「安全神話崩壊!!  
 犯罪大国日本!!」  
 
アウターストーリーin第157話  
「闇に隠れて危険がウォーキング中」  
 
 筋肉痛のため自室のベッドで寝ていたナギは、見舞に訪ねてきたヒナギクに  
挨拶もそこそこに同じ布団に潜り込まれ、そう叫んだ。  
「あまり屋敷から出ないナギはそんな犯罪に出くわすことも少ないでしょうけど、  
女の子なんだから十分注意するのよ?」  
「説教強盗かよ!!ていうか出歩かなくても危険になってるし!?」  
 制服姿のヒナギクは、逃げようとするナギを布団の中で背中から捕まえた。  
「生徒会長として……あなたの友達として、忠告してあげてるだけよ?」  
 ヒナギクはくすくす笑いながらナギを抱きすくめる。  
「特にバイト病欠の時には、執事君が休まず出勤すると、自宅で一人で寝込む  
お嬢さまが発生――」  
「ひゃん!!」  
「ひとけのないお屋敷でー、女の子がー、 一人でー……」  
「あんっ!!んはっ、くすぐっ、んんんっ!! やめっ、ぁああ゛……」  
 ひとしきりナギを弄くると、ヒナギクは手を休めて尋ねた。  
「どう?分かってもらえたかしら?」  
「はぁっ、はぁっ……あぁっ、……よく、分かった……」  
 ナギは息をついて答えた。  
「要するにハヤテのいない隙に私に性的いたずらをしに来たということだな!?」  
「ちゃんとお見舞の品に桃缶を買ってきたのに……」  
 ヒナギクはすねた口調で言いながら、ベッド横のテーブルの上を指差す。  
「筋肉痛と分かってて桃缶とか明らかに建前だろ見舞は!!ぐぬぬ、マリアめ、  
主人からお付きの執事を引き剥がし、その情報をエロ生徒会長に売り渡すとは、  
いつもながら油断のならん奴だ……!!」  
「あー、今回はたまたま別ルートで知ったから、マリアさんからじゃないの。」  
 ヒナギクはマリアを弁護する証言を述べた。  
「……なに?マリアではないと?」  
「ええ、今回は。」  
 
 少し前。  
「今日のところはこれくらいでいいのでは?」  
「そうね……」  
 ヒナギクは書類を整えると、溜息を吐いて机に上体を伏せた。時計塔の上の  
生徒会室に、ヒナギクの愚痴る声が響く。  
「ああー、まだ授業もろくに始まってないのに、なんでこんなに生徒会に仕事や  
やっかいごとが持ち込まれてるのかしら……」  
 横に立って書類をチェックしていた副会長・霞愛歌が、ふふふと笑いながら  
ヒナギクに声を掛ける。  
「お疲れ様。お紅茶、いかが?」  
「のむー……」  
 ヒナギクは体を伏せたまま片手を上げた。愛歌は書類を片付けてティーポットの  
方へと向かう。  
「悪かったわねー、休みの日なのに手伝ってもらっちゃって……」  
「あらあら、お忘れ?私はこれでも白皇生徒会副会長よ?生徒会の仕事をして、  
会長に謝られる理由はないわよ。」  
「でも、昨日は高尾山に登って疲れたでしょう、愛歌?」  
 ヒナギクが心配そうに尋ねる。  
「それが、不思議と気分がいいの。やはり適度な運動は体にいいのね。」  
「……美希たちは案の定ダウンしてるというのに、愛歌は元気ね……」  
「そんなに変かしら?」  
 愛歌は首を傾げる。  
「まああまり体力のある方ではないけど、千桜さんだって今日もちゃんと  
アルバイトに行けるくらい元気だし、それに所詮は高尾山じゃない。」  
「あー、ハル子また愛歌に謝ってたわよ。さっきメールが来て、バイトがどうしても  
抜けられそうにないどころか、夜までいてくれって言われてるんだって。こっちは  
予定時間で終わりそうだから、気にしないでって返しといたけど……」  
 思い出して伝言するヒナギクに、愛歌はやれやれというふうに肩をすくめて返す。  
「だから、急な生徒会の仕事を、前からアルバイトの予定のあった千桜さんが  
出れなくて私が必要になったからといって、謝られる理由もないのに。困った人ね、  
千桜さんも……」  
「ほら、あの子は真面目だから。プロ精神ってやつ?生徒会はプロじゃないけど。」  
「あれを使ってお願いするほど……どうしても書記の千桜さんが必要という状況では  
なかったのだから、安心して大人しくお仕えしていればいいのに……」  
 愛歌はノートをちらりと出してふふふと笑った。  
「……あんまりいぢめないようにね。」  
 ヒナギクは真面目な生徒会書記の幸運を祈った。  
 
「それはそれとして、愛歌が元気だという話に戻るんだけどね。」  
 紅茶を愛歌から受け取ってから、ヒナギクは話を再開した。  
「まだ、なにか?」  
 愛歌は首を傾げる。  
「クラスに好きな人でも出来た?」  
「……どうしてそんなところへ飛躍するの?」  
 すぐには言葉の意味が分からなかった、というふうな反応で愛歌は問い返した。  
「今日の仕事中のおしゃべりで、クラスや昨日の高尾山の話を振ると、他の話題と  
微妙な反応の差があったわ。しかも高尾山で疲れていても不思議ではないのに、  
なぜか機嫌が良さそう。これは昨日なにかクラスメイトとラブなイベントがあったと  
見るべきね。」  
 ヒナギクはにこやかに微笑んで自信満々に断言すると、紅茶を口に含んだ。  
「その観察が気のせいでなかったとしても、ラブとか言い切るのはやはり飛躍だと  
思うわよ?」  
 愛歌は動揺の一つも見せず切り返す。ヒナギクはティーカップを置きながら次の  
言葉を紡ぎ出した。  
「いいえ。断言できるわ。なぜなら……」  
 そこで立ち上がり、愛歌を指差す。  
「今日の愛歌はいつもに増して可愛く見えるからよ!!」  
「……は?」  
 ヒナギクは愛歌に背を向け、手を後ろで組んで述懐を始めた。  
「……私は可愛い女の子の中でも、特に恋をする可愛い女の子が好きなの。」  
「……母集合が『可愛い女の子』ですか。」  
「知ってるでしょ?」  
「ええまあ知ってるけど。身をもって。」  
 首だけ振り返り尋ねるヒナギクに、愛歌はとりあえずそう答えるしかなかった。  
さらにヒナギクはコブシを握りながらゆっくりと体を反転させた。  
「その私が今日の愛歌はとっても可愛いと感じてる。フェロモン出してるのかしら  
このベイビィは?ってくらい。これは愛歌が恋をしているからに違いないわ。」  
「あの、一応私はあなたより一つ年上なので、ベイビィというのは……」  
「正直生徒会の仕事なんか後回しにしてすぐにでも隣の休憩室にしけこみたいほど  
だったけど、そこは生徒会長としての自制心がかろうじて勝ったわ。とっとと仕事を  
終わらせて、それからおいしくいただこう、と。偉いぞ、私。」  
 ヒナギクはうんうんと頷いている。  
「……ええと、つまり。私とえっちしたい、と。」  
「うん。」  
 ヒナギクは力強く答えた。  
「生徒会長としての自制心で、しないで済ますわけにはいかないの?」  
「無理。」  
 ヒナギクは力強く答えた。  
「……ああっ、高尾山の疲れが今頃出て、持病の癪とフォースの暗黒面が……」  
「大丈夫。えっちをするとお肌がつやつや、元気になるそうよ。」  
 ヒナギクは力強く答えた。  
「ええと……」  
 愛歌は口に手を当てて目を逸らし、次の言い訳を考える。  
「ああ可愛いわぁっ!!」  
 それが何かツボに来たのか、ヒナギクは愛歌にいきなり抱きついた。  
「きゃっ!!あ、待って……」  
「やー。」  
 どさっ……。  
「あっ。んっ……」  
「んんん……」  
 ヒナギクは愛歌をソファーに押し倒し、その赤い唇を奪う。制服の上から胸の  
膨らみを手でなぞりつつ、貪るような口付けを繰り返した。  
「ん、愛歌、唇もおっぱいも色っぽい……いいなあ……」  
 ヒナギクは愛歌の胸を捏ねながら呟いた。愛歌は苦笑と共にたしなめる。  
「もう、困った生徒会長さんね……」  
「ね、いいでしょ?」  
 愛歌は自分の顔の上でねだるヒナギクの頭をコツンと叩いた。  
「制服くらい、ちゃんと脱いでからに、しましょうね……」  
 
「んあっ、あっ、ああ……!!」  
「あぁ、んむっ、あぁんっ、愛歌ぁ……!!」  
 休憩室のベッドの上で、生徒会長と副会長が裸で絡み合う。上になっている  
ヒナギクは、愛歌の唇と胸と秘所を同時に責め立てていた。愛歌は激しい愛撫に  
喘ぎながらも、ヒナギクの内股や背を撫で、口付けに応じて舌を絡め合う。  
「この胸、素敵っ……すごく、欲しくなっちゃう……」  
「んああ!!」  
 ヒナギクは愛歌の女らしい乳房を手のひらで揉みしだいた。硬く尖った乳首を  
せり出させ、乳輪ごと吸いつく。  
「んっ…んっ…んっ……」  
「んあん、あんっ、あぅんっ!!」  
 片胸を丸ごと愛撫され、愛歌は喉を反らして呻いた。ヒナギクの背を腕で抱き、  
細い尻に手を触れてかろうじて愛撫を返す。ヒナギクは、愛歌の秘裂から溢れ出す  
愛液を指先で掻き回して、荒い息で尋ねた。  
「愛歌っ、もう、ぐっしょり……。気持ちっ、いいっ?」  
「んんんっ……!!そんな、言わないで、ちょうだい……」  
「いいのよっ、もっと、気持ちよく、なっても……!!」  
「……、こそっ……!!」  
「んんっ!!」  
 ヒナギクの腰を撫でていた愛歌の手が、腹を滑りなだらかな胸を捕らえた。  
ヒナギクはむずがるような甘い声を漏らす。愛歌はヒナギクのかすかな膨らみを  
指先で刺激し、耳元に囁きかけた。  
「ここっ……んっ、感じやすい、でしょう?」  
「んぁ!!ん!!だめっ!!」  
「ほら、すっかり、敏感になって……」  
「んんっ!!愛歌っ!!」  
「先っぽも……」  
「んんんっ!!」  
 愛歌がヒナギクの乳首を摘み絞ると、ヒナギクは背を反り返らせた。性的興奮が  
高まっていて、その周辺は触れられるだけで痺れが走る。さらに敏感な突起をも  
攻撃されて、弾ける快感の衝撃に、ヒナギクは必死で耐えた。堪え切れずに飛び出し  
そうになる声を懸命に噛み殺す。  
「こっちも……」  
「んんっ!!」  
 愛歌は指をもう片方の胸に置き換えた。乳首の根元からやや慎重に愛撫する。  
「んんっ!!んん!!」  
「んっ、あ!?」  
 ヒナギクはそれが少し物足りなかったのか、硬くなった突起を愛歌の指に自分から  
押しつけるように、体を揺すった。さらに、しばらく責めていなかった方の愛歌の  
胸と、まさぐりを中断していた股間の秘所に手を掛け、強く愛撫を施す。愛歌の  
喉から再び快楽の呻きが上がった。  
「んんんんぁっ!!んんっ!!」  
「ああんっ、うんっ!!」  
 愛歌も手掛かりを無くさないように、ヒナギクの胸を掴むように手を当て、乳首を  
指で弾き、押し潰し、捏ね上げて刺激する。それに対抗するように、ヒナギクも  
愛歌の乳首を激しく擦り立て、濡れた指で陰核を弄る。  
「んんぁ!!ああ!!んあ!!」  
「んあ!!愛歌っ!!私の、ここもぉ、あんんっ!!してっ!!」  
「んああ!!んあ!!ああっうんっ!!うん!!」  
 響き合う媚声の中、ヒナギクは愛歌に強請りつつ腰を浮かせた。その間も愛歌の  
秘裂に指を滑らせる。愛歌の腕が求めに応じて腹の下でヒナギクの股間を探した。  
もどかしげにヒナギクは、愛液で濡れた手で愛歌の手を掴み、自分の秘所へ誘った。  
「あんっ!!  
「ん……!!」  
 愛歌の指が、すっかり濡れそぼったヒナギクの花弁に触れた。ヒナギクの口からは  
音色の違う声が出た。陰唇をめくると、とろりと愛液が零れて指に伝う。愛歌は指に  
湿りを馴染ませながら、ヒナギクのかたちを確かめた。  
「あぁあんんっ……!!」  
「んっんぁん……!!」  
 
「んん……」  
「んふ……」  
 二人は体勢を微調整して、互いの秘所を愛撫しやすいようにする。そして顔を  
寄せ合い、唇を求め合った。  
「んは……っ……」  
「ん……愛歌っ……!!」  
「んんーーっ!!」  
「ぁあんんっっ!!」  
 離れた口から嬌声が溢れる。準備万端で開始された秘裂の責め合いは、直ちに  
強い快楽をもたらし、一気にトップスピードへと加速した。陰唇を往復する指が  
膣口から溢れる愛液の飛沫を飛ばし、陰核は刺激に肥大して甘い苦痛と共に快感を  
受け止める。体は揺れ弾け、汗が飛び散り、表情は悩ましく、声は高く淫らになって  
いった。いつしか手を絡め合い、互いを快楽の高みに向かう伴走者とする。  
「あああ、ぁあ、あっぁぁあ……!!」  
「んぁ!!んんっ、ぁんっ!!あんっ!!」  
「あ、ああ!!……いきっ、そう、だわ……っ!!ああぁ!!」  
「んん!!んあっ、いいよっ、いっていいよっ!!」  
「ああぁあ!!く!!んん!!」  
 激しい愛撫は二人の昂りを限界へと近付ける。先に達しそうになった愛歌は、  
このまま絶頂へ登ることをヒナギクが言葉と指で勧める中、首を振ってギリギリで  
堪え、その瞬間が来るのを引き延ばしてヒナギクの秘所で指を動かし続けた。  
「んく!!ああ!!んん!!ああ!!」  
「あっ!!ああ!!いいよっ、わたしもいく、はんん、いくからっ、いこっ、あ!!  
いっしょいこっ!!」  
「はぁ!!ああ!!んん!!あ!!ああ!!」  
「んぁ!!あんん!!ふああぁぁ!!」  
「んんん!!あ!!ん!!あああ!!」  
 愛歌の努力はしばらく続いたが、それもついに力尽きる時が来た。  
「ああ!!あ!!あああ!!いく、いくのっ!?ああ!!あ!!いくの!?あ!!ああぁあ!!」  
「ああ!!あいかっ、あああ!!」  
「あ!!いっちゃう!!ああ!!」  
「あいかぁ…………っ!!」  
 体を震えさせ、最後の階段を駆け上がる愛歌に、ヒナギクは優しく止めを刺す。  
指を掛けられた愛歌の花が、快楽に弾け飛んだ。  
「ああ!!ああ!!いっちゃう!!いっちゃう!!あああぁあああああああぁあああ……!!」  
「あいかっ、ああぁあ、ああああ、ああああ…………ああああああああ!!」  
 喉を反らしくずおれた愛歌を見下ろしながら、ヒナギクも自分で自分を追い込み、  
愛歌の後を追って果てた。  
 
