「私は……ハヤテ君の事がスキ」
言った。
ついに言ってしまった――。
歩は、どんな顔をしているだろう。怒っている? 悲しんでいる?
私には、分からなかった。俯いているから。怖くて、歩の顔を見れないから。
どれくらい経っただろう。とても長く感じられた沈黙を先に破ったのは、私ではなく、歩だった。
「ヒナさん」
「……あ、あの、歩、私――」
「知ってましたよ、私」
「…………へ?」
私は思わず顔を上げて、歩を見た。
笑顔。
私にはそう見えたけど、その笑顔の裏で歩は何を思っているのだろう。
「だってヒナさん、分かりやすいですもん。ヒナさんの家に泊まった時には、薄々そう思ってたぐらいですけど」
「そ、そう、なんだ」
歩の表情は、微塵も揺れなかった。少なくとも、私の告白に驚いているということは本当に無いみたいだった。
それもそうだろう。歩によれば、私の気持ちはとっくに知られていたのだから。
「……怒らないの? 私は、あなたを応援するって言ったのに……」
「うーん。まあ、ハヤテ君はカッコいいですから。好きになっちゃうのはしょうがないんじゃないかな」
さり気なく想い人の自慢をしつつ、歩は言葉を続けた。
「それに、その様子だと……ハヤテ君とは、まだあんな事やこんな事はしてないんですよね?」
「なっ、ななな!? そ、そんなこと、あるわけないじゃない!」
「でしょ? なら、いいんです」
悪戯っぽく笑う歩は、本当に気にしていないように見えた。私と違って、歩が分かりやすくはないというだけかもしれないけど。
「あー、でも、ちょっと困っちゃうかな。私なんかがヒナさんに敵うわけないですし」
「そんな事ないと思うけど……」
これはお世辞とかじゃなくて、本当にそう思う。まったく、ハヤテ君もどうしてこんな可愛い子を放っておくんだか……甲斐性云々の話は分かってるけど、そう思わずにはいられない。
「ふふ、ありがとうございます。でもやっぱり、ヒナさんは綺麗だし……それだけじゃなくて、可愛らしい所もあるって分かりましたし」
う……。高所恐怖症のこと言ってるのかしら。
「ほんとにもう、食べちゃいたいくらいで」
「へ?」
い、今、何かとんでもないこと言われたような気が……。聞き間違い、よね?
「あの、歩。今――」
歩に確認してみようと、恐る恐る声をかけようとした、まさにその時。
ガコン、という音と大きな揺れが、私達の乗っているゴンドラを襲った。ついさっき、同じことがあったような――。
「あー、また止まっちゃったのかな?」
どうしてこう、私の乗ってる時に限って……それも、この短時間に2回も。ちゃんと整備とかされてるのかしら――なんて思ってたら、つい嫌な想像をしてしまった。まあ、簡単に言えば……ゴンドラが落ちて、そのまま地面に――。
「……ヒナさん?」
「だ、大丈夫よ、大丈夫。子供じゃないんだから、これくらい」
さっきも同じようなこと言った気がするけど……正直、そんな細かいことを考えられる余裕は無かった。
身体が震えてるのが分かる。
「あんまり意地張ってちゃダメですよ、ヒナさん」
歩には、やっぱり私が怖がってる事はバレていて。私の向かいに座っていた歩は、立ち上がると、なるべく揺らさないようにゆっくり歩いてきて、私の隣に腰を下ろした。
「大丈夫。私がついてますから」
「え、あ」
そのまま、ギュって抱き締められた。一瞬、何が起こったのか分からなくて……ようやく事態を飲み込めた時には、私の顔は真っ赤になっていたと思う。
「あ、歩!? い、いきなり、何を……」
「こうしてると、落ち着きません?」
……まあ、確かに歩の体温が心地良くて、怖さも少しは薄れたけど……。
な、なんだか、歩の手の位置がちょっと……。
「んー。ヒナさんの髪、良いにおーい」
「あ、ちょ、ちょっと」
