チュンチュン……
朝の鳥のさえずりが耳に心地よく、都会にも自然がある事を感じられる。
「ん……」
瞼を開けて、窓から部屋に差し込む朝日を確認。
見上げて頭上の目覚まし時計を見れば、時刻は6時丁度。予定より少しばかり早く起きた様だ。
「……まあ寝坊するよりかましだな…」
そういう口調も眠たげに、布団から出て、朝のルーチンワーク、トイレへと向かう。
寝ぼけまなこで足取りもゆっくりとおぼつかず、トイレの部屋の前に立ち、ドア開けて、スリッパ履いて、さあ排尿だ……
「……ん?」
ズボンを下ろしたその瞬間、彼、橘ワタルは自分のアオダイショウが忽然と消えている事に気が付いた。
『こちらスネーク、愛沢咲夜への侵入に成功した』(タイトル)
「ひきゃぁぁぁあぁあぁぁあぁっ!!」
朝のレンタルビデオタチバナ新宿本店に店主の黄色い叫びが響き渡る。
「わっ、若っ!?一体どうなされて…「うわっ!トイレはノックしてから」いやぁぁぁっ!!
ちちちちょっと若!!朝からななな何てもの見せるんですか!!」
「ちょ、サキが勝手にドア開けたからだろ!」
主の叫びを聞いて飛んできた従者サキはトイレに着くやいなやトイレのドアをフルオープンすると、『タチション』姿勢の主に遭遇、思わず反射的に驚きの声を上げた。
両目を隠した両手の指の間から見つめながらサキはワタルに尋ねる。
「あの……どうかなされたのですか…?」
「いや、そのこれ……」
と、サキに現状報告するため、ワタルはズボンを下ろし始めた。
「いや、これって言われても…<スッ>ち、ちょっと、そんな、え、えぇ!?そ、そんな、何を<するする>ちょっと、パンツが見えて<バッ!>きゃあっ!なに見せるんですかぁ!…
…ってなにもない!?」
と、ワタルが脱ぐにつれ奇妙な踊りを踊っていたサキもワタルに起きた異変をようやく理解する。
「若の……その、『男の子』が消えて……その代わりに、『女の子』が……」
ワタルに起きた異変とは、“彼”から“彼女”に、つまり、『性別の変化』。
方法、理由、動機はまったくもって理解不能だが、ワタルの股間には男のそれでなく、女の、いや、毛の一本も装飾のないリアルな姿を見せる、“女の子”のそれがあった。
「はわわ……すごいですね……って若!!そんなまじまじと見ちゃいけません!」
「あ、ああ…すまん…」
見ているサキも当人のワタルも、この現在の状況にただただ驚く事しかできない。
「なぁ……これ、どーなってるんだ…?」
ワタルは単純に、サキに『何故こんな事態になってしまったのか』と聞いたのだが、常時謎の潔癖ノイズ電波を受信し続けるサキの脳にはそう伝わる事はなく、
これどーなってる=この下に付いているのはどういう構造になっているのか=構造が気になる=女性器が気になる=若は『女の子』に興味=若が『女の子』とあーんな事やこーんな事……
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!若のふけつぅぅぅぅぅぅっ!!」
「いや何でそうなぐはぁ!!」
……サキの幻の左をもろに食らったワタルの体はベクトルを一気に左へと向けられる事となった。
〜☆〜
その頃咲夜邸では……
ジリリリリリ……
と鳴り響く目覚まし時計。
咲夜は安眠を妨害する音波発信源に手を伸ばしがむしゃらに
バン!!
と壊れんばかりの勢いで停止スイッチを押した。
「……もぅ何やねん、朝っぱらからジリジリ鳴りおって……日曜日ぐらい起きる身にもなって欲しいもんやな……」
と、それじゃ目覚ましの意味ねぇだろと思わずツッコミたくなるようなクレームを起きがけの眠たげな声で吐き捨て、さて起きようかと言うとき、ある異変に気が付いた。
「ん……!?」
ある時は女性の象徴、またある時は母親の象徴、そしてある一部の人々にとっては咲夜の象徴でもある、
その同年代の少女達のそれとはあまりにスケールが異なる咲夜のデカメロンが跡形もなく消え去っていた。
「なんや…これ……」
ああ、まだ夢の中なのか、と寝ぼけた頭で結論付ける。
……自分の胸がこんなに小ぶりなのは久しぶりだ。
思えば、小ぶりだった胸は連載当初はそうでもなかったのに巻が進むにつれどんどん大きくなっていくかの様なスピードで成長し、今や借金執事に「乳オバケ」といわれるほどに増大していた。
(大きい事に不満はないけど……もう少し大人になってからの方がよかったなぁ……)
正直、大きい胸はツッコミの際に不便だし、どうせ大きくなるのであればもう少しじわじわと、
せめて高校生ぐらいまでかけてゆっくりと大きくはならないものなのだろうかと、ヒナギクあたりに聞かせたら髪を真っ赤にして怒りそうな贅沢な悩みを考えながら今となっては懐かしい、その慎ましやかな胸の感触をせめて夢の中だけでも確かめようと服の上から触れた。
……のだが。
「ん……?」
咲夜は感触に難色を示す。
『慎ましやか』、というよりは『引き締まった』、『乳房』、というよりは……
「胸…板…!?」
その固さは乙女の柔らかさなど微塵も感じさせない、まるで『男の胸板』の様な触感。
そしてもう一つ、今気付いた気になる感触。
「何や股の間に…あってはならんモンが存在しとる気がするんやけど……」
そういえば、腕がいつもより太くなったような、声の調子も変わったような……
「まさか……」
咲夜は改めて己が股間を見つめ、ゴクリッ、と息を飲む。
これは夢では無かろうかと顔をつねってみたりしてみるが、その痛みが自分に“これは現実なのだ”と雄弁に語っている。
これは…確認するしかない。
咲夜はパジャマとショーツを前の方をつかみ、びよーん、とその気になる中身を外気に触れさせる。