「……本当にもう、困った生徒会長さんね……」  
「えへへー、愛歌はやっぱり優しいなー。」  
 じゃれ付くヒナギクの髪を、愛歌は撫でてやっていた。  
「だから、優しい副会長の恋に、この生徒会長桂ヒナギクも、協力させてね。」  
「いえ、それは……」  
 ヒナギクは愛歌の言葉を遮って、携帯電話を取りながら意気込んだ。  
「ああ大丈夫!! 私自身は恋の経験値は低いけど、知り合いに恋愛相談の達人が  
いるの。今からちょっと電話してみましょ。」  
「いえ、だから、それは誤解……」  
「あ、もしもし?ヒナギクよ。今暇?あ、そっか今日バイトの日なんだ。へー、  
そんなに早く来るなんて気合入ってるわね。はははっ……あ、じゃあ時間あるのね。  
うん、実はね、今学校の友達といるんだけどね、いや美希たちじゃない人。うん、  
クラスメイト。いきなりだけど、その人の恋愛相談に乗ってあげてほしいの。うん。  
スーパー恋愛コーディネーターの腕を見込んで……ありがとう!!じゃ、代わるわ。」  
 ヒナギクは携帯電話を愛歌に差し出す。  
「はい。」  
「……スーパー恋愛コーディネーター?」  
「スーパー恋愛コーディネーター。」  
 何の疑いもなくヒナギクが答えるので、愛歌はつい電話を取ってしまった。  
「あの、」  
『はい!!スーパー恋愛コーディネーターです!!』  
「……あの、私ヒナギクさんの友人の、か……いえ、匿名希望とさせてください。」  
『はいはい。もちろん秘密は厳守しますよー。』  
 愛歌はしばらく考えをまとめてから、口を開いた。  
「相談したいのは、私の友達の話なのですが……」  
『ああ、いいですよ。友達の話というのは恋愛相談の定番ですからね。』  
「私の友人の、か……いえ、Kさんなんですが。」  
『ふむふむ。』  
「Kさんは新学期になってクラスメイトになった男の子が気になっているんですが、  
Kさんはその男の子からあまり女の子として見られていないと悩んでいるよう  
なんです。どうしたら女の子として見てもらえるでしょうか?」  
『……はっはーん、なるほど!!はいはい、色々手段はありますけどね、有力なのは  
やはり、すぱっつ、じゃないかな?』  
「……すぱっつ、ですか。」  
『そうそう、すぱっつ。ホントはぶるまがいいんだけど、白皇はすぱっつだものね。  
すぱっつによる健康的な女らしさというのが今のトレンド!! 制服のスカートを  
無造作にめくって彼をノックアウト!!』  
「……なるほど、参考になります。それからその彼なんですが、付き合っている  
わけではないけれど、どうも大事に思ってる女の子がいるようなんです。友人は  
そんな間に割り込んでいいのかとも気にしているようなんですが、どうでしょう?」  
『恋は!!競争!!』  
「……はぁ。」  
『ヒナさ……じゃなかった、友人Kさんに伝えてください。《好きになったら  
 しかたがないんじゃないかな にんげんだもの》と!!』  
「なんだか哲学的に聞こえますね。最後に、友人は胸が無いんですがどうしたら」  
『大丈夫っ!!Kさんの胸は小さくてもふにふにすべすべでこれはこれで』  
「こらーーーーーーーっ!!!!」  
 ヒナギクは愛歌から携帯電話を取り上げた。  
「誰の恋愛相談をしてるのよ!?」  
「名字のイニシャルがKの人の恋愛相談よ。」  
『あれ? もしもーし?』  
「ちょっと歩?こっちの友達も悪かったけど、あなたも乗らないでくれる?」  
『あ、あはは……あ、ハヤテ君たち来たみたい。じゃあまたね!!』プープー  
「あ、こら歩待ちなさい……もうっ。」  
 切れた電話を放り投げたヒナギクに、愛歌はふふふと笑って言う。  
「さすがスーパー恋愛コーディネーター……的確なアドバイスだったわ。」  
「愛歌ぁ……」  
 恨めしげに睨んでいたヒナギクは、手をワキワキさせながら愛歌ににじり寄った。  
「そ・う・い・う意地悪をするやつは……こうだっ!!」  
「きゃんっ!!」  
 
「もう帰っちゃうの?」  
 愛歌が制服を着込むのを見ながら、ヒナギクは尋ねた。  
「ええ、迎えの車を呼ぶことになってるから。運転手さんにあまり長く待機して  
いただいても申し訳ないので。」  
「そう。たしかにあまり日が暮れると、女の子が一人で歩くのは危ないかもね。」  
 ヒナギクもゆっくりと起き上がり、放り出したままの携帯電話を拾って手に取る。  
「……あなたは?」  
「私?私はいつも通りに帰るわよ。」  
 メールチェックをしながらヒナギクは返事をした。  
「……あなたが一人で歩くのは危なくない?道行く女の子が。」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。愛歌はふふふと笑いながら自分の携帯電話を  
取り出し、ヒナギクに尋ねた。  
「なんだったら、お家まで送りましょうか?」  
「愛歌の家の車で?」  
「ええ。」  
「えっちしてもいい?」  
「車内は禁えっちよ。」  
「愛えっち家にはつらい時代ね……」  
「昔からだと思うけど……」  
「うーん、今日はちょっと別の所に寄ってから帰ることにするわ。そこに愛歌に  
送ってもらうのはちょっとどうかと思うので、気持ちだけもらっておくわ。」  
「あら、なにか急な用事でも?」  
「ん。ナギがね……」  
 ヒナギクは愛歌に携帯電話の受信メールを見せた。  
---------------------------  
From:西沢 歩  
Sub :な・なんと!!  
 
ナギちゃんがバイトお休みで  
ハヤテ君だけが来てます!!  
これはフラグ?二人きり帰宅  
イベントのフラグかな???  
どうしようこころの準備がま  
---------------------------  
「あらあら……彼女に随分と信頼されているのね。」  
「な、なんのことかしら?」  
 ヒナギクは知らん振りをした。そして愛歌に次を言わせぬ勢いで話し出す。  
「ナギの執事のハヤテ君が一人バイト先に出かけているということはよ?ナギは  
いまお付きの執事がいないということよ。これは防犯上問題があるわ。学院生徒の  
平和と安全を守る生徒会長としては、忠告を兼ねてお見舞いに行こうと思うの。  
どうかしら?」  
「どうかしら、と言われても……」  
 愛歌は困ったように言いよどみ、こう続けた。  
「美味しい桃缶を売っているお店があるのだけれど、よければそこまで家の迎えの  
車で送るので、お見舞の品を買っていってはいかが?」  
「さすが副会長、気が利くわね。」  
 
 冒頭に戻る。  
「誰だエロヒナギクに警備情報を漏らした防犯意識の無い奴は!!」  
「まあそんなことはどうでもいいじゃない。」  
「よくねえぇーーー!!」  
 ヒナギクはナギの苦情をいなし、パジャマの下に手を差し入れた。  
「こらっ、あっ!!」  
「ほーら、用心してないと簡単に触られちゃうわよ?」  
「あっ!!んんっ!!」  
 ヒナギクの手が下着の上から、ナギの乳首と股間に触れた。ナギは短い声を上げて  
恥ずかしがり、か細い腕で押し退けようとする。全くそれを無視して、ヒナギクは  
ナギの乳首の上で指を捏ね回し、耳元で囁いた。  
「ナギの乳首ちゃん、ちっちゃくて可愛いわ……」  
「やめろぉ……」  
「可愛い……」  
 ちゅ……ちゅ……  
「やぁ……」  
 ヒナギクは甘く囁きながら耳朶に口付けを繰り返す。ナギは目をきゅっと閉じて  
身を縮め、呼吸を速くしながら拒否の言葉をぽつりぽつりと呟く。  
「ん……む……」  
「ふうんっ!!」  
 ナギの耳をヒナギクの舌が舐め回り、ナギは鼻にかかった声を上げた。さらに  
ヒナギクは、耳の後ろや首筋、うなじなどをじっくりと舐めていく。  
「ん……気持ちひひ?」  
「はぅ、よ、良くなんか……うううんっ!!」  
 ナギは思わず声を漏らす。ヒナギクはナギの乳首を弄っていた手で、もはやそれを  
押し退けようとする力が殆ど入らなくなっていたナギの手を握り、指を絡ませた。  
「んんっ……」  
「ん……ナギ……」  
 ヒナギクはナギの小さな手を優しく抱き、指と指を擦り合わせ、汗ばむくらいに  
熱心に触れる。ナギはだんだん頭がぼおっとしてきて、自分とヒナギクの吐息と、  
二人の指の擦れ合う音だけが理解できた。  
「ナギ、自分で乳首ちゃん触ってみて……」  
「ふぇ?」  
「はい、ここ……」  
「んんっ!!」  
 ヒナギクがナギの手を導いて、平らな胸の突起を触らせた。小さいながらも硬く  
立った乳首から、刺激と快感が膨れ上がる。  
「あ……」  
「好きなように、していいからね……」  
 そう言って、ヒナギクはもう片方の乳首を指で摘まんだ。  
「あんんっ!!」  
 さらに、股間に忍び込ませた指も、ゆっくりと動かし始める。  
「あっんあんっ……!!」  
「ナギ、可愛い……」  
「あっ、あぁっ、ヒ、ヒナギクぅっ……」  
「ナギ……ナギ……」  
「う……んはぁんっ……」  
 ヒナギクの声と愛撫による快楽が脳を焼く中、ナギの手はおずおずと自分の乳首を  
弄り始めた。  
 
「はぁん!!ああ!!あんっ!!」  
「ナギ、私の指、気持ちいい?」  
「ふあんんっ、あんっ、ヒナっ!!あああっ!!」  
 最初、ショーツの上からナギの秘密の場所を責めていたヒナギクは今、愛液の  
付着したナギのショーツを腰から引き下げ、秘裂に直接指を触れて愛撫をしている。  
ナギはヒナギクの愛撫に応じて蜜を溢れさせ、それを浴びたヒナギクの指がナギの  
股間を広く濡らしていった。愛撫にこなれたナギの体は、秘唇を責められるたび  
その刺激をおびただしい快感に変換する。抑えきれずナギの口からは、淫らな快楽に  
悦ぶ声が次々と飛び出した。  
「ん……ナギの可愛いここ、もっと気持ちよくしてあげる……」  
「ぅんんっ!!んぁ!!ぁんん!!ああっ、んぁああ!!」  
 ヒナギクはうっとりした表情でナギの反応に魅入られている。布団の中で横向けの  
ナギを背から抱きすくめ、股間と胸に手を掛けてぎゅっと密着していた。こもる体温、  
快楽による身のよじれと震え、肌ににじむ汗、高鳴る心拍、耳を打つ嬌声と荒い  
呼吸音、そういった全てを体中で愉しむ。  
「気持ちよく、なってる?」  
「あああぁあっ!!んんん……!!」  
「ん……は……私も……」  
「あんっ!!あ!!んんん!!」  
「うん……っ……ナギ……」  
 ナギだけではなく、一方的にナギを責めているヒナギクの体も、興奮により熱く  
なり始めていた。悩ましい息遣いを見せ、内股を擦り合わせる。  
「ナギ……もっと……もっとしちゃうよ……」  
「んぁ!!ああ!!あぁあん!!」  
「んん……んむ……」  
「ふぁん!!んんぁ、あ、あ、あ!!あああ!!」  
 ヒナギクはさらに熱心にナギの体を求めた。耳を噛み、尻に腰を押し付け、指の  
愛撫のスピードを上げる。さらに激しくなったナギの叫びの合間に、鼻にかかった  
ヒナギクの吐息と声が聞こえる。  
「んん!!ああぁんっ!!ああ!!ん!!」  
「んんん…………」  
「ああぁああんんっ!!」  
 ヒナギクの指がナギの秘所の興奮を限界に追い込んでいった。張りつめた陰核や  
愛液を垂れ流す秘裂を擦り立てられ、そこから生み出される昇華しきれない快楽が、  
腰にどんどんと蓄積する。それは許容量を超えて、出口を求め始めた。  
「んんぁ!!だめぇっ!!ああ!!あん!!いっちゃう、いっちゃう、あああ!!」  
「んんっ、ナギっ……!!」  
「あああ!!ああ!!だめっ、んんん!!いっちゃうぅ!!」  
「いっていい、のよっ、ナギっ……!!」  
「ああん!!だめえぇ……!!ああ!!」  
「気持ちいいんでしょ、ほら、大丈夫だから、いっちゃいなさいっ……」  
「ああ!!ああ!!あああ!!」  
 そして体ごと弾け、ナギは絶頂に達した。  
「んんあ!!あ!!あ!!あ!!……ぁああああああああぁぁぁあああああああああ……!!」  
 
「はぁ、はぁ……」  
 荒い息でぐったりしているナギの顔に、影が落ちた。  
「ん……?」  
「ねえ、ナギぃ……」  
「あ?」  
 ヒナギクが紅潮した顔でナギを見下ろしている。  
「今度は、私も、気持ちよくして……」  
「ああ!?」  
 よく見るとヒナギクはいつの間にか制服とスパッツを脱いでいた。  
「ああああ!?」  
「ほら、こんなに、なっちゃってるの……」  
 ヒナギクはナギの手を自分の股間に導いた。ショーツに触れると、じとっと湿って  
いるのが分かる。  
「ああああああああ!?」  
 ヒナギクは快感に軽く身を捩った後、ナギに覆い被さっていった。  
「んぅ、ナギが可愛すぎるから、こんなになっちゃったわ…せきにん、とってね?」  
「ああああああああああああああああ!?」  
「大丈夫、私だけじゃなく、ナギももっと気持ちよくしてあげるから……」  
「ああああああああああああああああああああああああああああああああむぐ!?」  
 ナギの声は柔らかい唇で塞がれた。  
 
「ああ……久しぶりだったけど、ナギはやっぱり可愛いわね……」  
「重い……」  
 ヒナギクはナギの背に乗ってじゃれ付いている。ナギは苦々しげに呟いた。  
「……なぜこんな危険人物が野放しにされているのだ……」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。  
「この犯行のどこが平和と安全のためかーーー!!」  
 コンコン  
「ナギ、ヒナギクさん、入ってもよろしいでしょうか?」  
 ドアの向こうから声がした。  
「はーい、マリアさんどうぞー。」  
「くそー、マリアの奴いつも通り主人の危機にサボタージュしおって……」  
 扉が開く。マリアはナギの着替えを持ってやってきた。  
「ナギ、汗かいたでしょう。もうお風呂にしますか?それとも汗を拭いて下着を  
着替えるだけにしますか?」  
「この状況で他に言うことはないのかマリア!?」  
 ナギがマリアを叱責する。  
「ああ、申し訳ありません、お嬢さま。」  
 マリアはそう言って深く頭を下げ、また顔を上げると、ヒナギクの方を向いて  
言った。  
「ヒナギクさんはお風呂になさいますか?それともお食事?」  
「ちっがーーーーうぎゃ!!」  
 ナギは起き上がろうとして、体を走る痛みに崩れ落ちた。  
「にゃあああ……」  
 マリアはにこやかにヒナギクと話す。  
「ああ、それともナギになさいますか?」  
「いえ、お風呂だけいただいて帰ります。」  
「そうですか。ナギはどうします?ヒナギクさんといっしょに入りますか?」  
「いっしょに入るなら体の隅々まで洗ってあげ――」  
「とっとと風呂浴びて帰れこのエロ大王ーーー!!」  
 