前から人懐っこい所のある子だとは思ってたけど……さすがに、これはちょっとおかしい気がする。もしかして、歩も実は怖いのかしら。
私がそんなことを考え始めた時。タイミングがいいというか何というか、私の推測が見当違いだってことを、当の歩が教えてくれた。
「ひゃうッ!?」
突然のことで、私は思わず妙な叫び声を上げていた。
温かいような、冷たいような、柔らかいような、そんな変な感覚が、私の左の耳を駆け抜ける。
「わわ。けっこう反応良いですね〜」
「な、な……今、何を……」
「何って……ヒナさんがあんまり可愛いから、思わず舐めちゃいました」
あっさりと言ってのける歩に、私は思わず、身の危険を感じていた。でも、逃げようとしても身体が動かない。動けたとしても、止まったゴンドラの中じゃそもそも逃げ場がない。
それが分かっているからだろうか、歩は特に焦ることもなく、ゆっくりと話し始めた。
「ね、ヒナさん。下田の温泉で会った時に私が言ったこと、覚えてるかな?」
「し、下田?」
あの時は確か、温泉でばったり会って、私が上せて、それを歩が介抱してくれて――。
「ヒナさんが、『もうお嫁に行けない』って言って。それで私が、『じゃあ私がもらっちゃおうかな?』って言ったんですよ」
そう、確かにそういうやりとりがあった。ちゃんと覚えてる。でも、それが今のこととどう関係が――。
「あれって、実は冗談でもなかったりするんですよ?」
「なっ……」
抱き締められてるから、歩の顔は見えない。でも、きっと……私にとっては嬉しくないことに、とびっきりの笑顔であることは、間違いなさそうだった。
「だって、考えてみてくださいよ。私がヒナさんを手篭めにしちゃえば……」
「て、手篭め!?」
「そう、手篭めです。そうすればヒナさん、もうハヤテ君どころじゃなくなっちゃうんじゃないかな?」
いつの間にか、私の胸の辺りに置かれていた歩の手が、ゆっくり円を描くようにして、動き始めた。
「んっ……あ、歩、やめ……」
「ふふ……“ここ”だけは、ヒナさんに完全勝利かな♪」
さすがにその物言いにはカチンときたけど、そんなことを言ってる場合じゃない。早く、こんな悪ふざけはやめさせないと……!
「あ、歩、いい加減に……ひゃぁんッ!?」
「ふ〜ん。ヒナさん、耳が弱いのかな?」
私の制止の声は、歩には届かない。私の耳に狙いを定めたらしい歩は、そのまま舌で舐め続ける。場所が場所だから、ぴちゃぴちゃと音を立てているのが聞こえて……。
「や、やだ、いやっ! 歩、こんなことやめて、お願いだから!」
「ヒナさん、手篭めの意味って知ってるかな? 女の子を無理やりモノにしちゃう、って意味なんですよ」
私の言葉に、意味なんて無かった。分かったのは、歩が本気だということと、私に逃れる術がないということ、ただそれだけだった。
「さて……そろそろ、ヒナさんのおっぱい、直に触っちゃおうかな〜」
「だ、だめっ、そんなの……んあっ、ひぃん!」
無駄だと分かっていても、私にはそうするしかなかった。
もちろん、歩は聞く耳なんて持たずに……私の服はあっさりと捲り上げられてしまった。
「可愛いブラですね〜。でも、外しちゃいますよ」
「……やぁ……ひっく……歩、お願いだから……」
いつの間にか、私の目からは涙が零れていた。
計算して流した涙じゃない。本当に怖くて、もう我慢できなくて……。
でも、私が泣いているのを見れば、もしかしたら歩もこんなおかしなこと、やめてくれるかもしれない……心のどこかでそう思っていたのは事実だし、この期に及んでも、私は歩を信じていた。
だけど……。
「……泣き顔も可愛いですね〜、ヒナさん」
「あ、あゆ……む……」
少し身を離して、私の泣き顔を眺めていたらしい歩は、そのまま、私の耳を弄んでいた舌で、今度は私の流した涙を舐め取った。