まだ咲夜がぎゅっと目を閉じているので、そこに何があるかはわからない。
咲夜は頬を赤らめながら、おそるおそる、ゆっくりと目を開けた。
悲しきかな、そこに咲夜は大きなアナコンダが住んでいるのを見つけてしまった。
「あんぎゃあ〜〜〜〜〜!!!!」
そうして咲夜の叫びは屋敷中に響き渡ったのである。
〜☆〜
「……ったく、ナギの奴、『ゲーセン巡業』ってなんだよ、こんな大事な時に…借金執事ならいいアドバイスが貰えると思ったんだがな…」
ワタルが苦虫を潰した様にナギの、正確にはナギの執事の不在を嘆きながら、販売機で買った缶コーヒーをこくん、と一口飲んだ。
こんなアリエナイ状況を解決するとなれば、色々な現象に立ち合ってきた人物、“人生経験豊富”な人物に教えを請うべきと、様々なバイト経験があるらしいハヤテにワタルは白羽の矢を立てたのだが、いないのであれば教えを請う事も出来ない。
ワタルはコーヒー缶を片手に途方にくれていた。
「……暇だな…」
ビデオ屋は店主の性別転換という緊急事態もあり臨時休業してしまったので、帰ってもする事がない。
しかしここで紅茶を飲み続けているのもこの問題の解決には決して至らない。
「……探すかぁ…?」
ワタルはナギの居場所を伝えられていないので探そうにも探しようがない。
「どうすっかなぁ……」
途方に暮れながら、また、ワタルは缶の中のコーヒーをすすった。
と。
「ナァぁぁぁぁギィぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
ゴシカァーン!!という音と共に一般家庭とは比べものにならないほどの大きなドアを流星キックで蹴破って突入して来たのは、
「さ、咲夜!?」
額に青筋浮かべた、愛沢咲夜、その人である。
「どこじゃナギぃ!!おどれがやった事は分かっとるんや!!隠れたってムダや!!返事せぇ!!」
そう叫びながら阿修羅のごとく、そこら中の隅という隅、陰という陰を手当たり次第に、荒っぽく、しらみ潰しに探索する咲夜。
「あー…咲夜、お取りこみの所悪いんだが、ナギならここにはいねえぞ。
何であの引きこもりニート予備軍がそんな事しているのかは知らんが、メイドと執事引き連れてゲーセン巡業、だそうだ。」
パリン、ガシャン、クシカッ、と破壊音を上げながらの咲夜の暴走を止めようと、ワタルは咲夜に状況を説明すると、その言葉を聞いて咲夜の動きがピタリと止まる。
「何やて…!?ナギのやつ…逃げおったなぁ〜〜!見とけや!今度会った時にはウチにこないな事したらどうなるか、そのナイチチにイヤゆうほどに分からせたる……!!」
ワタルのなだめの言葉も無意味といわんばかりの怒髪天。咲夜は相当ご立腹の様だ。
「やれやれ、手の付けようがねぇや……ん…?」
ワタルは思わず首をかしげた。
おかしい。何かが足りない気がする。いつもの咲夜とどこか……
「……おい咲夜、」
「何や?今想像の中でナギに魔界777つ○具を…」
「胸、」
「……へ?」
あれほど怒り狂っていたというのに、急に咲夜はきょとんとした顔になる。
「む、胸がどないしたん?」
「いや、お前の胸、無くなってるなーって……」
「!!!!」
…今度はあからさまな動揺。
ワタルはいよいよ怪しんだ。
「咲夜…まさかお前……」
「……っ」
咲夜はバツが悪そうに顔を背ける。
バレた。ウチがオトコになっとるんがバレた。
咲夜の頭の中が『バレた』の三文字で埋め尽くされる。
「……偽チチだったのか……」
「何でそうなんねん!!」
ワタルの冴えないボケに思わずツッコミを入れてしまう咲夜。
しかし、咲夜は理解していなかった。今自分が男である事を。そしてその男のツッコミは速さ、威力、急所命中率ともに咲夜のツッコミの3倍の数値になっていた事を。
咲夜のツッコミを受けたワタルは
「ぐはぁっ!!」
と一鳴き。その後、
「きゅ〜……」
と床に落ちて行った。
「へ?わ、ワタル?どうしたん?ワタル?ワタル!?」
咲夜のツッコミはワタルの鳩尾にクリーンヒット。ワタルの意識は咲夜の声を遠く耳にしながら闇に落ちてゆくのであった。
〜☆〜
「……ふぅ、運ぼうと思えば運べるもんやな。
やっぱ力仕事は男がするもんやて、うん。」
咲夜は客間のベッドに運んだ、気絶したままのワタルを見ながらつぶやいた。
自分のツッコミが急所に入り、はからずも気絶してしまったワタルを何とかしようと、咲夜はワタルをここまで持ち上げて来た所までは良かったが、武道家ではないので活を入れるなんて事はできないし、医者ではないのでどんな処置をすればいいのか分からない。
途方に暮れた咲夜は、またワタルに目を移す。と、ワタルは悪い夢でも見ているのだろうか、びっしょりと寝汗が額から腕から吹き出ているではないか。
「……とりあえず、カラダぐらい拭いたるか……」
そういうと咲夜はタオルを持って来ようと、大浴場へと向かって行った。
〜★〜
ワタルは夢を見ていた。
幸せの鐘が鳴る白いチャペル。
その中で二人きり、深い口づけで愛を交わし合う二人。
「んんぅ…んっ、んぷ、はぷぅ…」
「んぁ…んっ、んちゅ…」
(うわ、すげぇ…溶けちまいそうだ…)
二人の内の一人、ワタルは目を閉じたまま、自分が水飴になってトロトロと溶けてしまいそうなその感覚を舌先を中心とした視覚以外の感覚器全てで受けとめる。
自分の舌と相手の舌が絡み合ったかと思えば、相手の舌は自分の口内を天井から側壁まで、縦横無尽に蹂躙していく。
そう、自分は相手に口内を“犯されて”いるのだ。
そんな事を考えているだけで自分の身体の奥からジュンとにじみ出てくる。
(……にじみ…出てくる……?)
