「はぁ……今日も一日疲れた」  
学校での勉強及び生徒会長の仕事を終えたヒナギクは、家に到着すると疲れきった顔で部屋に入り、  
サッと部屋着に着替えるとそのまま倒れこむようにベッドに飛び込む。  
「まったく理事長ってば、またあんな意味の分からない事を……」  
足をバタバタさせながら不満を口にするヒナギク。  
しかしベッドに置いてある、以前ハヤテに取ってもらったぬいぐるみを手に取ると、  
不満はぴたりと止まり、その様子は一変し、ぬいぐるみを抱きしめて機嫌良さそうにごろごろとベッドを転げまわる。  
「ねぇ、聞いてよ!あの理事長ったらね、私の言う事なんて全然聞かないで―――」  
 
約数分、ヒナギクは一通りぬいぐるみに愚痴を言うと、今度は黙り込んで何かを考えだした。  
「そういえばキミ、名前まだ付けて無かったよね。……うーん」  
ベッドに正座してぬいぐるみを正面に置き、向かい合って名前を考える。  
相当お気に入りなのか、その顔は真剣そのもの。しばし悩んだ後、最高の名前を考え付いたヒナギク……  
だが恥ずかしくてなかなかそれを口に出せない。……しかしこれ以上の名前は思いつかないと思ったヒナギクは、  
小さな声でぬいぐるみに囁くように名前を呟いた。  
 
「―――ハヤテ……」  
呟いた瞬間に顔が真っ赤になり、何故か窓の外や部屋の前に誰もいないかチェックする。  
そして誰もいない事を確かめると、今度は少し大きな声で名前を呼ぶ。  
「ハヤテ。……そう、あなたは今日からハヤテよ。……遅くなっちゃったけどよろしくね、ハヤテ!」  
名前を決めると、再びそのハヤテを抱きしめベッドに倒れこむ。  
「あっ、今名前読んだからハヤテ君来ちゃったりして……」  
以前ハヤテに、呼べばいつでも来ると言われた事を思い出し、そんな冗談を言っていると、  
ヒナギクの部屋の前へ誰かの足音が近づいてくる……、ヒナギクは、まさか……と、思わず息をのむ。  
 
「ヒナちゃん」  
その声は紛れもなく聞きなれたお母さんの声。  
一瞬でも何かを期待した自分を恥ずかしく思いながら、ヒナギクは部屋の扉を開く。  
「なに?お母さん。」  
「?ずいぶん残念そうに出てきたわね。……あっ、もしかして白馬の王子様でも来たと思ったの?」  
「えっ?!……きゅ、急に何言い出すのよ!」  
「フフッ、本当にヒナちゃんは顔に出やすいんだから。はい、そんなヒナちゃんにお客さんよ」  
そう言うと後ろから現れたのは、ヒナギクの王子様……もとい、ハヤテだった。  
 
「ハヤテ君?!ど、どうしたの?」  
「どうって……さっきまで御屋敷にいたんですけど、……今、ヒナギクさん僕の名前呼びませんでしたか?」  
―――いったいどう言う聴覚をしてるの?!……って言うか呼んでから来るの早すぎ!!等々、  
 
ツッコミたい所は山ほどあったが、呆気にとられて言葉が出ない。  
そうこうしている内に、ヒナママはハヤテを座らせ、一言「ごゆっくり」と言って部屋を後にする。  
まだ頭の整理がつかないのか、はたまた初めて男性が部屋に入り、どうしたらいいか分らないのか……  
ヒナギクは立ったまま固まってしまった。  
 
「あっ、あれこの前僕がプレゼントしたぬいぐるみですよね。大事にしてくれてるみたいで良かったです」  
とりあえず話を盛り上げようと、ハヤテがベッドに寝かされているぬいぐるみを指差しそう言うと、  
ようやくヒナギクも我に帰ったのか、ハッとした顔をして慌ててぬいぐるみを隅へ寄せる。  
「こ、これは、その……たまたま、そ……そうよ!たまたまここに置いてあっただけで、  
 別にハヤテ君に取ってもらって嬉しかったからって、一緒に寝たりとかしてる訳じゃ無いんだからね」  
 