「ああ、流石に三千院家の大浴場、毎度ながらすごい広さね……」  
 ヒナギクはだだっ広い浴槽の壁に背をもたれ、すっかりくつろいでいた。  
「まあ、一人っきりっていうのは少しさびしいけど……」  
 カララララ……  
「ヒナギクさん、いらっしゃいますか?」  
 入り口の方からマリアの声がした。  
「え、はい?マリアさん?」  
「はい、マリアですけど、お風呂、御一緒させていただいてもいいですか?ナギが  
不貞寝してしまったので、今のうちにお風呂を済ませてしまおうと思ったので。」  
「あ、はい、大歓迎です!!ちょっと広すぎてさびしいなと思ってたので!!」  
「ありがとうございます。じゃあ、お邪魔させてもらいますね。」  
 カララララ……ピシャ。  
 浴場の入り口の戸が閉まった音がした。ヒナギクは岩陰に回りこんで、そっと  
入り口の方を覗き見た。曇りガラスの向こうで着替えをしている人影が見える。  
「おお……」  
 ヒナギクは小さく感嘆の声を漏らした。ぼやけた影の動きの意味を解読して  
いくだけで、ヒナギクは軽く興奮してきた。  
 やがて肌色の人影が戸に近づき手を掛ける。  
「おっとっと……」バシャ  
 ヒナギクはさっと身を引いてなにもしていない風を装った。  
「お湯加減はいかがですか?」  
「あっはい、ちょうどいいですよっ。」  
 マリアはシャンプーなどの入った洗面器を手にやってきた。体の前をタオルで  
隠していたが、ヒナギクはマリアがしゃがんで湯桶を拾う時、タオルの上端から  
くっきりとした胸の谷間が覗くのを見てしまった。  
「くはっ!!」  
 ヒナギクは何か大ダメージを受けた。  
「どうかなさいました?」  
「いえ、なんでもありません……」  
「のぼせないように気をつけてくださいね。」  
 マリアはそう言って蛇口のある浴場の端へ行って風呂椅子に座り、体を湯で流し、  
洗った。掛かり湯を済ませ、再びタオルで前を隠して浴槽に近付く。  
 浴槽の縁でタオルを畳みながら、マリアはヒナギクに話し掛けた。  
「ヒナギクさん、今日はナギと遊びに来てくださってありがとうございました。」  
「え?いやそんな私こそとっても楽しませてもらってますし。」  
 ヒナギクはマリアの胸を見つめながら答えた。  
「またお暇な時に遊びに来ていただければ嬉しいんですけれど、お忙しいですか?」  
 タオルを岩に置いて、マリアが湯に浸かった。胸が湯の中で揺らめいて見える。  
「えー、まあそれもありますけど。ほら、あのですね。」  
 ヒナギクは思考になんとか脳のリソースを振ろうと努める。  
「遊びに来ると、ハヤテ君にとって私は三千院家に来たお客ということになるじゃ  
ないですか。遊びに来た友達の家で、執事とはいえクラスメイトにお客扱いされる  
のはなにか違うと思うんですよ。でもハヤテ君はそういう所頑固そうだし、三千院家  
としても執事にフランクに客をもてなせとは言いにくいでしょうし。ですから、  
ハヤテ君が他の仕事があるとかで、私の接客をしなくていい時なら、私も迷いなく  
ナギと遊べる気がするんですけれど。けどハヤテ君はナギの専属執事ですから、  
いつもナギの側にいるでしょう?今日みたいにうまくいないときを知って来られる  
なんてことは、そうはないので。気兼ねなく遊びに来られればいいんですけど……」  
 マリアは楽しそうに微笑んでヒナギクの話に応じた。  
「なるほど、上手い……もとい、一理ある理由ですね。どうです?気兼ねなく遊びに  
来たい時には、ナギにそれとなく希望を伝えてみては?」  
「難しいでしょうね。それで上手くいくようなら、今までもナギは生徒会室に  
遊びに来てくれてますでしょうからね。気兼ねなく遊びに来ていいのよと、いつも  
言ってるんですが、全然来てくれなくて……」  
「あらあら、ヒナギクさんのお誘いを断るなんて、ナギもお高く止まってますね。」  
「きれいなメイドさんが優しく尽くしてくれているから、私程度では袖にされて  
しまうんですよ。」  
「まあ、お上手。」  
「マリアさんこそ。」  
 調子の合った二人は、しばらくくすくすと笑い合った。  
 
「ほんとに、のぼせないうちに上がってくださいね。」  
 マリアは湯から上がり、そう言って再び蛇口の側へ向かった。  
「はーい。」  
 それからしばらく、ヒナギクは大人しく湯に浸かっているように見せながら、  
体を洗い始めたマリアの様子を伺っていた。頃合を見計らい、ヒナギクはそっと  
浴槽から上がり、そーっとマリアの背に近付く。そして膝を突いてマリアの耳元に  
顔を寄せ、小声で呼びかけた。  
「マーリーアーさんっ。」  
「きゃ、ヒナギクさん?」  
 マリアは軽く驚く。  
「お背中、流しましょうか?」  
「でもヒナギクさん、もうお風呂上がられる頃合なのでは?」  
「せっかくマリアさんといっしょですから。もうちょっと、御一緒したいと思って。  
湯から上がってマリアさんのお背中を流していれば、私はのぼせずに済んで、  
マリアさんも楽が出来て、一石二鳥ってことで、どうですか?」  
 ヒナギクのねだるような申し出に、マリアは苦笑しながら突っ込んだ。  
「え〜、ホントに背中だけですか〜?」  
「信用ないですね……」  
「信用してますよ?ヒナギクさんはとっても危険、って。」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。笑って待つマリアにヒナギクは正面突破を試みた。  
「背中以外は駄目ですか?」  
「そうですねぇ……」  
 マリアは手に持ったタオルを転がしながら、考えている様なポーズをしていたが、  
あっさりヒナギクにタオルを渡して悪戯っぽく囁いた。  
「背中をしっかり洗ってくれたら、考えてもいいですよ……?」  
 
「んんっ、ヒナギクさん、やっぱりお上手っ……」  
「マリアさんの肌はとっても綺麗だから、私も洗い甲斐がありますからね……」  
 ヒナギクはマリアの胸を揉んでいる。  
「あっ、うんっ、気持ちいいですわ……」  
「私も手の感触がぷにぷにで、とっても気持ちいいです……」  
「もう、えっちですね、ヒナギクさんは、んんっ……」  
 石鹸の泡を付けたヒナギクの手が、マリアの立派な膨らみをすりすりと擦った。  
ヒナギクはマリアの座っている後ろに跪いて、肩越しにマリアの胸を見下ろしながら  
乳房のマッサージを行っている。  
「んん……おっぱいばっかり、ほんとにヒナギクさんはえっちですね……」  
「いやぁ、マリアさんの大事な胸ですから、しっかり洗わないと……」  
「ふふ、背中も前ももう十分洗ってもらいましたのに。」  
「いいじゃないですか。しっかり洗うのは、気持ちがいいですよ、と……」  
「んんん……っ!!」  
 ヒナギクが妖しい手つきでマリアの乳房を捏ね回した。マリアは反射的に首を  
仰け反り、声を抑えて口をきゅっと結ぶ。ヒナギクはマリアの肩口からその表情を  
見て、さらに意欲が湧いてきた。  
「気持ちいいですか?マリアさん。」  
「あっ、うん、き、気持ちいいです……けれど、んっ、あ、ちょっと、激しく、  
ないですか……?」  
「えー、ちょうどいいと思いますよ。ほら、マリアさんのおっぱいだって……」  
「んんんああっ!!」  
 ヒナギクは、しこり立ったマリアの乳首を摘む。マリアは強い刺激と快感を浴びて  
思わず声を放った。  
「……こんなにぴんぴんになって、気持ちいいって言ってますもん。」  
「んんんっ、あんんっっ……!!ヒナギクさんは、いじわるですね、もう……」  
 風呂場の温度や体を洗われて促進された血流でほの赤くなっていたマリアの顔に、  
一段と朱が差した。  
「うーん、ちょっといじわるしたくなってるかも……だって、マリアさん、とても  
素敵なスタイルしてるんですもん。ちょっと妬けちゃいます……」  
「んんぁっ、あんっ!!もうっ、ヒナギクさんったらっ、ふぅんんっ……!!」  
 ヒナギクは優しく、しかし容赦なく、マリアの乳首に高い快感を生み出す責めを  
仕掛ける。ヒナギクの指が突起を揉み、擦るたび、マリアの唇から悩ましい声が  
漏れた。  
「マリアさんのおっぱい、いいなあ……」  
「もおっ……んんあっ……洗ってくれるのは、おっぱいだけ、ですか?」  
「あ、ごめんなさい。じゃあ次は、マリアさんの、大事なところを……」  
 そう言って、ヒナギクはマリアの股間に手を伸ばそうとする。しかし、マリアは  
その手を押し止めた。  
「マリアさん?」  
 マリアは横を振り向いて、ヒナギクに微笑みと共に提案する。  
「ねえ、ヒナギクさん。……せっかくですから、大事なところは、洗いっこ、  
しませんか?」  
 
「んん!!……んむ……んんっ!!んっうん……んぁあ!!んんんん!!」  
「はふんっ、ああんぁん!!むむ……むむんーんーんんん……っっ!!」  
 マリアとヒナギクの美しい口が、快楽に喘ぎつつ目前の秘裂にしゃぶり付く。  
壁の隠し扉を開いて取り出した風呂マットを床に敷き、二人はマリアが下となって  
いわゆるシックスナインの体位をとった。最初はママゴトの様に局部を洗い合って  
いたが、当然それだけにとどまるはずもなく、互いに相手の秘唇への性的な接触を  
始め、指と口を使った濃厚な愛撫へと発展を見せていた。  
「んんっ、ヒナギクさんのっ、とっても素敵……んぁっ、可愛くて、えっち……」  
 マリアはヒナギクの陰核を指で責めながら、縦横無尽に舌を秘裂で動かす。汁に  
まみれている陰唇に口付け、奥から零れてくる愛液を浴び、あるいは舐め取って、  
湯以外の液体でじっとりと口元を濡らしている。  
「あんんっ!!マリアさんっ、すごいっ……いいのっ……!!」  
 ヒナギクはマリアとは逆に淫裂に指を差し入れ、敏感な突起を優しく口で愛撫して  
いた。ヒナギクの指にくすぐられる膣口から、とろとろと愛液が零れ落ち、マットの  
上に溜まっていく。ヒナギクの唾液と、指で撫で付けられた自分自身の愛液とで、  
マリアの花弁も体液に濡れそぼっていた。  
「んっ、私もっ、ああっ!!お豆さんとかっ、中とかっ、気持ちいいですっ……!!」  
「んむ、ああぅ!!マリアさんっ、そこ、いいっ……!!」  
 二人の声が浴場に響く。自分の恥ずかしいところを相手にさらけ出し、口唇で  
調べ尽くされる感覚が、愛撫による性感を何倍にも増幅した。熱心に互いの秘部に  
しゃぶり付く光景は、そこに吸い付いて繋がろうとしているかのようで、横から  
見れば快感の循環する一つの閉じた回路を形作っているようでもあった。  
「んんあっ!!すごい、マリアさんっ、うううんんっ!!」  
「んあ!!ヒナギク、さんっ、あぁっ!!あああ、はげ、しぃっっ!!」  
「ごめんなさいっ、とまらないっ……!!」  
「ううんっ、気持ちいいんです!!はげしいっ、んぁっ、けどっ、気持ちいいのっ!!」  
「わたしも、ぜんぶ気持ちいいからっ、マリアさんもっ、おもいっきり、あああ、  
おねがいっ……!!」  
「ヒナギクさんっ……!!」  
「うんっ、マリアさんもっ、んんぁあああっ!!」  
 エスカレートしている興奮を互いに確かめあい、ヒナギクとマリアは愛情と欲望を  
激しい愛撫に表してぶつけあう。指と舌と唇が秘唇と陰核を強く摩擦し、快感が  
腰から脳へと飛び抜ける。二人とも愛液を秘裂から零しながら身をよじりあった。  
「んんんっ!!むっうんん!!あんんん!!」  
「ああ!!ん、ん、んんんんんん!!んぁんんぁんん!!」  
「むん!!んんん!!ふあ!!あん!!」  
「くんん!!ぁんっ!!む、ふ、んんん!!」  
 呻きを発し快感に溺れつつも、二人は愛撫の手を休めない。むしろ一層激しく  
なっていくその責め立てぶりこそが、悦びと昂りの証しと言えた。結果、加速度的に  
快感は膨れ上がり、耐えきれないほど張り詰めていく。  
「んんん!!ああ!!ああ!!」  
「んあ!!あっあ!!んんんんぁっ!!」  
「ああ!!ああ!!」  
「あん!!あ!!あ!!」  
「「…………ぁあぁぁあぁぁぁぁああああああああああ………!!」」  
 そしてついにほぼ同時に絶頂に達し、高い声を上げた後、二つの裸体はぐったりと  
マットの上で横たわった。  
 