その“にじみ出てくる”感触におぼろげな意識でワタルは疑問を抱く。
「……んぷぅ…どうしましたかワタル“さん”?」
「んぇ……?」
蜂蜜よりも甘い甘いキスに心溶かされていたワタルは、その聞き覚えのある声に天国にあった意識を取り戻し始める。
「あは、そんなに気持ち良かったですか?いや〜そんなに感じてくれるとこちらもヤル気になっちゃいますね〜♪」
「お、お前……」
飾りっ気のないシンプルな執事服、見とれる様な洗練された笑顔……
「し、ししし…借金執事!?」
そこにいたのは紛れもなく、綾崎ハヤテ、その人であった。
「あはは、やだなぁワタルさん、僕の名前は借金執事じゃなくて、ハヤテ、ですよ?」
「分かってるっての!!だから、な、何でその俺と、キキキキスを!?」
ワタルは驚きを隠せず、狼狽しながら今キスをした張本人に問い詰める。
「ははは、やだなぁワタルさん、そんなの……」
ハヤテはワタルをきゅっ、と抱きしめて、
「僕らが今さっきここで『結婚』の誓いをした後だからに決まってるじゃないですか♪」
「けっこ……ってうえぇえぇえぇえぇえぇえぇ!?」
耳元でそう囁かられたワタルは大声を出しながら思わずハヤテを突き飛ばした。
「ははっ、そんな恥ずかしがる事ないのに……カワイイですね、ワタルさんは…」
そんな仕打ちもなんのその、ハヤテはひるむ事無く怯えるワタルに近付いてくる。
「大丈夫……この教会には僕ら二人以外誰もいませんから……」
「いや、そういう問題じゃねーだろ!!つーかお前、男同士で何やってんだ!変態!変態!変態!!変態!!
こ、これ以上やったらお前にホの字のもう一人の変態にチクってやるぞ!!」
あまりの混乱にワタルは泣きじゃくりながらハヤテを罵倒し、某泉家執事の名前をちらつかせて、何とかこの異様な状況を治めようとするも、
「そんな事したってダメですよ。だって……ワタルさんは変態ヤローと違って、“女の子”じゃないですか♪」
返されたハヤテの言葉を、ワタルは一瞬、理解出来なかった。
自分が……女?
「は、ははは…ば、バカいうなよ…何で俺が女なん…」
「いやぁー、そのウェディングドレスも、とてもよくお似合いですよ……」
「!?」
反論の意を唱えようとした瞬間発したハヤテの発言に驚き、思わず自分の服装を見た。
「な、なななななな……」
ワタルは愕然とした。
純白の大きなスカート、それによく似た上半身。その服装の所々にフリルのレースがちりばめられ……
それはまさに、『ウェディングドレス』の見本とも言える衣装であった。
「な、何でこんな……ひゃぅん!!」
あまりに異常なこの目の前の事実。
自分の格好とハヤテの発言にうろたえていたワタルだったが、いつの間にか距離を詰めていたハヤテに…
「ひぁっ!ち、ちょっ…やめろよぉ!何すんだ……んあぁ!!」
「ほうらワタルさんの『ここ』……やらしい音を立てて……」
「はんっ!ひぅっ!や、やぁぁぁ…なんでっ、そんなのがっ、オレにぃ……っ!!」
“男”である自分にあるはずのない、いつのまにやらしとどに濡れた“女”のそれをハヤテの指でかき回され、そこから発生する快感にワタルは身悶えし、言葉を紡ぐ事が出来ない。
その代わりに、唇からは甘い喘ぎが、そしてかき回されるそこからはその甘さが有していそうな牝蜜がしたたり落ちてくる。
何故こんな物が自分の体が有しているのか分かる事も出来ずに、ワタルはただ、その快楽を注ぎ込まれる事を甘んじて受けるしかなかった。
「ハァ…ハァ…ワタルさん、僕…もう我慢の限界ですっ!!」
ハヤテは切羽詰まった様にそういうと、スラックスのジッパーを下ろし、その猛々しく反り立った『男』を顕にした。
「!!……おぃ、何するつもりだよ、やめろよ、おい、やめろってば!」
それを見たワタルは思わず息を呑んだ。
自分にあった物とはあまりに違うその大きさ、凶悪さ。
そしてそれをあろう事か、自分の奥深くに突き入れようとしている。
……ワタルはあまりの恐ろしさに声も出せなかったが、何とか喉の奥から声を絞りだす。
「や、ちょっ、そ、そんなの入ら……」
「大丈夫……僕を信じて……」
この『自分が女である』異様な空間でこの男の…ハヤテの言葉を信じろというのか。
(無理だ)
結婚?アイツと?何故?意味不明、支離滅裂、理解不能。
……ワタルはハヤテを信じる事は出来なかった。
だが、ハヤテを信じなかったとして、一体何を信じれば良いのか。
『男である時を憶えている』自分か、はたまた『女の自分を知っている』ハヤテなのか。
頭の中が駄文のナンセンス文学になりかけたその時、混乱していたワタルの中に、ハヤテのそれは突きいれられた。
「あ、入って、入ってっ……あっ……っあぁぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!!!」
〜★〜
バスタオルを手に戻ってきた時、咲夜の目の前にはおそらく悪夢であろう夢にうなされているワタルの姿。