「ヒナさんは、ハヤテ君が初恋なのかな?」
「え? そ、そう、だけど……」
歩からの唐突な問いかけに、私は戸惑いながらも律儀に答えていた。
「へえ。じゃあ、キスもしたことないんですね〜」
「と、当然でしょ! それが一体――んんっ!?」
一瞬――何が起こったのか、分からなかった。
唇に押し付けられる、柔らかくて温かい何か。“何か”が、私の唇を塞いでいる――。
「……っふう。あはは、ヒナさんのファーストキス、奪っちゃいました♪」
「あ……え? な、なにを……」
「まあ、私も初めてだったし、おあいこかな?」
ここまで言われても、私はまだ……違う。分からないんじゃなくて、受け入れたくなかっただけだ。
だって、私も女の子だから。大好きな人に……ハヤテ君に、初めてのキスを捧げることを考えたことがなかったわけじゃないから。そんな小さな望みも、もう……。
「もう一回しちゃおっかな♪」
「あ……や……ん、んぅ……」
私のことなんてお構いなしに、歩の唇がまた、私の唇を塞ぐ。
でも、さっきのキスとは違う。私の唇の隙間から、何かが入り込んでくる。舌だ、と直感した。
「ふぅ……ん……ちゅぷ……んん……」
「んっ……んん〜ぅ……んぁ……」
私の口内に挿し込まれた歩の舌は、私の舌を見つけると、すぐにそれを絡め取って、転がして、強く吸い上げて……。
歩の舌が動く度に、私の背筋を、ゾクゾクとした感覚が走る。認めてしまえば……その感覚は、とても“甘い”もので。それに身を委ねてしまいたい衝動に駆られた。
「ちゅ……ちゅぷ……ぷちゅ……ん……」
「ん、ふ……ちゅ……」
だから、私の精一杯の抵抗も、次第に弱まっていってしまう。
歩の舌は、もう私の舌だけじゃなくて、私の口の中全部を舐め回していた。“蹂躙”ってこういうのを言うんだろうか、と朦朧とする頭で、そんなことを漠然と思った。
「んっ……むう……んあ……んう……ちゅ、んん、ふあ……」
気付けば、私もそんな声を……喘ぎ声を、漏らしていた。
歩も初めてのキスだと言っていたけど……比較対象が無いから分からないけど、歩はきっと、すごく上手なんだと思う。
歩の舌が、また私の舌を絡め取って……甘い感覚に、頭が痺れるのが分かる。私はもう、その感覚を「快感」と呼ぶのだと分かっていて、もっと気持ちよくしてほしくて……だから気付いた時には、私は自分の全てを、歩に委ねてしまっていた。
止まったままのゴンドラの中で、私達はどれくらいの間唇を重ねて、舌を絡め合っていたのだろう。
歩がようやく唇を離した時には、私にはもう抵抗しようという考えさえ残っていなかった。
「ふふ……ヒナさん、目がとろんとしちゃってますよ〜? そんな色っぽい顔されたら、興奮しちゃうじゃないですか」
そう言いながら、歩は私の背中に手を回して、ブラのホックを探し当てると、そのまま外してしまった。
最後の一枚も剥ぎ取られて、私の胸は外気と歩の視線に晒される。
「ちっちゃいけど、可愛いおっぱいですね〜」
いつもなら文句の一つも言う所だけど、今の私にはそんなこともできなかった。
ただ、これからされる事への不安と、それ以上に大きくなってしまっている期待に、身を震わせる事しかできない。
「ピンクの乳首も、とっても綺麗……ちゃんと感じてくれたみたいですね〜。固くなってますよ♪」
「あぁぁっ!?」
指で、私の勃起してしまった乳首を軽く弾かれただけで、私はそんなはしたない声をあげてしまう。
「うん、ここも良い反応ですね」
「あ、あゆっ、あゆむっ……」
「こんなに感度が良いなら……こうしたら、どうなっちゃうのかな? あむっ」
「ひやっ、ん、あぁぁっ!?」
歩は私の胸辺りに口を持っていくと、そのまま私の乳首を口に含んでしまう。
「んちゅ、ん、ちゅぅ」
「ふあっ、やん、ああ!」
