三千院家和室――
「和室ですかぁ。まさか茶道具一式あるなんて……」
「ほとんど使われてないですけど……以前茶道を習っていたんですか?」
畳の匂いが充満する中、そこではハヤテとマリアの会話が行われていた。
過去のバイト経歴依然として不明のハヤテは思い出を語るように言う。
「バイトですけど。茶道は難しいんですよ。慣れないうちは足が痺れて……気力で耐えましたけど」
「……アルバイトの幅って広いんですね……」
半分呆れているのは乙女の秘密。
「抹茶ならありますから、どうですか久し振りに」
「いいんですか?」
マリアが何気なく出した話題に喜んでハヤテは食いついた。
「ええ、もちろん」
笑顔で答えるマリア。ハヤテも笑顔で頼んでいた。
しかし、この何気ない会話が事件の発端になるとは、二人は知る由もなかった……
「はい、抹茶です」
「ありがとうございます」
マリアが台所から持ってきた抹茶を受け取って、ハヤテは早速作業に取り掛かろうとした。すると、
『お〜い、マリアー?』
扉の向こう辺りから、ナギの声が聞こえてきた。
「あら。せっかくハヤテくんのお茶を頂こうと思ったのに」
ややタイミングの悪い呼び出しに少し不快感を抱きつつも、マリアはナギのもとへと向かった。
「……どうしよう」
ハヤテはひとりごちた。茶道はおもてなし精神が主だというのに相手がいないのに茶を淹れるのは辛い。というか無理。むしろイタい。
やめようかなとハヤテが呟いた瞬間、
「ここでウチが登場や!」
咲夜がいつものごとく神出鬼没で現れた!
「え〜と、抹茶はどこにしまえば……」
しかしハヤテはそれをわざとか偶然かスルーしてしまっていた。
ある意味グッドタイミング。
「無視すんなや!」
「あれ、咲夜さん。いらしてたんですか?」
気付いていなかったらしい。
「……もうええわ。それより、今までの話は聞かせてもろたで。ウチにも茶、淹れてや」
ぶっちゃけ盗聴なのだがそんなの関係あらへんと一蹴してしまって、咲夜は待ち態勢に入った。
いつでもどうぞとでも言うように正座でハヤテを見つめる。
「……まあ、いいか。それじゃあ、よろしくお願いします」
きちんと正座しなおし、正しい方法で礼をする
「ん」
咲夜はだいぶ適当だ。正座しかしていない。
ぞんざいな作法(とも呼べない)に微妙な気分になりながらも、
ハヤテは茶の準備をはじめた。
「どうですか?」
咲夜が一口目を飲んだのを確認してから、ハヤテはそう訪ねた。
「う〜ん……不味いことはないんやけど……ちょっと苦すぎやで」
「え゛?」
失敗しちゃったのか、と落ち込みかけるハヤテ。しかし、その前に咲夜がふらりと倒れこんでしまった。
「え!? ちょっと、咲夜さん!?」
倒れるほど不味かったのかと思ってまた落ち込むが、次の瞬間そんな感情は吹っ飛んだ。
咲夜が火照った顔で服を脱ぎ始めたのだ。
「ぅええぇぇっ!?」
ハヤテは急速で180度回転して咲夜に背を向けた。
「なななななんなんなん何ですかどうしたんすか咲夜さん!?」
背中越しにハヤテは訊くが、艶の入った声で呻く咲夜にどぎまぎし、さっき少し見えた咲夜の豊満な胸に興奮しかけているハヤテは、自分の息子が正直に腫れ上がっているのを感じていた。
「落ち着け僕……! 円周率……3.1415926535……」
「うにゅ〜……」
むにゅ
やわらかい物が背中にあたった感触がした。
咲夜がしなだれかかってきたのだ。
「ウチ限界やぁ……」
なんでこんなことになってるんだろうもしかしてあの抹茶が実は抹茶じゃなくて媚薬いやでもなんでこの屋敷にそんなものが……などと考えていてもハヤテも男だ。限界は来る。否――限界が、来た。
「咲夜さん」
「ほぇ?」
ハヤテが静かに告げる。途端、ハヤテは咲夜を押し倒した。
「どうなっても、知りませんよ!」
言うと共に、ハヤテは咲夜の唇にむさぼりついた。
「んむ……あむ、うん、ん……」
舌を絡めると、卑猥な水音が鳴り始めた。
口を離し、手を胸に持っていく。年不相応のそれを、強く握り潰すように揉みしだく。
「ぁんっ……!」
強すぎたのか、軽く唸ったような声が聞こえた。しかし、ハヤテはやめない。
「くっ、うん……ぁ、んん……っ! あぁ……」
空いている手を、体に這わせながら股間へと運んでいく。腿の内側をなぞり、秘部に触れる。
「咲夜さん……もう、こんなになってますよ……」
下着をずらし、わざと音を立てるように弄りまわした。
「ひぁっ……! くぅ……あぅぅっ!」
ビクン、と咲夜の体が跳ねた。イってしまったらしい。
「イっちゃったんですか? まだ少ししかしてないんですよ?」
「だってぇ……気持ちええからぁ……」
蕩けた目でハヤテを見つめる咲夜はとてもなまめかしく、ハヤテは自分に限界を感じていた。
「咲夜さん……!」
そそり立つ剛直を秘部へと挿し込んでいく。
「あくっ! んぁぁぁっ!」
咲夜が叫ぶ。
強烈な締め付けによる快楽がハヤテを襲った。
しばらく押し込むと、何かに引っ掛かるようにして挿入が邪魔された。膜だ。
「行きますよ……っ!」
ブチブチという音と共にさらに奥へ奥へと潜っていく。
「くぁぁ! んふっ、ぁあぁぁぁぁぁ!」
痛みによる絶叫が起こる。しかさ、先ほどイったことからか、さほど苦にならずスムーズに動くことができた。
ゆっくりと、だんだん速く、出し入れを繰り返す。
「あんっ、ひぁっ、ひっ、っふ……はぁっ!」
さらに速く、もっと速く。
「あっん、くっ、あふっ……は、やてぇ……」
呂律が回らないながらもちゃんとした名前を呼ぶ。
「だっこして、だっこされながら、イきたい……」
「……わかりました」
背中に手を回し、自分に抱き着かせるように態勢を変え、突き上げる。
「あああっ! 深い、奥に、奥に届いて、ダメ、イく、イく! イっちゃうぅぅぅ!」
「ぅあぁぁっ!」
ドクッ、と。
ハヤテの種が咲夜の中へと注ぎこまれていく。
すべてを出し切った後も、二人は繋がったままだった。
「……咲夜さん……」
「ハヤテ……」
互いの名を呼び合い、息を整える。
「……正気でしたよね?」
「!!」
咲夜はハヤテの抹茶によって倒れ、そのせいで今のような状況になった風に思える。
しかし、それらがすべて咲夜の演技であることをハヤテは見抜いていたのだ。
「……なんや、バレてたんか」
「確証はありませんでしたけど」
もどかしかったと。
自分がいくら見つめても、見向きもしてくれないハヤテが。
素直に想いを告げられない自分が。
でも、これでいい。
「好きやっちゅうのは、なかなか難しいもんなんやで?」
「心得ておきます」
「にしても、和室でこういうことするもんやないなぁ。背中が痛うてかなわん」
だっこを望んだ理由はそれらしい。
ハヤテは申し訳ない気分になる。
「すいません……。そうだ、はやく服を着ないと、誰かが来」
言いかけて、
「ハヤテー! 私にも茶、を……」
ナギが飛び込んできたことにより、三人の時間は停止した。
その後の事は、誰も、知らない……