寝汗は先程よりも、具体的に言えば、今着ているTシャツの色が変わるくらいにたっぷりとかいていた。
「うわっ!何やこの汗!!熱でもあるんと違うの!?」
咲夜は自分の額とワタルの額を重ね、簡易にではあるが熱を計ってみたものの、別に熱はなく、むしろ汗で濡れた額は気味の悪い冷たさを有していた。
(こんなに汗かいとるんやったらいっぺん体拭いてやらんとあかんなぁ……)
咲夜はバスタオルをベッドの傍らに畳み、体を拭くためワタルの上体を起こして服を脱が
そうとしたのだが。
(あ……っ、これやとワタルのハダカ見てまう事に……)
咲夜は頭の中をよぎった「男の裸」に思わず顔を赤らめた。
そんなもの意識しなければ、それこそ海やプールに行ったらすぐに見れるどうという事もない物のだが、一旦意識してしまうとなかなか頭から離れない。
「い、いややなー、脱がすんは上だけやんか!何やそんなハダカだけで恥ずかしがりおって……」
口からは誰に向けてかは知らないが言葉が出ているが、恥ずかしがっている事は誰にも明白である。
咲夜は無理矢理湿ったシャツの襟の部分を引っ張ってワタルの服を脱がそうとするが、ワタルの腕が引っ掛かり、なかなかうまく行かない。
(そ、そんな変な事考えんでええんや、あくまでワタルの体を拭くため、体を拭くため……)
ワタルのシャツは無理に伸びながらも、ワタルの顔を隠しながらどんどん上に上がってゆき、それと比例してワタルの汗ばんだ肌が外気に晒される。
その素肌が現れる度に咲夜の鼓動は速く、咲夜の顔はさらに赤くなってしまう。
(………ふぅ。何とか出来たな……)
そして何とか服を脱がした咲夜の目の前には未だうなされて、汗を全体的にかいている上半身裸のワタル。
咲夜はワタルの体に案外筋肉が無い柔らかい体である事に驚くと同時に女のはずである今の自分の体がワタルの体より引き締まっているこの現実に少し嫌な優越を感じていたが、ふとワタルを裸にした理由を思い出すと、
「えと…体拭いたらな……」
咲夜は傍らのバスタオルを手に取り、ワタルの体にタオル越しに触れた。
「んっ……」
ワタルの口から微かな声が漏れる。
咲夜は後ろから、背中、腕…とワタルの体をタオルで擦っていく。
バスタオルの細かな繊維が肌の濡れを拭き取るという行為は、少なからず肌に刺激を与えているのだろう。ワタルは体をタオルで撫でられる度に、弱い声を出し、顔をしかめた。
「ふっ…んんぅ…っふっ…」
(あぁもぅ……なんつぅ声出しとるんや、ワタルのやつ……)
咲夜はワタルの体を拭き撫でながらワタルのその“声”に、ワタルと同じように顔をしかめ、目を閉じながら苦しんでいた。
咲夜にはその声が、…素肌を刺激され上げている、言葉の意味も持たない、弱々しいその声が…酷く悩ましい、官能に喘ぐ声にしか、聞こえない。
何故って、赤い顔が体を弄ばれた疼きの証拠の様で、苦しそうな荒い息がその官能にあらがっている様で、それに…
…咲夜も一人でしている時に今のワタルと同じ様になってしまうから。
咲夜はワタルの体を拭けば拭くほど、自分の中の疼きが心の中で膨らみ、ともすれば自分がこの嬌声を出しているような錯覚に陥ってしまう。
一一だから、ワタルの汗はもうほとんど拭き取れたというのに、咲夜はタオルを手放す事が出来なくなっていた。
(ダメや…何やウチまで変な気分に…)
自分がしている様な錯覚に、相手が感じる現実に、咲夜はどんどん追い詰められていく。そしていつしか…
(あぅぅ…お、大きくなっとるよぉ……)
今現在生物分類上で“男”である咲夜の“それ”が、反応しないワケが無いのだ。
それはスカートを内面から押し上げて、咲夜の視覚と触覚に“興奮”という事実をありありと見せ付ける。
「こっ、これどないしたら…?」
もしこんな所を見られたら、もしこんな体を見られたら、………もしこんな状態なのを見られたら。
咲夜の頭の中で「もし」がぐるぐる駆け巡り、脳内を混乱させていく。
(は、早う何とかせんと!!)
放って置けばこの異常ステータスも治まるだろうが、咲夜はそれを知らないし、ましてや「放って置く」、など咲夜の選択肢にすら無かった。
(確か……こうすれば……)
咲夜はスカートの中にタオルのない手を入れ、激しく自己主張するそれに触れた。
「ふわぁっ、熱、ぃ…!!」
あまりに熱くなっていたそれに、咲夜は思わず感嘆の声を上げる。だが、触れただけでは終わらない、いや、終われない。
「んっ、くぅっ…」
咲夜は竿を持ち、ゆっくりとその感触に自己を慣らす様に上下に擦る。
「ふっ…んくっ、はぁ、うぅん…あっ、んあぁっ…!」
咲夜は、出て来る声を押さえられない。
自身のそれを擦っていく度に、それ自身も、そこから発せられる官能も、そして自身の声も、扱く手のスピードと比例して、だんだん大きくなっていく。
(やぁっ…ダメや、これ、止まらない…っ!!)
