「そうですか? 咲夜さんはこうするとすごく喜んでくれますよ?」  
「ふぇ……、あ、やん……!」  
 左手を離し、腰を少し抱き寄せると、ハヤテはハルの乳首を口に含んだ。  
 くりくりした先端に、ちゅっ、ちゅっと丹念に吸い付く。  
「ふぁ、あっ、だ、ダメ、んんっ!」  
「どうです……、これなら、痛くないですよね、んむ」  
 口の動きは休めず、上目でハルの様子を伺いながら尋ねる。  
 外れたシャツの襟の向こう、ハルは切なそうにきゅっと目を閉じていた。  
「い、いい、いいですから……、もう……、んあぅ!」  
「こっちのお胸もしておかないと、ですね」  
「へ、そ、そんな、もう十分で、ひぁ、あん!」  
 左手で腰を支えたまま、今度は右の胸を口に加える。ついでに、右手で自分の唾液で  
濡れた乳首を、指を滑らせるようにして弄った。  
「あっ、ダメ、です、綾崎君……、んんっ、痛くないけど、あ、良すぎて、だ、んああ!」  
 刺激に耐え切れずに仰け反るハルをしっかり押さえ、ハヤテは行為を続ける。  
 ハルは、はっ、あっ、と激しい息遣いを繰り返し、ハヤテに身を預けるだけになっていた。  
 
「……どうですか、ハルさん。僕の女性の扱い方、やっぱりダメでしょうか?」  
「……」  
 ハヤテにじっくり胸を弄りつくされた後、ハルはハヤテを解放した。いや、解放された  
のはどちらかというとハルのほうだったが。  
 乱れた呼吸と火照った頬っぺたを抑えながら、ハルは切れ長の瞳でキッとハヤテを  
睨む。すっかり感じさせられまくったハルにとっては皮肉にも取れそうな言葉だったが、  
ハヤテは本気でハルの評価を心配しているようだった。  
「……と、とても良かったと思いますわ」  
「あ……、そうですか。よかった〜。じゃあ咲夜さんとの交際は認めて」  
「駄目です」  
「……へ?」  
「む、胸の愛撫の仕方が良かったからといって、セックス全部が上手だとは言えません  
 から!」  
「いや、そう言われましても……」  
「そ、それにですね……」  
「は、はい」  
「あれだけ私の体を触ったり舐めたりしておいて、その……、本番をしたくはならないん  
 ですか?」  
 肌けた胸を今なお隠そうともせず、ずいと迫りながらハヤテに問いただすハル。  
 ……いや、触ったり舐めたりしたのはあなたに言われたからでして、とは言えず、  
 頬をかきながらハヤテは答える。  
「いえ、その、気分というか体の一部というかはものすごく盛り上がってますけど、まあ  
 今晩はもう一回水風呂にでも入って落ち着いてから寝ようかと」  
「どこまで欲望に不忠実な人間なんですか綾崎君は……」  
 溜息をついてうな垂れたハルは、その視線の先に見つけたものに口元を歪ませる。  
「は、ハルさん?」  
「ほら、こんなに窮屈そうにしてるじゃないですか」  
「う、あう!」  
 ぴんと屹立したペニスをパジャマの上からくりくりといじられ、ハヤテは思わず身悶える。  
 
