「!‥‥ハッ、ハッ、ハヤテの部屋のドアが‥‥、開けっぱ‥‥!!」  
ナギは、掃除の行き届いた薄紅色の絨毯が敷き詰められた廊下に立ち尽くしていた。  
目の前には、半開きになったハヤテの居室のドア。  
 
今、屋敷にはナギ一人しかいない。  
クラウスとマリアは帝に呼び出されて本家へ行っており、ハヤテは白皇学院で補習を受けていた。  
補習は、ハヤテのような必修者の外に希望者も参加できるのだが、ナギはコンクール用の新作漫画の追い込みがあったために参加しなかったのだ。  
 
「あ‥‥、開けっぱとは、無用心にも程があるぞ!そ、それにだ、情報通信網の高度化によって社会や人間関係が複雑になっている現代にあっては、プ、プ、プライバシーの確保の困難さはますます増大しているのだ!!そ、それなのに‥‥」  
ナギの場合、振り回す文言や理論の難解さと、心理的混乱の程度は正確に正比例の関係にある。  
彼女の足は、靴底にあたかも強力な接着剤を塗られたように、その半開きのドアの前に釘付けになっている。  
唾を飲み込む音が、大きく耳元に響く。  
少しずつ腰を屈め、上半身をおずおずと突き出すようにして、入り口から、そっと室内を垣間見る。  
これ以上ないほどの速さで、鼓動が強く、速くなる。  
自分が激しく恋焦がれる男の、文字通り“心の中”をこれから覗くのかと考えると、耳がカッと熱くなり、後頭部に急激に血が集まる感覚に、一瞬、目の前が白くなる。  
緊張と興奮によって全身は速やかに無感覚になっていったが、細かく震える膝を何とか励まし、摺り足でドアに近づく。  
歩を進める度に、足の裏からの刺激がチリチリと脛に這い上がってくる。  
 
ぎこちない自動人形のように歩くこと数歩。  
とうとう、つま先が敷居を越え、愛しい男の部屋に一歩を記す。  
「(この私の一歩は小さい一歩だが、私にとっては大きな一歩だ!)」などと、他の惑星に探査に行った感想のような文言がナギの頭の中に渦巻く。  
半開きのドアのノブをそっと押す手に、ノブがやけに大きく、ドアがとてつもなく重く感じられる。ノブに触れた指先から、ビリビリとした感覚が肘にまで伝わる。ナギは、自分の手が冷え切り、血の気を失っている事に気が付いた。まるで他人の手のように冷たく、白い。  
やっとの思いで侵入した室内には、レースのカーテンが和らげた日の光が満ちていた。  
更に、二歩、三歩‥‥。上質な床材がコツコツと足音を刻む。  
正面の窓辺には、寝具がきちんと整えられたベッドがあった。その横にはやはり几帳面に本が高さ順に並べられている勉強机。  
「(‥‥あっ!)」  
完全にハヤテの部屋に入ってしまったことで肝が据わったからなのか、ほんの少しだけ感覚を取り戻したナギの鼻腔は、ある匂いを捉えた。  
「(ハヤテの、匂い‥‥。)」  
 
ほんの微かな香りだが、想い人の香りにナギの心臓は激しく高鳴った。  
私が危機に陥ると、誰よりも早く駆けつけて逞しい腕で抱き上げ、鬱蒼とした木立の中だろうと飛び石しかない池の上だろうと構わずに、ハヤテは全力で駆け抜けてくれる。  
そうした、さすがのハヤテでもいささかの汗をかかざるを得ない出来事の最中には、ほんの一瞬立ち止まった瞬間、或いは風向きの具合などで彼の匂いを強く感じることがある。  
その時程では無いにせよ、これは確かに、ハヤテの匂い。  
と、次の瞬間、ナギの瞳がキラリン!!と輝き、その視線が、ベッドの上にきちんと畳まれて置かれているハヤテのパジャマに注がれる。  
ふらり、とした足どりでベッドに歩み寄る。  
「あ、あ、あくまでも、使用人がどのような環境で睡眠をとっているのか、つまり、ベッドの硬さをだな、調べるだけなのだ‥‥」  
勿論今までナギはその様な経験をした事は無かったが、まるで混みはじめた電車の中で一癖在りそうな客の間に挟まれた座席の隙間に座るように身を小さくしながら、ベッドにちょこんと浅く腰掛ける。  
パジャマを手に取り、その匂いを確かめたい。しかしここで、ナギは、ハヤテが毎夜無防備に身体を預けているベッドに腰掛けているという現実に気付き、しばし強い興奮と幸福に浸ってしまった。  
やがてその興奮も収まり、ぎこちなく身を捩ると、おずおずと伸ばした両手で、そっと掬い上げるようにパジャマを持ち上げた。  
 
