「どうした?さっきから、ちっとも進んでおらんではないか!」
「申し訳ございません。どうやら、こちらのルートも臨時に規制されることになった様でして…」
渋滞に捕まってしまったナギの専用車の車内。
後部座席に深々と身を委ねているナギの不機嫌な声が、運転しているSPの後頭部にぶつけられる。
いかにも高級そうなコンソールにビルトイン式に装着されているカーナビの画面には、
『臨時規制』の文字と、赤く縁取られた規制区間が交互に映し出されている。
これから夜にかけて、
隣の区で花火大会が開催されるのにともなって付近の主要な道路に交通規制がかけられるのだが、
いつもなら規制がかけられるはずの無いこの道路の先が、臨時に規制されているらしい。
カーラジオの交通情報でも、その原因を『何らかの障害』としか伝えていない。
「お嬢さま、イライラしても仕方ありません。
エアコンが効いている車の中にいられるだけでも、幸せだと思わないと…」
隣に座るハヤテの言葉に、ナギは苛立たしげに白いレースのカーテンを乱暴に開けた。
陽は傾き始めている分身の、やはり、道行く人々の表情は暑さに疲れている。
「ふぅ…!」
大げさで投げ遣りなため息をついたナギが、再び座席に背中を預けようとしたその時…
「あ!あれは、ハムスターではないか?」
「…、はい、確かに西沢さんですね」
歩道の端に置かれたダストボックスの前。
短めの髪を両横で赤いゴムで束ねた少女が、
たった今食べ終わったばかりのアイスキャンディーの棒を捨てている。
それは、確かに歩だった。
ナギは、パワーウインドーのスイッチをじれったそうに押しながら、
黒いフィルムが張られたウインドウガラスが下がりきるのを待たず、窓から歩に呼びかけた。
「おーい!ハムスター!」
通行人の視線が、黒塗りの大型高級車の窓の中から外へと呼びかけている少女と、
呼びかけられている少女に、交互に注がれる。
「あっ!ナギちゃん!」
ナギは以前、ハヤテの女の子の好みが『普通の子』だと知って、『普通探し』に出かけたことがある。
その時、歩は、
街中の雑踏で右も左も分からずうろたえていたナギにいろいろと『普通』を教えてくれただけでなく、
ひどい靴擦れに難儀していたナギを家に招き、夕食を振舞い、そして泊めてまでくれたのだった。
それ以来、ナギも彼女に心を開いて、二人は『ハムスター』『ナギちゃん』と呼び合う仲になっていた。
ナギは分厚いドアをエイッと開け放ち、ニュッと腕を突き出すと、歩をヒョイヒョイと手招く。
不快な熱気と湿気と排気ガス臭さを帯びた外気が、すかさず車内に入り込み始める。
「乗れ!」
「いいの?こんな立派な車…」
「構わん。早く乗れ!せっかくの冷気が逃げるではないか!」
「ありがとー!」
後部座席に歩が這い込むように乗り込んでくる。
ナギとハヤテが、歩の座る場所を作るためにちょっとずつ反対側へと詰める。
「失礼しまーす」
歩の可愛い挨拶に、運転席のSPが丁寧に頭を下げる。
「うわー、涼しー!天国だねー!ありがとう!!」
車内に歩の元気な声が満ち、微かな汗の匂いが漂う。
「あっ!ハヤテ君…」
歩がハヤテの存在に気づき、それに気づいたナギが咳払いをしながら話題を転換する。
「で、この規制は何なのだ!丸々通り一本分余計ではないか!」
「うん、それがね…」
歩の話によると、この時刻には終了しているはずの神輿の行列が、
神輿の担ぎ方をめぐるトラブルから騒乱状態になり、
その影響で、この先の交差点の機能が麻痺しているという。
そして、カーラジオも、表現はぼかしてはあるがそれを裏書する情報を伝え始めた。
ただの自然渋滞ならいいが、
トラブル絡みとなれば、その解消にはかなりの時間がかかるだろう。
それに、時間的にも、もうそろそろ夕食やトイレの心配をしなければならない。
窓外では、薄暗くなりかけた空に、点灯したばかりの街灯の明かりが映え始めていた。
「うーむ…」