「……先っぽ、濡れてますね。パジャマ湿ってますよ」  
「ええっ!? うわ、ちょっとダメです! 触っちゃ……」  
「駄目ですよ、我慢しては……」  
 ハヤテが抵抗する間もなく、ハルはパジャマの上裾を引っ張り、引き摺り下ろした。  
 すっかりがちがちに膨張したペニスが露わになる。透明でべとべとしたカウパーに濡れ、  
時おりぴくんと跳ねては臨戦状態であることを示しているようだった。  
「〜〜っ、あ、あんまり見ないでください……。……ハルさん?」  
 羞恥に目を逸らそうとしたハヤテだが、呆けた様子のハルに思わず声をかける。  
「…………」  
「あの……、もしかしてご覧になるの初めてだったりします?」  
「…………け」  
「け?」  
「決してそのようなことはございません! 卑しくも愛沢家のメイドたるもの、殿方の  
 怒張したペニスの10本や20本……!」  
 顔を真っ赤にして声高に反論するハル。しかし、動揺しているのは目に明らかだった。  
「いや、そんな数をこなされていても困りますが……、……お家は関係ありますかね?」  
「い、いいんです! とにかく、こんな状態では落ち着いて勉強していただけません!」  
「勉強……だったんですか?」  
「もちろんです。ですから、少し鎮めさせていただきます。あー…」  
「ちょ……! そこまでしていただかなくても……!」  
 いきなりモノを咥えようとしたハルをハヤテは止めようとする。……しかし、ハルは  
はたと逡巡して口を閉じ、眉を潜めている。  
「えっと、これ、ちゃんと口に入るんでしょうか……?」  
「さ、さあ、自分ではやったことないのでなんとも……」  
 ちなみに咲夜にもまだそこまでしてもらったことはなかった。  
「……やっぱりハルさんも、あんまりこういう経験したことないんじゃ」  
「あむ」  
「うわっ!?」  
 ナメられてたまるかとばかりに、ハルは勢いをつけてハヤテのペニスに咥えつく。  
「は、ハルさ……っ!」  
「んむ……、んっ、んっ、ん……」」  
 指で根元を支えながら、頭を前後に動かして唇を滑らせるハル。単純な運動だが、  
亀頭で口の中がいっぱいになっているので、それだけで必死だった。  
 
 それでも、ハヤテにとっては十分すぎるほどの快感だった。ハルの口内は熱く、  
時おり所在無げに動く舌が亀頭の裏を不規則に撫でるのがたまらなかった。  
「む……、ふ……、ふぁ、だれ……」  
「いぅ……っ!」  
 口の中に溜まった唾液が漏れそうになり、慌ててハルは口をすぼめて飲み込んだ。  
たまたまの行為だったが、緩慢な刺激からいきなり強い圧力をかけられたハヤテは  
たまったものではなかった。  
「……うふ、女の子みたいな声出すんですね。そんなに気持ちいいですか、私のお口……、  
 あむ」  
 妖艶な笑いを浮かべると、ハルは調子付いて、再度ハヤテのペニスを咥える。  
 コツを掴んできたようで、今度は棒つきキャンデーを舐めるように、亀頭を何回も  
唇で刺激した。  
 ホワイトブリムと両脇に結ばれたリボンのついた頭が眼下で往復するたび、ハヤテの  
下腹部で否が応にも快感が高まっていく。  
「うあ、だ、ダメですハルさん、で、出ちゃいます……!」  
「んちゅ、精液、ですか? あむ、……ちゅ、出してください、受け止めますから……、  
 む、んっ、んっ」  
「そんな、うぁぁ……!」  
 少し運動を変え、先端を咥えたまま、カリに唇をあて丹念に刺激するように前後に短く  
頭を動かすハル。竿の根元からぎゅんぎゅん伝わってくる刺激が、絶頂へと近づいていく。  
「だ、駄目です、ううあ!」  
「っ! ん、んーっ、んん……」  
 身悶えるように射精したハヤテは、思わず胸元のハルの頭を抱え込む。温かな髪から、  
少しの汗とシトラス系のシャンプーの匂いがふわりと香った。  
 ハヤテが大量に放った精液をなんとか全て口の中に収めたハルは、ペニスを咥えたまま  
あふれ出さないようまず一回飲み込み、表面に残らないようゆっくり口を離すと、唇を  
手で隠すようにしてもう一度コクッと口の中のものを飲み込んだ。  
 それでもまだからみついたものが取れないのか、その後も何回も喉を鳴らしていた。  
「す、すいません、だいじょうぶですか……?」  
「……すごい匂いです……」  
「申し訳ないです……」  
 