「うーん、大分遅くなっちゃったわね……」  
 三千院ナギ邸を辞したヒナギクは、街中を目指し夜道を歩いていく。と、家なみの  
中の小さな交差点で、見知った少女と出くわした。  
「あ、ハル子じゃない。」  
「あれ、会長?」  
 生徒会書記・春風千桜は、こんな時間に制服姿の生徒会長と出会って驚く。  
「いまお帰りですか?生徒会の仕事、こんな遅くまでかかってしまいました?」  
「いいえ?ほぼ予測通りに終わったわよ。解散した後、ちょっと寄り道したら  
遅くなっちゃった。」  
「そうですか。すみません、お手伝いできなくて。」  
 千桜は深く頭を下げる。  
「気にすることないわよ、メールでも言ったけど。バイトは前からあったんだし、  
そもそも休日だし。」  
「でも愛歌さんを無理に呼び出すことになって――」  
「んー、私もそれはちょっと心配してたんだけど、なんか今日は元気だったのよね。  
なにか昨日いいことがあって気分がいいって感じに見えたんだけど、ハル子何か  
知らない?高尾山で同じ班だったでしょ?」  
「昨日、ですか?同じ班といっても、途中ではぐれてしまいましたからね……」  
 千桜は首を傾げて昨日の愛歌の様子を思い出そうとした。だがヒナギクはさほど  
その話題に執着していないのか、千桜がすぐには答えを出せないと見ると、別の  
話題を振った。  
「まあそれは明日にでも話すとして。ハル子の方はいままでバイトしてたの?」  
「え?ええ。メールにも書いたと思いますが、雇い主から夜までいてくれと頼まれ  
まして、断り切れなくて。」  
「じゃあこんなに暗くなるまでバイトして、一人で帰って来たの?やっぱり断った  
方が良かったんじゃない?」  
「いえ……雇い主は帰りはタクシーを使っていいとも言ってくれたので、断る理由は  
なかったというか。タクシーは結局自分で遠慮したんです。暗くても交通機関が  
営業を終えるにはまだまだ早いですし。もったいないじゃないですか。」  
「うーん、その経済観念はうちのお姉ちゃんに見習わせたいところね……」  
「まあでも、さすがに暗くなりましたね。会長が心配してくださるのも、もっともな  
ことですが……」  
 千桜はあたりを見回す。交差点には小さな電灯が一つきりで、道の先を照らすには  
心もとない。  
「まあ、用心は何かあってからでは遅いからね。」  
「というか。会長こそこんな夜中に歩かれては危ないですよ。」  
「何?あなたも私が夜道を歩くと通行中の女の子の身が危険とか言うつもり?」  
「いえいえ、今のはそういう意味ではありませんって……」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。  
「ですからね。例えばですよ。この後ここで私達が別れて帰りますよね。もし、  
その辺に変質者が一人潜んでいて、どちらかの後を付けるとしたら、どちらを  
狙うと思いますか?」  
 千桜は真意を伝えようと、自分との比較を例示して話すことにした。  
「どちらかというとハル子のほうがか弱いから、ハル子の方?」  
「それは外見からはほとんど分かりません。不届き者は外見を見て、私より会長が  
美人だから、会長の方を狙うと思うんですよ。」  
「えー。ハル子こそチャーミングじゃない。」  
「人それぞれ好みはあっても、会長の容貌の方が美しいと多くの人が言うと思います。  
そういうわけで会長は人目を引くので、変質者でなくても、夜遊びしてる者達や  
酔っ払いが絡んできたりするかもしれません。会長は実際はお強いから、めったに  
危機に陥ることはないでしょうけれど、相手も何を持っていてどんな無茶をするか  
わからないですから、腕に自信があっても、他の普通の女の子と同じかそれ以上に  
危ないですよ。」  
「あー、うん、心配してくれてありがとう。」  
 頬を指でこすりながら、ヒナギクは力説する千桜の肩をぽんぽんと叩いた。  
「でもなんかこそばゆいから、それくらいにしてくれない?」  
「あ……す、すいません。」  
 千桜は頬を赤らめた。  
 
「でもホントにハル子だってかわいいんだから、用心しないとだめよ……?」  
「そんなことないですよ。」  
 ヒナギクの言葉をお世辞と取って、千桜は謙遜する。  
「そんな事言ってぇ。何かあってからでは遅いわよ?」  
 ヒナギクは千桜の頬に手を伸ばし、優しく撫でた。  
「もぉ、勘弁してください、会長……」  
 千桜は、ヒナギクが褒められて照れたので仕返しに自分を褒め殺そうとしている  
のだと考える。間近でヒナギクの瞳に見つめられ、心拍が上がる。耐え切れず、  
十分照れました、という様子で降参の意思を告げた。  
「だから、ハル子みたいなチャーミングな女の子が用心しないとどうなるか、  
これから私が教えてあげようと思うの。」  
「……は?」  
「大丈夫。優しくするから!!」  
 ヒナギクの朗らかな笑顔に、千桜は彼女の意図を読み違えていたことに気付く。  
「か、会長?」  
「うん。やはり白皇学院高等部生徒会長・桂ヒナギクとしては。学院生徒に平和と  
安全について指導する義務があると思うの。」  
「それはそうかもしれませんが!!これから私あんまり平和でも安全でもない状況に  
されそうな!?」  
「安心して。私のレクチャーは健康的で効果的よ。練馬区にお住まいのN.S.さん(13)  
からも、『もっと用心するべきだったことがわかった』と称える声が――」  
「どう聞いてもデンジャラスです!!」  
「はい、チェックメイト。」  
「あ。」  
 いつの間にか、千桜は壁に追い詰められてしまっていた。ヒナギクの顔が目の前に  
ゆっくりと迫ってくる。  
「か、会長、こ、こんなところで……」  
「ん?駄目?」  
 ヒナギクは接近を止め、千桜に尋ねた。  
「駄目に決まってるじゃないですかぁ……」  
 千桜は顔を真っ赤にして声を絞り出した。  
「ふむ。ハル子が恥ずかしいというなら、場所を変えましょう。」  
「他所ならいいってわけでもないですから!!」  
 千桜はヒナギクの譲歩に乗じて決死の抵抗を試みた。剣道有段者のヒナギクとは  
いえ、さすがに女の子一人を望みの場所に引きずっては行けないだろうと見込んで、  
粘り勝ちを目指す。  
「ちょっと荒っぽくなるけど、しばらく我慢してね。」  
 ヒナギクは片手を後ろに隠した。  
「は?」  
「来なさい、正宗――!!」  
 ピカーーッ……  
「わわっ!?」  
 突然ヒナギクの後ろで光が溢れた。思わず千桜は目をつむる。急速に光は収まり、  
暗がりが戻ってきた。目をしばたく千桜の前で、ヒナギクは腕を斜め下に伸ばす。  
 その手には見事な木刀が握られていた。  
「ちょ!?どこからそんなものセットアップしたんですか!!」  
「じっとしててね!!」  
「ひ!!」  
 ヒナギクは短く警告すると、目にも止まらぬ速さで千桜を抱え上げ、飛ぶような  
速度で走り出した。  
「きゃーーーーーーーーー!!」  
 
「ごーーーーーーーーるっ!!」  
 ずんっ……  
「…………ぁ………」  
 着地したヒナギクの腕の中で、千桜はまだ固まっていた。  
 ヒナギクは夜道を車より早く駆け抜け、道角を直角に曲がり、最後に高い白壁に  
向かって爆走し、なんとそれを軽く飛び越えて、木々の合間に降り立った。  
「ふう、ここなら人目につかないわ。」  
「ぁ……え?」  
 千桜はきょろきょろと辺りを見回す。周りの木々は庭の植樹として手入れがされて  
いるようだった。夜闇のために木々の先がどうなっているのかはよく分からない。  
唯一知りうるのは、後ろ側に飛び越えてきた白壁が木よりも高くそびえ立っている  
ことだった。  
「なにをどーイグニッションしたらあれを飛び越えられるんですか!?」  
「気合よ。」  
「気合て!?」  
「これを構えているとなぜか気合が入って力が出るのよね。」  
 ヒナギクは木刀を軽く動かして見せた。  
「いやいや、気合でどうにかなるものでは……」  
「気合は大事よ。気合が入っていれば、目を瞑ったままで高い壁を飛び越えること  
だって」  
「瞑ってたんですね!?高い所怖いから目を閉じてテイクオフしたんですね!?」  
 千桜はヒナギクの制服の襟を掴んで引っ張る。  
「わ、ちょっと苦しいわ、ハル子……」  
「あ、すいません……」  
 千桜は手を離した。ヒナギクはすかさず千桜を抱きすくめる。  
「さあ、人目に付かないところに来たところで、再開しましょう。」  
「大して状況が変わっていません!!」  
 ヒナギクが迫り、千桜は尻込みした。  
「そりゃぁ、夜道の危険を身に教えるレッスンなんだから、やっぱり夜道と同じ  
ような雰囲気のある場所でやらなきゃ。」  
「だから……そんなレッスンいりません……」  
 千桜はヒナギクの艶かしい視線に絡め取られないよう、横を向く。  
「言ったでしょう、」  
 ヒナギクは千桜の耳元で熱っぽく囁いた。  
「何かあったら、もう、遅い、って……」  
「ん、だめ、ですっ……」  
 
「んくっ、あっ、んん……!!」  
「ん……はん……」  
 ヒナギクは千桜の唇をついばみながら、胸と尻の膨らみを服の上から撫で回す。  
優しくもいやらしい手つきで体の曲線をくすぐられ、千桜は体が熱くなっていった。  
「どう?こんなふうに、いやらしいこと、されてるのは……?」  
 ヒナギクは意地悪な質問をする。  
「やっ、そんなこと聞かないでくださいっ……」  
 千桜は目尻に涙を浮かべ、紅潮した顔で呟いた。  
「答えてくれないならー、ハル子の体に直接聞いちゃおうっと……」  
「んんあ!!」  
 ヒナギクは乳首の上をきゅっと指で押さえて、千桜に呻き声を上げさせた。  
それから壁の方へ体を引き寄せると、くるりと千桜の背後に回り、胸をしっかりと  
揉みながらスカートの裾をめくり始める。  
「あんんっ!!だめ、だめですっ!!」  
 千桜はヒナギクの手の悪戯を防ごうと、抵抗する腕に力を込めて叫んだ。  
「あんまり大きい声出すと、外に聞こえちゃうかもよ?」  
「あっ……!!」  
 ヒナギクに小さな声で指摘され、千桜はびくっとして思わず口を手で塞いだ。  
ヒナギクの手への意識が留守になり、防御動作が空回りする。ヒナギクはその隙に  
服の下のブラジャーとショーツに辿り着いた。  
「んんんっ!!」  
「ここの子たちは、素直に答えてくれるかしら?」  
「やあ……」  
 千桜はか細い声を漏らす。  
「乳首ちゃんはー、いやらしいお手々でくーにくーにされるの、好きかなー?」  
「んんん!!」  
 ブラジャーの上から乳首を指で捏ね回され、千桜は零れそうになる声を必死で  
堪えた。  
「くーにくーに……ハル子の乳首ちゃん、くーにくーに……」  
「んんん!!んん!!んっんんん!!」  
「くーにくーに……さあ、どうかな……?」  
「んんんっ!!……はぁああ、え?あ!?」  
 ヒナギクは千桜のブラジャーを外してずり下げる。火照った乳房が外気に触れた。  
その頂上の突起を、ヒナギクは直接指で摘まんだ。  
「んんぁあ!!」  
「ふふ……乳首ちゃん、こんなに硬くなって、いやらしいお手々が気持ち良かった  
って言ってるわよ?」  
「や、あんんっ!!ふ、はんんっ!!」  
 硬くしこった乳首を、ヒナギクの指が弄ぶ。  
「はうっ、あああ……」  
 
 プルルルル……プルルルル……  
 
 千桜のポケットで携帯電話が鳴った。  
「……ほら、出ていいわよ。」  
 ヒナギクは手を休めて千桜の体勢を楽にしてやった。穏やかに頷き、千桜に行動を  
促す。  
「は、はい……」  
 千桜は携帯電話を取り出して、電話を掛けてきた相手を確かめる。少し顔を曇らせ  
わずかに逡巡し、ヒナギクの顔をちらりと見て、意を決して応答ボタンを押した。  
「はいっ、ハルです……」  
 火照った体にヒナギクの手がじっと絡み付いている。その感触が電話の向こうの  
相手に今の自分の状態が気取られるのではないかという恐れを増幅させていたが、  
千桜は何度か返事をしていくうちに、今のところバレてはいないと推測した。  
それによって少し緊張が解け、受け答えに余裕ができる。  
「いえ、まだ帰り道で……友達と会って。……はい、女の子、です……」  
 ヒナギクの方をまたちらと見て、千桜は電話の相手に答えた。  
「ええ、いま、彼女と……」  
 『友達』としていると語る偽の出来事は、ヒナギクとしている現実の出来事とは  
まるっきりかけ離れた無害なもので、その隠蔽行為が千桜に背徳感を覚えさせる。  
「すみません、御厚意を……はい、大丈夫です……はい、ではまた……」  
 千桜は携帯電話を畳んでほっと溜息を吐いた。  
「バイト先の人かしら?」  
「ええ……」  
 千桜は携帯電話をポケットに仕舞い、無意識にヒナギクの腕に寄り掛かった。  
「ふふ、やっぱりハル子は可愛いわね……」  
「……は!!」  
 ようやく気付いた千桜がヒナギクの腕から逃れようともがくが、ヒナギクは  
もちろんぎゅっと抱き締めて離さない。  
「どう?いやらしいことされてる途中に、電話で人と話すっていうのは?」  
「どうもこうもありません!!」  
「そう?刺激が足りなかったのかしら。やっぱり定石通り乳首を摘むとかいやらしい  
ことをされつつも、必死に耐えながら話すというのでないと、いやらしさが足りない  
のかしらね?」  
 真剣に検討しているヒナギクの声を聞いて、千桜は泣きを入れた。  
「お願いですからそんなことは勘弁してください……」  
「ま、そうね。せっかくハル子が自分から今の人にごまかしてくれたんだし、  
共犯者は大事にしないとね……」  
「いやいや被害者ですから私!!」  
「まあ今の人とか電話先の人を共犯にしておけば、ハル子が耐えきれないくらいの  
いやらしいことをしても大丈夫ってことにはなるわよね……」  
 さらに真剣に検討しているヒナギクの声を聞いて、千桜はもう一度泣きを入れた。  
「ほんとにお願いですからそんなことは勘弁してください……」  
「まあ、それはおいといて。次は、こっちの子はどうかしら……?」  
「んんあっああっあっ!!」  
 千桜の股間に伸びたヒナギクの手が、ショーツの上から秘所を撫でた。  
 