「困りましたね…」
「どうしましょうか…」
「あの…」
「ん?」
「もしよかったら、家へ来る?」
「え…?」
歩からの、いつ解消するか分からない渋滞の中にいるのは疲れるから、
渋滞が解消するまでの間、この近くの私の家でくつろいではどうか、という提案。
更に歩は、家からは花火大会の様子がとてもよく見えるし、今晩は家族は留守だとも付け加えた。
勿論、これは持ち前の親切心からの分身ではあったが、
一方で、その間ハヤテと一緒にいられるという年頃の少女らしいしたたかな計算も働いていた。
この罪の無い企みに、ナギが気づいていたかどうかは分からない。
だが、いかに日本で最高の価格を誇る高級乗用車の車内とはいっても、渋滞に巻き込まれれば、
庶民が暮らす公営アパートのほうが遥かに快適であることは明白だった。
「じゃ、場所と時間は後で電話で伝えるから、迎えに来てくれ」
運転席のSPの「はい」という返事を聞くと、ハヤテは、ドアをバスッと閉めた。
渋滞に嵌まり込んだ車を捨てて、
ナギたちは、身体にまとわりつく熱気の中を歩の家へと歩き出す。
「はい、着いたよ!」
歩は、慣れた手つきで鍵を開け、
落ち着いたベージュに塗られた鉄製の扉を大きく開け放って二人の大切な客を先に室内に入れる。
「失礼致します」
「邪魔するぞ!」
ひんやりと心地よい冷気が三人を包む。
室内はきちんと整理されていて、とても清潔だ。
調度品も、豪華な分身など無いかわりに機能的な分身が揃えてある。
「ナギちゃんは、来たことあるから分かるよね。ハヤテ君も、トイレとかシャワーとか、自由に使ってね」
「エアコンが効いてますね」
「うん。タイマーかけといたから」
「ささ、座って、楽にして」
ナギたちをダイニングに招きいれた歩は、
冷蔵庫から出した麦茶をグラスに注ぎ分けて、二人の前のテーブルに置く。
「どうぞ!」
「ありがとうございます」
「うむ」
交代でシャワーを浴び、一息ついたところで、
歩が、サッシ越しにすっかり暮れた空に目をやりながら花火大会のことを話し始めた。
「ちょうどね、この正面に見えるんだよ」
「へー。絶好の立地なんですね」
「屋敷からはビルが邪魔になって見えんのだ。楽しみだな」
歩がテレビのスイッチを入れると、ちょうど、花火大会を生中継する特別番組が始まった。
テレビの音声をちょっと大きめにしてその解説を聞きながら花火を見ることにする。
室内の明かりを落とし、大きなサッシをカラカラと開けて、三人はベランダに出た。
大気の熱が引き、わずかに吹く風が肌に心地いい。
室内からのテレビの音声が、花火大会の開会を告げた。
ドンッ!
パラパラパラッ…
ドドンッ!
花火が煌いてから炸裂音が届くまでの間隔は長いし、
肝心の花火は、ビルで欠けたりせずに全形は見えるのだが、差残念ながら小さくしか見えない。
しかし、それでも、三人で並んで見る花火は綺麗で、楽しい。
そして、プログラムがちょうど中盤に差し掛かった、その時…
ポツリ…
肌に生暖かい小さな水滴が当たり始める。
「あれ?雨…、でしょうか…?」
「あ、ほんとだ…」
「中に入って、様子を見ましょう」
「うむ。何もこんな時に降らんでも。無粋な雨だなぁ…」
テレビも、現場での降雨の状況を詳しく伝え始めた。
ザーッ…
程なく雨は本降りになった。
三人は仕方なく室内へ退避してサッシを閉め、明かりをつけてテレビの音声を絞った。
そのテレビでは、アナウンサーが花火大会中止の決定を繰り返し読み上げていた。
「つまらん、つまらん、つまらんぞー!」
せっかくのミニイベントが中止となってご機嫌斜めのナギが、
ソファーにひっくり返って足をバタバタさせながら不満の声を上げる。
「お嬢さま。子供じゃないんですから…」
「大人であっても、つまらん分身はつまらんのだ!」
「あははは…」
的を得ないナギの返答に、ハヤテと歩は顔を見合わせて苦笑いした。
…と、その時!
