「お…お嬢様は…巨乳です…」  
 
 誰にでも分かる嘘というものがある。  
 それも、ちらっと見ただけで確かめられることがある。  
 着痩せというレベルでもないし、どう見たってないものはないのだ。  
 …いや、少しくらいはあるのだぞ?  
 これからもっともっと大きくなる前の段階であるだけだ。  
 そうに決まっている!  
 いや、しかしステータス、希少価値、という言葉をアニメで聞いて安心してしまった私もいる…  
 ステータス…  
 本当にそうなのか?  
 
 
「というわけでマリア、大きいものと小さいものがあったら、どっちを好きになる? 率直な意見を聞きたいのだが」  
「あの…ナギ? というわけでって、いったい何の話を……?」  
 
 マリアは苦笑いを浮かべながら、困ったような声を出す。  
 それでも私は、胸のことだと、単刀直入に聞けるわけもなく、  
「ともかく、答えるのだ! ビッグ、もしくはスモール!?」  
 少し大きな声で問うと、マリアは少し考えるようなそぶりを見せた後に、答えた。  
「じゃあ、私は小さい方を選びます」  
「ふむ……、理由は何なのだ?」  
 内心、喜びを味わいながら、さらに質問を重ねる。  
 理由、というものも気になるのだ。  
「小さい方が可愛いじゃないですか」  
 にっこりと笑みを浮かべるマリア。  
 あまりに正直な意見に、私は一瞬言葉を濁す。  
「か、可愛いだと……」  
「いけませんか?」  
「いや、構わないが……」  
 私は少し後悔した。小さい方を選ぶにしたって、理由が可愛いというのはどうしたものだろう。  
『お…お嬢様の胸…か、可愛いです!』  
 
 それでいいのか?  
 いや…よくない気がする。なにか…。  
 それに、ハヤテは私の胸を触っているのだぞ? もし、ハヤテがそういう男なら、あの時に…、  
 ……、  
 む…、いかん。思い出したらなにやら悶々として来てしまった。顔も赤くなってきている…。ハヤテの手が…ここに…。  
 っと、いかんいかん、仕切り直さねば。  
 
 
「ハァ? いきなり何なんだよ、お前は!」  
 ワタルの不機嫌そうな声が耳元から聞こえる。  
「いいから、答えろ。簡単だぞ、大きいか小さいかの二択しかないのだぞ? 早くどちらが好きか言うのだ」  
 男の意見を聞くのが一番、と決めた私はさっそくワタルに電話をかけてみた。  
 ワタルとハヤテは違う、それでも異性の意見というものは貴重だと、私は思ったのだ。  
 もちろん、胸のこととは、言うわけもない。  
「ったく……だったら、俺は大きい方だな」  
「なっ……!」  
 言葉を詰まらせる。  
「大きい方がいいに決まってるじゃねーか。大は小を兼ねるって言うしな」  
「……」  
 言葉が出てこない。ワタルの言っていることは正しい。その通りだ、大は小を兼ねる……。  
 それを、何よりも異性であるワタルに言われたことが少しショックだった。  
「おい、何か言えよ。ん? ……おいナ――」  
 ブチリ。  
 
 
 ハヤテもやはり、大きい方が好みなのだろうか。  
 膨らんでいる方に欲情するのだろうか。  
 だとしたら、私は十分にハヤテを満足させることが出来ない、駄目な女ではないか。  
 そうしたら……  
 
『お嬢様、すいません。僕、あの巨乳の子が好きになっちゃいまして……』  
 なんてことが…  
 いや、そんなことはない!  
 起こるはずが……ない……。  
 でも、もし…もし、万が一、もしかして、ありえないだろうが…ハヤテが私を捨てる時が来てしまったら……  
 あ、ありえん!  
 だってハヤテは、ハヤテは……!  
 ぼす、と枕に顔をうずめると、思い出が心の中で蘇っていく。次々と、執事綾崎ハヤテとの日々が頭の中で次々と再生されていく。  
「ハヤテ……」  
――僕は…君が欲しいんだ  
 ハヤテの愛の言葉、あの言葉から、私とハヤテとの関係は始まった。  
 でも、抱きしめられたことはあっても、直接的な恋人としての行為は、なかった。  
 君が欲しい、ということは……そういう行為の意味でも使えるのではないか。「やらないか」という程直接的なものではないとしても。  
 ん……。  
 ハヤテとの行為……。  
 その映像を脳内で妄想してみる。  
「っっっ!」  
 は、恥ずかしいっ! し、しかし、ハヤテの愛を直接受けることができるのだぞ! これは、望むべきことだろ。  
 私とハヤテの繋がりが一層…  
 繋がり……  
「う……」  
 