「あぅ、あんん!!あんっあっあんん……!!」  
 ヒナギクの指が割れ目の上を往復するたび、千桜はあられもない声を上げた。  
さらに指先で敏感なポイントを突き捏ね回し、千桜の足をがくがくと震えさせる。  
千桜は壁に腕を突いて快感に震える体を支えていた。飛び出る声を抑えることも  
忘れ、ヒナギクの指の技巧になすがままにされる。  
「ああっ……?」  
 不意にヒナギクの愛撫が途切れた。  
「さあ、ハル子の女の子は、どんなお返事かな?」  
 そう言ってヒナギクは千桜のショーツを引き降ろした。  
「あ、あ、あああ……」  
「どれどれ……」  
 ヒナギクは指で割れ目を探り当て、指の腹をくちゅりと沈めた。  
「んんあっ!!」  
「ほら、びしょびしょ……こっちの子も、いやらしい指ですりすりされて、感じてる  
って、とろとろのお汁で、お返事してくれてるわ……」  
「んあっ、はああ!!やあぁ!!はんんっ!!」  
 ヒナギクが指を動かすと、愛液が秘裂から掻き出され、さらに奥から新しい体液が  
零れてくる。そのぬかるみを掻き回される恥ずかしさと心地よさに、千桜は次々と  
悩ましい声を響かせた。  
「可愛いわ、ハル子……」  
 そんな千桜の痴態をうっとりとした顔で見つめ、ヒナギクは褒め称える。  
「……どうせっ!!」  
 千桜は顔をさらに赤くし、ぷいと横を向いて文句を言った。  
「どうせ、ヒナギクはっ、みんなにそんなこと言ってるんでしょうっ?」  
「みんな可愛いんだもの。『私にとって可愛いのはあなただけよ』と言わないだけ、  
誠実な態度だと思わない?」  
 かつて言った文句に対し、かつて言われた返事が繰り返される。  
「でも、そうね……」  
 ヒナギクは千桜の頬に手を当てて、かつては言われなかった言葉を続けた。  
「当代白皇学院生徒会長にとっては……書記さんはやっぱりクールでチャーミングで  
働き者の誰かさんじゃないと、甘え甲斐がないかもしれないわね。」  
「……それで誠実さを示したつもり?」  
「ねー、機嫌直して、ハル子ー。」  
 ヒナギクは千桜の頬を指でつつきながら、ねだるような口調で呼び掛ける。千桜は  
軽く溜息をつき、優しい声で言った。  
「はいはい。会長のためなら何でもいたしますよ。機嫌だって直しちゃいますよ。  
まったく、しょうがないですね会長は……」  
「うふ、ありがとうっ、ハル子。」  
 ヒナギクは感謝を述べ、千桜の頬に繰り返し口付けをする。千桜は目を軽く閉じ、  
気持ち良さそうにそれに身を任せた。  
「ん……」  
「ホント、可愛い、ハル子……」  
「んんんっ!!」  
 ヒナギクが千桜の秘所をさわさわと撫でた。  
「ねえ、ハル子、いやらしいこと、もっとしていい?」  
 ヒナギクは千桜に問いかける。  
「あんっ!!あっあうんっ!!」  
「ハル子、可愛いから、私、ハル子にいやらしいことしたいの。私がするいやらしい  
ことで、ハル子が気持ちよくなってくれると、とっても可愛くてうれしいの。私、  
もっとハル子にいやらしいことしたい……」  
「あ、かい、ちょうっ……」  
 千桜の耳にヒナギクの吐露が染み込んでいく。  
「クールなハル子も、怒ってるハル子も、そうやって泣きべそなハル子も、みんな  
可愛い……ね、次は、いやらしいことして気持ちいい時のハル子を見せて……」  
「……」  
 千桜はこくりと頷いた。  
 
「んんぁ!!あああ!!あんんっ!!んふぐ……」  
「むぐ……んんっ……あっ、んんっ……!!」  
 壁に背をもたれた千桜の股間を、ヒナギクの手がまさぐっている。千桜の両手は  
ヒナギクの背に回され、ギュッと服を掴んでいた。ヒナギクは千桜の喘ぐ表情を  
愉しみながら、時折ディープな口付けを交わす。  
「ふぁ!!ああ!!んんあっ!!んんんんっ……!!」  
 千桜は秘裂をヒナギクの指で弄りまくられ、精神は溢れる快楽に翻弄されていた。  
肉体においても、とめどなく分泌される愛液は花弁を溢れ出て内股とヒナギクの手に  
伝い落ち、陰核は愛撫を受けて膨れ上がり、開いた口元からは唾液がだらしなく  
零れてしまう。  
「んっ、可愛いっ、ハル子っ!!」  
「ああっ、あんんっ!!」  
「ほら、いやらしいことされて、気持ちいいでしょ?」  
「ああああ!!」  
 千桜はがくがくと首を振った。  
「もっと気持ち良くなっていいのよ、ハル子が気持ち良くなっていっちゃうとこ、  
私に見せて……!!」  
「あんんあああ!!」  
 ヒナギクの指が千桜の秘所の豆つぶを、花びらを、激しく擦り立てる。敏感な  
場所への刺激が、痛いくらいの快感となって体に突き刺さった。じんじんとする  
体の奥底から、しだいに何か熱いものが呼び起こされる。  
「あ!!ああ!!な、なにか、わたし、わたしっ!!ああっ!!」  
「いいの?きもちいいの?」  
「んんあ!!あ!!んっんっんっああああ……!!」  
 千桜の性の興奮が急速に高まっていく。ヒナギクの背をぎゅっと抱き締め、自分の  
胸を押し潰すように強くしがみ付いた。腰が震え、足元がおぼつかなくなる。  
「ああっ、ああ!!あ!!あっああぁああ!!」  
「いきそう?ハル子いっちゃいそう?」  
「あ、はう!!ああ!!あんんんっ!!」  
「いっちゃいそうよ?ハル子いっちゃいそうよ?」  
「ああ!!ああ!!あっはぁあああ!!」  
「ほら、ほらっ……!!」  
「あっあああ……!!」  
 ヒナギクは上ずった声で呼び掛けながら、愛液まみれの手で千桜の潤みきった  
秘唇を責め倒す。膣口を弄り陰核を摘み上げ、千桜を追い込んでいく。千桜は  
高い声を発して窮地を訴えた。  
「ひあっ、ああぁ!!だめ、だめぇ!!あんんっ!!もうだめっ!!」  
「いきなさい、いっちゃいなさい、気持ちいいんでしょ?我慢できなくなったら、  
ほら、いっちゃいなさい……!!」  
「あ!!あああ!!ひぁ!!あ!!もうっ!!あんんあぁっ!!あ!!ああ!!あ!!」  
「ハル子っ、さぁっ……!!」  
 そして、千桜はついに絶頂に達した。  
「あ、あ!!いっちゃうっ、もう、いっちゃうっ、あ!!あ!!あ!!あ!!あぁいぁぁぁああ  
ぁぁああぁぁあぁぁぁあああああ……!!」  
 
「うーん、やはりハル子は可愛かった……」  
「……会長が夜中に歩かれては危ないということが良く分かりました。」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。千桜は深く溜息をついた。そして尋ねる。  
「ところで、ここはどこですか?」  
「どこでしょう……?」オロオロ  
「来たのは初めてだけど、鷺ノ宮家の庭のはずよ。」  
 ヒナギクは何でもないように答えた。  
「伊澄さんの家ですか!?そんなところに不法侵入したら不味いのでは……」  
「まあ、私、不法侵入してしまったのでしょうか……」オロオロ  
「そんな可愛く言っても駄目です。見付かったらどうするんですか!?」  
 千桜はヒナギクに問い質した。  
「夜道で襲われかかった友人を連れて走って来たら入ってしまったと説明すれば  
分かってもらえると思うわ。」  
「無理があります!!」  
「夜道というのは怖いのですね……」オロオロ  
「ほら、分かってもらえたじゃない。」  
「だから、家の人に分かってもらえるかが問題で……!!」  
 そこでやっと千桜は和服の少女に気付いた。  
「い、伊澄さん……!!」  
「はい、千桜さん、こんばんは。」  
 伊澄は丁寧にお辞儀して挨拶した。  
「こんばんは鷺ノ宮さん。」  
「生徒会長さんも、こんばんは。」  
 ヒナギクにも挨拶を返す。  
「あの、これはですね……」  
「というわけなので、勝手に入ってごめんなさい。」  
「いえいえ。それは仕方の無いことです。」  
 ヒナギクと伊澄の間で、あっさり片が付いた。  
「もうハル子も襲われないと思うので、家に帰してあげたいんだけど、」  
 千桜の何か言いたげな視線を無視して、ヒナギクは伊澄に尋ねる。  
「どこから出ればいいかしら?」  
「……さあ?」  
 伊澄は首を傾げた。  
 
「ごめんなさいね、ヒナギクさん。うちの伊澄が……」  
「いえいえこちらこそ感謝するほうですから。勝手に庭に入ったのに、家にまで  
上げていただいて。鷺ノ宮さんもお母さまもありがとうございます。」  
 初穂が横に座る伊澄の頭をぐりぐり撫でながら娘の不手際を謝るのに対し、対面で  
正座しているヒナギクも礼を述べて御辞儀した。その横に座る千桜も頭を下げる。  
 あれから彼女たち三人は結局、ヒナギクが携帯電話で伊澄の家の電話に掛けて、  
伊澄捜索隊に発見してもらったのだった。  
「春風千桜さん、でしたっけ。聞けば災難だったようですね。」  
「ええ、まあ……」  
 千桜は言葉を濁し、横目でヒナギクを見る。ヒナギクは視線を逸らしとぼけた。  
「うちの車を出してお家まで送ってさしあげましょうか?」  
「いえ、そこまでしていただくわけにも……」  
「でももう暗いですし、そんなことがあった後では怖いでしょう?」  
「お気遣いありがとうございます。でも大丈夫です。大丈夫ですよね?」  
 千桜はそう言ってヒナギクに問いかけた。  
「私がハル子……千桜を送って、一緒に帰ろうかとも思っていたんだけど……」  
 千桜を見ると、ぶんぶんと首を横に振っている。ヒナギクは苦笑しながら初穂に  
向って意見を表した。  
「……ええと、彼女ももう大丈夫そうなので、一人でも帰れるでしょう。夜道を  
用心するようには、私もすでに言っておきましたから。」  
「そう、無理にとは言わないけれど、ほんとに用心してね。ヒナギクさんはどう?  
車で送らせてもらえるかしら?」  
「私にはおかまいなく。むしろ夜道を見回るくらいの気持ちで帰りますので。」  
「あら、頼もしいこと。でも女の子なんだから、あなたも用心しなくちゃだめよ?」  
「はい、覚えておきます。」  
「あの、ではあまり長くお邪魔しても申し訳ないので、私はそろそろ……」  
 話がついたと見て、千桜は辞去を申し出た。  
「あら、ゆっくりしていってもいいのよ?」  
「いえ、あまり遅くなると家の者も心配しますし、ああは言いましたけどなるべく  
早く帰った方がいいには違いないので……」  
「まあ、それはそうよね。残念だけど、また遊びにきてちょうだいね。」  
「私もお待ちしています。」  
 伊澄も母の申し出に同意した。  
「ありがとうございます。伊澄さんも、今日はありがとうございました。」  
 千桜は立ち上がって深くお辞儀をした。横からヒナギクも声を掛ける。  
「気を付けて帰るのよ。」  
「……会長はまだお話をされていかれるんですか?」  
「そうね、ハル子が一人ですぐに帰るということなら、私は少し鷺ノ宮さんと話を  
していこうかしら。」  
 そう言ってヒナギクは横に置いた木刀に手を触れ、鷺ノ宮母子の方を見た。  
それを見て初穂は小さく頷き、すっと立ち上がって千桜に声を掛けた。  
「それじゃあ、私はハル子ちゃんを門まで送っていきますね。」  
「あ、いえそんな、おかまいなく……」  
「いいのよ、門までけっこう入り組んでるし、見送った方が安心だわ。伊澄ちゃん、  
ここはよろしくね。」  
「はい、お母さま。千桜さん、お気を付けてお帰りになってくださいね。」  
 微笑んで千桜に言葉を掛ける伊澄を、千桜は心配そうな目で見ながら言う。  
「……伊澄さんこそ、気を付けてくださいね……」  
「?はい……」  
 千桜と初穂が障子を閉めて出ていくのを見送り、伊澄はヒナギクに向き直った。  
湯呑みを手に取り茶を一口飲むと、引き締まった表情で尋ねる。  
「さて、どんなお話でしょうか……?」  
 
「あんっ、ああああんんっ……!!」  
「ふふ、もうびしょびしょよ、鷺ノ宮さん……」  
 畳の上に押し倒し、和服をはだけ、脚を開かせ、伊澄の股間にヒナギクは舌を  
這わせる。まだ外見上幼さのある秘裂は、しかしそれ以前の愛撫によって大いに  
快感を得て、すでに多量の愛液を分泌し始めてた。零れ出る愛液を舌でかき混ぜ、  
陰唇や陰核を舐め回して愛撫するので、伊澄の秘所は広く濡れわたってしまう。  
「ああ、あんんっ!!は、恥ずかしいですっ……!!」  
「大丈夫、そのうちもっと気持ちよくなって、気にならなくなるわ……」  
「や、そんな……ああぁうんんっ!!」  
 ヒナギクの舌が陰唇を這い回り、伊澄の体にゾクゾクした快感が走った。白い喉を  
見せて嬌声を漏らし、手をぎゅっと握りしめる。恥じらって閉じようとする両脚は、  
ヒナギクの手でしっかりと止められていた。  
「むちゅ、んむ、ちゅ、んんんんん……」  
「ぁはんっ!!ふうんっ!!あっうんっ、うん……!!」  
 伊澄の秘部をヒナギクは口唇で徹底的に愛撫する。舌と口の形を様々に変え、  
伊澄の肌と粘膜に擦り合わせた。陰核を口に含み、舌で皮をいじる。膣口に舌先を  
差し入れる。尿道口をくすぐる。べろべろと全体を上下に舐め回したかと思うと、  
首を傾けて舌と上唇で陰唇を咥えてみたりする。絶え間ない愛撫に、伊澄の息は  
荒くなり、吹き出し続ける愛液は尻の下の和服に零れ落ちた。  
「あうん……!!ああ……!!はっ、ああぁ……、うんんんんんんぁああ!!」  
「……ぷは。気持良くなったら、いっていいからね……」  
「はぁっ、はぁっ、……あっあっああっ……!!」  
 一言だけ言うと、ヒナギクは口を戻し、愛撫を続ける。ヒナギクの舌が快楽を  
送り込むと、伊澄の腰はぴくんぴくんと反応を示した。手懐けられた伊澄の肉体は、  
さらなる快感を享受したいという反射的な衝動に動かされている。頭脳も快楽に  
酔いしれ、肉体の反応に恥じらいを覚えるような余裕もなくなってきた。  
「あ!!あんっ!!んんんっ!!ああ!!あっ!!」  
「んっ、んーんんんんん、ぢゅ、ぢゅ、ぢゅっ……」  
「あああ!!あ!!ああ!!んひぃ!!ひんっ!!ああっはぁああぁっ!!」  
 快楽に飛び付いた心身が、内なる興奮を増大させていく。伊澄の声や仕草に  
興奮の高まりは段々と表れて、ヒナギクはそれに合わせて愛撫の激しさと衝撃度を  
引き上げていった。最終的に伊澄の性感もヒナギクの責めも、これ以上ないくらい  
高まり合う。  
「あ!!ああ!!あんあ!!い!!いいっ、あああ!!」  
 そして秘所を貪り続けたヒナギクの舌が、ついに伊澄に限界をもたらした。  
伊澄の体は縮こまり、小刻みに震え出す。  
「あああ!!いく、あ!!あ!!いっちゃう!!あああ!!」  
「んんんんんん……」  
「ああ!!あああ!!あっあっあああ……」  
「んんんんんんんん……っ!!」  
「……んああああぁぁぁぁっぁあぁあぁああぁああああああ!!」  
 シャシャシャッ……  
 伊澄は激しく潮を吹き出して果てた。  
 