肌触りの良い綿の生地に形の良い小ぶりの鼻をゆっくりと埋め、深く静かに息を吸い込む。  
「(‥‥!)」  
ハヤテは元々体臭が強くはないし、物心ついた時から肉体労働も接客業も満遍なくこなしていたこともあって、身体を清潔に保つ習慣が身に付いていた。  
そのため、年頃の少女ならば思わず顔を顰めてしまうような脂っぽい男臭さや不潔ですえた汗臭さなどとは全く違うものだが、それでもやはりそこにはハヤテその人を強く感じさせる彼特有の匂いがあった。  
 
ハヤテの匂い。  
出会ったあの夜、降り出した雪が街を白く染め始めたクリスマス・イブ。  
自動販売機とやらの中にある『あたたか〜い』が手に入らず寒くて死にそうだった自分に、ハヤテは「女の子が身体を冷やすのは良くないから」と彼のコートを着せてくれた。  
そこにふんわりと篭っていた温もりと共にあった匂い。  
「(ハヤテ‥‥。)」  
痛いほど心臓がバクンバクンと激しく波打ち、鼻腔を中心点にポーッとした火照りが体の隅々までじわじわと広がっていくのを感じて、少女はふるふると小さく震えながらほんのり色付いた溜息を漏らした。  
自らの溜息の艶めかしさに、はっと我に帰る少女。  
「わ、わ、わ、私は何をしているのだッ!?いや、これは、使用人の着衣の衛生‥‥。」  
しかし、ナギは再び熱を帯びた溜息を漏らすと、誰とも分らぬ相手に対する言い訳を中止した。  
そして、パジャマを、せわしなく上下している胸元に押し当てるようにして抱き締める。  
 
(これが、ハヤテの頭だったら‥‥)  
そうだとすれば、ハヤテの顔は、今、自分の胸元に埋められていることになる。  
ナギを傷付ける者に対しては凍り付くほどに冷酷な表情となるが、普段は蕩ける様な微笑を湛えているハヤテの顔は、何時まで見ていようとも決して見飽きることはない。  
そんなハヤテの顔が、今‥‥。  
「‥‥ハヤテぇ‥‥。」  
いつもの断定や命令の口調とは全く違う、甘い女の声音がナギの口から漏れた。  
 
ナギは、自分の胸元にハヤテが深々と顔を埋めているという妄想を思う存分膨らませていく。  
ハヤテの顔が、その位置を少しずつ変える。  
その唇が、薄手のTシャツの生地の下にある膨らみ始めたばかりの乳房をなぞる。  
その頂きを捉えようと緩々と蠢いていた唇が、目的の場所を探し当てる。  
少年の唇が、硬くなり始めた小さな突起を、ほんの少しだけ力を入れて咥える。  
ナギは、片方の手でパジャマを胸に押し付けながら、もう片方の手をそれとTシャツの間にモゾモゾと差し入れると、ノーブラの胸にツンと浮き出た乳首を生地の上からキュッと摘んだ。  
 
「ひッ!」  
短い嬌声を発しながら、少女は肩をピクンと震わせた。  
それを合図としたかのようにナギは全身の力を抜き、まるでスローモーションのようにベッドに仰向けに倒れていく。  
 
ツインテールに整えられた長く美しい金髪が、ベッドの上に風紋のような文様を描く。  
寝転んでいることで髪が左右に分けられ、如何にも聡明そうな額が覗く。  
緩く弧を描く細い眉の下には、何時もの挑戦的で自信に満ち溢れた眼差しの代わりに、愛しい男を想ってトロンと潤む翡翠色の瞳。  
その目元からふっくらした頬にかけては、見ているほうが気恥ずかしさを感じる程に紅に染まっている。形の良い耳も、それに負けないくらい、濃い桜色に染まっていた。  
 