「……まあいいでしょう、これで綾崎君のそこも落ち着いて……。……あの、綾崎君」  
「……あはは」  
 ハルのジト目に止まったのは、たった今射精したばかりだというのに、まだなおしっかり  
立ち上がっているハヤテのペニスだった。  
「一つ伺いますが、殿方って、そういうものなんですか?」  
「いえ、決して一般的なことではないと思います……」  
 申し訳なさげに、ハヤテはシュンと頭を垂れる。  
「……まあ、こちらとしては好都合です」  
「え?」  
 クスリと笑うと、ハルはおもむろにベッドの上で仰向けになった。  
 はだけた胸を相変わらず少しも隠そうともせず、立てた膝の向こうで白いショーツが  
丸見えになっているが意に介していないようだった。  
 とろんとした目つきで、砂糖菓子のように甘い声でハヤテに囁く。  
「さあ、お勉強の続きです。……綾崎君の好きなように、抱いてください」  
「だっ、駄目です! それは本当に! 僕は咲夜さんと付き合っていて、そんな不義理な  
 ことは……」  
「先ほども申しましたが、咲夜さんにはもちろん、他の方には一切口外いたしません。  
 それに、咲夜さんのためにこそ、ちゃんとここでセックスの仕方を学んでください」  
 まずその根本的な目的の部分からして誤解が生じているわけだが、相変わらずそういう  
物事の解決がヘタクソな執事であった。  
「それに、本当に我慢できるんですか……?」  
「う……」  
 にんまりと笑い、挑発的な瞳と目でハヤテに問うハル。少し脱げたメイド服と、その  
下に包まれたしなやかな肢体、端正な顔立ちと、そこに浮かぶイタズラ猫のような表情。  
その全てがハヤテの控えめな欲望をこっちへこっちへと誘いかけていた。  
「ああ、咲夜さんに会わす顔がない……」  
 言いつつ、寝そべるハルの上に重なるハヤテ。  
「ふふ、男の人ならそれくらいの甲斐性がないとダメですよ♪」  
「甲斐性……、って言うんですかねこれ」  
 
 顔を情けなさでいっぱいにしながら、ハヤテはハルの胸をこねるように揉みながら、  
乳首にキスをする。  
「は、あっ、んんっ、もう、そんなに、胸、好きですか、ん!」  
「ええ、可愛いですよ、ハルさんのおっぱい」  
「〜〜っ、そんな、私のなんて、咲夜さんのに比べたら……」  
 確かに、仰向けになった今の体勢では、乳房もぺたんと寝てしまって見た目にはあまり  
膨らんでいないように見えてしまうくらいだった。  
「そんなことないです。ハルさんのもすごく柔らかくて、きれいですよ」  
「……お嬢様のおっぱいがあんなに大きくなったのは、絶対綾崎君のせいです」  
「い、いや、そんなことはないと思うんですけど」  
「そうでしょうか……、ひう!」  
 いつの間にかハヤテの手は、ハルの股のほうに伸びている。  
 ミニスカートを少したくし上げ、陰部を覆うショーツに手をかける。  
「……ハルさん」  
「な、なな、何でしょう?」  
「まことに申し上げにくいんですけど……、ぐしょぐしょですね」  
「〜〜っ!」  
 くっと手で押し当てられて初めて気づく。ハルのショーツは、股布の部分がすっかり  
愛液で濡れていた。  
「脱いで、もらえますか?」  
「わ、わかりました……。ちょっと体、どけてください」  
 はい、と答えるとハヤテは身を起こし立て膝をつく。  
 ハルは身を横にして、ミニスカートをたくし上げてショーツの端に手をかける。  
「……あ、あまり見ないでもらえますか」  
「どうぞ、お構いなく」  
「私が構うんですけど……、まったく」  
 珍しく我を通したハヤテに少々呆れながら、ハルはそのままの体勢でショーツをずり  
下ろす。膝を胸元まで上げて、膝から足首へと通して、少し重たくなったショーツを  
ベッドの端におざなりに置いた。  
 