「ふう、さっぱりした。」  
 ヒナギクは洗面所を借りて顔を拭き終わった。  
「洗面所とタオル、借りさせてもらってありがとうね、鷺ノ宮さん。」  
「いえ、身繕いを手伝っていただきましたから、お礼を言うなら私の方です……」  
 伊澄はヒナギクからタオルを受け取って言った。  
「ありがとうございました。生徒会長さん。」  
「あー、なんか感謝されると少し良心が痛むわね……」  
「?」  
 伊澄は首を傾げる。  
「それにしても生徒会長さんはすごいですね……安息日に生徒会の仕事をこなし、  
自主的に生徒に安全指導をして、夜道で襲われかかった女生徒を救出するなんて、  
一年生で会長に選出されたのも皆納得の働きぶりです……」  
「う、うんまあ……」  
 ヒナギクはさらに良心が痛んだ。  
「このように学院の平和と安全に尽くしているのよ……」  
「ほんとうに、素晴らしいです……先ほどは私にも、用心することを教えて  
くださって……ホントは千桜さんと楽しくお帰りになりたかったのでしょうに、  
千桜さんと協力して、私に試練を講じてくださったのですね……」  
「あ……あはは……」  
 キラキラした伊澄の目に耐え切れなくなり、ヒナギクは横を向いて笑った。  
「あ、そ、そろそろ私も帰らなくちゃ。ごめんなさいね色々と。」  
「いいえ、何のお持て成しも出来ませんで……」  
「げ、玄関どちらかしら?」  
「あ、こちらです……」  
 二人は洗面所を出て行った。  
 
「ねこーねこー」  
「……あれ?」  
 ヒナギクが伊澄と共に敷地の正門まで出てくると、そこにとっくに帰ったはずの  
少女が座り込んでいた。  
「ねこーねこー」  
「にゃー……」  
 少女は猫の群れの中の一匹の猫の頭を撫で、至福の表情をしている。  
「ねこーねこー」  
「あー……ハル子?」  
 ヒナギクはメガネが似合うかなりクールな生徒会書記に声を掛けた。  
「ねこーねこー……はっ!?」  
 千桜はやっとヒナギクたちに気付く。  
「か、かいちょうっ!?」  
「あら、ヒナギクさんもうお帰り?」  
 門の外に立っていた初穂がヒナギクに話し掛けた。どうやら千桜に付き合って  
ずっとここにいたらしい。  
「あ、はい。」  
「ごめんなさいね、何にもお持て成し出来なくって……」  
「いえ、十分持て成していただきましたので……」  
 ヒナギクは答えつつも千桜に視線をやる。  
「あ、いえこれはですね、なんといいますか……あっ!!もうこんな時間だ!!」  
 千桜は時計を見てわざとらしく叫んだ。  
「すみません、伊澄さんのお母さま、付き合わせてしまって!!」  
「あらあらいいのよ全然。」  
「大変失礼で申し訳ないのですが、時間がありませんので、これで失礼します!!  
会長と伊澄さんもまた明日!!」  
「あ、はい、千桜さん、さようなら、おやすみなさい……」  
「おやすみなさいーーーー!!」  
 千桜は別れの挨拶を叫んで闇の中へ駆けて行った。  
「……お気を付けて〜〜……」  
 伊澄の声が最後まで届いたかどうかは定かではなかった。  
「……ええと。伊澄さんのお母さま、私も失礼します。」  
「はい、ヒナギクさんも気を付けて帰ってね。おやすみなさい……」  
 
「あれ、愛沢さん?」  
 ヒナギクは帰り道にまた見知った顔を見つけた。小さな用水に掛かる橋の欄干に  
もたれて携帯電話を弄っていた少女は、ヒナギクに名前を呼ばれて振り向く。  
「おや、白皇の生徒会長さんやないか。」  
「ヒナギクでいいわよ。こんな所でなにをしているの?」  
 聞かれてしばし考え、咲夜は携帯電話をしまった。  
「愛沢家で最近バイトに雇ったメイドさんがおるんやけどな。これがまた  
パーフェクトなメイドさんでな。笑顔は明るく仕事は完璧。メイド魂に満ち溢れた  
ホンマモンのメイドさんなんや。」  
「へー、すごそうな人ね。」  
「うん、すごいんやけど、一つ欠点があるんや。」  
「何?」  
「欠点がないんや。」  
「……ん?」  
「つまり、ドジも失敗もうっかりもないんや。」  
「……いいことじゃないの?」  
「まあ、ポンコツメイド分は他で間に合うとるからエエといえばエエんやけどな。  
そういう隙の無いメイドさんの何がウチにとって問題かというとな――」  
「何?」  
「胸を揉ませてくれへんのや。」  
「……それは深刻な問題ね。」  
 二人して深刻な顔になる。  
「こっそり背後に寄ると振り返る。正面から行けば身をかわす。まったく隙が  
あらへん。これまで999人のメイドさんの胸を揉んできたウチもこんなに手強い  
メイドさんは初めてや。」  
「揉ませてくれって頼んだら?」  
「それはパワハラやん。」  
「セクハラはいいんだ……」  
「ああっ14歳って事は便利やねっ……」  
 咲夜は午後の気だるい気分のような目をして夜空を見上げた。  
「で、そのメイドさんの胸とこの愛沢さんの夜歩きに何の関係があるの?」  
「うむ。今日はたまたま人手が足りんでな。そのメイドさんに時間延長で仕事して  
もろたんやけど。もう夜遅いのに一人で帰ってしもたんや。」  
 ヒナギクは、どこかで聞いたような話だなあ、と思った。  
「そこでウチに名案が浮かんだんや。メイドさんの帰りを夜道で待ち伏せして、  
『あんさんみたいなチャーミングなメイドさんが夜道用心せんとどうなるか、  
ウチが教えたるー。』といけば、胸を揉む大義名分ができるやないか、と……」  
「で、ここで待ち伏せしているわけ?」  
「うーん、そうなんやけどな、尾行組が途中で見失うてしもてな。電話かけたら  
友達と会っとる言うから、その辺のファーストフードや喫茶店なんかをを手分けして  
探してもろとるんや。まあ住所からするとこの辺を通るのは間違いあらへんから、  
ここに近付けば待ち伏せ組が連絡してくるはず――」  
 Come on Come on Come on Come on huu♪……  
「……あら?」  
 咲夜の携帯電話の着メロが鳴った。  
「はい、咲夜ですー。……いやいやそんな気にせんといて……は?……あー、それは  
ぶじにかえりついてうちもあんしんやー……うん、ほなまたこんど、きょうは  
おおきになー……」  
 咲夜は通話を終えて気落ちした様子でうな垂れた。  
「もう家の前やて……」  
「メイドさん本人から?」  
「せや。どこをどう大回りして帰ったんやろ……」  
 咲夜は携帯の地図アプリを見て首を傾げている。ヒナギクはその横から尋ねた。  
「ねえ、愛沢さん。一つ聞きたいことがあるんだけど。」  
「なんや?」  
「バイトのメイドさんって帰宅中もメイド服着てるの?」  
 咲夜の動きが止まった。  
「メイド服を着てないときにメイドさんの胸を揉んでも、メイドさんの胸を揉んだ  
ことになるのかしら。」  
「しもたーーーーーーーーーーー!!」  
 
「全作戦中止、速やかに撤収やー……」  
 地面に片膝を付きながら咲夜は部隊に指令を出した。  
「ううっ、マリアさんとかのいつもメイド服着とる職業メイドさんのイメージが  
強うて、計画立案段階からしくじってしもとった……」  
「まあ、そんなに気を落とさないで。メイドさんだけが女の子じゃないわよ。」  
 ヒナギクは腰を屈めて咲夜の肩をぽんぽんと叩く。  
「生徒会役員とかどう?クールな書記とか優しい副会長とかいい娘がいるわよ。」  
「おお。それはなんや新鮮な感じがするなー。」  
 咲夜はけろりと表情を戻して顔を上げた。  
「まあ彼女たちは触らせてくれるかどうかわからないけど、生徒会長の胸なら  
オーケーが出るかもしれないわよ?」  
 ヒナギクはウィンクして誘いかける。  
「はは、それなら白皇の生徒会長さんに、この悲しみを慰めてもらえるやろか?」  
 咲夜は手をわきわきさせながら尋ねた。  
「許可しまーす。」  
「わーい、おおきに。ほなさっそく……とりゃ!!」  
「きゃっ!!」  
 ヒナギクの胸に咲夜の手が押し当てられる。ヒナギクはわざとらしく声を上げて  
驚いて見せた。咲夜はヒナギクの胸に顔を寄せ、胸に当てた手をくにくにと動かす。  
ヒナギクはその後ろ頭を優しく撫でた。  
「うりゃうりゃうりゃ………」  
「ん……ふふ、愛沢さんったら―――」  
「うむ。見事なないちちや。」  
 ごち。  
「痛っ!!」  
 ヒナギクのヘッドバットが咲夜のおでこに決まった。  
「あ・い・ざ・わ・さん?」  
「いやつい。ひと月ぶりにこの見事なないちちに触れて思わず」  
 ごち。  
「痛っ!!」  
「悪かったわね!!相変わらず小さい胸で!!」  
「まあ確かにあまり揉み応えはタンマタンマ。」  
 三度目のヘッドバットを叩きつけようとしたヒナギクの頭を重ねた両手で防ぐ。  
「そんなに大きいのが好きなら乗って来なければいいのに……」  
 ヒナギクは不満そうに言った。  
「いやいや小さいんも好きやで?それにひと月ぶりやから一応成長具合を確かめて  
おかんとな。八か月もたつと画風やキャラデザも変わっとるかもしれへんし……」  
「なんの話よ。ひと月くらいでそんな大きくなったりしないでしょう!?」  
「あー……そ、そやね……」  
 強く主張するヒナギクの怒りのこもった目から、咲夜はつつつと視線をそらした。  
「……愛沢さん。まさか……」  
「……な、なんやろか〜?」  
 目を合わせずに咲夜は返答する。  
「……」  
「……さ、十分慰めてもろたしそろそろかえ」  
「待ちなさい。」  
 振り向いて逃げ出そうとした咲夜の肩をヒナギクが掴んだ。  
「ちょっとあなたのも確かめさせなさい!!」  
「あ!!いやほらあかんそれはまたこんど――」  
 ぐに。  
「んあんっ……」  
 ヒナギクに背後から胸を鷲掴みにされ、咲夜は可愛い声を漏らした。むにむにと  
ヒナギクは咲夜の膨らみを確かめる。  
「……明らかにひと月前より大きくなってるわね?」  
「あっ……まあ、14歳になったしなぁ……」  
「ブラのカップとか変ってるんじゃない?これは……」  
「んっ……あれやな、下田温泉の秘湯が効いたんかな、あはは……は……」  
「……愛沢さん。私のこの悲しみを慰めてもらえるわよね?」  
 ヒナギクは涙目で手をわきわきさせながら尋ねた。  
「お、お手柔らかに、なー……」  
 
「んっ……あんっ……はあっ……」  
「むう……ぐぬぬ……それにしても見事な胸ね……」  
 ヒナギクは咲夜を橋の欄干に背もたれさせて、正面から二つの膨らみを揉み  
ほぐした。弾力感とボリューム感が手に楽しい。  
「……私の14歳のころは、こんなに大きくなかったわよ……?」  
 恨めしそうにヒナギクは咲夜の目を見詰める。  
「んんっ……そら当たり前や……昔大きかったんなら、その乳は縮んだんかーいって  
話んなるやないか……」  
「自慢じゃないけど、縮むほどの胸があったことはないわ。」  
「はあ、ホンマに自慢やあらへんな……」  
 咲夜は呆れたように溜息を吐いた。ヒナギクは咲夜の胸に視線を戻して、また  
ねちっこく双丘を揉みまくる。  
「まあ、私のことは措いておいても、ちょっと14歳とは思えない大きさね……」  
「んぁっ、手がやらしいで会長さんっ……」  
 咲夜は軽く頬を染めた。幼馴染の友人であるところの、この白皇学院生徒会長は、  
さすが女の胸を揉み慣れていると見えて、咲夜の目から見ても手付きが巧みだった。  
「えー?そう?愛沢さんのおっぱいがえっちなおっぱいに育ってるから、そんな  
ふうに感じちゃうんじゃないかしら?」  
 もちろん実際は愛撫に近い揉み方をしているのだが、ヒナギクはわざとそんな  
ことを言って咲夜をからかった。  
「んんん……っ、そんなわけあるかいっ。やらしい揉み方しとる自覚がないっ  
ちゅうんやったら、会長さんの手ぇこそやらしい育ち方しとるんやないか?」  
「……私の手がそんな育ち方をしているとするならば、」  
「んぅ、んっ!!」  
 ヒナギクは咲夜の胸をさらに揉みつつ、さも真剣そうに言った。  
「それは多分、世の中に魅力的なおっぱいが多すぎるせいよ……」  
「うわ居直りおったで。」  
 ヒナギクは芝居ががった口調で嘆いてみせる。  
「なんてこと、素敵なおっぱいを数多く揉み過ぎたせいで、私の手は勝手にえっちな  
揉み方をするようになってしまったのね?」  
「認めるんかいな。」  
 咲夜の胸を揉んでいたヒナギクの手が、服の胸元のボタンを外し出した。  
「ああっ、直接おっぱいを揉もうと勝手に手が愛沢さんの服を脱がし始め――」  
「えーかげんにしなさい。」  
 バシィン!!  
 咲夜はとりあえず携帯ハリセンでつっこんでおいた。  
 
「うーん、形もキレイだし、張りもいい……なんて卑怯なおっぱいかしら……」  
「んぁっ……あんんっ……んあぁぁぁ……!!」  
 咲夜の胸を露出させたヒナギクは、さらに乳房を揉みしだき、手に触れる柔らかい  
肌の感触を貪った。乳房を丹念にマッサージされ、咲夜も変な気分になってくる。  
「乳首も可愛いし……」  
「んああ!!」  
 勃起した乳首を摘まれ、咲夜は気持ち良さに声を上げた。  
「ほら、感度もいいわ……」  
「ふあっ!!あんっ!!んんあっ……!!」  
 ヒナギクは乳首を転がしながら、咲夜の胸を捏ね回した。ヒナギクの手の中で、  
咲夜の乳房はむにむにと形を変え、敏感な突起と乙女の柔肌が摩擦される。  
「あっあうんっ、あんんっ!!」  
 圧迫され擦られる、密かに自慢の双丘から、淫らな快感が体内に広がっていった。  
潤んだ目と開いた唇に、その影響がうかがえる。  
「気持ちいい?私も気持ちいい。愛沢さんのおっぱい、ホントに素敵よ……」  
 ヒナギクは優しく話し掛けた。  
「んんんっ……会長さん、やっぱ揉むの上手いなぁ……」  
「ありがと。でも、あんまり揉むとまた大きくなっちゃうかしら?」  
 ふふっと微笑む。  
「それはなんだかくやしいけど……とても素敵なおっぱいだから、今は楽しまずには  
いられないわ。」  
「そりゃ、んん、光栄なこっちゃな……あんんっ!!」  
「だから、愛沢さんも、楽しんでね……」  
 ヒナギクは咲夜の乳首を揉み、乳房を押し転がした。愛撫に馴れた頃とみて、  
少し強めに突起や膨らみを刺激する。硬くしこった乳首を強く擦ると、咲夜は  
びくんと反応して悩ましい声を響かせた。  
「んんんっっっ!!あっ!!んーーーーっ……!!」  
 
