――――ハヤテ君とデート、しかも遠出がしたい!!
よくよく考えると、私達って付き合い始めてから一度も、デートらしいデートをしてないんだよね。
近くの商店街で食べ歩きをしたり、家でマッタリしたり……
それはそれで楽しいんだけど……でももっと本格的なデート、たとえば遊園地とか動物園とか!
在り来たりだけど、そんなデートをしてみたいかな。
……と、思ったのが昨日の話し。
今日、私は白皇の校門前に、チケットを握りしめハヤテ君を待っていた。
「はぁ……また後先考えずに突っ走っちゃったよ」
よく考えて見たら、ハヤテ君はナギちゃんの執事さんなんだから、二人はずっと一緒にいるんじゃないのかな?
だとしたら、私はどうやってこのチケットをハヤテ君に渡せば……
別に付き合ってる事を内緒にしている訳じゃ無いけど、でもバレちゃうとまずい気もするんだよね……
「私のバカッ!! なんでもっとちゃんと計画を練って動けないのかな!!」
――――……沢さん? 西沢さん?
「あー、もうっ! 今考え事してるんだから、ちょっと話しかけないでくれるかな!…………ん?」
なんだか聞き覚えのある私を呼ぶ声。振り返ってみると、そこにはハヤテ君が。
「ハ、ハヤテ君?! こんな所で、どどど……どうしたのかな?!」
「えっと……それは多分、僕のセリフなんですけど……」
お、落ち着け私! そりゃ1ヵ月ぶりに見るハヤテ君が、あまりにもカッコ良すぎて慌てる気も分かるけど、
とにかく落ち着いて話を切り出さなきゃ……って、あれ?
ナギちゃんの姿がどこにも無いけど、どうしたんだろう?
「ハヤテ君、今日はナギちゃん学校お休みなのかな?」
「えぇ、今日もナギお嬢様は学校お休みですよ」
「今日も??」
ん? なんだか良く分からないけど、ナギちゃんがいないなら、チケットを渡す千載一遇のチャンスじゃないかな?
よし、ここは勇気を出して……
「ハ、ハヤテ君!」
「はい?」
「あの……えっと……ひ、久しぶりだねッ!」
「そうですね。ちょうど1ヵ月ぶりくらいでしょうか?」
はぅぅ……何言ってるんだろ私。こんな事言うために来た訳じゃないのに。
でも、いざハヤテ君を目の前にすると、どうも緊張しちゃって……この前は手もつないだし、キスだってしたのに。
だいたい、1ヵ月に1度か2度しか会えない環境が良くないんじゃないかな!
会う機会が少ないから、会うたびに緊張しちゃって……
――って、弱気になってちゃ駄目じゃないかな! この作戦に今月のバイトのお給料、全部つぎ込んだんだから!
もう後には引けないよ! よし、言う! 言うよ!!
「あ、あのね! 実は今日来たの――――」
「せっかく会えた事ですし、西沢さんのお家まで送りますね」
「はい! お願いします!!」
えっと……うん。まぁ、チケットは帰り道で渡せばOKだもんね……。
それにしても、ハヤテ君と一緒に帰れるなんてラッキーだな……えへへっ。
こうやって横から見るハヤテ君もカッコ良いし……こんな人が恋人なんて、私は世界一の幸せ者じゃないかな……
……って、そうじゃなくて! 早く渡すもの渡して、デートの約束しなくちゃ!
「そう言えば西沢さん、どうしてあんな所にいたんですか?」
――きた! ハヤテ君、ナイスパスだよ! よし、今度こそ……
「実は渡したいも――」
「あっ、もしかして僕に会いに来てくれたとかですか?」
えぇー?! そりゃ確かに会いに来たと言えばそうだけど、私が言いたいのはそう言う事じゃなくて、
このチケットを渡しに来た……って言いたい訳で――
「あれ? ……違いましたか?」
「え? あっ、うん。そう! ハヤテ君の顔が見たくて来たんだよ!」
はぁ……つい言っちゃったよ。だってハヤテ君、あんな残念そうな顔するんだもん。
「僕も西沢さんに会えて嬉しいです」
うぅ、そんな笑顔でこっち見られると、目を合わすのも恥ずかしいかな……。
どうしよう、ますます渡せなくなっちゃったよ。
ポケットに入れてるチケットを渡すだけなのに……ポケットの…………ポケ……
――――無い!!? あれ? 確かにこっちのポケットに入れたはずなのに!
「あれ? 西沢さん、何か落としてますよ?」
「へ?」
あ――!! それはまさしくハヤテ君に渡す予定のチケット!
んんー、えい、もうこうなったら当たって砕けろ(?)だよ!
「あのっ、それ新聞屋さんが2枚くれたの。……で、もしハヤテ君が良ければ、一緒に行きたいかなぁ……なんて」
自分で買ったなんて言ったら、ハヤテ君が気を使っちゃうもんね。
うん、我ながらナイスアドリブじゃないかな!
「プールのチケット? 時期的に少し早くないですか?」
「ううん、そこは室内プールだから年中無休で、ウォータースライダーとか波のプールとかある所なんだよ!」
「そうなんですか……楽しそうですね! 僕でよければ是非!」
やった! なんだか伝え方が予定外だったけど、とにかく上手く誘えることが出来た!