「……見すぎです、綾崎君」  
「ええっ、けして、そんなことは」  
「女の子が下着を外す姿を見て喜ぶなんて、やっぱり変態さんなんですね。咲夜さん、  
 本当にだいじょうぶかしら……」  
「だ、大丈夫ですよ! ……でしたら」  
「はい?」  
「証明してあげますよ、ちゃんと」  
「え、きゃっ!」  
 ハヤテはハルの不意をつくように、がばっとその身を抱きすくめる。  
 そのまま、ハルの首元にキス。というより、舐めるように唇をこすりつけた。舌を立て、  
側面からうなじへと曲線を描くように撫でる。  
「は、ぅぅん! だめ、そこ、くすぐった、あぁ!?」  
 ハヤテの左手は、またもハルの股間に伸びていた。今度はそこを覆うものは何もない。  
柔らかな割れ目に人差し指をあてがい、指の腹でシュッシュと擦る。  
「ああん、ん! 撫でるの、い、ああ!」  
「指、ちょっと入れますよ」  
「え、ちょっと待、んんんっ!」  
 答えを待たず、ハヤテは指をくの字に曲げて、ハルのヴァギナに進入する。  
 ハルの中は熱く、そして、  
「聞こえますかハルさん、ほら、くちゅ、くちゅって、すごく濡れてる……」  
「いや、音、立てないで、あん!」  
 くいくいと、ハヤテは指を折っては伸ばしてを繰り返す。ぴちゃぴちゃと隠微な音が  
立ち、漏れる愛液が少しずつベッドのシーツを濡らしていく。  
「これだったら、もういけると思うんですが……、どうでしょう、ハルさん?」  
「へ、ど、どうって」  
「えっと、ハルさんが教えてくださるんじゃなかったんですか? その、女性の扱い方」  
「あ、そう、ですね。もう大丈夫、だと思いますよ……」  
「……そうですか、じゃあ、挿れますよ……」  
 いぶかしみながらも、ハヤテは右手で自分のペニスを掴み、ハルの濡れそぼった陰部に  
あてがう。  
 
「? ハルさん?」  
「な、なんでもないです。続けてください……」  
 ハルは、上に重なるハヤテの体をぎゅっと抱きすくめる。肩まで伸びた髪とリボンが、  
ハヤテの側頭部をくすぐる。  
「……大丈夫ですよ、優しく、しますから」  
「え、あっ、ん、んんんぅ……!」  
 耳元で優しく囁き、ハヤテはゆっくりとペニスをハルの中に差し込んでいく。。  
 ハルの中は侵入者を拒むかのようにきつく、同時に、ペニスが溶かされそうなくらい  
熱くて柔らかかった。  
「入りましたよ、ハルさん」  
「は、んっ、はい……、じゃあ、続けて、ください……」  
「じゃあ、ゆっくりいきますね」  
 ハヤテの声は自然と優しくなる。というのも、背中に回されたハルの腕が、雑踏で親の  
手を握る子供のように、必死にぎゅっとハヤテを締め付けていたからだった。  
 宣言どおり、ハヤテはゆっくりとペニスを注挿する。亀頭の先ギリギリまで引き抜き、  
そしてまた沈めていく。ハルの膣の中に少しすぼんでいるところがあって、そこをじっ  
くりと通り抜けるとぞわりとするような快感が首筋にビリビリ響いた。  
「あ、あーっ、ん、んんっ、んー……」  
 緩慢なピストンのリズムに合わせて、ハルの口から嬌声が漏れる。  
「どうです、ハルさん、感じますか?」  
「あ、か、感じ、ます、んんっ、気持ち、いい、かも、ぅん!」  
 密着した胸が、ハルが喘ぐたびに震える。体温も上がってきたようで、少し汗ばんで  
きた。  
 ほぐれてきたハルの膣内は、最初よりもかなりスムーズにペニスが滑る。そろそろか、  
とハヤテは判断すると、  
「ハルさん、ちょっと腕、放してください。体勢を変えましょう」  
「ふぇ? あ、ちょっと」  
 繋がったまま、ハヤテはよっと身を起こす。ハルの顔はすっかり上気して、やや焦点の  
定まらない目は、涙がこぼれそうなくらい潤んでいた。  
「あ、ハルさんは寝たままで、ちょっと横向いてもらいますか?」  
「? こう、ですか?」  
 