曰く、猿に自慰を教えると、死ぬまでそれを止めないらしいが、今の咲夜がまさにそれだ。
それは坂の上から落としたタイヤの様に、もう、自分で止める事は咲夜には出来なかった。
手でかたどられた肉の輪が笠の一番端を通る度に、咲夜の足腰がひくりと動く。
こんな自分を浅ましく思ってしまう自分もいたが、その後ろにぴったり背中を合わせて存在する、この行為を承認し、溺れている自分がずっとずっと大きい。
「はっ、ひゃぁ、ふあぁあっ!…や、あ、んあ…止まっ、止まら、止まらなぃよぉ!」
咲夜はそれを扱けば扱くほど、自分の中で膨らんでゆくいやらしい自分を押さえる事が出来ない。
咲夜は無意識に、扱いていない方の手を一一律儀にも、今までずっとワタルに触れ続けていた手に、力を入れていた。
「ぁっ…んぅうぅうぅうぅ!」
……え?
びくりびくりと体を思い切り魚の様に跳ねたワタルを見て、思わず止まるはずのない咲夜の手が止まる。
咲夜がワタルを見る。
顔は真っ赤。息は荒く、汗もさっき以上の量。
今の状況と恐らくその原因であろう、先程の“胸を刺激する”という行為。
咲夜は自己の頭脳と経験から、“あり得ないはず”のある一つの結論に達した。
「まさか……」
普段であれば絶対に否定するであろう仮説……
伊澄あたりが言ったらおもいっきりつっこみ、ナギあたりが言ったら笑い飛ばしてしまう様なそんな仮説も、“自分がそうなっている”のだ、安易に信じられてしまう。
朝と同じように、ごくりと唾を飲む。
ワタルの体に纏われているのは、下半身のズボンと下着だけ。
咲夜は一一スカートを見ても分かるように一一興奮を隠せないまま、ワタルのズボンに手を掛ける。
カチャカチャ…とズボンのフックを外し、ズボンを膝まで引き降ろす。
「うわぁ……」
案の定…というべきなのだろうか、そこにある“男物”の下着は、べちょり、と、しとどに濡れていた。
咲夜は知らないが、ワタルは今の今まで一一それこそ、体を拭いていた時から一一酷い淫夢を見ていたのだ。そこへいきなりの敏感になっている、薄い胸への刺激。そんな事をされれば当然……
「イったんや……」
咲夜が驚きを隠せないままに呟いた。
ワタルも、なっていたんだ。
咲夜の心に当然の驚きと、「自分だけじゃ無かった」という安堵と一一濡れた下着から発する特有の微香、女であると分かった今見れば見ればとても艶のある朱が差した寝顔一一それらが“彼”の本能を否応なしにくすぐる。
咲夜は、何故、と思った。性別が変わるなんて、一般常識でいえばまず、あり得ない。
だが現に性別が変わった自分がいる。これは替えようのない事実だ。
だが事実はこれで終わらない。
さらにもう一人、この状況に陥った人物が目の前にいる。ついでに裸で。
……こんな状況、滅多な事では起きないだろう。ましてや、同時期に異性の知り合いも同様のケースに陥るという事も。
……どうせなら、いっそのこと、愉しんでまおうか。
咲夜は、性の刺激に急かされた頭の内で、そう呟いた。
〜☆〜
ちゅぱっ、んちゅ、んぷぅ、はぷっ、れぉっ、ぷちゅ……
……ワタルは遠くに、くぐもった水の音を聞いた。
何度も経験した、夢から醒める時の、あの気だるい感覚。
ああ、あの執事との事は俺の夢だったのか。
ワタルは思い出しただけで変な気分になってくるあの悪夢を頭から取り去り、一体どうなってしまったのだろうこの体の異変の解明に当たろうと……
こりっ。
「あぅっ!」
乳首という思わぬ所への少し強い刺激に思わず声が出た。
「ちゅっ…ぷあっ。…あ、起きた?」
ぼやけた視線が段々クリアになってきて、視線の先の人物の顔がはっきりと見えてくる。
「さ、咲夜!?お前、何やって…ひくっ!」
そこにいたのは、自分の胸を口に含んでいた愛沢咲夜であった。あまりの状況の異常さに口を開いた次の瞬間には、咲夜の口から胸に与えられる刺激に声を上げてしまう。
「んふふ…ちゅっ、ちゅぅっ!ちゅぷ、んぷっ…」
「んぁっ!ふぅっ…あっ、ふぁ!や、やめろょ、ぉい!」
当然、ワタルは行為の中止を求める。が、咲夜はそれに聞く耳持たず、執拗に舌や唇でワタルの胸を責め立てる。
「ゃっ、ちょっ……咲っ、夜!止め、止めろ!」
「ぷふぅ……何?気持ちよー無かった?」
「ぃや、そうじゃ無くてな!?何でお前が俺に乗っかって、その、胸を……」
ワタルが口ごもる。無理はない。13歳のうぶな少年が「何故自分の胸を舐め回していたか」、と質問する恥ずかしさを考えれば、ワタルの反応は正常なものと言える。