甘噛みし、吸い、舌で転がし……口の中を蹂躙された時と一緒か、それ以上の快感が、私の身体を駆け抜ける。もう片方の乳首も、歩の指で弄られて……もう、本当に、どうにかなってしまいそうだった。
「どうですか、ヒナさん。気持ち良いかな?」
「ひゃうっ、あぁん、だ、めぇ……ふあああっ!!」
「ヒナさんって、本当に敏感ですね〜。まあ、その方が悦ばせ甲斐がありますけど。んちゅっ」
「やあああっ、そんなっ、こと、いわない、でぇっ!!」
「ふふ……じゃあ、そろそろコッチも……」
胸を舐め回される快感に翻弄されている私には、歩が何をしようとしているのか分からなかったけど……すぐに、今までよりももっと強い刺激が、私の身体を襲う。
「ひゃぁぁあんっ!?」
「わ、すごい。ヒナさん、ショーツの上からでも分かるくらい濡れてますよ?」
「やっ、やぁああ! だめっ、そこさわっちゃだめぇぇえっ! ふあっ、やん、ああっ!」
歩の手は、私が履いているスカートの中に潜り込んで。ショーツの上から……私のアソコを、弄っていた。
自分でもほとんど触ったことのないソコを、歩の指は好き勝手に動き回って……。
「うわぁ……こんなにグショグショで、透けちゃってて……今のヒナさん、すごくえっちですよ」
「い、やぁ……あん、ああっ! あゆ、む、いわないでぇ……」
「ヒナさん、嫌がってるわりには……ふふ。どんどん溢れてきてるみたいですけど? もしかしてヒナさん、言葉責めで感じちゃうような、えっちな子なのかな?」
「っ!? ち、ちがっ、ひゃあああっ!?」
ソコを軽く突かれただけでも、私は反論を封じられてしまう。
自分の身体が自分のものではなくなってしまったような、そんな感覚。私はただ、歩の唇と指に弄ばれて喘ぐことしかできなくて、心のどこかでは、それを望んですらいたのかもしれない。
「違わないですよね。こうやって私に無理やりえっちなことされて、それで感じちゃうような変態さんなんですよね、ヒナさんは」
「ちがっ、ふ、ああっ……あん、ひぅん、はあっ、ん!」
「もう、ヒナさんもしょうがない人ですね〜。素直になってくれたら、もっと気持ちいいことしてあげるのに」
もっと、気持ちいいこと。
その言葉に、私の心は否応も無く揺れた。だって、今も……すごく、気持ちいいのに。これよりも、もっと……?
「さぁ、どうですかヒナさん。素直になっちゃいますか?」
「はぁん、あふっ……くああっ! わ、わたし、わたしはぁッ!」
「ほらほら。早く言っちゃった方がいいんじゃないかな?」
歩はそんなことを言いながらも、指の動きを激しくする。
「はっ……あ……んっ! んぅっ! はぁ……はぁ……んぁぁぁ!!」
秘部と一緒に、乳首を弄っていた指の動きまでが強くなって、私はまともに言葉を発することもできなくなってしまう。
本当は、言わせる気なんて無いんじゃないのか。こうやって、私の身体を弄んで、私を辱めて、それを楽しんでいるだけじゃないのか。もっと……もっと、気持ちよくしてほしいのに……。
私が、そんなことを思い始めた時だった。
「……え?」
歩は、手の動きを全部止めてしまった。
「え、あ……なん、で……」
散々弄ばれた私の身体は、昂ぶったままで。ずっと与え続けられていた快感が急に途切れて、私は――きっと、物欲しげな目で――歩の顔を、見た。
「これなら、はっきり言えますよね?」
「……う、あ……」
「さあ、ヒナさん。ヒナさんは、どうして欲しいのかな?」
笑顔を浮かべながら、歩は言った。
それはきっと、私の気持ちを察してくれたとか、そういうことじゃない。私の口から、はっきりと決定的なことを言わせて、そうやってまた私を辱めようとしている、ただそれだけのことなんだろう。
「わ……わたし、は……」
これ以上言ってしまったら、もう戻れなくなる。それが分かっていて、でも、私は――。
「…………て……」