「ありがとうございます。では、ちょっと失礼します、ね」  
「ひゃっ! ちょ、ちょっと綾崎君! あん!」  
 横向きになったハルの左足をぐっと持ち上げて開脚させ、先ほどよりも深くペニスを  
差し込む。  
「く、ああっ、だめっ、深いぃ……」  
「うわ、すごい、ハルさん、奥のほうまできゅうきゅうしてますよ」  
「い、言わないでくださ、あっ、あ!」  
 ハヤテはピストンのペースを上げる。花のように開いたミニスカートがゆらゆらと揺れる  
様がやたらと扇情的だった。  
「ハルさんの中、すごい、気持ちいいです。ハルさんは……?」  
「だめ、んんっ、だめっ、です、こんなの、あん! 乱暴で、……良すぎて、ん! さ、  
 咲夜さん、壊れちゃい、ます、んあ!」  
 せり上がってくる快感に耐えるハルの頬に、汗で湿った髪がペトリと張り付く。メイド  
服が覆う体の中で、唯一さらけ出されている胸が、小刻みに揺れる。  
「……今度、咲夜さんにもメイド服着てもらおうかな」  
「な、なにを馬鹿なことを、んんっ!」  
 ハヤテは、抱えているハルの太腿に吸い付くようにキスをする。黒いストッキング  
越しに、少しずらして柔肌に直接、何度も口付けを浴びせる。  
「ひゃ、あっ、舐めない、でぇ、あっ、ん!」  
「ハルさんの太もも、とてもおいしいですよ」  
「こ、こんな変態さんに、咲夜さんは、んあっ、預けられませ、ん……!」  
「そうですか、残念です。まあそれはそれとして、……そろそろイケそうですか?」  
「い、イくって、んあぅ!」  
 ハヤテはより強く、膣の側面を撫でるようにペニスを突き立てる。ハルの反応はわかり  
やすく、中がきゅっと締まる。  
「あ、ああ、い、イき、そう、イっちゃいそう……!」  
「僕も、もうそろそろ、来そうです、一緒に……!」  
「い、いっしょに、ん、あっ、ん、んんっ……!」  
 
「はっ、あっ、僕、もう、うぅっ!」  
「あ、だめ、私、んっ、もう……! んっ、あ、あああぁっ!!」  
 ハヤテがハルの中に精を放つのに少し遅れて、ハルが絶頂に達する。  
 ハヤテがペニスを引き抜くまで痙攣したように固まり、ずるりとペニスが抜けると、  
ベッドの上でくてんとなり、荒い呼吸を整えていた。  
「ふぅ……、どうでしょう、ハルさん。僕のその、評価は?」  
「……別の意味で咲夜さんのこの先が不安になりました」  
「えぇ!? そ、そんなぁ……」  
 しゅんとうなだれるハヤテに、ハルは寝転んだままニンマリと微笑む。  
「くすっ、でも、楽しみにしてますわ、未来の……ご主人様♪」  
 
 
 
「…………大失態だ」  
 ここは、生徒会室に繋がる連絡通路。  
 春風千桜は朝から何回も何回もその独り言を繰り返していた。  
 昨夜の痴態。思い出すつもりはないのに何度も頭をよぎり、そのたびにボッと顔が  
火のついたようになってしまうので、書記の職務も早々に切り上げ教室に向かっていた。  
 とくに、あの愛歌の目は全てを見透かしていそうでコワイ。  
(ダメだ、あの格好は色々変なスイッチが入りすぎてしまう……)  
 咲夜を大事に思う気持ちは常に変わらない。ただ、だからといってあの行動は我ながら  
如何なものだろう。  
(如何もくそも、あれじゃただの痴女じゃないか……!)  
 頭をぶるぶる振って、できるだけ昨夜のことを忘れるように努める。  
 と、そこに。  
「どうしたのだハヤテ? 朝からずっと溜息をついて」  
「いえ、ちょっと、色々猛省するべきことがありまして……、あ、千桜さん」  
(あ、綾崎君……!)  
 のほほんとした顔をして、三千院家の執事は近づいてくる。しかし、彼の顔を見ただけで  
ただでさえ火のつきそうな顔が爆発しそうになった。  
「おはようございます、千桜さん。……? どうしたんで」  
「わ、わ、私に近づかないでー!!」  
 迫るハヤテの顔に耐え切れず、千桜は爆竹を放たれた猫のように逃げ出した。  
「……ハヤテ、お前って相変わらず……」  
「いいんです、いいんですお嬢様……、きっとこれも僕の天命なんですよ……」  
 こうしてまた、ひとつの誤解が生まれることになった。  
   
 『ハルさんは心配性』 -END-  
 

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