だが咲夜から帰って来た言葉はとても正気とは思え無かった。
「せやかて“女の子”上にして“男”下から胸舐めるか?」
「いや、そりゃあ舐めにくいだろうけど……おい、舐めているのはお前じゃ……」
そこまで言ってワタルの顔は青ざめた。その視線の先には、漲る『男』の象徴が。
自分の朝の記憶。先程の咲夜の発言。そして今目の前にある咲夜の漲り。
ワタルの頭の中で一つの結論が出た。
「おおおお前まさか…お、男に!?」
「そういう自分はオンナノコになってもーてるんやな?」
ワタルの問いに咲夜は同じ問いで返す。
しかし、ワタルは気が気でない。何せ、今自分は“男”に馬乗りになられて胸を舐め回されている“女”なのだ。
……いつ襲われて、舐め回される『以上』の事をされるかも分からない。
「咲夜、頼むからそこからどけってあっ…あぅん!んっ、ひぅっ!」
咲夜に退去命令を出した刹那、咲夜の指の腹で右の頂の先端をくりくりと軽く押し潰される。
「ん〜、口ではそういうとるけど、体はそうは望んでないようやで〜?」
おちょくる様な咲夜の口調ではあったが、確かに咲夜の攻めはワタルの性感帯を逐一ピンポイントに攻めてくる。
それもそのはず、咲夜は女として生まれ、“女の性感帯”で性感を得てきたのだ。
つまり、自分が感じてきた所を愛撫すればおのずと……
「んぅっ、やぁっ、やはぁっ!ぁっ、あっ、ああっ!」
……甘い声は導き出せる。
一方ワタルは初めて受ける“女の性感”に翻弄され始める。
「あふっ、んくぅ、くぁつ!やめ、て、くれぇ!やぁっ!!」
自分の体が、自分の体でなくなってしまう、自分の声が自分の声でなくなってしまう。ワタルは溺れてはいけない、溺れたくない底なし沼にはまってしまって、ずぶずぶと溺れていく、そんな錯覚に襲われる。
「んふふ〜♪ワタル〜、おまたがやらしいで〜?」
咲夜は面白いおもちゃを見つけた子供の様に、ワタルの素足の付け根から指を滑らし、ワタルの剥き出しのクレバスへと到達させると、それに沿って指を動かす。
「はっ、うぁぁぁあぁぁあっ、ひぁぁあぁああぁっ!」
“性”に直に触れる事で、声も、反応の動きも、一層大きくなる。
「ワタルぅ…もぅ…限界ゃ……」
そんなワタルの痴態を見続けて、辛抱ならなくなったのか、咲夜はスカートのおもいっきりめくり上げ、その女物のショーツの包容力ではカバーし切れないほど力いっぱい隆起したそれをワタルの眼前に曝け出す。
「!!…や、やぁ、いゃ、いやだぁ!!離せ、離せったら離せよぉ!」
先の夢の様な光景、しかしこれは夢でなく現実である。ワタルはなんとかこれ以上の行為を止めようと必死にもがいた。
……恐らく、自分が男で咲夜が女であったなら一一ハヤテとは比べものにならないとはいえ、タマを投げ飛ばせる体ではある一一こんな状況、すぐに引っ繰り返せるだろう。だが悲しいかな、今、ワタルはベッドの上に横たわる非力なか弱い乙女、そう、“乙女”。
……一応、アダルトも扱うレンタルビデオ店の店長ではあるので、その手の知識は平均よりはあるだろうが、“経験”は一つもない。
一一とどのつまりが、下手すりゃこれがワタルの『初体験』。
……この世に自己の初体験を妄想する男子数あれど、“性別が入れ代わり”“寝ている間に襲われて”“無理矢理に犯される”、と一体誰が妄想するだろうか?
「うわあぁあぁあぁあぁ!!止めろおぉおぉお!!」
ワタルは、恥も外聞も捨て去り、恐怖の余りに目一杯にわめき散らす。
ワタルが体をばたつかせる度、三千院家の高級なベッドの柔らかいスプリングが動きを吸収し、微かに軋んだ音を出す。
咲夜はその騒音を鎮めるため、大胆な行動にでる。
「もー……そないうるさい“娘(こぉ)”には…」
「うぇ?あ、おぃちょっ、んっ、んんぅ、んんんんん!?」
両者にとってのファーストキスは、ムードも愛も無かったが、ただ深さだけは一級品だった。
咲夜の舌がワタルの口内へ侵入し、舌伝いに唾液をこくこくと流し込む。
位置的にワタルが下なので、重力に従い、唾液がワタルの喉元を犯していく。
それだけでは飽き足らず、咲夜の舌は身悶える蛇の様に、ワタルの歯列をなぞり、舌を絡ませる。
「んっ…んふ!んーっ、んーっ、んっ、あっ、んぁっ、んぅぅ…」
「んぷっ、ちゅっ、はぁっ…んんんっ、んっ、んんぅ……ちゅっ…
…んんふ…やーっとおとなしくなったな…」
ワタルはその言葉を頭の裏の方で、遠くに聞いていた。
……夢の中といい、今といい、キスのなんと甘い事だろう。
それは今までキスを経験した事が無いからだろうか?