ゴロゴロッ…
ドドンッ…
遠くの空に、一瞬、青紫色の木の枝状の筋が煌き、その直後、腹に響く衝撃音が来た。
雷だ。
「うわァッ!」
「ひゃっ!」
ナギは飛び起き、そして、
冷蔵庫のフリーザーに手を突っ込んでアイスを物色していた歩も大慌てでハヤテに駆け寄り、
二人の少女は両側からハヤテを挟むようにしてその腕にしがみついた。
「大丈夫ですよ、お二人とも。僕が、必ずお守りしますから」
心の篭ったハヤテの言葉に、二人は同時に「うん」と返事をした。
ガラゴロッ!
ドッ、ドドドン!!
室内にまで飛び込んできそうな雷の激しい音と光に、さすがのハヤテも身が引き締まる。
歩もナギも、ハヤテの腕をきつく抱きしめたままカチカチに身を強張らせている。
バリッ!バリバリバリッ!バリリリッッ!!!
「キャーッ!!」
「ハヤテーッ!!」
室内にナギたちの悲鳴が響くと同時に、照明、テレビ、エアコンが停止した。
聞こえるのは、しつこく鳴り続ける雷の音と、サッシを洗う激しい吹き降りの雨音だけ。
怖がる二人を引きずるようにしてハヤテはベランダのサッシに近づき、
そこから周囲の地域の状況を観察したが、街灯にも信号にも家々の窓にも明かりは点っていない。
停電だ…
歩は、恐る恐るではあるがハヤテの腕を放して懐中電灯を探しに行ったけれど
ナギは震え上がったままだ。
幼時の体験から極度の暗所恐怖症となり、寝るときでも枕元に明かりが欲しいというナギが、
いかにハヤテたちと一緒だとはいえ、この状況に耐えられようはずが無かった。
ハヤテの腕に必死にすがりつくナギの身体の震えようは尋常ではなく、
呼吸も激しく乱れて、小声でハヤテの名を繰り返すのがやっとの有様だ。
「お嬢さま、大丈夫ですよ。さあ、僕に、もっとギュッとくっ付いて下さい」
ハヤテは、心を込めてゆっくりとナギに話しかけながら、その震える肩をそっと抱きしめる。
「うん…」
ナギはハヤテの腕をきつく抱きしめたまま、
言われたとおり、ハヤテの身体に自分の身体を埋めるようにギュッと押し付けた。
「懐中電灯…、あったけど、電池が、ない…」
歩が隣の部屋から懐中電灯を見付けてきたが、
その電球はほんの薄ぼんやりと鈍いオレンジ色に光るだけで、とても実用的な光源とはいえなかった。
しかし、
歩が戻ってきたことと、ともかくも人工の光が手に入ったことで少し落ち着きを取り戻したナギは、
歩の手前、それまで抱きしめていたハヤテの腕をパッと放したが、
しかし、自分の肩を抱いているハヤテの手を振り払おうとはしなかった。
その様子を見た歩も、ナギの怖がりようがただ事で無いということに気づく。
ここで、歩が手をポンと打つ。
「あ!そうだ!ロウソクがあったんじゃないかな?」
確か、二、三日前に家族で花火をして遊んだときに着火用として使ったロウソクの余りがあったはずだ。
「えっと…、えーとねー…」
だいぶ目が慣れてきたとはいえ、薄暗い中、歩は見当をつけた引き出しの中を手探りする。
「あ、あった!この箱、この箱…!」
歩が振る小さい箱の中の音からするとそれほど沢山は無いようだが、停電が一時間も続くとは考えられない。