 きゅん、と体が疼くような感覚が私の全身に響く。  
 つい、体の下の方に手が伸びていってしまう。  
 ここに、ハヤテのが当たって、中に入っていって……  
「んっ……」  
 下着の上から割れ目をなぞるように撫でる。  
 すると、予想以上の快感が全身に走り、ピクっと震えてしまう。  
「ハヤテ……ハヤテ…」  
 このままでは濡れてしまう、と思い私はスカートと下着をするすると脱いだ。  
 そして、露になった秘所に触れると、既にぬらついた音がする。  
「……あ……はふ……ん…」  
 クリトリスを丁寧になぞり、そのまま割れ目に指を入れるか入れないかといった具合に、秘所にタッチする。生暖かい感触が指から伝わり、だんだんと自分が高揚していくのが分かった。  
 ハヤテのモノが出たり入ったりするのを想像しながら、徐々に激しく、自慰を続ける。  
「あっ……ん……ハヤ、テっ……」  
 愛液によってだいぶ濡れてしまった指を軽く中に挿入すると、太腿がピクピクと震えてしまった。それでも、その指を抜かず、さらに奥へと進める。  
 ハヤテのモノが自分の中へと入って、処女膜を破り、最奥を突くことを考えながら。  
「は、ぁっ……ふ……んぅ……」  
 軽く引いて、また中に入れ戻す。その動きによって、どんどん奥から愛液が溢れてくる。しかも、その動きによって得る快感があまりに気持ちよすぎて、自らの意志で指を止めることが不可能となってきてしまう。  
「あ……いぃ、……んっ、は……」  
 ハヤテなら、どういう言葉を言いながら、私とするのだろう。  
 どういう風に膣内を?き混ぜるのだろう。  
 いつもなら思い浮かばないような淫猥なことが頭の中でどんどん浮かんでくる。  
 そうすることで、また、強く感じてしまう。  
 
「……ひっ……は、ぁっ、んうっ…」  
 狭い膣の入り口をひたすらに指の軽い挿入で擦り続ける。愛液の甘い香りや、くちゅくちゅといういやらしい水音も、私の気分を高揚させるスパイスにしかならない。  
「きもちっ……はぁっ……い、いっ……」  
 指のピストンを早める。快感の波に流されるままに――  
 その、絶頂へと繋がる動きに移行した瞬間、  
 ことん  
 という明らかに何かが落ちたような物音が、私の耳に入る。  
「っ!」  
 体をすぐさま起こし、物音が経った方向に顔を向ける。下半身はそのままだったが、何よりも、物音の正体が気になったのだ。  
「あ……」  
「お、お嬢様……」  
 綾崎ハヤテ、その人だった。  
 
 
「ハ、ハヤテ……ちょ、ちょ、なんでお前――!!」  
 必死にベッドの上の毛布を引っ張って、下半身を隠す。遅いと分かっていても、見られていても、今は穴があったら入りたい気持ちでいっぱいいっぱいだった。  
「その、お嬢様に呼ばれたような気がして……」  
「あ……ど、どこまで地獄耳なのだ、い、いやその……確かに、名前は…呼んだが」  
 しかも、甘い声で。  
 そう思ってしまうと顔が自然と紅潮していく。  
 
「えっと……その、申し訳ありません、すぐ出てい――」  
「ま、待つのだ! その、ハヤテ……」  
 恥ずかしい、恥ずかしいが……  
 それでも、もう引き下がれないではないか。  
 見られたことは確実。  
 だから、  
「……責任を、取れ、ハヤテ」  
 ようやく出た言葉。  
 キスさえしたことない。  
 でも、ここまできたら、やらないとダメだろ。  
 繋がりたい。  
 ハヤテとの関係の確実性が、欲しい。  
「責任……あ……はい。で、でもお嬢様……」  
「でも、もなにもないぞ。私が言っているのだ、しろ、と。それともハヤテは……私と……したくないのか?」  
 そう言うと、ハヤテは口を一文字に結んで、私のベッドまで歩んできた。そのまま、私の顎を軽く掴んで、くいっと持ち上げ――  
「んっ――」  
 軽く唇が触れ合うようなキス。ハヤテの体温が柔らかい唇を通して伝わってくる。  
 しばらく、くっつけては離して、くっつけては離してというのを繰り返し、ぐいっとハヤテが私の顔を固定したと思うと、口内に生温いものが入り込んできた。  
「は……んう……ん、ん」  
 舌と舌が絡み合い、お互いの唾液がミックスされ、口内に混ざりあった唾液が染みわたる。  
 これが……ハヤテの、キスの味…。  
 甘くもなく、辛くもなく、ハヤテの味…。  
「ちゅ……う…んちゅ……」  
 二人の舌が抱き合い、押し合い、互いの存在を確かめるかのように口内を這いまわる。  
 時には吸い、時には吸われ、刺激し合う。  
 