ナギは既に自慰を知っていたし、してもいた。  
その知識や興味の供給源は、勿論、彼女の膨大な同人誌コレクションや青年コミックだが、それをすることが楽しいと思うようになったのは、つい最近のことだ。  
初めて「してみよう」と決心した時、乳房や乳首はともかく、自分のものとはいえ秘所に触れる事には嫌悪にも似た抵抗感があった。  
ようやくそれを克服しても、なかなかコツが掴めずに思わず擦りすぎてお風呂の時に沁みたりした。  
上手に出来るようになった直後、マリアと一緒に寝ている時にコッソリやり、絶頂の寸前、いきなり彼女に「どうしたの?泣いてるの?」と声をかけられて死ぬ程慌てたという経験をしてからは、  
昼間、主にマンガの執筆に使用している自室で、中側から鍵をかけてするのがスタンダードとなっている。  
お相手は、或いは筋骨隆々の剣士、或いは獣人の美少年、或いは機動兵器の美少女パイロットなどにハヤテの面影を重ねたキャラクターだ。  
何故なら、ハヤテを直接おかずにすると、決まって妄想の途中から彼を弄んでいるような罪悪感に囚われ、醒めてしまうからだ。だが、ハヤテとの間でラブラブなイベントが発生した後などは、彼との身体がバラバラになりそうなほど激しい情事を心行くまで妄想できた。  
 
「ふぅ、‥‥んッ!」  
唇と乳首を隔てる布が鬱陶しい。  
もっともっと、ハヤテの愛撫を直に素肌に感じたい。  
「(そうだ‥‥!)」  
少女は徐に身を起こし、パジャマをそっと傍らに置くと、もどかしそうに身をくねらせながら、しっとりと汗を含んだTシャツをベッドの上に脱ぎ捨てた。  
つつましやかだがふんわりと形良く隆起した乳房と、その先端でぷっくりと勃ち上がっている赤い乳首が露わになる。  
肌理細やかな白い肌はすっかり桜色に上気し、うっすらとかいた汗で艶めかしく光っている。  
甘酸っぱい少女の匂いが辺りにふわりと漂う。  
 
ナギは、パジャマの上着に緩々と両手を伸ばしてそっと両肩口の辺りを摘み上げると、一回パサッと払ってしわを伸ばし、ファサッと羽織るように背中に回すと、細く白い腕を優雅に操って袖に通した。  
前身頃の左右を合わせ、するすると落ちてくる袖口に少々難儀しながらボタンをかける。  
そして、自分をきつくきつく抱き締めた。  
『間接キス』といえば甘酸っぱい青春ラブコメの必須要素だが、その“成立要件”は「ある物体―例えばコップ、ジュースの飲み口、縦笛の吹き口など―の、自分が好きな相手の唇が触れた箇所に、自分の唇を付ける」だ。  
ならば、「ある物体の、自分が好きな相手の“肌”が触れた箇所に、自分の“肌”を付ける」というのは‥‥?  
それは、『間接キス理論』によれば、「互いの裸の胸と胸をくっつけ合っているに等しい」ということになる。  
 
少女は腕をゆっくりと解くと、今度はパジャマの上から自分の上半身を隅々まで撫で擦る。  
「‥‥、ふうッ‥。」  
甘い吐息が漏れ、妄想がむくむくと湧き上がる。  
ハヤテの優しい掌が、ナギの首筋を、鎖骨を、肩を、二の腕を、肘を、そして指先まで撫で下ろし、更に、脇腹、臍を撫で上げ、肋骨を一本一本数えながら這い上がって乳房に辿り着く。  
少女の汗がパジャマの布地の中でハヤテのそれと混じり合い、その匂いが少女の鼻腔を充たしてゆく。  
「(抱かれてる時って、こんな匂いがするのかな‥‥?)」  
 