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
ワタルは息を切らしてばかりで、もう声もあげられない。
理由は簡単、先程から咲夜より与えられる刺激が自分にとって強すぎた一一ただ、それだけ。しかし、ワタルはそれだけなのに、指先一本すら動かす事が出来ない。
……それどころか、もっと、さらに、とこの快楽を求めてしまう自分がここにいた。
さて咲夜はワタルから何も抵抗が無い事を確認すると、ショーツを膝まで下げ下ろし、その限界まで張り詰めたグロテスクなそれを完全に解放した。血流が満ち溢れ、熱くなりすぎたそれは、外気すら涼やかに感じるほどだ。
一一それだけ自分は興奮している。
一一これは、『最後』まで行かなければ治まらない。
咲夜はそう、他の誰へでもない、自分へと言い聞かせ、ワタルへの入り口へとそれをあてがう。
くちゅり、という音と、今までの、指とは違う感触に、行為に溶けていたワタルは自分の思考を一気に取り戻し、その先の事柄に恐怖し、あれんばかりに叫んだ
……つもりだったが、咲夜の愛撫は心だけでなく、声帯まで溶かしていたようで、叫びは囁きにしかならず、実に弱々しい声が咲夜の耳に届く。
「ぉぃ…ゃ、ゃめ、ろぉ…」
その声は咲夜の嗜虐欲をつーっ、となぞり、身悶えさせた。
……もう、我慢出来ない。
「んんふ……い・や・や♪」
悪戯っぽくそう言うと、あてがったそれをゆっくりと中に侵入させていく。
「あ、あああああぁっ!!や、やだぁ!!はいって、くるぅ!!やぁっ!!いゃぁっ!!!」
自分の中に確実に入り込んで来る異物の感覚。ワタルはそれの恐怖から、全力でそれを排斥しようと今度は本当に喉の奥から必死に叫んだ。
しかし、叫びの声を絞りだすには「力を込め」なければいけない。
「はぁぁぁぁっ…やぁ…すごぃ、これぇ…!なかがきゅっ、ってなって…はぅ、気持ちえぇ…」
その力みは咲夜の屹立の入ったばかりの先端を締め付け、咲夜をまた、ぞくりと甘美に震わせる。
咲夜はその甘美を肉茎全てで味わおうとさらにワタルの奥深くへと、進める事による快感に喘ぎながら少しずつ少しずつ押し込める。
「あっ、あぅ、ゃ、やだぁ!!もぅ、もぅやめてくれよぉ!!」
「ぁっ、ああっ!…やぁっ、に、にゅるにゅるってなってるぅ…」
咲夜はぬぷぬぷとワタルの中を犯していく。その中は処女特有の強い締め付けがありながら、先程からの愛撫によって驚くほどに柔らかい。
咲夜は肉槍をワタルの中へゆっくりと押し進める内に、ワタルの中に突っ掛かりをはっきりと感じた。
「これ…ワタルの……」
一一純潔の、証。
「初めては痛い」、と、知識としては知っている。
だが、官能を知ってしまった咲夜には、一旦高まってしまったこの衝動を止める事は出来なかった。
「ワタル…痛いかもしれんけど、ちっと我慢しとってや……?」
「や、やぁっ、いやだぁ!!もぅ、もうこんなことやめてくれよぉ!!咲夜ぁっ!!」
「じゃあ…あんま痛く無いように一っ気にいくさかい…」
「うぉい、聞いてんのか!!やめてくれってぇ…いってんだろぉ!?」
もう、ワタルの悲痛な叫びも咲夜の耳には届いていない。
咲夜は体勢を整えると、ワタル目がけて一気に突き込んでいった。
「ぁっ、あ、ぐ、ぁっ、ひぐっ、あ、あああぁあぁあぁあっっ!!」
ワタルの体にめりめりっ、という音と同時に、強烈な痛みがやってくる。
「ぐぁっ!ああっ!!やめ、て、抜い、てぇ、くれょぅ!!」
「はぅぅうぅ…!これ、すごぃぃ…!!」
あまりの痛みにワタルは目に大粒の涙を浮かべながら咲夜に呼び掛ける。が、咲夜はそんなのお構い無しにぐいぐいと腰を進めてゆく。
「はぁっ、はぁっ…ぁは、全部…入ったぁ…♪」
結局、咲夜の進行はワタルの中を全て埋め尽くすまで終わる事はなく、ワタルの最奥をこつんと突いて、やっと咲夜の侵入は治まった。
咲夜はワタルの膣内に存在する快楽一一ワタルの中にいくつも張り巡らされた襞の一本一本のうねり、突き込んでいる今もじわりと染み出て来る蜜一一それらを、中に入った全身で感じ取り、咲夜はその快楽に打ち震え、喜悦のため息を付いた。
「ひぐっ、うぅ…はぁっ、さく…やぁ…いたい、から、ぬいてぇ…おねがぃ…」
ワタルはとうとう咲夜に哀願し始めた。痛い。半端なく痛い。早く、早く抜いて欲しい。こんな痛みしか与えないものいらない。
……ワタルはもう頭と心ががらがらと崩れ去りそうだ。
だが!咲夜の欲求はとどまる事を知らない。
「あふっ…う、動かすでぇ…」
「え、ぅ、ぐぁ…っ、はぁっ、くっ…」
咲夜は腰を激しく動かそうとしたが、きついワタルの中、動いたのは本の少し、2、3センチという所。
それでも咲夜はもっともっとと、
ぐちゅっ!!
「あぅっ!!」
……自らを一気に突き入れて、偶然ではあったが、ワタルの子宮口を叩いた。
そこから発せられる快楽は、知識で知っていただけの咲夜の予想以上のものだったらしく、もう出すこともないだろうと思っていたワタルの嬌声が戻ってきた。
「へぇ…こうされんのがええんや……」
「はぁっ…はぁ、ぁ?はぐっ!ぁ、あぁぅ……ひぁぁっ!!や、やめ、て……あんっ!!