「ん? 何かな? もっと大きな声で言わないと」
わざとらしく言う歩に怒りを覚えそうになって、でも、それ以上に、もう我慢できなくて――。
「……もっと……もっと、気持ちよく、してほしいの……」
それは、歩への敗北宣言でもあった。
「ふふ、やっと素直になってくれましたね」
「あ、あの、歩……その……早く……」
「もう、ヒナさんったら。じゃあ、まずはコレ、脱がせちゃいましょうか。ちょっと腰浮かせてくれますか?」
「う、うん」
一度口にしてしまったから、私も開き直ってしまっているのかもしれない。とにかく、早く気持ちよくしてもらいたい、その一心で、私は歩の言う通りにした。
ずっと快感に晒されていたせいで、あまり力が入らないけど……何とか腰を浮かせると、歩は私のショーツに手をかけて、手早く脱がせてしまった。びしょ濡れになってしまっているアソコが外気に触れて、ひんやりとした感覚に私は小さく身を震わせる。
「うわー、もうビショビショ。これじゃ履いてても意味ないんじゃないかな」
足から引き抜いたショーツを手に持って、歩が言う。私は自分の痴態を思い出して、恥ずかしくて仕方がなかった。
「さて。それじゃ、ヒナさん。ヒナさんのお望み通り、気持ちいいことしてあげますね♪」
「う、うん……その、お願い、します」
ようやく、待ち望んでいたものが手に入る……私は歓喜に震えて、自分の全てを歩に委ねることを決めた。
最初は、キスだった。
「……ん……ふぁっ、んむぅ……ちゅ、ん……」
「……は、あ……んん……くちゅっ……んぅ……」
ピチャピチャと、ゴンドラの中にいやらしい水音が響いて、私の身体を甘美な稲妻が走る。
私が甘いキスに夢中になっている間に、歩は両手を胸へと動かしていて、すぐに愛撫を始めてくれた。
「んん、ふ……ちゅ……」
「んっ、んあ! ふぁ、ああっ! あぅん、ん〜! ひ、ゃあん!?」
歩の指が、固く勃起してしまっている私の乳首を撫でたり、摘んだり、引っ張ったり、とにかく色々に弄り回す。
それはさっきよりも、ちょっと強くて、痛くて、激しくて……そして何よりも、気持ちよかった。
やがて歩は唇を離すと――私は名残惜しくて、思わず舌を伸ばしてしまったけど――、手の動きは休めずに、言った。
「そろそろヒナさんの大事なトコロ、見せてもらおうかな?」
その言葉だけで、私のアソコから……その、愛液……が、溢れてくるのが分かった。
歩に見られるというだけでも、すごく恥ずかしくて興奮しちゃうのに、きっと歩はそれだけで終わらせてくれない。私も、それだけで終わってほしくなかった。
きっと、直に触られて、メチャクチャにされてしまう。ショーツ越しに触られただけでもあんなに気持ちよかったのに、直接触られたりしたら……私は、どうなってしまうんだろう。
期待に身を震わせ、心を躍らせながら、私はぴったりと閉じていた足を、ゆっくりと開いていく。
「あれ? ヒナさん、私まだ何も言ってませんよ?」
「ひやっ、やあ、だ、だってぇ、あっ、くぅん!」
すっかり快楽に従順になってしまった私を見て、歩は満足気に笑みを浮かべる。同時に、胸を弄っていた手を左右とも引っ込めてしまった。
「え……やめ、ちゃうの……?」
「今はコッチに集中しようかな、と思って。そんな顔しなくても、後でまたいっぱいしてあげますよ」
「う、うん……」
そんなに物欲しげな顔をしていたのだろうか、と少し恥ずかしくなる。今さらそんなことを思うのも変な話だけど。
「うーん。ヒナさん、もうちょっと足、開いてくれます?」
「こ、こう?」
「あ、そのくらいで。じゃあヒナさん。私にヒナさんの恥ずかしいトコロ、見せてくれるかな?」
「……はい……歩、私の恥ずかしいトコロ、見て……」
私はスカートの裾を摘んで、ゆっくりと持ち上げていく。スカートが捲れ上がっていくに連れて、私の興奮もどんどん高まっていった。