これはきっと恋の神様が、私たちの事を応援してくれているんじゃないのかな!
そうときまれば私がやるべき事は一つ――
「よーし! そうと決まれば私、今日からダイエット頑張らなきゃ!」
「ダイエットですか?」
――――あっ、今の別に声に出す事じゃ無かったかな……?
でも最近少し体重が増えちゃってるんだよね……だからデートまでに2キロくらい痩せたいかな。
「でも、西沢さんにはそんな必要ないと思いますよ?」
「ダメダメッ! 服着てるときと違って、プールでは露出度が高いんだから!
ハヤテ君にはベストな自分を見てもらいたいって言う、女心が分からないのかな?」
実は先を見越して買っちゃったんだよね……ちょっと大胆なビキニ。
アレを着る為にも、何とかして2キロは痩せないと!
「でも……前に見た時は全然必要なさそうでしたけど……えっと…………」
「ん?」
あれ? 前に見たときって……私、ハヤテ君とプールに行った事なんてあったかな??
うーん……それに、どうしてハヤテ君は顔を赤くしてるのかな?
体のラインが分かっちゃうような事なんて何も……
『つまりですね……あの、歩お嬢様の裸を見たり触れたりして、ドキドキしてしまって……えっと、本当にごめんなさいっ!』
『――これは私からのご褒美だよ。すぐ楽にしてあげるから、少しジッとしててくれるかな?』
――――ッッッ!!!
頭に蘇るあの日の出来事。そう言えば私、記憶を失ってたハヤテ君とえっちな事したんだった……って事は、
ハヤテ君、今私の裸を……エッチな事したのを思い出して赤くなってるのかな?!
「ハ、ハヤテ君! 今、えっちな事考えてるんじゃないのかな!?」
「えぇっ?! えっと、そんなつもりじゃ…………ご、ごめんなさい、ごめんなさい。ごめんなさい!」
はぅぅ……まったくハヤテ君はえっちなんだから!
まぁ私だってあの日の事を、まったく思いださないって言えば嘘になるけど……それでも――
あっ、もしかしてハヤテ君、夜な夜な私としたえっちな事を考えて……それで自家発電を……ッ!?
そ、そんなっ……ダメダメ! わ、私の事考えてえっちな事するなんて……するなんて……
きっとお風呂でしたフェラチオとか、ベッドでしたセッ…………
「あの……西沢さん?」
「ひゃいっ!」
「もしかして怒っちゃいましたか……?」
「え?! ううん、そんな事無いよ! ただ、あの時ハヤテ君は気持ち良かったのかなぁーって……あ゛」
な、なな……何に言ってるのかな、私! ……バ、バカじゃないかな!!?
「えっと、あの時……って、どの時ですか?」
はぁ……良かった。幸いハヤテ君は気づいてないみたいだよ。
もう、とにかく傷口を広げる前に、
「そ、それじゃあココまでで良いから! 送ってくれてありがと! プール楽しみにしてるね!」
私は逃げる様に家へ走り去った。
――――バタンッ!
家に到着。急いで部屋へ駆けこむ。
「はぁ……ハヤテ君が変な事言いだすからドキドキしちゃったよ」
そんな私の目に飛び込んできたのは、ハヤテ君とエッチをしたベッド。
あんな事を言われちゃったから、どうも意識しちゃうよ……。
何となく布団に入ってみる。
確かハヤテ君がこの辺りにいて、私はこんな体勢で……それでこうやって……
「……って! 何考えてるのかな!! 私!」
……でも、ハヤテ君だってしてるかもしれないし……私だってちょっとくらいならいいかな?
そう思い、下着を少し横にずらして、割れ目に中指を当ててみる。
――ちゅぷっ、
「ふぁ……っ、ハヤテ君としてる事考えただけで、こんなに濡れて……」
私ってもしかしてエッチな子なのかな? 自分で触ってるのに、頭の中ではハヤテ君に……
「あんっ、ダメだよハヤテ君。そんな……んっ、あぁっ!」
――――PiPiPi
突然なりだす携帯の着信音に、体をビクッとさせ驚き、私は我に帰った。
今、家には弟もお母さんもいるのに、こんな所見られたら大変だよ。
とにかくベッドから出て、携帯を手に取る。
「ハヤテ君からメール?」
『プールの日時ですが、来月初めの土曜日と日曜日にお休みをいただいたので、その土曜日はどうでしょうか?』
あっ、そう言えば日にち決めて無かったっけ。
『はい! もちろんOKです!』……送信っと。
来月まで時間があるなら、ダイエットだって余裕だよね♪ そうと決まれば食前のぽてちを――
あれ? そう言えば今日って4月30日だよね? ……って事は、
――ぺりっ
カレンダーをめくると、明日から5月……明日はもう来月。土曜日……3日。……デートまで後3日!!?
私は慌ててぽてちを封印。おやつボックスに鍵をかける。
「歩ー、ご飯よー」
「私まだいいよ。お、お腹すいてないから!」
「えぇぇぇ?!!!!!!」
そ、そんなに驚かなくても……
こうして私は、減量中のボクサーの如く食事制限をし、無事にデート当日には2キロの減量に成功。
「きっと……これも愛の力だよ、愛の…………ぎゅるるる〜」