「よし、来いハヤテ!!」  
「…でも本当に大丈夫ですか?」  
「遠慮はいらん!本気でかかってこい!!」  
 
珍しく剣道場に足を運んだと思うと、ぶかぶかの防具に身を包み竹刀を重そうに持って構えるナギ。  
それもこれも昨日ナギが読んだ某剣道マンガの影響らしい。  
ナギ的にはそのマンガを読んで剣道の極意を得とくした……気になっているようだ。  
「そ、それではお譲様…行きますよ。」  
「うむ、手加減なんてしてみろ!ただじゃおかないからな!!」  
そう言ったナギに対しハヤテが本気を出す訳もなく、いかにもわざとらしくナギの必殺技を受けたのだった。  
「いやぁー、さすがはお譲様です。全くかないませんよ!お見事です!!」  
「…………。」  
もちろんハヤテの猿芝居などナギに通用する訳もなく、ナギはハヤテをキッと睨みつけている。  
そして何かいい事を思いついたと言わんばかりに不気味な笑みを浮かべ始めた。  
 
「ハヤテ、そんなことでは我が三千院家の執事など勤まらんな。お前はもうクビだ。」  
「…えぇ?!……お譲様…じょ、冗談ですよね?」  
「いいや、本気だ。……しかし私も鬼ではない、お前にもう一度チャンスをやろう。」  
そう言ってナギが出した提案…それはハヤテが本気を出して『ナギから一本とる』と言う条件だった。  
「では行くぞ!!」  
ハヤテに考える時間も与えずナギは突進した…  
ハヤテはとっさに、ほんの少し…それこそ100分の1程度の力でナギに軽く面を放った。  
「うわぁ…っ!」  
しかしナギはその100分の1の力にも耐えきれず、少し後ろに飛ばされ尻もちを付いてしまった。  
「イテテッ…」  
「だ、大丈夫ですかお譲様!申し訳ありません…。」  
ナギは頭にかぶっていた防具を外しておでこのあたりを擦っている。  
「…よ、良いのだ。…しかし、やはり私ではお前の本気には敵わなかったか。」  
「は…はぁ。」  
もちろんハヤテも本気を出していないなんて事は言える訳もない。  
ハヤテは小走りでナギの元へ向かい、倒れているナギの肩を抱き抱えた。  
 
「本当に大丈夫ですかお譲様?」  
ハヤテは心配そうにナギの顔を見ている。  
「わ、わっ……こ、これくらい平気に決まってるだろ!」  
「…しかし顔が少し赤いようですし…念のため保健室へ…。」  
「そ…それは、お前が抱き寄せたり……その、それにハヤテの顔がこんな近くに……うにゃうにゃ…。」  
「…お譲様?」  
「…な、何でもない!…わかったからとりあえず保健室へ行くぞ……。」  
そう言ってナギが防具をすべて外し立ち上がろうとすると、ハヤテはナギをヒョイと持ち上げた。  
それはまさに世に言う『お姫様抱っこ』と言う、ナギにとって嬉しくてとても恥ずかしいものだった。  
「こ、こらハヤテっ!何をしている!降ろせ!!」  
「ダメですよお譲様、ジッとしていてください。」  
「だ…だけど……その、…校内の生徒に見られては恥ずかしいではないか…。」  
ナギはハヤテにモジモジしながらそう言った。  
「安心してくださいお譲様!このハヤテ、生徒に見えないほどのスピードで保健室まで走りぬいてみせます!」  
「そ、そうか。よし…それでは頼んだぞ、ハヤテ。」  
ナギはそう言ってどさくさまぎれにハヤテの首へ抱きつくように掴まった。  
 
「それではヒナギクさん、僕はお譲様を保健室に連れていきますので今日は失礼します。」  
「あー……ぅん。」  
なんだか気まずそうにそう答えたヒナギクを見て、ナギはある事に気づいた。  
「……!!おい、ハヤテ!!言ってるそばからヒナギクに見られてるではないか!!」  
「…あっ、……あははっ…すみません。」  
「…うぅ〜…っ!もう良いから早く行けー!!!」  
ナギが顔を真っ赤にしてそう言うと、ハヤテは急いで保健室へ向かった。  
 