「うわー……ほんとに溢れるぐらい濡れちゃってますね〜。でも、ヒナさんってばこんな所まで綺麗なんですね」
「……そ、そんなこと、いわないで……」
マジマジと見られると、やっぱり恥ずかしい。でも私は、スカートを下ろそうとか、手で隠そうとか、そんなことは考えもしなかった。アソコを歩の視線に晒しているだけで、もう感じてしまっていたのかもしれない。
「あ、ヒナさんのクリちゃん見つけちゃいました。えいっ」
「ひゃあんっ!?」
ゾクゾクッ、とした感覚が、私の背筋を一気に駆け抜ける。
元々感じてしまっていた所へ急に刺激を受けたものだから、その甘美さはたまらないものだった。それに、やっぱりさっきとは……ショーツ越しの愛撫とは違う。
「ふふ。ここもやっぱり、固くなっちゃってるんですね〜」
「ふ、ああっ……あん、ひぅん、はあっ、ん!」
「どうかな、ヒナさん。気持ちいいかな?」
「ああっ、んっ、いやぁん、あっ、あっ、いい、いいよおっ!」
乳首にそうしていたのと同じように、歩は撫でたり摘んだり引っ張ったりと、好き勝手に私のクリトリスを弄ぶ。
歩の問いかけにはしたない声で返事をしながら、私は、頭の中が段々と真っ白になっていくような感覚を覚えていた。気持ちよくて、気持ちよすぎて、もっと気持ちよくしてほしくて、もうそれ以外のことは何も考えられないような、そんな感覚。
「じゃあ、もっと激しくしちゃおうかな」
「ふあっ、ああ、あぁああんっ! あ、やっ、はぁぁぁぁんっ! ふああああっ!! だめ、だめぇえええっ!!」
「すごいすごい。ヒナさんのえっちな蜜、こんなにいっぱい……どんどん溢れてきてますよ」
「ふああああっ!! やあっ、だめえっ!! ああんっ、んああっ、くうっ! ひゃっ、ああああっ、あぁぁぁん、 んあああっあぁぁあ!! わ、わたし、わたしぃっ!!」
「……って、あれ? ヒナさん?」
歩の声に戸惑いが混じる、けど……手の動きは、変わらないまま。
だから、焦らされるようなこともなく、私はそのまま――
「ああんっ、んああっ、くうっ! ひゃっ、あぁああっ、あぁぁぁん!! ひあ、やあっ、あ、あ、わ、わたし、わたし、あ、ああっん、っんぁああああぁああぁあぁああああっ!!」
――生まれて初めての、絶頂に達した。
「でも、びっくりしちゃいました。いきなり、あんな……」
「……歩のせいでしょ」
私が歩にイカされてしまったのとほぼ同時に、ゴンドラは再び動き始めた。
それから下に着くまでの時間は、後始末をするには十分なもので。今は、ゴンドラを降りて近くの公園を歩いている。
さすがに少しは落ち着いたけど、私のアソコはまだ熱っぽいし、顔も多分紅くなっているんだろう。そこの木陰とかで歩に押し倒されたら、きっと抵抗もできずに、またえっちなことされちゃうんだろうな……。
私がそんなことを考えているのを見抜いたのか、それとも偶然か、隣を歩いている歩が、いきなり私のスカートの中に手を突っ込んできた。
「ひあっ!? ちょ、ちょっと、歩!?」
「あー。一応拭いたばっかなのに、また濡れてきちゃってますね。ヒナさん、えっちなことでも考えてたのかな?」
「そ、そんなことない!」
私は、今……えっと……いわゆる、ノーパンだった。
歩が、こんなびしょびしょなの履いてても気持ち悪いんじゃないですか、って言って持っていっちゃったから。
だから、その。歩が手を突っ込んできて、私の割れ目をそっと撫でた時には、少し……かなり期待してしまったんだけど。歩にその気は無いみたいで、すぐに引っ込めてしまった。
「ねえ、ヒナさん」
「な、なに?」
耳元で息を吹きかけるように囁かれて、私は身体をビクっと震わせる。
「ヒナさんは、ハヤテ君を想ってオナニーとかしたことあるのかな?」
