「ハヤテのアホ―――!!!」
バキッ!
「いた――!!」
先程の言葉に恥ずかしくなりつい手が…、いや、足が出た。
目の前にいたハヤテについ、踵落としをくらわせてしまった。
瞬間正気が戻ったが、心配をする間もなく、不意に崩された体制に驚く声がでる。
「うわっ!?」
「ううぅ…ひどいですよお嬢様…」
「こ、こら!その手を放せ!」
ハヤテが自分の頭の上に置かれていた足を掴み持ち上げる。
そのためナギの足が広げられ、眼前のハヤテにその姿が惜し気もなく晒された。
「お嬢様、身体が冷たくなっちゃいましたね」
「そりゃあプールだしな…っだから手を!」
「じゃあ僕が…暖めてあげます」「え…?ハヤ……ひゃふん!」
プールから上がったハヤテが、ナギの首元に息を吹きかける。
濡れた肌に風を受け、思わず声が洩れた。
体感する冷たさと、ハヤテの息に反応して熱くなる皮膚。
胸が、ドキドキと高鳴る。
「ハ…ハヤテ…、んぅ、あっ…やぁん…!」
首から胸元へ、触れるような口付け。冷たくなったナギの身体にはとても熱く、触れられるたびに甘い声が出てしまう。
「大丈夫ですか…?お嬢様…」
囁くような声も今は身体を高ぶらせる手段でしかない。
広いプールに反響する自分の声も快感を加速させた。
「だめっ…、は…んぁ…やっ…」
首から胸、そして足と、肌と密着した水着の上から優しく触れられ、口付けされ、時に舌を這われる。
軽くしか触られていないのに、ナギの身体からはトロトロと液体が流れだし、水とは違うもので水着が濡らしていった。
そんな場所にハヤテの手と、口が。
足の付け根を、そして自分の中心部に触れられ、腰が揺れる。
名前を呼ぼうとした瞬間、水着の上から舌で舐められ、電気が流れたような快感が背中を上り、頭が真っ白になった。
「はや…っ!んんっ!!あああぁ!!!!」
ビクビクと震え、高い嬌声が上がる。
荒い呼吸の中、視界がぼやけた目でハヤテを見ると、ニコっと笑顔を向けられた。
「少しは運動になりましたか?お嬢様」
「うぅ…うん…、まぁ…」
その顔に再び顔が熱くなる。顔を逸らすとタイルに付けられたハヤテの手。
その手に自分の指をそっと絡めた。
熱に浮かされた自分とはまた違う温かさ。
「お前の手は…、温かいな…」
ハヤテにとってはたわいもない触れ合いだったのかもしれないが、それでも少しは動くものがあったのだろうか。
「え?そうですか?うーん…」
『お嬢様が…あまりにも可愛いから……』
なんて言葉が言葉が続くかと、続くかと先程とは違う胸の高鳴り。
想像だけで先程の水中歩行分の体力か消費される。
さぁ言え!言うのだ!今か今かと待ち侘び、ハヤテが言葉を発するための息を吸い込んだ瞬間、身体を構えた。
「眠いからですかねぇ?」
「……………………は?」
「ほら、眠いと体温高くなるっていうじゃないですかー…って、お嬢様?」
あまりにも想定外な言葉に思わずギャグ顔になる。まさか、まさか、まさか…
「…まさか、本誌の突拍子もないプール誘導も、淡白な態度も…全て眠気のせいだったとでもいうのか…?」
「お嬢様?」
「今の…、は…恥ずかしいソレも…!」
下を向き、拳を震えさせる。
「お…お嬢様?」
「ハヤテの…ハヤテのぉ…!!」
怒りの炎を宿した瞳がハヤテに向けられ、コンマ1秒、必殺コンボが決まった。
「バカァァ――――――!!!!!!!!!」
執事は飛んだ。高く飛んだ。夜のプールに比べるものがないが、とにかく飛んだ。
そして落ちた。
「ふん!もう寝る!!」
息を荒くし、これでもかと言うくらい頬を膨らましたナギは、プールを後にする。
その場には、水に浮いたハヤテ一人が取り残されたのだった。
+翌日+
「あ、おはようございますお嬢様」
「なんでお前が元気なんだよ」
「実は僕、昨日プールにいってからあまり記憶がないんですよねぇ」
「はぁ!?」
「気付いたらお嬢様は居なくて、僕はプールに浮いてて」
「………」
「…金剛番長の真似でもしようとしたんでしょうか?」
「…………そうだな……」