「ぅ…ちゅ……ん……んんっ!」  
 ハヤテの手が私の胸の辺りをまさぐっている。  
 一瞬、その手を振り払おうと、右手を上げたが、すぐに落とした。  
 ハヤテは私のために、そうしようとしているのだ。だから、ハヤテに全てを、任せよう。  
「ん――はっ」  
 ハヤテの顔が離れる。  
 その表情は微かに頬が赤く染まっており、今まで私に見せたことのない顔だった。  
 その顔をじっくり見ている間も、ハヤテの手は私の胸をやんわりと触っていた。  
「その……ハヤテ? ハヤテは、その、む、胸は大きい方が、好きか?」  
 ハヤテはその質問に、即座に答える。  
「僕は胸が大きいとか、小さいとか、そういうことは関係ないと思います。経験がないので、偉いことは言えませんが、こういうことって、相手に気持ち良くなって欲しいと思うことが何より大切なんじゃないですか?」  
「……論点がずれてないか、ハヤテ」  
 そう言うと、ハヤテは困ったような顔をする。しかし、  
「ともかく、僕は胸が小さいからどうこう、大きいからどうこうってことは、ないです」  
 きゅぅ、と触っていた手が胸の天辺を摘む。  
「はぅっ!」  
 自然と声が出てしまう。どうしようもなく、甘い声が。  
 私は力が抜けて、そのまま後ろに倒れこんでしまう。  
「お嬢様……」  
 ハヤテはその私に覆いかぶさってくる。  
「ハヤテ……」  
 するり、と毛布が取られる。  
 もう一度露になる下半身。  
 
「お嬢様、もう……」  
「ああ」  
 言わずとも分かる。  
 私の秘所は既に激しく濡れていて、下のシーツに軽くシミまで作っている。  
 準備万端ともいえる状態だ。  
 ハヤテはジッパーを下ろし、中から大きくなっているモノを外気に晒させる。  
「う、うわっ! お、大きいんだな……」  
「そんなことないですよ」  
 ぐ、とハヤテが慣れた手つきで膣口にモノを当てる。  
 その、あまりにも慣れ具合に、私が不審に思う。  
「おいハヤテ。初めての割には何だか慣れてないか? もしかしてあのハムスターやヒナギクと……」  
 じと、とハヤテを見る。  
「ちがいますよ! その……、僕も男の子ですから、いつかこういうことをすると思ってて、その昔想定していた感じにやっているだけです、信じてください」  
 ハヤテが私に対して嘘をつくわけがない。私はわかった、と言う。  
 すると、ぐい、と膣口にモノが入り込んでくる。  
 ぬ……む……ぬぷ  
「――――っ!!!!」  
 自分でも、決定的なその瞬間が理解できた。熱く硬いものが入り込んだ瞬間に痛みが脳に直接伝えられる。  
 処女膜を破られたのだ。痛いと聞いていたものの、予想以上の痛みが襲いかかって来て、体がピクピクと震えてしまう。  
「う……」  
「大丈夫ですかお嬢様!?」  
「だ、大丈夫だ……まったく痛くないぞ。ほ、ほら、動くんだ、ハヤテ」  
 その言葉に、ハヤテはふるふると顔を左右に振った。  
「もう少し、馴染んでからにしましょう」  
 すると、ハヤテはそのまま唇を重ねてきた。  
 再び交わる舌と舌。その水音が部屋に響く。  
 しばらく、お互いの舌を貪り合うようにしていると、いつの間にか痛みは軽減していた。  
「それでは、動きますね…」  
 少しずつハヤテの腰が前後し始める。  
 今、私の膣内はハヤテでいっぱいいっぱいだ。ちょっとの隙間もない。完全にハヤテを包み込んでいる。  
 その事実が、とても嬉しかった。  
 完全に、繋がっている。  
 