「失礼しま……あれ?先生いないのかな?……ん、お譲様到着しましたよ。」  
「…なんだ、もう着いたのか……。」  
ナギはそう言うと名残惜しそうにハヤテの腕の中から降り、保健室に入って行く…  
 
「とりあえず…消毒くらいなら僕でも出来ますんで椅子に座ってください。」  
ハヤテにそう言われ椅子に座るナギ。…しかし二人きりの保健室というシチュエーションにいささか緊張してしまう。  
そしてハヤテがナギの前髪をあげておでこを見る為顔を近づけると、その緊張はますます高まった。  
「……あれ?…どこにもキズなんてついてないなぁ…。」  
そりゃ防具を被っていたのでキズなんてなくて当たり前だ。  
「だ、だから平気だと言ったではないか!!」  
「…でも顔が赤いですよ?……もしかして熱が…。」  
ハヤテはそう言うと、今度はおでこをひっつけてナギの体温を測っている。  
少し口元を前に出せばキスが出来る距離……ナギの顔はますます赤くなっていった。  
「ハ…ハヤ、ハヤテ!…その……少し近すぎはしな……」  
「うーん……これじゃあ良く分からないなぁ…。」  
ハヤテはそう言うとナギから離れて何やら机の中をゴソゴソしている。  
「…あっ、あったあった!お譲様、コレで熱を計ってみましょう!」  
そう言ったハヤテが手に持っているのは体温計だった。…ちなみに諸事情で口に咥えるタイプのものだ。  
 
「バ、バカ者!そんなどこの誰が使ったかもわからん物…気持ち悪くて使えるか!」  
「そんな事を言われましても……。」  
「だいたい毒でも塗ってあったらどうするんだ!」  
「そ、そんなわけ無いじゃないですか。」  
ハヤテはそう言って、毒味をする様にその体温計を口に咥えた。  
「ほら、平気ですよお譲様。」  
ナギはそのハヤテの咥えた体温計をじっと見ている…  
「(あ、あの体温計を私が咥えたら……そ…それは、か…か、間接キ……っ!)」  
ナギが一人そんな妄想に浸っていると、ハヤテは咥えた体温計をナギに渡した。  
 
「ハ、ハヤテ!これでは…その、か…かか、間接キスになるのではないのか?」  
「そう言えばそうですね。…そうだ、ぼく水道で洗ってきますよ。なんだ、最初からこうすれば良かったんだ!」  
ハヤテはそう言ってナギの持っている体温計を取ろうとした……が、ナギはそれを離さない。  
「…ま、まぁなんだ……せっかくハヤテが命を張ってくれたんだ、私もそれに答えねばなるまい…。」  
「…そんな大げさな……。」  
ナギは体温計を見つめたまま、3回ほど深呼吸をして体温計を咥えた。  
元に戻っていた顔色がみるみる赤くなり、顔の温度は上昇していく……  
 
―――39℃。  
 
ハヤテは大慌てでナギを抱きかかえて屋敷へ帰った。  
「マリアさん!!マリアさん何所ですか!!」  
ハヤテがナギをベッドに寝かせマリアを探していると机の上に置手紙を発見した。  
『ハヤテ君へ――ちょっとクラウスさんと食料の買い出しに行ってきます。』  
その手紙を発見したハヤテは、とりあえず帰ってくる前の間看病をするためタオルとお湯を持ってナギの部屋へ向かった。  
 