お、奥がっ、こんなにぃ…はんっ!!な、なん…ぐぁっ…でぇっ!!」
咲夜は引き出して押し入れる度に、律儀にもワタルの膣奥の入り口へこつん、こつん、と突き当てる。
その刺激にワタルの頭の中は甘い電流で一杯になり、痛みの意識が薄らいでゆく。
痛みの変わりに感じるのは、鈍い快感。ワタルの体に、ただ快感がどんどん蓄積されていく。
「ふぁっ!ひぁっ!やっ!ああっ!!や、なに、なんだっ、これぇ…!!」
今まで苦痛だったものが段々と甘美な刺激へと変わっていく事でワタルに不安を募らせる。
一一これ以上され続けたら、一体どうなってしまうのだろう一一快楽故の不安。
そして快楽の波はワタルの中にも影響を及ぼしていた。
「ふぅっ!はぁっ!…ふふふ、結構スムーズに動けるようになったなぁ…ふふ…!」
咲夜がニヤつきながら呟いた。
「あふっ、はっ、ふゃぁ!ふぇ、えぇっ!?な、なにいって……や、やぁっ!!はあっ!!んあぁっ!!」
咲夜は腰を大きくグラインドさせて、感じてきたワタルの膣内を抉り、最後にはまた、律儀にも最奥を叩いてワタルの口から嬌声を紡がせる。
「はふっ、あんっ、ひぁん!!やっ、やぁあぁあぁっ!!ひぁあぁあぁあぁっ!!やん!!そっ…そんなにしたらっ…っあ、ふあぁああんっ!!」
「やっ、あふっ、ふぁっ!…や、やだ、と、とまら、なくっ、なって…あぅっ、とっ、とまらへんょお!!」
……突き込む度にうねり絡み付く膣壁、滑らせる襞の一本一本に雁首が触れると、咲夜の体に快楽の電流が流れ一一咲夜もまた、ワタルと同じように快楽をその身に与えられ、ただ一心不乱に肉茎でワタルを貫いてゆく。
「はふぁっ!!やっ、だめっ…だぁ!!こんなことっ…された、らぁあぁっ!!」
ワタルはもたらされ続けた快感に耐えきれなくなってきて、もう限界のあと一歩。
……だが、咲夜はそうではない。咲夜は貪欲に、このえもいわれぬ快感を一一女であった時には得られなかった、何とも形容しがたい、男の快感を得ようと、
「はっ、はぁっ…ち、ちっと、強くすんで…」
「え、ぇあっ、ひゃうっ!!はっ!!ああん!!そっ、そんっ、なっ、はげしっ、くっ、ちゃあ!!あっ!ひゃっ!!ふぁあっ!!」
ワタルの外へとじゅぽっ!と乱暴に引き出して、それと同じにワタルの中へとぎちゅっ!と突き出して…と繰り返す。
「あっ!ああっ!!もぅ、もぅっ!だっ、めぇっ……はっ…ふぁあぁあぁあぁあぁあんっ!!」
そんな激しさをました咲夜の攻めにワタルはとうとう陥落し、びくりびくりと体を震わせ、果てる。だが、相手は絶頂に達したわけでは決してない。咲夜は絶頂で収縮した膣内を勢い衰えさせずに突き続ける。
「はひゅぅっ!!へうぅっ!!ひゃ、ひゃめぇっ!!りゃめだってさくやぁ!!そん、なっ!こっ、こあれるぅ!!こわれちまぅよぉっ!!」
官能に浸る余韻の間もなく、ワタルは呂律の回らない舌で喘ぎ続ける。
しかし、強すぎる快感に喘いでいるのはワタルだけではない。
「あはぁっ、ふひぃ、んくぅ!!はっ!はぁっ!きもちえぇ、きもちええのぉ!あぅっ!!とめっ、とめれぇ!!とめれへんっ!!だっ、だれかぁ!これっ、とめてぇ!!」
咲夜もまた、自分がワタルに刺激を与えれば与えるほど、自分の快感に打ち震え……強すぎる快楽を制御出来ずに、暴走していく。
「あふぅ!はふぅっ!!なぁっ…なんかっ、でそぅやぁ…っ!!」
「はっ、あ、らっ、ダメだっ!!中はっ、なかはひゃめぇっ!!らめらって、ひゃ!はっ!あ、さ、さくあぁっ!!」
咲夜は混乱しているせいで分からないのかもしれないが、その『出そうなもの』の正体がまだ自我を完全に失っていないワタルには分かる。それをここに注ぎ込まれたらどうなってしまうかも……分かっている。
ワタルはこれが最後の頼みとばかりに『咲夜』を拒んだ。だが、突いている咲夜にも、抉られるワタルにも、その瞬間を止める事が出来なかった。
「ぁ、あぅ、は、でっ、でる、でるぅ!あ、ぅぁ、ぅ、んっ、は、ん、んぁあぁあぁぁぁあああぁあぁぁぁあっ!!」
本能的に咲夜は弾ける直前にワタルの中にじゅぶん!と発射口を突き込み、ワタルの一番奥まで辿り着いた刹那、白い汚濁をびゅくっ!!…と、ワタルの子宮口の目の前で吐き出した。
白濁はワタルの内側の入り口へと飛び込んでワタルを刺激し、際限なく高ぶらせていく。
「ふひゃぁぁぁぁあぁぁっ!なっ、あ、あついぃ!!あっ、ああっ!やっ!まぁっ、まら、く、くるっ、くるぅっ!!はぁあぁぁああぁあああっ!!」
煮えたぎった奔流に体を弄ばれ、心を狂わされ一一ワタルは二回目の絶頂を迎える。
……あまりの快感と疲労で途切れてしまいそうな意識の中、ワタルは思った。
(…これから、どうなるんだろう…)
また、男に戻れるのだろうか。女のままだったら、どうやって生活していくのだろうか。
……子供は、出来てしまわないだろうか。
そんな事を思いながら、自分の膣内と同じように、ワタルの意識も真っ白く染まってゆくのであった。