「じゃまするでー。ナギ、用ってなんや?」  
「おぉ、やっと来たかサク。…とりあえずこれを見てみろ。」  
PCの画面を指差すナギ。するとサクヤはみるみる顔を赤くしていく。  
「こ…これはこの前の…借金執事とやった…なんやもーうpされとったんかいな……仕事速いなぁ。」  
「ち、違う!!そこではない!その下だバカ者!!」  
「なんやなんや、仕事見たなもんなんやからそんな怒りなや。」  
「怒ってなどおらん!…って、そんな事よりも早く下を見ろ!」  
そう言われナギの言う通りに書き込みを見て行くサクヤ。  
 
「GJの嵐やないか。…まぁウチが主役なんやから当たり前……ん?」  
「ようやく気づいたか……この>>64のバカのせいでスレは無駄に消費され、さらに荒れてはじめているのだ。」  
「…せやけどこんなん釣りかsageも知らんリアル厨房やろ?放っといたらええやん。釣られる方も悪いで。」  
サクヤはそう言うと呆れた顔をしている。  
「しかしこんなバカを見ているとツッコミたくなるのが人間の性分……それはサクが一番よく理解しているだろ?」  
「うぅ……た、確かにリアルタイムでおおとったらツッコミ入れとるかもしれんなぁ…。」  
それを聞いてナギはうなずきながら、本題に入った。  
 
「…そこでだ!サクにはこの、かまってちゃんの厨房にも分かる様に説明してもらいたいのだ。」  
「かまってちゃんの厨房……よし、ほんならナギにも分かりやすーウチが説明したるから、ありがたく聞くんやで。」  
「あぁ、……ってちょっ、ちょっと待て!私はかまってちゃんでも無ければ厨房でもない!一応高校生だぞ!」  
そんなナギの話に聞く耳も持たずサクヤは話し始めた。  
「せやなぁ…ナギはマンガ好きやから週刊誌の読み切りとかもちゃんと読んでるやろ?」  
「当然だ。新人発掘は私の務めでもあるからな。」  
「…じゃあもしその中にナギが将来有望と思う新人がおったらどないする?」  
「当然その作者へ応援のメッセージ、及び出版社へ連載の要請を促すに決まっている。」  
即答するナギにサクヤはなおも話し続ける。  
 
「せやけど新人は新人や、大概は絵も雑やし話しかてナギ好みや無いのもあるやろ?」  
「まぁな…私の域に達している新人は数少ない、大概は興味すらもたん。」  
そう自慢げに話すナギにサクヤはややあきれ顔をしている。  
「…ほ、ほんならナギがつまらんと思った新人には批判のメッセージ、及び連載するなって要請するか?」  
「そんな事するわけ無いだろ?時間の無駄だし、つまらないならそんな要請しなくても連載はされん。」  
「そう!つまりそれや!」  
サクヤの大きな声に思わずビクッとするナギ。  
 
「えぇか?気に入らんssがあっても批判するのは時間の無駄。そんな事言わんでもツマランかったら誰もGJせえへん。  
 GJとかの感想が無けりゃ大概は続き書こうって気にもならんやろ。  
 それと、このアホは『神神っておだててりゃ 』とか言うとるけど、書いてる方は続きが読みたいから神ってかいてるだけや。  
 おだてる?上等やないか、おだてて続き書いてほしいと思われる書き手に慣れてるなら本望やで。」  
 …それをグダグダと卑屈っぽく書きおって……このドアホが!」  
一人でヒートアップし怒り始めるサクヤ。思わずナギがそれをなだめる。  
 
「おい、サク。ちょっと落ち着け。」  
「うるさい!ナギはちょっとは黙っとき!ウチはこのアホを…っ!」  
「いや、そんなに興奮してはバカには伝わらんだろ?」  
「……そ、それもそうやな。…ちょっと熱うなりすぎたわ。」  
サクヤはそう言うと、大きく1度深呼吸をした。  
 
「…そう言えば自分マンガかいとったな。ナギは何のためにマンガ書いとるんや?」  
「それは自分の世界を好き勝手に書いて楽しいからだ。」  
「せやろ?ss書いてる人かて同じ、まずは自分が書いてて楽しいから書いとるんや。  
 …それで、ナギはマンガを書き終わったら次はどないしたいんや?」  
「そりゃ…もちろんいろんな人に見てもらいたいに決まっているだろ?」  
「ほんで?」  
「…その……『面白い』とか言ってくれたら尚嬉しいと言うか…。でも、べ…別に私はそんな理由でマンガを描いてるわけでは…っ」  
ナギがそう言うと、サクヤは優しくナギの頭を撫で始めた。  
 
「なんも恥ずかしがることあらへんで?…誰かて書いたらいろんな人に見てもらいたいもんや。  
 その延長線上でGJとか言われて褒められたら、続き…もしくは他のss書こうって思うやろ?  
 さっきも言うたけど、読み手の方かてGJって言う時はその作者に期待しとるって事や。  
 少なくともウチがGJ言うておだてる時は、その作者の次回作…もしくは他のssに期待してる時や。」  
 
「…そうか、わかったぞサク!私もGJと言われる様な素晴らしいマンガ家になるぞ!」  
そう言ってガッチリと握手を交わす二人。…と、その時一人の執事が現れた。  
 
「サクヤお嬢様、次のお仕事が決まりましたのでそろそろ…」  
「なんや巻田、もう次のssが入ったんかいな。…で相手は誰や?またあの借金執事か?  
 …ったく、あいつ平和そうな顔してやる事激しすぎるからなぁ。…まだお尻ヒリヒリしとるっちゅうねん。」  
それを聞いてナギはムッとした表情をしている。  
 
「サク、これはあくまでも書き手の妄想…フィクションなんだぞ!  
 …ハヤテが愛しているのは私なのだから……その、ほ…本気になるなよ!」  
「アハハッ、わかっとるわかっとる。まぁ今回の話はウチがあの執事をいじめる話なのを祈っとくわ。…ほな。」  
すると巻田は少し申し訳なさそうに口を挟んだ。  
「その…今回の相手はナギお嬢様なのですが……。」  
その言葉を聞いてギョッとする二人。  
 
「なんや、百合かいな。結構マニアックな作者やなぁ。」  
「そそそ、そんな事出来るか!…だいたい私とサクヤは姉妹同然……」  
「まぁそんな慌てんと、まだ内容がエロと決まったわけやないし…どうせラブラブで手でもつないでハッピーエンドってやつやろ。」  
「そ…そうなのか?……それならまぁ…。」  
 
すると巻田は更に申し訳なさそうな顔をしている。  
「あ…あのですね……内容なんですが……。」  
「なんや?もったいぶらんとはよ言いや。」  
「その…サクヤお嬢様がナギお嬢様を攻め、びしょびしょになりながらイッしまっナギお嬢様が、  
 おかしくなって今度はサクヤお嬢様を逆に辱めて二人とも果ててしまう…という内容でして…。」  
それを聞いて呆然とする二人。  
 
「前言撤回や……相当マニアックな作者やなぁ。」  
「そ、そう言う問題では……わ、私はダメだぞこんなの!断る!」  
しかしサクヤはナギの手をひいて寝室へ向かった。  
 
「ワガママ言うたらあかんでナギ?読み手の期待に答えるのが書き手なら、書き手の期待に答えるのがウチらやろ?」  
 
 

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