「お譲様…大丈夫ですか?」  
「……おぉ、ハヤテか…マリアはどうした…?」  
ハヤテはマリアとクラウスが買い物に行って不在と言う事を告げた。  
「…そうか、ではこの屋敷にはお前と私の二人しかいないのだな……二人っきり…。」  
そう言うと、ナギの顔はまたもや赤くなってしまう。  
「お、お譲様!しっかりしてください!!」  
そう言ってナギの頭を抱きしめるハヤテ……これによるナギへのダメージは深刻だった。。  
「…なんだか体と言うか……頭が…顔が熱いんだ…。」  
「…そうだ、お譲様良い物を持ってきましたよ。これで少しはサッパリするはずです。…バンザイしてみてください。」  
「こ、こうか…?」  
ハヤテはそう言って手をあげたナギの服をスルッと脱がした。  
「…はぇ……っ?」  
状況が飲み込めないと言ったナギの体を、ハヤテはお湯で濡らしたタオルで拭いて行く。  
そして背中を拭き終わったハヤテはナギの体の前も拭き始め、  
その手が胸に当たったと同時にナギはようやく状況が飲み込めた。  
「…ハ、ハハ……ハヤテ?!」  
「あまり動くとお体に悪いですよ?じっとしていてください。」  
「じっとって…お、おまえ……わっ…そんな所……ふぁ…っ…!」  
 
…結局隅々まで拭かれてしまったナギはパジャマを着せられ布団にもぐった。  
「(ハ…ハヤテの奴め……いくらなんでも今のは…)」  
布団の中にもぐって独り言を言っていると、何やら布団がごそごそ動いた様な気がし、ナギは振り返った。  
「うわぁ…っ!!……ハ、…ハヤテ?!」  
ナギが振り返ると、目の前にハヤテの顔があった。…どうやら布団に潜り込んで来た犯人はハヤテらしい。  
 
「お譲様、失礼します…。」  
「ハ、ハヤテ!落ち着け、わ…私たちはまだ子供じゃないか!その…嫌ってわけでは無いのだが…  
 マリア達がいないとはいえ、その…まだ少し早いと言うか……ほ、ほら!こういう事はいろいろ段階を経てだな……」  
「…???」  
ナギの必死の説得をハヤテは頭に?マークを浮かべて聞いている。  
するとナギは不意に自分の太もも辺りに何かが触れる感覚を感じた。  
「…お、お前!人の話を聞いているのか…っ!……あ…ぅっ…そんないきなり…わ、私にも心の準備って物が……!」  
「すこしだけ我慢してください、すぐ終わりますから。」  
「す、す…すぐ終わるとかそう言う問題では……う…ぁ……っ!」  
ナギがそう言うと、ハヤテはいったん手を離し布団から出て洗面器の方へ向かった。  
良く見てみるとその手には先ほどのタオル…そしてそれをお湯で洗うと再び布団の中へ入ってきた。  
 
「…ハヤテ、お前さっきから何してるんだ?」  
「お譲様の体を拭いているのですが……先程お譲様が恥ずかしそうにしてらしたので見えない様に布団の中でと思いまして…」  
それを聞いてナギは少しキョトンとした顔をしてしまう…。  
「なっ…そ、それならそうとハッキリ言わんか!…私はうっかり……その…勘違いを……うぅ…っ」  
「申し訳ありません。…こう言う事は初めてでして…。」  
ハヤテはそう言うと再びナギの足元を拭き始めた。  
ハヤテは体を拭いているだけ―――そう思っていてもナギは太もも辺りを触られるとついピクッと反応してしまう。  
結局足元を拭き終わった頃には、ナギの顔の温度は帰ってきた時よりも上昇していた。  
するとハヤテは事もあろうかナギの下着に手をかけ、膝のあたりまで下着を降ろしその部分にタオルをあてがった。  
 