「この間、花火をして遊んだ余り。とっておいてよかったよー」
『花火遊び』『余り』『ロウソク』
このキーワードがハヤテの脳内で『検索ワード』の役割を果たし、
ハヤテはこの場に相応しいあることを思い出した。
「ロウソクでしたら、僕も持ってます」
そう言うと、ハヤテは上着のポケットからナギから預かっていた小振りの四角いケースを取り出す。
それを見たナギの顔色が、別の意味で青く変わった。
「ハ、ハ、ハヤテ…。そ、それは…」
「はい。昨日の晩、お嬢さまからお預かりしたものです。
そういえば、昨日の晩も僕たちの花火大会は雨で中止になったんでしたよね」
昨日の晩、ナギの強い希望によってナギとハヤテは二人だけで花火をすることになっていたのだが、
やはり、にわか雨で中止になったのだ。
ナギはその時、着火用としてハヤテにロウソクを手渡していた。
ナギによれば、そのロウソクには人間の粘膜を保護する漢方の成分が練り込まれていて、
それが燃焼によって蒸散するので、その火を絶やさぬようにしていれば、
花火の煙に巻かれても、目や喉がショボショボ、ヒリヒリするのを緩和するとのことだった。
だが、このナギの説明には明らかな嘘があった。
そのロウソクに練り込まれているのは、実は、媚薬だった。
勿論、ハヤテはそんなことを知る由も無かった。
「お嬢さま、これには目や喉を保護する成分が含まれているんですよね?」
「へえー!さすがナギちゃん。凄いロウソク持ってるんだねー!」
「え!あ…、ああ。だが、しかし、だな…。それをここで使うのは…、その、ちょっと…」
「密閉された部屋の中で灯すのですから、これこそうってつけはありませんか?」
「いや…、それはそうだが…、うーむ…」
まさかこの場で「そのロウソクは媚薬入りだ」などと言えるはずも無く、
ナギは、ろうそくを灯す準備にかかるハヤテたちをやきもきしながら見守るしかない。
シュッ…
使い捨てライターの火が芯に移ると、ハヤテはロウソクを傾けて溶けた蝋を小皿に少し垂らす。
その蝋が固まらぬうちに、それを接着剤の代わりにしてそこにロウソクを据えた。
暗い部屋の中心に、柔らかなオレンジ色の炎がゆらゆらと揺らめく。
微かな甘い香りが、少しずつ部屋に満ちてくる。
「いい香りだなー」
「ほんとに!花火の着火用としてではなくて、アロマキャンドルとしても十分使えますよ、お嬢さま!」
ハヤテと歩は、ロウソクの方に向けた鼻先を盛んにクンクンと鳴らす。
「そ…、そうか…」
ナギはもう気が気ではない。早く換気をしなくては!
「ちょ…、ちょっと、息苦しいような気がしてきたぞ。窓を開けてもいいか…?」
二人の返事も待たず、ナギは小走りにサッシに近づくとカラカラとそれを開けたが…
「ぶわぁっ!」
吹き降りの雨風に顔面を思い切り張られたナギは、あわててサッシを閉めるしかなかった。
次の瞬間にはまた大きな落雷があり、今まで安心していた分それに倍も驚いたナギは、
ハヤテに飛び掛るようにして飛びついたまま、腰を抜かしてしまった。
ゴロゴロッ…
バリッ!バリバリッ!!