そっと両乳房を包んだハヤテの掌がもぞもぞと蠢きだし、徐々にその動きが強くなってゆく。  
「ハヤテッ‥‥。」  
順調に膨らみつつある少女の乳房が彼女自身の手で揉みしだかれ、少々厚めのパジャマの生地越しでも、コリコリとした乳首の感触が掌に伝わる。  
「‥‥、ハァ‥‥、あアッ‥‥。」  
少女の腰は切なげにくねくねとくねり、それに合わせるように両膝がぐりぐりと擦り合わされる。  
「(‥もう、そろそろ‥‥。)」  
先程と同様、ナギは上半身の力を抜き、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。  
片方の手がそろそろと下半身へ移動し、仕立ての良いキュロットのボタンをはずす。  
その内側のフックもはずされ、ジッパーがゆっくりと下げられる。  
インクの染みと出来かけのペンだこがあるけれど細くてきれいな指が、白いショーツに辿り着く。  
今そこがどのような有様になっているかなど、先刻承知。  
ただ、ハヤテに触って、挿れて貰いたいだけ。  
 
先ずショーツの上から指を這わせたが、思っていたより遥かにびしょびしょに濡れていて、それが自分のイヤラシさを証しているようで、耳たぶがカーッと急速に熱くなっていくのがわかった。  
痛々しいくらいに紅く熟れている少女の秘所は、布の上からの刺激にもとても敏感に反応する。  
「ひゃン!!」  
いつもと同じ強さで陰核を摘んだだけなのに、鋭く大きい快感が少女の脳に突き刺ささった。  
短いが大きい嬌声と共に、首筋に力が入り、腰が何かを避けるように或いは求めるように力強くグリッと旋回する。  
自動的に指が陰唇の位置を確認し、摩り始める。それに比例して腰のくねりも大きくなり、乳房を揉む手にも更に力が入る。吐息が甘く、熱い。  
この状態だと、イクのは時間の問題だ。  
 
直接触るか、否か。  
ナギは勿論、何度でも達することが出来る女性は「ヤリ直し」(?)がきくから、男性と違ってそれ程“ヌキどころ”に注意を払わなくてもよいということは理解してはいた。しかし、もともと性欲が強いほうではなかったので、なるべくなら一回で満足することを望んだ。  
「(‥‥どう、する‥‥?)」  
ハヤテの部屋、ハヤテのベッドの上、そしてハヤテのパジャマを素肌に纏いハヤテに抱かれている妄想の最中なのだ。  
やはり、ハヤテとひとつに‥‥。  
ショーツの上から陰唇を摩っていた指先が一旦動きを止め、ショーツの縁を潜る。  
指先は、ヌルヌルと愛液に濡れそぼる生え揃って間もない金色の陰毛を掻き分けつつ膣口を目指す。  
ただし、「挿れて、絶頂」という目的を達するため、陰核は勿論、尿道口など敏感な場所を慎重に迂回した。最も、“敏感でない箇所”など、そこには存在しないのだが‥‥。  
 
そろそろと慎重に進む指先が小陰唇を乗り越える際、腰がビクンと反応する。  
「くぅッ!!」  
思わず摩りたくなったが何とか辛抱して膣口に辿り着く。  
先ずは、その周囲をゆっくりと撫でる。  
「‥‥ああッ!‥‥ハ、ハヤテ‥‥!」  
無意識に切ない声でハヤテを呼ぶ。腰の動きが一層せわしなくなる。すでにパジャマのボタンははずされていて、紅く膨らみきった乳首は直接指先でグリグリと捏ねられている。  
少女の鼻腔は自らの濃い汗の匂いを感じ取り、その耳には静かだが規則的な衣擦れが微かに聞こえていた。  
 
指先は意思の制御をはなれ、自動的に膣口の縁に移動した。  
本能的に膣内を爪で傷つけぬような動きや位置を選びながら、縁をヌメヌメと捲るように摩り始める。  
少女の脳内では、今まさに、ハヤテの分身の先端が秘所の入口に宛がわれていた。  
「‥‥、ハ、ヤ、テ!‥‥ハ、ヤテ、‥‥ハヤテェェッ!」  
勿論、普段はこんなに声を上げることは無い。だが、もう、どうしようもなかった。  
指先の動きが、自動的に強く、早くなる。腰の辺りに、何かの“力”が蓄積され始める。  
 