「はぁんっ、あんっ、んんんっ!!」  
「ん、はっ、む……」  
 ヒナギクは咲夜に口付けを交わしている。咲夜の瑞々しい唇と舌を、よく味わう  
ように丹念に舐め回した。咲夜も負けじとヒナギクの唇に舌を割り込ませ、入り  
込んでくるヒナギクの舌先を強く吸う。  
「んはっ、あっ!!あっ!!」  
 咲夜の片手は、ヒナギクの手に導かれて自分の股間へと伸びていた。ヒナギクは  
咲夜の手を取り、咲夜自身のスカートの下へ差し込むと、スカートをめくり上げる  
ように引き上げて、大胆にもその手を股間に押し付けさせたのだった。自分で慰める  
ように求められた咲夜は、胸と口唇を愛撫される内に切なくなってきていた体を、  
しばらくの逡巡の後に下着の上から指でゆっくりとさすり始めてしまった。  
「あんんっ!!あ!!あ!!んんぁっっっ!!」  
 今や咲夜が自身を慰める指は、横の隙間からショーツの下に潜り込んで、熱い  
秘裂を直接掻き回している。下着の上からの指遊びで湿り始めていた秘唇は、  
指の接触と運動でじっとりと愛液に潤んだ。それに濡れた指でまためくられ擦られ、  
さらに快楽を得て愛液の分泌が促される。  
「んあん!!あぁあっ!!あんんんっ……!!」  
 咲夜は今も片胸の乳房と乳首をヒナギクの手で揉みほぐされ、そのヒナギクと  
濃厚なキスを繰り返した。上半身の興奮は下半身に向かい、一層秘所を自慰する指が  
激しく動く。陰核や陰裂を弄って快楽に女の器官を昂ぶらせると、性の衝動は  
頭上へと体を巡っていった。興奮の高まった胸を空いた手で自ら揉みしだき、  
上体を揺らし、口付けしている頭をせわしなく動かす。  
「んっ、はあっ……」  
 ヒナギクは口を離して呼吸を整え、片方の乳首だけを摘んで愛撫しながら、咲夜の  
興奮の様子を見定めた。  
「あはぁっ、あんんっ!!あっ!!あっ……!!」  
 咲夜は胸と股間を自慰しながら、物欲しそうにヒナギクを見つめている。  
「愛沢さん、とってもえっちな感じで、可愛いわよ……」  
 そう言いながら、ヒナギクはもう片方の乳首も指で押し挟んだ。  
「んはぁあぁんっ……!!」  
 咲夜が首を反らして快楽の声を上げる。ヒナギクはしゃがみ込み、その乳首に  
口元を寄せた。  
「もっといっぱい、してあげるっ……はむっ……」  
「んっふあんんっ!!あ!!あふんん!!」  
 ヒナギクに乳首を甘噛みされ、咲夜の胸にさらに電撃が走った。ヒナギクはもう  
片方の乳首を責める指と共に、快楽と興奮に繋がり易い敏感な場所に大量に刺激を  
送り込む。咲夜の興奮度グラフは、また上に一段突き抜けた。  
「ああああ!!あふあ!!」  
「む、む、む……ふはむ、ふはむ、ふちゅっ……」  
「あ、あんんっ!!」  
 時折ヒナギクの口唇は乳首の突起だけでなく、乳輪から白い乳房まで広くを覆い、  
愛撫する。乳房を口にされて、咲夜はそこで二人が繋がっている感覚を覚えた。  
それに似た歓喜を求めて、秘裂に割り込む指が密着したまま激しく擦られ、  
じゅぶじゅぶと愛液をしぶき飛ばす。  
「ん、は、むむ、んんっ……」  
「ああ!!あんん!!あぅあぁっ!!あん!!あんんっ!!」  
 咲夜の胸の歓喜と自慰の激しさは、どんどんエスカレートしていき、コントロール  
不能な域にまで達した。一心不乱に胸を責め立てるヒナギクと共に、ひたすら頂点に  
向けて突き進む。  
「ああ!!ああ!!あ!!あんんっ……!!」  
「ふあ、む、ふむふ、んう、んんん、むはむむっ……!!」  
「ああ!!あ!!あ!!あ!!ああ!!あ!!」  
「ん、ん、む、んん、んんんん……」  
「ああああ…………い、くっ…………」  
 咲夜は不意に身を固くした。体の硬直が、大きなオーガズムが来る事を予告する。  
そして数瞬身構えた続けた咲夜を、ついに絶頂が弾き飛ばした。  
「いくいくいくっ……ぁああああああああぁぁああぁぁっぁぁぁぁああああ……!!」  
 
「ありがと。かなり慰められたわ。」  
「はー、そらえかったな……」  
 咲夜は胸元を整えながら生返事をした。  
「おっぱいはいいわね……ちっぽけな悩みなんかどこかへ飛んでいっちゃうわ……」  
 ヒナギクはそう言って夜空を見上げる。  
「まあそやな。胸が小さいなんちゅうのは、べっぴんの会長さんやと贅沢な悩みや。  
玉に瑕ってほどのことでさえあらへんよ。もっと自分に自信持った方がええで。」  
「ありがとう、愛沢さん。そうよね、自然体が一番よね……」  
 ヒナギクは咲夜に向き直って微笑んだ。  
「そう自然と……愛沢さんみたいに成長期がきて、18歳位にはいっぱしのサイズに」  
「いや、それはどうやろか……」  
 咲夜は引きつった笑顔で呟く。  
「なによ?」  
「ああいや、なんでもあらへんよ。そやね、そうなるとええね。アフターものが  
楽しみやね……」  
 咲夜はヒナギクから視線をそらしてごまかした。  
「……ああ、結構時間経っちゃったわね。」  
 ヒナギクはふと気づいて時計を確かめた。  
「撤収とか言ってたけど、愛沢さんは帰らなくていいの?」  
「ああ、そやな。車呼ぼ……」  
 咲夜は携帯電話を取り出し、誰かと短く話して通話を終えた。  
「会長さんは帰りか?なんなら乗せたってもええよ。」  
「車内は禁えっち?」  
「なんやそら。」  
 咲夜はその単語に思わず笑った。  
「まあ、なんとかならんこともないけどな……いろいろとリベンジしたいことも  
あるしな。」  
 そして少し乗り気を見せる。ヒナギクも咲夜に歩み寄りながら語り掛けた。  
「私も愛沢さんの胸以外にも、もう少し知りたいことが……」  
「なんや?」  
「このおしりが――」  
 ばっ。さっ。  
 ヒナギクは素早く咲夜のヒップに触れようとしたが、驚くべき速さで咲夜は  
身をかわし、手で尻を隠した。  
「……どうして逃げるの?」  
「……どうしてこんなとこ触ろうとするんや?」  
「だってほら、愛沢さんなんだかヒップも大きくなっているような」  
「なってへん!!なってへんで、それは目の錯覚や!!」  
 咲夜は強硬に否定する。  
「だから、触って確かめてみたいと」  
「だから大きゅうなってへんから確かめる必要ないで!!」  
「いいじゃない、大きくなったって。豊かなヒップっていいものよ。ちっぽけな  
悩みなんてどこかへ飛んでいっちゃうわ……」  
「そら他人のデカ尻はウチも大好きやけどな!?自分のこととなれば話は別や!!」  
「ふむ。愛沢さんはヒップが大きめなのを気にしていると……」  
「あぐ……」  
「キューティーな愛沢さんにはそれは贅沢な悩みよ。むしろ鬼に金棒ってなものよ。  
もっと自信を持ちなさい。いいわ、白皇学院生徒会長の名に懸けて、帰りの車内で  
いかに愛沢さんのヒップが素敵かということを、手取り腰取り教えてあげ」  
「かんにんしてや!!」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くそうとしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。  
「ここは白皇やあらへんし、ウチも白皇の生徒とちゃう!!」  
「二周目は通うそうだからまあいいじゃない。」  
「チラシの裏に描いとれ!!」  
 ブロロロ……  
「あ、迎えが来た。ほなさいなら!!」  
 バタン!!ブロロロ……  
 咲夜はやって来た黒塗りの車に乗り込み、ヒナギクを置いて帰って行った。  
「……あらら、残念ね。」  
 
「ハヤテ君、じゃあ、ここでお別れかな……」  
「はい、西沢さん……」  
「えっと、今日はホントにありがとう。」  
「いえ、怪我が無くてなによりです。……いや、ノートを駄目にしてしまったので、  
こっちこそすみません。」  
「あは。ノートや課題くらいなんとでもなることだからいいよ。ありがとう、  
ハヤテ君。う……嬉しかった、よ……」  
「その、えーと、に、西沢さん……」  
「ハヤテ君……」  
「嬢ちゃん熱いねえ。なぁ乃木坂?」  
「警部、邪魔しちゃ悪いですよ。」  
「「あ゛。」」  
 パトカーの窓越しに別れを惜しんでいた歩とハヤテが、状況を思い出して慌て  
ふためいた。  
「え、えと、刑事さんありがとうございました!!送っていただいて!!」  
「なあに、これも可愛いお譲ちゃんのためよ。なあボウズ?」  
「え、えと、はい、まあ、そうですね……」  
「け、刑事さん!!早くハヤテ君を送ってあげて欲しいんじゃないかな!!」  
「はいはい。もういいか、ボウズ?」  
「あ、はい。じゃあ、おやすみなさい、西沢さん。」  
「う、うん。おやすみ、ハヤテ君。」  
 ブロロロ……  
 手を振る歩を残し、パトカーは夜の道路を走り去った。  
「……あれ?歩?」  
「はい?」  
 遥か遠く小さくなった車のランプに向かって手を上げ続けていた歩は、そのまま  
自分の名を呼ぶ声に振り向いた。  
「あれ、ヒナさん?」  
 そこには怪訝そうな顔をして歩み寄るヒナギクの姿があった。  
「さっきあなた、パトカーから降りてなかった?」  
「はい、そうですよ。見てたんですか?」  
「暗くて遠くて誰かは分らなかったけど、誰かパトカーから降りるのが見えて。  
さっきようやく歩と分かったんだけど、なんでパトカー?」  
「あ、それはですね……」  
 
「……さすがハヤテ君。」  
「そうでしょ?」  
「……元の学校で強盗に出くわすなんて、さすがの不運さね。」  
「ええと……」  
 歩には反論の言葉もなかった。  
「それで事情聴取の後、パトカーで送ってもらってたのね。でも歩の家って、  
もう少し先なのに?」  
 ヒナギクが歩の団地の方を見る。ここからもう見えるが、入口まではまだ住宅地を  
歩かなければならない。歩はどよんとした口調で疑問に答えた。  
「……パトカーが団地の入口まで来ると、あらぬ噂が立ちそうじゃないですか。」  
「頼めばハヤテ君に家まで送ってもらえたんじゃないの?」  
「私を降ろした後で、次はハヤテ君をお屋敷に送ってくれるという順番になっていた  
ので、刑事さんたちを車で待たせるのはやっぱり悪いんじゃないかな、と思って。」  
 今度の質問にはしっかりとした口調で答える。だが、歩は少し残念そうな表情を  
見せた。それを見て、ヒナギクは微笑みを浮かべ、歩に囁いた。  
「ふーん。じゃあ、ハヤテ君を歩の家に泊めれば良かったんじゃない?」  
「そ!そんなの無理じゃないかな!!」  
 わたわたと手を振る歩を、ヒナギクは楽しそうに見物した。  
「もう、ヒナさんからかわないでくださいよ……」  
「いいえ?からかってなんかないわよ?用心して送ってもらった方が良かったんじゃ  
ないかしら、ってことよ。すぐ家の近くだからとはいえ、夜も遅いんだから……」  
「ヒナさんこそー。こんなに遅くまでなにをしていたのかな?」  
 歩は膨れ面で問い掛けた。  
「私は白皇学院高等部生徒会長・桂ヒナギクとして、学院生徒に平和と安全について  
指導する義務を果たしていたの。」  
「うん?」  
 抽象的な返答に、歩は首を傾げる。  
「女の子一人や夜道がいかに危険かということをね、しっかりと分かってもらえる  
ように、一所懸命忠告をしていたら、こんなに遅くなってしまったのよ。」  
 ヒナギクはうんうんと頷いて説明した。  
「だからね、歩も少し用心が足りないようだから、私がこれから教えてあげ――」  
「ヒナさん。」  
 歩の肩に手を置いたヒナギクは、彼女にじと目で見られていることに気付いた。  
「……はい?」  
「ちょっとそこにお座りなさい。」  
「え、と、歩?」  
 歩がしゃがむのに引き摺られ、ヒナギクは身を屈めた。  
「いいですか、」  
 アスファルトの上に歩は正座し、背をピンと張ってヒナギクを見据える。  
ヒナギクはつられて自分も正座をしてしまった。  
「は、はい。」  
「しっかりしていないように見えるからといって、叱るばかりではいけません。  
褒めたり信頼して見せたりもしないと、人間関係は上手くいきません。  
わかりますか?」  
「は、はい。」  
「相手が『ああっ、またお姉さまに叱られてしまった』と喜ぶような境地に達して  
いれば別ですが、そうでなければ気持ちのすれ違いを生みかねません。ていうか  
もう生まれてるんじゃないかな。」  
「こんなに学院の平和と安全に尽くしているのに……」  
 不満そうにヒナギクは愚痴る。  
「平和と安全も結構ですが、分かりやすい優しさも大事です。例を挙げましょう。  
これはある人の話です。この人は容姿も学歴も経済力もごく普通でした。その人は  
なんと、人がよさそう、というだけで結婚できたのです。いいですか、人が良くて  
優しいってだけで結婚できるくらい、分かりやすい優しさは強力なんです!!」  
「な、なるほど、臆病者の言い訳じゃなかったのね……」  
 歩の力説は続き、ヒナギクは言いくるめられていった。  
 
「わかってもらえたかな?」  
「うん。努力はするわ。でも、歩……それでもなお、誰にでもいると思うのよ……」  
 ヒナギクはしおらしい態度で俯いたまま語る。  
「嫌いじゃなくても……シャキッとしてないのを見ると……軽く殺意が沸いてくる  
ような相手というのが……ね?」  
「いやいや『ね?』とか可愛く言われても誰も同意できないんじゃないかなそんな  
一般化は……」  
 顔を上げて問いかけてきたヒナギクに、歩は溜息で答えた。  
「仕方ありません。スーパー恋愛コーディネーターとして、出来る限りのことを  
やってみましょう。」  
「あれ?これ恋愛相談だったかしら?」  
 ヒナギクは首を傾げる。  
「まずは、これからヒナさんに、迷惑行為に対する忍耐力を付けてもらいます。」  
 そう言って、歩は立ち上がり、ヒナギクに手を差し出す。  
「……は?」  
 ヒナギクは正座のままそれを見上げた。  
 