全身を揺さ振るような落雷の衝撃波。
青白い閃光に浮かび上がる三人の横顔。
ハヤテも、歩も、無言。
「(くっ…。身体が、動かん…)」
ナギは最後の手段として、有無を言わさずロウソクの火を消そうと決心するが、
凄まじい雷への恐怖からか、既に媚薬の芳香の影響を受け始めているからか、
すぐそこにある火のところまで腕を伸ばすことができない。
「何だか、暑くありませんか…?」
夏の夕暮れ時に窓を閉め切ってエアコンを止めれば、夕立がかかっているといっても、暑いのは当然だ。
だが、ハヤテの声は、いつもとはまったく違って、ひどく乾いている。
「うん…。ちょっと、暑いかも…」
それに答える歩の声は、息苦しそうだ。
「(いかん!薬が、効いてきたか…!)」
ナギは心の中で叫んだが、そのナギ自身の身体の中も、少しずつ熱くなり始めていた。
「ハヤテ君…。私って、女としての魅力、無いのかな…?」
「西沢さん…。そんなことは…。ングッ!」
ハヤテが答えようとしたその口元に、グッとテーブルの上に身を乗り出した歩の唇が押し当てられる。
「ハヤテは、私のものだぞ…!」
ナギは、自分の頬で歩の頬を押しのけると、その小さな唇でハヤテの唇を独占した。
「んッ…、くッ…、ちょ、ちょっと待って…、ください…」
ハヤテは二人を一旦押し戻すと、ヨロヨロと椅子から立ち上がる。
だが、二人はすぐにテーブルを回りこむと、ハヤテに飛び掛るようにして抱き付いた。
「うわっ!」
「きゃっ!」
一気に二人分の体重を預けられて、ハヤテは二人を抱えたまま敷物の上に仰向けに倒れた。
痛たた…、と後頭部を摩る間も無く、歩の顔がハヤテのそれの上に覆い被さる。
ハヤテの口の中に歩の舌が入り込み、ハヤテの言葉と息を封じる。
ナギはハヤテの胸元を撫でながら、下半身に手を這わせ、ズボンのジッパーを降ろしにかかる。
「お、お嬢さま…」
開かれたジッパーから、ナギの指が、既に半立ちになったハヤテの分身をプルンと引っ張り出した。
「あうっ!」
ムクムクと体積を増していくそれにナギは愛しげに頬ずりすると、
その付け根に密生するブルーグレーの陰毛から香ってくる牡の匂いに鼻を鳴らしながら、
舌先で刺激を加え始める。
「ああっ…!」
そして、陰嚢の付け根から亀頭まで、分身全体に柔らかな舌先を縦横に絡めていく。
「んッ…、ん…ッ、はあッ…」
一方、歩は、ハヤテが漏らす喘ぎ声を唇で吸い取るようにキスをすると、
頭を上げてハヤテの執事服の胸元を乱暴にはだけ、
むっと立ち上る男の匂いを思い切り吸い込みながら、褐色の乳首に吸い付いた。
「ひっ…!」
両の乳首をチュウチュウと音を立てて吸い尽くし、そこがコリコリと硬くなってきたのを確認すると、
今度は臍まで、いろいろなところを寄り道しながらチロチロと舌を這わせる。
「くあ…ッ!に、西沢さん…!」
やがて歩の頭が、ハヤテの陰毛を挟んでナギの頭と出会った。
歩は、ハヤテの分身を一心に弄るナギの頭の横から器用に手を伸ばし、陰嚢を撫で回す。
「ああんッ!お嬢さまッ…!西沢さん!」
普段なら間違いなく小競り合いが始まるような状況だが、
蒸し暑い夏の夜、二人の少女は協力しあって一人の少年を愛していた。
「ああ…ッ。う…、んッ」
「はあッ…。んあッ…、くッ…」
熱い溜息とピチャピチャという淫靡な水音が、
普段は一家団欒の笑い声が満ちているであろうこの部屋を満たしている。
窓の外では未だに雷が恐ろしげに咆哮していたが、 本能のままに快楽を貪る少女達にとっては、