力無く天井の模様を見る瞳は快感によって涙腺が緩んだことで熱く潤み、半開きになった可愛らしい唇からは、絶え間なく切ない喘ぎが漏れ、口角からは一筋の唾液が頬へ流れている。  
やがて全身にふるふると小刻みな震えが走り、熱く蕩け切った秘所に体中の全神経が集中する。  
指先の動きは更に大胆になり、第一関節までが膣内に侵入し、火が付いたように火照り滔滔と愛液が流れ伝う膣壁をグニグニとマッサージするように少し力を入れて撫で回す。  
少女は必死に、ハヤテのモノの先端がぬるりと膣への侵入を開始する様子を脳裏に描くが、無常にも、思考が停止し始める。そして‥‥。  
 
数十秒後、フゥッと意識が遠のき、頭の中が真っ白になる。  
口からは何かの言葉が発せられているのかもしれないが、今の少女にはそんなことを詮索する余裕はまったく無いし、実際、興味も関心も無かった。  
膣を中心とした痙攣の波が外性器全体をヒクヒクと震わせ、更にそれは腰に伝播して力強いが不規則な前後運動となり、その次の瞬間、それは全身に波及して少女は汗に塗れ濃い桜色に上気した細く美しい体をぶるッぶるッと何度もうち震わせた。  
少女は、達した。  
 
しばらくの間、絶頂の余韻に身を委ねがてら呼吸を整えると、ナギは緩々と身を起こした。  
ベッドに身を横たえたときにはきちんとボタンがはまっていたパジャマは、今では前が全開な上に片方の肩からずり落ちていたので白く華奢な肩が丸出しとなり、股間からは、身じろぎする度ににちゃにちゃとした感覚が伝わって、不快だった。  
パジャマのズボンの方を穿くのを思い止まったのは、やはり正解だった。  
 
さて、これから、ひょんなことから遭遇した超弩級の幸運を楽しんだ後片付けをしなければならない。  
先ずはパジャマを何とかしなければならなかったが、これはきちんと元通りにたたんでおけば問題なかろう。  
勿論、移り香という問題はあるが、あのハヤテのことだ、間違っても、『お嬢様、僕のパジャマを御召しになりましたか?』などと尋ねてくるはずは無い。従って、ベッドも同様、メイキングし直すだけで良いだろう。  
少女は、丁寧にパジャマを脱いだ。  
既に汗でベタつき始めた身体が部屋の空気に直接晒される。  
火照りの収まりきらない身体にはその感覚が心地よく、少女は自身の濃い汗の匂いに急かされながら、上半身裸のまま、キュロットのボタンやジッパーを掛け直しただけで片付けを開始した。  
だが、いざ実行する段になると、パジャマはかなりナギの汗を吸って重くなっており、やはりそれはシーツも同様だった。  
しかし、すぐにトボケ通す意志を固め直す。自分の名誉を傷付けずに、ハヤテの寝具に自分の汗が染み込んでいるという状況をハヤテやマリア達に合理的に納得させる説明など、あろうはずもなかった。  
 
パジャマは、キチンとたたまれていたズボンの上に、きちんと畳み直した上着をそっと載せた。ベッドは、シーツの皺を綺麗に伸ばし、掛け布団の歪みを調整した。この辺は、普段、マリアの流れるようなベッドメイキングを観察しているから、要領は心得たものだった。  
最後に、自分が着ていたTシャツを置き忘れてはいけないと、そそくさと袖を通した。  
作業が一段落した安心感とハヤテの帰還予定時刻にはまだまだ間があるということで、少女の胸にちょっとした悪戯心が芽生えた。  
 
