夜、布団に入って目を閉じる。  
浮かんでくるのは、温かくて優しい笑顔。  
いつも輝いていて、太陽みたいに眩しい、笑顔。  
 
―――そう、私は、恋をしている。  
 
朝、校門の所で彼を見つける。  
彼も私に気づいて、駆け寄ってきてくれる。  
「おはようございます、瀬川さん」  
いつもと同じ、そして、何よりも私を魅了してやまない笑顔で彼は挨拶をしてくれる。  
「う、うん。おはよう、ハヤ太くん」  
私は赤くなった顔を隠すように、伏目がちにそう返すことしかできなかった。  
これが『いつも』の朝の風景。  
でも、今日は『いつも』と違うイレギュラーなことが起きた。  
「あ、瀬川さん、髪留め、変えましたか?」  
―――嬉しかった。  
きっと誰も気づいてくれないと思っていたそれに、彼が気づいてくれた。  
「ぇ、あ、うん。この前、新しいの買ったんだ。でも、よく気がついたね」  
「あはは、僕そういうことには割りとよく気がつくんですよね」  
「そ、そうなんだ。・・・でさ、似合ってる、かな?」  
「はい、とっても可愛いですよ」  
「っ!!・・・あ、ああ、あ、ありが・・・とう」  
心臓が破裂しそうなくらいに鼓動が早い。  
真っ赤になった顔は最早隠しきれていない。  
 
―――また、彼のことを、もっと好きになってしまった。  
 

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