それすらも野性的なBGMに聞こえ始めていた。
ハヤテは、既に二人の少女によってズボンもトランクスも剥ぎ取られていた。
剥き出しで屹立するハヤテの分身を、ナギの舌は左から、歩の舌は右から、執拗に責める。
「く、あッ…!お二人とも…!もう…」
片方の唇が亀頭を挟みつけると、もう片方の唇は陰嚢を吸いたてる。
「あひッ…!そ、そこは…」
ハヤテは腰をくねらせて、必死に性の責め苦に耐えている。
「ハヤテ、舐めろ…」
ナギはハーフパンツと愛液に粘つく白いショーツを一気に脱ぎ捨てると、
自分の指で赤く熟れた股間の陰裂をクパッと開きながらハヤテの顔面に跨った。
そこは、大小の陰唇も膣口も尿道口すらも薄暗い中でも分かるほどキラキラと蜜に濡れそぼり、
ハヤテの舌先を待ち望んでいるかのようだ。
「お…、お嬢さま…、いいのですか…?」
「ああ…」
「僕…、もう…、我慢できません…」
ハヤテの生暖かい舌が、ナギの女の部分をヌルッと舐め上げた。
「ひゃん!」
ナギの腰がビクンと跳ね上がる。
「いいぞッ…!でも、もっと、上を…」
お尻の後ろに回したナギの手が、ハヤテの頭を自らの牝の部分に押し付けなおす。
ハヤテの舌先が、ブックリと美味しそうに腫れだしたクリトリスにそっと触れる。
「はあうッ!!」
ナギの素直な反応に、ハヤテはその先端から根元へと円を描くようにグリッと舌を動かした。
「あッ!!そッ、そこ…ッ!もっと、強くッ…!!」
言われるままにハヤテがクリトリス全体を舌に含んでチュッチュッと少し強めに吸いたてると、
ナギは堪らず腰をぐっと落としたので、ハヤテの鼻先はその膣口に埋まった。
「くふぅッ…」
ナギの、甘酸っぱい牝の匂いと絶え間なく滴り落ちてくる蜜、
そして熱い花弁の圧迫でハヤテは幸せな窒息感を味わう。
「ハヤテ君…、私にも、してくれるかな…」
ナギから譲り受けたハヤテの分身を喉の奥まで出し入れして味わうことに熱中していた歩も、
ナギの喘ぎ声を聞かされてついに我慢できなくなったのか、
薄手のワンピースと下着をもどかしげに脱ぎ捨てると、今は空いているハヤテの下半身に腰を落とした。
「あんッ!?」
慌てていたために一発目は肛門に当たってしまったが、
二回目は自分の指でハヤテの分身を摘んで、もう十分に濡れそぼって赤く火照る膣口へと導く。
そして、腰をそっと落としていく。
「んッ…。くあッ…!」
「西沢…さんッ!」
赤黒く張り詰めたカリ首が、歩の初々しい粘膜を掻き分けていく。
「ハヤテ君が…ッ、入ってくるッ!私の中にぃ…ッ!」
「西沢さんの、中…ッ!すごく…、すごくッ、締まってますッ!」
「ああああッ!!」
歩は、ハヤテの腰の上に深々と腰を下ろしたまま、
自分の女の部分の中心から込み上げてくる快感に、ただただ耐えるのに必死だった。
「はあッ…、はあッ…」
少し落ち着いた歩は、ティーン雑誌の記事を思い出した。
「男の人って、動くと、気持ちよくなるんだよね…」
「えっ…」
「こうすれば、いいのかな…ッ!」
歩が腰をゆっくりと上下に動かし始めると、最初は吸盤を剥がすような音が聞こえていたが、
すぐに湿った摩擦音に切り替わった。
「あッ、あッ、うんッ…!あん、あんッ、あんッ!」
臍の内側近くにハヤテのコチコチになった亀頭を感じながら、歩は前後に上下にと激しく腰を揺する。
歩と向かい合っている状態のナギも、
ハヤテがクリトリスを吸いたてる力の加減が、歩が腰を動かすタイミングと同調して変化するものだから
その緩急をつけた絶妙のリズムに、下半身をビクビクと痙攣させて激しく反応している。