また何かヒナギクを怒らせたと思い、黙りこむハヤテ。  
また勝手に怒ったような口調で話してしまった事を後悔し、黙りこむヒナギク。  
しまったと思いながら、二人とも様子を窺うように黙り込んでしまう……と、そんな静まり返る部屋に近づいてくる足音、  
部屋の前で止まり扉を二度ノックする。  
「―――トントンッ。……ヒナちゃん、開けても良い?」  
「え、あ、……うん。どうしたの?」  
扉が開くと、そこには紅茶を持ったヒナママの姿があった。  
 
「お客さんとヒナちゃんにお紅茶入れてきたの。……って言っても安物だけどね。良かったらどうぞ。」  
「そんなっ、とんでもないです。ありがとうございます。」  
「いえいえ、……えっと…………ハヤテ君……で良かったかしら?」  
「はい、……では、いただきます。」  
紅茶を飲むハヤテをよそに、ヒナママはそっとヒナギクの耳元でそっとささやく。  
 
「すごく可愛い子じゃない。……この子がヒナちゃんの彼氏なの?」  
「なななっ、何言い出すのよ!!もうー!余計な事言ってないで、早くお母さんは出て行ってよ!」  
「あらあら、それじゃあ邪魔者は退散しようかな。……ハヤテ君、ヒナちゃんが男の子を連れてくるなんて初めてなの。  
 結構意地張っちゃうところもあるけど、可愛い子だから……これからもヒナちゃんと仲良くしてあげてね」  
一言そう言い残し、結局ヒナママは来る前より変な空気にして部屋を退散していった。  
 
緊張して会話もなく、ただ紅茶を飲む音だけが聞こえる非常に息苦しい空間。  
そんな雰囲気に耐えきれなくなったハヤテが、ようやく本題に入る。  
「あの……それでいったいどんな用だったんでしょうか?」  
「え?」  
……用なんて別にない。でも、まさか「ぬいぐるみにハヤテって名前付けて呼んだだけ」……なんて事は死んでも言えない。  
とにかくこの場は何とかごまかさないと……  
「べ、別に用なんてないわ。ただ暇だったから……それとも何?用がなかったら呼んじゃ駄目だったかしら?」  
(―――はぁ……なんで私っていつもこう言う事言っちゃうんだろう……)  
つい、きつい口調でそう言ってしまい、ヒナギクが再び後悔する中、ハヤテはすぐに返事をする。  
 
「いえ、こうやってヒナギクさんと一緒にいるのは僕も楽しいですし、全然大丈夫ですよ」  
気を使ってそう言ったハヤテだったが、言われたヒナギクの顔はみるみる赤くなっていく。  
「わ、私だってハヤテ君とお話が出来て楽しいって言うか……嬉しいって言うか……」  
 
「あと、お嬢様以外の女子の部屋に入るなんて初めてですから、なんだかドキドキしちゃいます。  
 それにしてもヒナギクさん、お部屋綺麗にしてますね。……お嬢様も見習ってほしいくらいですよ」  
そう言いながら辺りを見渡すハヤテ。  
「そんなっ、ハヤテ君がくるって分かってたら私、もっと、もっと綺麗にしてたのに!」  
 
思わず興奮して立ち上がってしまったヒナギクを見て、ハヤテはヒナギクが着ている服装がいつもと違い、  
服にクマの絵がプリントされた、いかにも女の子らしい部屋着と言う事に気がついた。  
「ヒナギクさん、そう言う女の子らしいお洋服もお似合いですよ。すごく可愛いです」  
「きゅ、急に何言い出すのよ!……って、いつもの流れからいって……このクマの事ね」  
ヒナギクは、いつもと同じ勘違いをしてしまいそうになる自分を何とか御してゆっくり座り、  
紅茶をグッと一口飲む。しかしハヤテの口からは信じられないような言葉が飛び出した。  
 