ナギの視線が、ハヤテの勉強机の一番下の鍵付きの大きな引き出しに注がれる。  
「ハヤテの行動パターンからして、ベッドの下ではあるまい。」  
つかつかと机に歩み寄ると、先ず、一番上の小さな引き出しを開ける。  
「ビンゴだ!ムフフ。」  
少女は、中にあった小さな鍵を摘み上げると、それを大きな引き出しの鍵穴に差し込み、捻った。  
カチャン、と開錠の音がする。  
ハヤテの両親は、借金の踏み倒しなどゲーム程度にしか考えない、そしてその破綻を一人息子に全て押し付けて平気で姿をくらますという生来の屑人間であり、  
そういう両親に育て、いや、利用され続けてきた彼ならばこそ、大事な、或いは重大な意味を持つものは、たとえ気休め程度ではあってもセキュリティーのレベルがより高いところに収容するはず、という少女の読みは的中した。  
「何を隠しているのだ?」  
もうオイタは止めなさいって。それより、窓を開けて換気をするほうがいいんでないの?という天の声のツッコミを無視したナギは、ニヤニヤしながら引き出しを覗き込む。  
そこには、普通の高校生が普通に買えるグラビア誌や青年コミックが数冊、キチンと判の大きさ順に揃えて入れられていた。  
 
椅子に腰掛けると、その内の一冊を取り上げ、パラパラとページを繰って見る。  
内容はナギの基準からすれば緩くて緩くて笑ってしまうものだったが、その本を背表紙を下にして机の上にコトリと置き、表紙と裏表紙を軽く手で支えた。  
背表紙がクリップ(針金)止めではなく樹脂糊止めであるその本のページは、程なく、大きく開くページとそうでないページに分かれた。  
大きく開くページは普段よく読む、或いは大きく開いて読んでいるから、開きやすく癖が付いているのだ。つまり、ハヤテが好む“オカズ”のページがわかるというわけである。  
 
やがて全ての本を調べ終えたナギは、「ハヤテの好みは『至極普通の女性』であり、その性的嗜好も『至ってノーマル』である」との調査結果を得た。  
現在は恋人でありこれから生涯の伴侶となる男性が、極めて普通な性的感覚の持ち主であるということは少女を一応安心させたが、ページをパラパラと捲り返していた手が、ふっと止まる。  
これらの本の内容については、さっき感じた通り緩々もいいところであったのだが、ナギにとっての最大の関心事は、この紙面の女性達にハヤテが性的な興奮を感じているという事実だ。  
「ハヤテの奴、こんな女共をオカズにせずとも、私という完全無欠の超絶美少女がすぐ近くにいるではないか!全く!!」  
 
 そう毒づいては見たものの、ハヤテが、この紙面の女達の痴態を眺めつつ自らのいきり立つ肉棒を扱きあげ、  
終いには腰をガクガクと震わせながら勢いよく大量の白濁をその先端から放出するに至る一部始終を想像すると、さっき治まったばかりの甘い疼きが再び下腹部で脈打ち始めた。  
 ナギは一連の本の中から、一番強く“開き癖”が付いている物を取り上げ、そのページを開いた  
く。  
 そこに在るのは、黒く艶やかなふさふさした陰毛で飾られた秘所に怒張した肉棒を咥え込みつつ、身体、特に頬から胸元にかけての肌を緋色に染め、  
両乳房を鷲掴みにし、健康的なピンク色の唇をわずかに開き、そこからほんの少し覗かせた舌先で唇を嘗めようとしている、二十歳前後美しい女の写真である。  
 ハヤテは、この女を激しく貫いている自分を想像しながら、夜毎自らを慰めているのだ。  
 下腹部の疼きは徐々に秘所に収束しつつあったが、ナギは二回目の開始を躊躇した。  
いくらさっき気持ちよかったからとはいえ、にちゃにちゃになった股間に再び触れるのは嫌だったし、汗ばみ始めた身体から立ち上る濃い汗の匂いがとても生々しく、できればなるべく早くシャワーを浴びたかった。  
 だが、今回のような、ハヤテが実際に使っている“オカズ本”、ハヤテの痴態の全てを観ている(?)こうしたアイテムを手にし、実際に使える(??)機会はもう二度と訪れまい。  
「ええい、仕方ない!」  
少女は自らを鼓舞すると、キュロットのジッパーを下げ、そこから指を滑り込ませてひんやりと冷えているヌルヌルのショーツを弄り、もう片方の手をTシャツの裾から差し入れて硬くなりかけている小さな乳首をキュッと摘んだ。  
 
 

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