サウナにて。
「ふー、私としたことが気を失ってしまいました」
マリアが起き上がったその瞬間、ハヤテはその名のごとく一瞬で前へ向き直った。
内心焦りまくりだったが、真っ暗な部屋の中、しかもマリアは意識を失っていたのだから
気づいてはいないはずだが──
「ハヤテ君…今私に手を出しませんでしたか?」
(?!)
「は、はは。いやだなぁマリアさん。そんなことするわけないじゃないですか」
「本当ですか〜?」
明らかにバレている。
ごまかしても無駄だと、ハヤテは覚悟を決めた。
「……すいません、マリアさん。急にマリアさんが倒れたので心配になって振り返ったんですが、
……その、気を失っているマリアさんがあまりにも色っぽかったもので、つい」
「ふーん。ハヤテ君はうそつきさんなんですね」
からかうような、とがめるような微妙な声が背後から聞こえてくる。
だが、続けて発せられた言葉はハヤテの想定していないものだった。
「……でも、手を出さなかったほうがもっと怒っちゃうかも。こんなぴちぴちの女の子と、暗い部屋の
中で二人っきりなんですから」
「──────────────────ぴちぴち?」
「マリア、ハヤテはどこだ?」
「急にマグロ漁に行きたいと言い出しまして……3年は帰ってこないそうです」