「もちろん服もですけど、僕が可愛いと言ったのはヒナギクさんの方ですよ」  
「?!!」  
思わず口に含んだ紅茶を吹き出しそうになりながらも、何とか飲み込みハヤテの方を見る、  
どうにも冗談と言った表情じゃ無い。本気の顔だ。  
「ど、……どうしたのハヤテ君、そんな事言うなんて……もちろん嬉しいけど、その、ハヤテ君らしくないって言うか……」  
「僕も驚いてるんです。でも、こうしてヒナギクさんを見てると胸がドキドキして、  
 ……なんだか体が熱いって言うか……コレってもしかして……」  
ハヤテがそんな事を言っていると、またもやヒナママが現れ、今度は慌てて部屋へ入ってきた。  
 
「ヒナちゃん!……はぁ、間に合って良かったわ、……はい、コレ。ちゃんと避妊はするのよ?」  
「……え?」  
「実はお母さんさっきの紅茶にね、『ハヤテ君がその気になるお薬』入れたの。  
 だ・か・ら、ハヤテ君とエッチする時にちゃんと使うのよ?」  
 
この一言にヒナギク大爆発。すごい勢いでヒナママを追い出し扉を閉めた。  
 
「あのー、さっきの話だと僕、ヒナギクさんを襲いかねないのでそろそろ帰りますね」  
ハヤテは前かがみになりながらも立ち上がり、ゆっくりと扉へ近づいて行く。  
前屈みの歩き方でもハッキリと分かる膨らみ。ヒナギクはハヤテの手を掴んで帰るのを引き止める。  
 
「そのまま帰ったらナギやマリアさんを襲いかねないでしょ?……それにウチのお母さんが原因なんだから、  
 ちゃんと私が責任とるわよ……で、でも、えっちはダメだからね!その……手で処理してあげるから」  
「えっと……でも自分で処理できますから……」  
「いいから座りなさい!」  
半ば強引にハヤテをベッドに座らせ、ヒナギクはズボンとパンツをずらし、中から現れたハヤテのソレを手で掴む。  
 
「私だって、男の子がどうすれば気持ち良くなるかぐらい知ってるんだから……」  
そう言いながらぎこちない手つきで手を上下させ、ハヤテの様子をうかがう。  
「どうなの?気持ち良いの?……ほら、ハッキリ言いなさい!」  
「えっと……凄く気持ちいいです……」  
ハヤテのその一言に気を良くしたヒナギクは、一度てを止めてソレをジッと見つめた後、  
口を大きく開きハヤテのソレを頬張った。  
 
「ヒナギクさん?!そ、そんな事されたら……」  
「んぐっ……ひもひぃほ?……ちゅぷっ、ちゅぷっ……」  
「気持ち良いと言うか……その……」  
「じゅぷっ、……んっ、んっ、……ぷはぁ、……何?ハッキリ言わないと分からないって言ってるでしょ?」  
まるで主導権を握ったと言わんばかりに、ヒナギクは悪戯な笑顔を浮かべてハヤテに問いかけて、  
その間も手は動かし続け、唾液の付いたソレからは、クチュクチュと卑猥な音が聞こえる。  
 
「ではハッキリ言います。……その、申し訳ないんですけど、もうイキそうなんです……」  
「えっと……イクって言うのは、男性器を擦って、気もい良くなると精子が出る現象の事……?」  
「……はい。そう言う事ですね」  
ハヤテの返事を聞いてヒナギクは慌てだす。  
「そ、そんなの急に言われても!どこに出すの?!ベッドが汚れても困るし……っ!」  
「でも、もう我慢が……っ!汚さない様にするには……ヒナギクさん、ちょっとだけ我慢してください!」  
「我慢って何よ……んんっ!……んっ、んっ!…………んっ……」  
 
部屋を汚さない為に、とっさにヒナギクの頭を押さえつけ、口内の奥深くへ射精するハヤテ。  
眉をハの字にして苦しそうにしながらも、ヒナギクはそれをすべて口で受け止め、喉をゴクゴクと鳴らす。  
ようやく射精が終わり、ハヤテが口からソレを抜くと、開いたままのヒナギクの口には何も残っていなかった。  
「あの……もしかして飲んじゃったんですか?」  
「し、仕方ないでしょ!ハヤテ君が精子いっぱい出しすぎて、口に入りきらなかったんだから……」  
 
 
無事性欲処理をし、ハヤテ家に帰した後、ヒナママがヒナギクにこっぴどく怒られたのは言うまでもない。  
 
 
 
 
おしまい  
 

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