「ちょ、ちょっとこの恰好、は、恥ずかしいわよっ……!!」  
「それもまた忍耐です、ヒナさん……」  
 物陰でヒナギクは四つん這いにさせられる。歩は悟ったふうなことを言いながら、  
ヒナギクの姿勢をチェックし、細かく修正を指示した。  
「手はまっすぐ……頭は低くして……」  
 歩はヒナギクの髪をゴム紐でくくってやり、地面に落ちないようにした。  
「こ、こう……?」  
「そうです、そして、膝はなるべく前に出して、足先とヒップが揃うくらいに……」  
「こ、これくらい……?」  
「そう、ちょっとそのまま……」  
 歩はヒナギクの横に回ってしゃがみ、その姿を確認する。  
「い、いいかしら?」  
「うーん。位置はいいんですけど、あれが邪魔かな……」  
「な、なにが不満なの?」  
 ヒナギクは不安そうに尋ねた。歩は立ち上がってヒナギクの腰に近付いた。  
「うん、やっぱめくっちゃいましょう。スカート。」  
「えええ!?」  
「はい、じっとしてー。」  
「ちょ、ちょっと歩!!」  
 ヒナギクの抗議も空しく、歩はスカートを腰に捲り上げて縛り、固定する。  
スパッツに覆われた尻の曲線が露わになった。  
「ふう、これで出来上がりかな。」  
 歩は額の汗を拭きながら、またヒナギクの横手に座って彼女を眺めた。  
「なんなのよこれー!!」  
「これは……失意や悲しみを表すポーズです!!」  
 
 orz  
 
「失意や悲しみに打ちひしがれ、倒れてしまったように見えるこのポーズを  
取ることによって……今日の悲しみに区切りを付け、生まれかわって歩き出す  
ことが出来るのです!!」  
「は、はあ……」  
 自信満々に歩が言うので、ヒナギクは気圧されてしまう。  
「迷惑行為を忍耐するには色々な方法が考えられますが……これは、迷惑行為を  
受けた時の感情を、こうして一度悲しみの表現に昇華することで発散し……  
相手にあたることを思い止まれるようにするという方法です。」  
「ええと、つまり代償行為とかいうやつかしら?」  
「難しい言葉はわかりません。バカなので!!」  
 歩は偉そうに言い切った。  
「ともかく、何か負の感情が生じたら、こういうふうに打ちひしがれたポーズを  
とり、済んだこととしてしまうのです。」  
「で、でも、人前でこんな恰好したら、おかしな人と思われるでしょ!?」  
 ヒナギクは心配そうに問題点を指摘する。  
「大丈夫。まず実際にこのポーズを取る練習をして、イメージをしっかりと掴めば、  
あとは心の中で思い描いたり、掲示板やブログに書き込んだりするだけで感情を  
処理できるようになります!!」  
「掲示板やブログ?」  
 ヒナギクは首を傾げた。  
「まあそんな応用問題はまた今度にして……実際に迷惑行為を受けて、その感情を  
悲しみの表現に置き換えてみましょう。」  
「……これが迷惑行為じゃないの?」  
「これは白皇学院の平和と安全のために必要な行為です。」  
 歩は言い切った。  
「うう……」  
 学院のためと言われると、ヒナギクも強く抵抗できない。  
「迷惑行為はこれから私がやってみます。ヒナさんに迷惑をかけることに関しては、  
そこそこ自信があるんじゃないかな……」  
「ちょっと歩っ?なんだかデンジャラスじゃない?」  
「大丈夫、優しくしますから!!」  
 朗らかな笑顔で、歩はヒナの肩を叩いた。  
 
「うんっ!!……あっ!!……あくっ……!!」  
「わ、ヒナさん今日はなんだか敏感ですねぇ……」  
 歩は四つん這いのヒナギクの後ろに回って、スパッツの上から股間を指で  
さわさわと撫でている。あまり技巧のない歩の弱い愛撫でも、ヒナギクは  
息を乱して身をよじった。  
「どこが触ってほしいところなのかな?」  
「ん……んん……」  
 歩はヒナギクの内股を拭くように触って、反応の強弱をうかがう。  
「んっ……ぜっ、ぜんぶっ……!!」  
 ヒナギクは甘えた声で申し出た。実のところ、マリアと洗い合ったあとは、  
ヒナギクが一方的に相手をいかせることが続き、知らず知らずの内に肉体に欲求が  
溜まっていたのだと思われた。  
「どこでもいいからっ、もっと強く、お願いっ……」  
「『ぜんぶ』で、『どこでもいい』なんてのじゃ、どこを触って欲しいかわからない  
んじゃないかなー?」  
 歩はいじわるな口調でヒナギクの願いを拒んだ。  
「やあっ、お願いっ……!!」  
「だーめ。ちゃんと場所を教えてくれないと、わかりませんよー?」  
「んんん……」  
 歩は適当にヒナギクの股間を指先で擦り回して見る。  
「んっ!!あ!!そこぉっ!!」  
 ある点を指で擦った時、ヒナギクは気持良さそうな声を漏らし、歩にその場所を  
触って欲しいということを必死な声で伝えた。  
「ここですか?」  
「あ!!うんっ、うんっ!!」  
 歩がちょんちょんと指でその場所を突くと、ヒナギクは何度も首を縦に振った。  
「じゃあ、ここは、後回しー。」  
 歩は求められた場所に触れていた指を、つつつーっと脇に避けた。  
「え!?そ、そんな……」  
「触って欲しいところは聞きましたけど、そこを触ってあげますとは言って  
ませんよ?」  
「んんっ、いじわるっ……!!」  
「ふふふ……私の迷惑行為はすでに始まっているんじゃないかなっ……」  
 歩は楽しそうにヒナギクの股間の愛撫を再開した。  
「あ……ん……あっ!!そこ……!!」  
「はいパス2ー。」  
「やあっ……ん、くん……んあん!!」  
「ここもパスかなー。」  
「うえんっ……」  
 ヒナギクは涙目で嘆いた。欲求の溜まった体はかなり敏感になっているので、  
極端な反応を示さず歩が愛撫をしてくれる箇所でもそれなりの気持ちよさは  
あるのだが、とくに気持良くなれるところがあると分かっていて、そこをわざと  
避けて愛撫されると、どうしても求める場所を弄って欲しくなってしまう。  
特にポイントへの指の接触後、愛撫を中断されるときの悲しみは、その気持ちよさを  
僅かに見せられる分だけ、より深いものになった。  
「んん、ん……んんふむっ!!」  
「パス、ええといくつかな?」  
「あ、あゆむぅぅ……」  
 
「はぁっ、あんん、ふあっ……!!」  
「うおお、パスが追い付かない!!」  
 おあずけの愛撫でも、ヒナギクの興奮は少しずつ高まっていって、反応の強度が  
全体的に引き上げられた。そうすると、歩のテクニックでは感度の低い場所を  
見分けて愛撫するというようなことは困難で、ちょっと強めの反応をしたところから  
別のところに指を持って行ったらもっと敏感なところだったとか、あわててそこから  
また別のポイントに移ってみたらさらに敏感なところだったとか、そういう事態が  
頻発した。  
「ああっ、あ、いいっ、そこっ!!」  
 そうなるとおあずけされた分、途切れ途切れのポイント愛撫でも、強い快感の  
悦びは大きい。その悦びがヒナギクの興奮をさらに高め、ますます股間全体が  
敏感になる。気持ちいい所に触れられるたび、ヒナギクは声を上げて体を震わせた。  
「……あああ、ギブ!!ギブ!!」  
 とうとう歩は戦略的撤退を決断した。  
「あ、んっ……?」  
 ヒナギクは股間から手を離してしまった歩に、問いかけるような視線を向けた。  
「えー、おほん。」  
 歩は咳払いをしてなんとか恰好をつける。  
「えーと、どうですかヒナさん?『気持ちいいところにはさわってあげないよ作戦』  
の迷惑っぷりは?テクニックとかあまり自信ないことを逆手に取った、まさに私の  
為にあるような作戦じゃないかな!!さあヒナさん、迷惑かな?かなり迷惑かな?  
迷惑だったらその迷惑さを、その悲しみのポーズに込めて!!間違っても私にぶつけ  
ないように!!」  
「……けっこう、気持ち良かった……」  
 ヒナギクはぽぉっとした表情で、歩に囁いた。  
「……はい?」  
「……途中までは歩のいじわるは、確かにいやで悲しかったけど。んっ……焦ら  
された分、指できゅきゅってされた時は、すごく気持ち良かったの……」  
 少し恥ずかしそうにヒナギクは告白する。  
「最後の方は、もういっぱい気持良くなって……気持ちいいのがずっと続いてたの。  
ねえ、もっと、して……?」  
「あー……い、いや、ヒナさん全然迷惑そうじゃないので、あれはこれ以上やっても  
仕方ないんじゃないかな……」  
「お願い……」  
「ええと……」  
「ねえ、歩……」  
「いや、ですから……」  
「さわって、くれないの……?」  
 ヒナギクは悲しげに尋ねた。  
「ああっ、そんな目で見ないでっ!!」  
 
「んんっ!!ああっ!!あゆむっ!!いいっ!!」  
 ヒナギクが高い声を上げる。  
「はふっ、ちょ、ヒナさんっ、もう少し静かにっ……!!」  
「だって、だってぇ……!!」  
 歩はヒナギクを諌めるが、ヒナギクは声を止められない。  
「あああ、あ、いいっ、いいのっ!!」  
 ヒナギクのスパッツとショーツは膝上までずり下げられ、歩の前に恥ずかしい  
場所を晒し出していた。すっかり潤った淫裂を、歩の指と舌が優しく愛撫する。  
「んはっ、ヒナさんったらもうっ、ちゃんと口閉じてないと、してあげませんよ。」  
「んんんっ、だって……ああう!!」  
 ヒナギクは待ち望んだ歩の愛撫を受けて、歓喜が制御できないほどに弾けていた。  
さらに、律儀にも手をまっすぐ地面に突いた四つん這いの姿勢を続けており、  
手で口を塞ぐこともできない。  
「ほら、口閉じて……」  
 一旦、歩は手を止めて、ヒナギクを落ち着かせた。  
「んんんぅ、んんっ……」  
「ううん、我ながらすごい恰好をさせてしまったんじゃないかな……」  
 ヒナギクの様子を見ていると、改めてそんな感想が浮かぶ。綺麗な髪を無造作に  
纏め、口を必死に噛みしめるヒナギク。スカートは胴まで捲り上げられ、その下の  
スパッツとショーツさえも引き下げられて、魅惑的なヒップと、大事な部分を曝け  
出している。それだけでも扇情的なのに、犬のように四つん這いになって尻を裸で  
突き出し、背後から秘所を弄られて淫液を垂らしているのだ。  
「……はっ。もういいですかヒナさん?」  
 歩は我に返ってヒナギクに尋ねた。ヒナギクは口を閉じたままうんうんと頷く。  
「じゃ、いきますよ……」  
「ん〜〜〜〜〜!!」  
 歩は愛撫を再開し、濡れた手で陰唇をくすぐり、舌で陰核を転がす。ヒナギクは  
必死に口を閉じて、衝動に逆らう。手と足で支えられているヒナギクの胴体は、  
快感が体を走るたびに、びくんびくんと揺れ動いた。  
「はむ、んん……あふ、ちゅ……」  
「んん〜〜〜〜〜っ!!」」  
 歩はそう技巧があるわけでもない。だからクリトリスはなるべく優しく舐め、  
淫裂を愛撫する指は無茶な動きはしない。それでも熱心にやっているのがいいのか、  
あるいは相性がいいのか、ヒナギクのための愛撫は十分以上に効果的だった。  
ヒナギクの愛液まみれになりながら、歩はその秘所に奉仕し続ける。  
「んん……んん……んっ、あ!!」  
 ヒナギクは与えられる甘く愛おしい快楽に身悶えし、ついに興奮の炎がその  
自制心を焼き切るまで燃え広がった。  
「あっ!!あああ!!」  
「あ、ヒナさん、またっ……」  
「やああ、やめちゃやぁっ……!!」  
 ひとたび封が解かれたヒナギクの興奮の発露は、歩が愛撫を止めても鎮めにくく、  
声を限りに歩を求めて止まなかった。  
「ねえっ、もう少し、もう少しなのっ!!あゆむぅっ、おねがいっ!!」  
「ああもう、仕方ないかな……!!」  
 歩は腹を括って愛撫を再開した。  
「あうぅ、これいいっ、あっ!!」  
「はむ、こおっ……?」  
 歩はヒナギクの反応をヒントに、責めを集中させ、なんとか早くヒナギクに気を  
やらせてしまおうと努力する。ヒナギクは声と愛液を多大に漏らしてそれに応えた。  
「ああああ!!あ!!うん、そう、もっと、いい……!!」  
「ふあ、むう、うんっ……!!」  
「ああ!!あ!!すごい!!ああ!!あああ……」  
 歩の努力が実を結んだのか、あるいはヒナギクの言う通りすでに『もう少し』  
だったのか、意外なほど早くヒナギクの登り詰める瞬間は訪れた。  
「あんんぁ!!ああ!!あゆむっ!!あ!!あ!!いく!!いくの!!」  
「あぅ、ふふうううっ……!!」  
「ああ!!ああ!!いく!!いっちゃう!!ああ!!あ!!あ!!」  
 ヒナギクは高く顔を上げて、獣のように夜空に叫んだ。  
「あ!!あ!!んぁあああ…………ああああぁああああぁああああ………!!」  
 
 orz  
 
「歩、ほら、そんなに落ち込まないで……」  
 ヒナギクはうなだれる歩を励ました。  
「ううっ……すいませんヒナさん。私がヒナさんにきちんと迷惑を掛けられなかった  
ばっかりに、忍耐力の練習が失敗してしまってご迷惑を……」  
「いいのよ、歩。気持ちだけでも嬉しかったわ。それに、全部が無駄だったとは  
思わないの。」  
「え……?」  
 歩は頭を上げてヒナギクを見上げた。  
「意味がないと分かっていても、気持ち良くなりたがっていたわたしを受け止め、  
労わってくれた……あれが、優しさというものなのね。」  
「ヒナさん……」  
「歩は自分でいいお手本を示してくれたと思うの。それに、私にしてくれた忠告や  
教えてくれた教訓も、大事なことだと思う。今日は、ありがとう……」  
「ううっ、そうまで言ってもらえると、少し救われます……」  
 歩は目を拭いて立ち上がった。  
「見ててください、こんどこそは立派に救いようのない迷惑をかけて、必ずや忍耐力  
強化のお役に立ちます!!」  
「え。」  
 握りこぶしに力を込めて、歩は固く誓った。  
「スーパー恋愛コーディネーターとして、この名誉挽回は必ず!!ではまた!!  
おやすみなさい!!」  
「あ、うん、おやすみ……」  
 駆けていく歩を見送り、ヒナギクは首を傾げて呟いた。  
「……さっきも気になったんだけど、これって恋愛相談じゃなかったわよね……?」  
 ひゅるるる〜……  
「……帰ろ。」  
 夜風は何も答えなかった。  
 
「お嬢さま、ただいま戻りました――」  
 ハヤテはようやく屋敷に帰り、ナギに帰館を報告した。  
「ハヤテ……」  
「はい?」  
 ベッドの上で枕に顔を伏せているナギが、だるそうにハヤテに忠告した。  
「きれいなバラにはトゲがあるから、用心するんだぞ……」  
「え?……あ、マリアさんのことですか?」  
「私が……なんですって?」  
「わぁっ!!すいませんっ!!」  
「……このあたりでは、」  
 マリアとハヤテの騒ぎ合いを尻目で見ながら、ナギはハヤテに聞こえないように、  
小さな声で呟くのだった。  
「ヒナギクにもトゲがあるから、十分用心するんだぞ……」  
 
〜Fin〜  
 

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