「なっ!? そ、そ、そんなこと、するわけないでしょ!?」
突拍子のない質問に、私は思わず大声を出していた。……ええと、動揺してるのは確かだけど、これはただびっくりしただけで、別に図星だったわけではなくて……いや、本当に。本当にやってないから。
「なんだ、してないんですか。あんなにえっちなヒナさんのことだから、きっと経験豊富なんだろうなー、と思ったんですけど」
どんな経験よ、それは。そう思う私の横で、歩がまた、悪戯っぽい笑顔を浮かべて、こんなことを言う。
「ということは、ですよ? 初めてなのにあんなにイヤらしく喘ぎまくったヒナさんは、とんでもなくえっちだってことですよ!」
「なっ……ち、違っ、違うわよ! あ、あれは歩が……!」
また……というか、今日の歩は言うことやること全てが突拍子もない。喫茶どんぐりで歩と会った時には、こんなことになるなんて考えてもいなかったのに。
とにかく、このまま歩をいい気にさせておくわけにはいかない。それはまあ、確かに気持ちよかったけど、だからって。これからのためにも、少しは挽回しないと――。
「でも、ヒナさんがこんなにえっちなこと、ハヤテ君が知ったらどう思うんでしょうね〜」
「――っ!?」
歩は気軽に言うけれど、私がその言葉から受けたショックはその反対に重いものだった。
ハヤテ君に、さっきみたくよがり狂う私の姿を見られたら――どう、思われるんだろう。軽蔑されて、嫌われる? それとも――。
「顔真っ赤ですよー、ヒナさん」
「ふぇっ!?」
「あんまりハヤテ君のことばっかり考えてると、また大洪水になっちゃいますよ?」
ニッコリと、さり気にとんでもないことを言って、歩は公園の出口まで駆けて行ってしまった。
「ちょ、ちょっと、歩!」
「そろそろ時間も遅いですし、私、帰りますねー! ハヤテ君のこと考えて、疼いちゃってしょうがないのかもしれませんけど、自分で何とかしてくださーい! じゃ、また今度!」
「歩、待っ――」
止めようとする間もなく、歩は行ってしまった。
「……もう。なんなのよ、いったい」
こういうのを放置プレイって言うんだろうか。……真っ先にそんな言葉が思い浮かんできて、私は自分の変化に身震いした。何か、考え方が変な方向に行っちゃってるような気がする。
これは、よくない。非常によろしくない。今度会ったら、歩とはちゃんと話をして、それで、ハヤテ君のこともちゃんと――。
「あ……」
ハヤテ君のことを思い浮かべた時。
ノーパンで、まだ冷たい夜の空気に直に晒されていたから、はっきりとわかってしまった――私のアソコが、熱く潤むのが。
「え、あ……あ、歩が、あんなこと言うから……! だいたい、結局ショーツだって持って行っちゃうし。まだ家までけっこう距離あるのに、このまま歩いてくなんて、そんなの……だ、だから、なんでまた濡れて――!?」
もう、ダメだった。
私の蕩けてしまった頭は、もう何を考えてもあんな事やそんな事に結び付けてしまって……悔しいけど、このままじゃ歩の言った通り、大洪水になってしまう。
「や、やだ……とまって、とまってよ……!」
私はもう、分かっていた。
そうやって口にすればするほど、私のアソコからえっちな蜜が溢れてくることは。何も言わず、何も考えず、しばらくそうしていれば、この発作のような疼きも治まるだろう。
それを分かっていて、私は――。
「違う、違うの! 私、えっちな子じゃないのに、私は……!」
気付いたら、私は誰もいない公園で、植え込みの影に隠れるようにうずくまっていて。
「あ、ああ……ちが、ちがう、わたし、そんなんじゃないの……ちがうの、はやてくん、だから――!」
ここにいない想い人の名を呼びながら、両手を――
「ふあ、あぁああんっ!! はやてく、あ、やぁ、はやてくぅんっ!!」
Fin…?