「おい、ハムスター…、声がすごいぞ…」
「ナギちゃんこそ…、とってもイヤラシイ顔してるよ…」
下半身で男を貪る少女達は、それぞれの目の前に絶好の目標を発見した。
歩はナギのブラウスを脱がせにかかり、ナギも歩に胸元を突き出してそれに協力する。
そして歩の手がその下の白いスポーツブラを剥ぎ取ると、ナギの膨らみかけの白い乳房が現れた。
「ナギちゃんのおっぱいだぁ…」
「ほんとはハヤテだけのものなのだが、今日は、特別だ…」
ナギと歩はお互いの幼い乳房にそっと手を当てて、
女だからこそ熟知している乳腺や乳首のツボを、コリコリとピンポイントで刺激し合った。
「あッ、あッ!そこっ…!いいぞ…ッ!」
「.もっと…、もっと、そこ…、強くしてッ!」
自分の身体の上で可愛い少女達がイヤラシイ遊びを始めたことが分かって、
置いていかれては堪らないとばかりハヤテは再びナギの陰裂に顔を埋め、下半身で歩を突き上げた。
「ハヤテッ…、もっと、舌で、いじるのだッ!もっと…、強くッ、舐めろッ!」
「ハヤテ君ッ…!いいッ、いいよッ!!ああ…ッ!」
「吸えッ、吸うのだ…ッ!もっと、もっとぉ…ッ!」
唇の間でナギのクリトリスが張りつめて硬くなるのを、舌でさらにつつき回す。
ハヤテのペニスは、歩の膣内の複雑な肉壁に巻かれて弄ばれるのを楽しむ。
歩は上下運動に集中し、カリ首が膣壁と擦れあい亀頭が子宮口に当たる感触を堪能した。
「あっ、ハヤテ君の…、ああッ、凄い…ッ。凄いよぅ…」
「ふぁッ…!んッ…、ひゃんッ、あっ、ああっ…!!」
ハヤテの頭の上ではナギが、腰の上では歩が、その身体をグウッと後ろに反り返らせる。
そして、それをつなぎ止めようとするかのように、互いの両手が互いの乳首をクリクリとまさぐり合う。
少女達自身が生み出す刺激で更に興奮した少女達の女の部分によって、
ハヤテの呼吸は妨げられ、ハヤテの分身は更に強く締め付けられながら上下に激しく擦り付けられ、
下半身全体が痺れて爆発寸前になっていた。
三人の身体は、汗でしっとりと妖しく光っている。
ナギの甘く熱い粘膜の圧迫で窒息が強まり頭も朦朧としてきたハヤテは、限界を感じ始める。
膣の奥で亀頭が急に膨らむのを敏感に感じ取って、歩は腰の動きを更に速くした。
「もう、ちょっとで、もう少しで、私、イク、かもッ…あッ、ああッ」
「私も、ダメかも…ッ、ハ、ハヤテ…ッ!」
「いくッ!いくよッ!ハヤテ君!ハヤテ君ッ!!」
「もう…、もう、ダメだ…ッ!ハヤテッ!来いッ、ハヤテぇぇぇッッッ!!」
ハヤテの唇からクリトリスが離れ、ナギの上半身は後ろに倒れた。
小水を漏らしたかのように、大量の愛液がハヤテの前髪にふりかかる。
ほとんど同時に歩も仰向けに倒れる。
ハヤテの分身は下にクニッと曲がり、そのまま、締め付けながら痙攣する歩の膣内をずり下がり、
ちょうどGスポット周辺でカリ首が踏みとどまって、そこで激しく射精した。
亀頭のビクつきはなかなか収まらず、
歩の小陰唇とハヤテの分身のわずかな隙間から、 白く濁った濃い液体がドロドロと漏れ出てくる。
ナギ、ハヤテ、歩がほぼ一直線に寝転がる中、
一番先に起き上がったナギが、自分の全体重をつかってハヤテの腕を引っ張って起こす。
「ハヤテ…。私の中に来い…」
そう言うと絶頂の快感で未だ放心状態の歩をコロリと脇へどかし、ナギは再びハヤテと唇を重ねる。
そのままハヤテはナギの胸に手を伸ばし、そのまだ硬い感触を確かめるように揉みしだく。
「んッ…。くふぅッ…」