「ハヤテの……熱い…」  
「お嬢様の中、きゅうきゅうですごく気持ちいいですよ」  
「ば、バカ! そんな生々しい表現はするな!」  
 ぷい、と顔を横に向けてしまう。  
 しかし、  
「はうっ!」  
 ずん、と奥を突かれる度に、身体は正直に感じてしまう。先ほどまで処女だったのが嘘だったかのように、快感が体を伝染していく。  
 ゆっくりと腰を引き、カリの部分まで抜けたところで、再度奥へと送り込まれていく。ペースとしてはゆっくりなものだが、それでも毎回確実に一番奥の子宮口をこつこつとノックしてくる。  
 ず…ず…じゅぶ……ずぶ…  
「ここ、ですね」  
 亀頭の先端が奥をぐりぐりと押す。  
「ひあっ!」  
 甲高い悲鳴のような声を上げてしまう。  
 あまりの気持ち良さに、頷くこともできない。  
「じゃあ、少しずつ早くします」  
 ぬちゅ……  
 ハヤテのモノが押し込まれると、中から愛液が大量に溢れ出す。  
 膣の締め付けは相当のものであったが、その愛液が助けとなり、ハヤテの動きがだんだんと早くなっていく。  
「は、あっ……んうっ……あっ、あっ」  
 自然と漏れてしまう声と、にちゅにちゅという結合部からのいやらしい音、そしてハヤテの激しくなりつつある呼吸音の三つが、部屋の隅まで響く。  
 そのいやらしい音と、私の声がハヤテにとって、気持ちいいことへの手助けとなるのか、私が声を出せば出すほど、ハヤテの動きが激しくなっていくような気がした。  
 
 しかし、私としてはもっと、この身体で気持ち良くなって欲しいのだ。  
「んっ…うっ!」  
 きゅう、と下半身に力を入れる。  
 すると。「うっ」というハヤテの声が聞けた。  
「は…んっ、ど、どうだっ…き、気持ちいいか……?」  
「はい、すごく…」  
 ハヤテも、もう止めることができないといった風に、腰を動かす。結合部の水音だけでなく、お互いの腰のぶつかる音も聞こえる。  
「ん、あぁっ! ふっ、はっ、あぁっ」  
 頭の中がまっ白になりそうだった。  
 全身を駆けずり回る快感だけが体を支配し、ハヤテの姿だけしか見えなくなってしまった。  
 もう、どうなってもいいというほど、無茶苦茶に。  
「ひあっ! んっ! ハ、ハヤテ!」  
「んん…お嬢様っ、そろそろっ…!」  
 ハヤテの声が上ずっているのが分かった。  
 それに、腰の動きも今までで一番早い。  
「い、あっ! な、中にっ、ハヤテのっ、せいしっ! あぁっ! いっぱいぃっ!」  
 高速ピストンに息苦しさも感じてしまう。それでも気持ち良さには叶わない。私と言う肉体がハヤテの種を欲しがっている。  
 精子を求めて膣がヒクヒクしている。  
 私はこんなにもえっちだったのか、と認識しながら、ハヤテをぎゅうと抱きしめる。  
「あっ! ふっ! あんっ!」  
「でるっ!」  
 ハヤテが叫ぶと同時にドクン、と膣内でハヤテのモノが跳ねる。そのビクビクとした動きが連続したと思うと、私の膣内に暖かいものが注がれているのが分かった。  
「あ…出てる……すごく……いっぱい…」  
 
「ええ……お嬢様、すごく……気持ち良かったです」  
 射精はなかなか止まる気配も見せず、私の子宮に躊躇いもなく精子を流し込む。  
 精子によって子宮が満たされるのと同時に、私の心も満たされた。  
 関係がもてたことの喜び、それがとても、嬉しい。  
「ハヤテ、好きだ」  
「はい、お嬢様」  
 ハヤテを抱きしめながら、愛の言葉を告げると、ハヤテも応えるように抱きしめ返してくれた。  
 ――好き。  
 
 
 しかし、それでも、やっぱり、  
「ふむ……胸の前で手を合わせて……こうするのか?」  
 豊乳は諦められないのだ。  
 
 
end  
 
 
 

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