「私は……ハヤテ君の事が好き」
動きの止まった観覧者のゴンドラ内で、ヒナギクはその思いを歩に打ち明けた。
ずっと悩んで悩んで、悩み続けてやっと口に出来たこの言葉。
しかし歩はキョトンとした顔で、
「えっ? それだけ?」
と素っ気なく答え、逆にヒナギクの方が慌て始めてしまった。
「そんなっ……だって私は歩を応援するって言ってたのに、こんな裏切り……」
真剣な表情で訴え続けるヒナギクを見て、ようやく歩も真剣に答える。
「まぁ、なんとなくですけど、気づいてましたから。ヒナさんがハヤテ君の事、好きなんじゃないかな〜って」
「えぇ?! で、でも、いったいいつから……?」
「いつからでしょうね……。初めて会った時かもしれないし、その後かも。女の勘ってやつですよ」
歩はそう言い終わると、ゆっくり立ち上がり、ヒナギクに寄り添って左手を右頬にそっと添えた。
「でも、いざそう言われると困りましたね」
「困る……? そうよね、いきなりこんな事言われたら、誰だって困るわね」
「そうじゃありませんよ」
歩は右頬に添えていた手をヒナギクの頭に移し、髪に指を通す様に優しく撫で始める。
「同じ学校に通うこんな可愛い子に好かれたら、私に勝ち目なんて無いじゃないですか」
「そんな事無い……私なんて女の子らしく無いし、歩の方が全然可愛い…………んっ?!」
頭を撫でていた手にグッと引き寄せられ、唇を奪われてしまうヒナギク。
突然の事に体が固まり、力なく手で押して抵抗するが逃れる事が出来ない。
「ん、んー……っ! ぷはっ…………な、何?! 急にどうしたの?!」
ようやく唇が解放され、慌てて事の真意を問うヒナギクに対して、歩は冷静に……少し微笑みながら逆に問いかけた。
「ヒナさん、他の人を好きになったり出来ませんか?」
「そんなの無理よ……他の男の人なんて好きになれない。……じゃなくて、今のキ……キ、キスはいったい……」
「誰も『男の人』なんて言ってないですよ?」
ヒナギクの問いには一切答えず話を続ける歩。
突然のキス、そして歩の言った今の言葉……歩が答えずとも、ヒナギクはその意味に気づいた。
「……だ、だめよ! 確かに歩は可愛いし、ときめいたりもした事あるけど……私にはそんな趣味無いから」
「安心してください、私にもありませんから。……でも、ヒナさんにはハヤテ君を諦めてもらいたい。それも平和的に。
その為にもヒナさんには、ハヤテ君以上に私を好きになってもらいますね」
歩はそう言って再びヒナギクに近づく。慌てて立ち上がるヒナギクだったが、あまりの高さにその場でへたり込んでしまう。
「ダメですよジッとしてなきゃ。ヒナさん高い所苦手なんでしょ?」
悪戯な笑顔を浮かべながらしゃがみ込んだ歩は、ヒナギクの股を両手で押し開けた。
「クスッ……本当に高い所が苦手なんですね。いつもはあんなに力強いのに、今はこんな事されて抵抗も出来ないなんて……」
「ヤッ……ダメ、こんな…………」
「大丈夫ですよ。すぐに気持ち良くして、ハヤテ君より私の事、好きにさせてあげますから……」