やがてナギは目を閉じ、ハヤテの舌に自分の舌を絡めてその口腔内をクチュクチュと貪る。
ハヤテの腕を掴んで自分の方へと引き寄せていたナギの手から、段々力が抜けていく。
その手はハヤテの胸から腹へと撫でるように降りて行き、やがて一回射精して萎れた分身を探り当てる。
ナギの白い指が、ハヤテのペニスを軽く締め付けるように握って、上下に擦る。
本当に上手いのか、不慣れなぎこちなさが堪らないのか、分身はたちまち天を向いて怒張するほど回復する。
「そろそろ…、いいか?」
「はい…、お嬢さまがしてくださったので、こんなになりました…」
「来てくれ…、私の、中に…」
「はい、お嬢さま…」
ハヤテはナギの背中の側に回りこんで、小さな身体をそっと大切そうに抱きかかえる。
ナギは自ら、既にネトネトと蜜を垂れ流している入り口に分身をあてがって、静かに腰を下ろしていく。
「くああッ…!」
ハヤテがナギの細くて白いうなじに舌を這わせると、ナギの身体が可愛くピクンと跳ねる。
「あんっ!」
ハヤテは彼女の脇から手を回し、下から持ち上げるようにその小さな乳房をやんわりと包んだ。
そして、手のひらを使って乳房全体を揉みほぐしながら、指先でコリコリと固くなっている乳首を刺激する。
「はああッ! こんなに…、ハヤテッ…、すごいぞ…ッ!」
ハヤテの力強い腰の動きに上手く合わせるようにナギも腰をクイックイッと器用にしゃくり、
ねっとりと熱い膣壁はハヤテの分身にキュウキュウと絡み付く。
その凄い締め付けに、ハヤテはすぐにも果てそうになるのを必死に我慢する。
「お嬢さまッ!僕ッ、もう…、もう、イキそうですッッ…!」
「わ、私も…ッ! ハヤテッ!な、中に…! あッッ!くぅッ!」
「くあああッッ!!」
ハヤテは最後にナギを思いっきり突き上げ、中に熱い奔流をぶちまけた。
「はぁ…、はぁ…ッ、はぁッ…」
ハヤテを真ん中にして、裸で汗にまみれたままの三人は激しい愛の営みの余韻に浸っていたが、
やがて、誰からともなく静かな寝息を立て始めた。
ピリリリッ! ピリリリッ!ピリリリッ!
ナギの携帯が鳴っている。
「うーん…。誰だ…?ん?マリアか…」
携帯が鳴っても、起きたのはナギ一人だけだった。
ピッ
「ああ、マリアか…」
『ナギ、今、西沢さんのお宅ですか?』
ナギは、すべての事情を思い出した。なぜ自分たち全員が全裸なのか、
なぜ部屋の空気が生々しい匂いに満ちているのか、
そして、なぜ全員の身体の中心がいやらしく汚れているのかも…
「え…!?な、なぜ分かったのだ?」
『SPの方が教えてくださいましたし、その携帯にはGPSがついてますからね』
「うっ…」
『ところで、こんな時間までお邪魔していて、西沢さんにはご迷惑じゃないんですか?』
ハッとして携帯の表示部を見る。現在、PM10:45…
「いや…、その…」
だが、こうなったからには、ハヤテを連れてさっさとここから去るほうが、余程迷惑だろう。
「に、西沢歩は、泊まっていけといってくれたぞ。だから、私たちは、泊まっていくのだ」
『そうですか、ならいいんですけど…。じゃあ、私から、西沢さんにご挨拶を…』
「い、いや、西沢歩は、今、入浴中なのだ」
『では、くれぐれもよろしくお伝えくださいね。
では、明日の朝、起きたら電話をください。迎えの車を回しますから』
「うむ」
困ったなぁ…
どうしたもんだろう…
ナギは、明日の朝が来る前に、ハヤテと歩を起こそうか、
それともこのまま明日まで起こすまいか、と、まだボーっとしている頭で考えていた。