「…?!!…ハ、ハヤテ…そんな所まで拭くのか?!」  
「良く分かりませんけど……ここも汗がびっしょりだったもので…」  
もちろんそれは汗などでは無く、ハヤテに体中を触られた事で出たナギの愛液だった。  
しかし、ハヤテが触ったから気持ち良くて出た―――などと言える訳もなく、ナギはソコまで丁寧に拭かれてしまう。  
「…ふ……ぁっ!ハヤテ…もっとゆっくり……激しく…しては………だめ…っ」  
「…あれ?……拭いても次々と出てきているような…」  
ハヤテはそれを確かめる為に、ナギの割れ目に指をあてがった。  
「!!!??うわ…・ぁっ!!ハヤテ、本当にダメだ……そんな…っ!」  
「…やっぱりどんどん出てきてる……汗じゃ無いのか?…もしかしてこれが病気の原因?!」  
ハヤテはナギの言う事も耳に入らず、その液体を確かめる様に指でグイグイ押して行く。  
ソレと比例してナギの呼吸は荒くなり、口からはイヤラシイ声が漏れていた。  
 
「ハヤテ…ふ…ぁ……ハァ…っ…ダメって言って……ダメ…んぁぁ…っ!」  
「…お譲様、少しくすぐったいと思いますがもう少し我慢して下さい。」  
「我慢って……ハァ…ッ、そんな……無理に決まって……あ…ぅっ…!」  
もはや何を言っても、ハヤテはナギの病気の事で頭がいっぱいだった。  
するとナギの体にある変化が起こり始める…。  
「…うっ……あん…っ!ハヤテ、体が……熱い…熱いぞ…。…なんて言うか……お腹の中が熱い…ふぁぁ……っ!」  
この声にはさすがのハヤテも気が付き、慌てて手を離してナギを心配する…  
しかしナギはその手を掴み、さっきしていたことを続けるようにハヤテに命令した。  
まだ子供とは言え、自分に迫りくる波の様なものを感じていたのかもしれない。  
 
「ハヤテ…体中熱い…頭も真っ白になってきたぞ……んっ…!私は…ハァ…ッ……死んでしまうのか…?」  
「そんな!お譲様、弱気な事を言わないでください!」  
ハヤテはナギの割れ目を擦り、ナギはそれを感じている……なのにこのシリアスなセリフ、はたから見れば滑稽である。  
しかし当の本人たちは涙を浮かべ大マジだった。そしてナギは最後のお願いをするのだった…  
「…ハヤテ、私は死ぬ前にお前とキスがしたい。私はお前の事が好きなんだ…。」  
「お譲様……死ぬ前だなんて言わないでください…っ!」  
ハヤテはそう言って涙ながらにナギにキスをした…。  
唇が離れると、ナギはにっこりと笑いハヤテの服を力いっぱい掴み最後の時(絶頂)を迎えた。  
「ハヤテ…熱い……もうダメだ…私は……はぅ…っ!」  
「お譲様!!」  
「ハヤテ……ハヤテ…ハヤテ、ハヤテ、ハヤテー!!んんっ…!…んぁぁぁぁ!!」  
ナギはハヤテの名前を連呼し、そのまま果ててしまった。  
呼吸を荒くしてぐったりとしたナギをハヤテは泣きながら抱きしめている。  
…しかし、しばらくすると当然の如く起き上がり元気になっているナギ…。  
「お譲様……?」  
「おぉ、ハヤテ。なんだかさっきのでスッキリしたら体が熱いのも無くなったぞ!」  
その様子を見てハヤテもホッとしている。  
「こ…これもお前が私にキスをしてくれたおかげかもしれんな。…その、…ありがと。」  
「キ…キス?!……そう言えばあの時勢いでつい…」  
体は拭いただけと思っているので、キスと言う言葉に過剰に反応して顔を真っ赤にしてしまうハヤテ。  
「なんだ?今度はハヤテの顔が赤いぞ?…よし!今度は私が看病してやろう!」  
「そ、そんな!これは風邪ではないので大丈夫ですよ!」  
「遠慮する事はない!…さぁまずは体を拭いてやる!服を脱げ!!」  
「わっ…ちょ…っ!!お譲様………らめぇぇーー!!」  
 
 
 
 
そんなにぎやかな三千院家の月曜日。(;´Д`)  
 

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