『恐怖のドンペリ怪人ユキジン タンケンジャーは出ません』  
「ふ、ふふ……ふはははは! ついに、ついに手に入れたわ……!」  
 
 ここは、白皇学院の宿直室。この部屋の主(というか、占拠している)である桂雪路が、  
不気味かつ貧乏臭い笑い声をあげていた。  
 
「ヒナの部屋に設置した隠しマイク……それにより録音に成功した、ヒナの恥ずかしい寝言  
を収めたこのテープ……! これさえあれば、無敵の生徒会長といえども恐れるに足らず!」  
 
 教師として、姉として……何より人として、それはどうなのかと言いたくなる行いで  
はあったが……雪路にとっては、譲れない一線であった。なぜなら――。  
 
「ふっふっふ……これをネタにヒナからお小遣いをせびってドンペリ飲み放題よ!   
ヒャッホォオォォーウ!!」  
 
 やはりダメ人間だった。  
 ところで……雪路の切り札たるこのテープ。果たして、本当にヒナギクを脅せるほどの  
恥ずかしい寝言が収められているのだろうか?  
 
「はっ。そういえば、テープの中身を確認してなかったわね。ちょうどここにラジカセが  
あるし、聞いてみっか」  
 
 いやいや、聞いてなかったんですか……と某借金執事ならツッコんでいたかもしれないが、  
ここにいるのは雪路一人。適当にスルーしておいてください。  
 
「よーし、準備オッケー、と。ポチッとな」  
 
 以下、音声のみでお楽しみください。いや、文字なんですけどね。ほら、気分的に  
そう言いたいじゃないですか。  
 
『……………………』  
『……………………』  
『……………………』  
『……………………』  
『……………………』  
『……………………』  
『……………………』  
『……………………』  
 ガララ。  
『えーっと……ヒナギクさん? 起きてますかー?』  
『……ん……みゅぅ……ハヤテ、くん……?』  
『あ……すいません、起こしちゃって』  
『ふあ……ん〜……それは別に、いいんだけど……また窓から入ってきたの?』  
『はい』  
『しょうがないなぁ、もう……程々にしとかないと、不法侵入で捕まっちゃうわよ?』  
『あはは……そうですね、気をつけます』  
『……それで、今日はどんな御用かしら? 泥棒さん』  
『そうですねぇ……ヒナギクさんの唇を盗みに、とかどうです?』  
『うっわー……キザすぎ……』  
『ええ? そうですか?』  
『そうよ』  
『うーん……そうでもないと思うんですけどねぇ』  
『…………で?』  
『へ?』  
『盗みに、来たんでしょ?』  
『……まったく、ヒナギクさんも素直じゃありませんね。してほしいなら、早くそう言えばいいのに』  
『べ、別に、そんなんじゃ……んっ……、んぁ……ちゅ、んふぅ……』  
『……っふう。はは、盗んじゃいました』  
『……唇、だけ?』  
『まさか』  
 カサ、カサ。パサ。  
『何度見ても、綺麗な身体ですね〜』  
『ひやっ、ん、やんっ……ごめんね、その……小さくて……ひゃぁああんっ!?』  
『ヒナギクさん、いつもそれ言いますよね。僕はそんなの気にしないって、何度も言ってるのに』  
『だ、だって……んぁああっ! あ、や、舐めちゃ、やぁぁ……んんっ、ふぁああ』  
『僕は好きですよ、ヒナギクさんの胸。感度が良いから、ちょっと弄るだけでも喘いでくれて……なんだか、嬉しいんですよね』  
『やっ……やだ、そんなこと言わないでぇ……ひやぁあああっ』  
 
『ヒナギクさん、あんまり大きな声出すとお母さまが起きちゃいますよ?』  
『バ、バカァ! んぁ、ふああっ!』  
『ふふ……さて、胸を弄りつつ、こっちも……うわー、もうビショビショですよ、ヒナギクさん』  
『あ、やっ、はぁぁぁぁんっ! ふああああっ!! だめ、だめぇえええっ!!』  
『ふふ……ヒナギクさん、ここが特に弱いんですよね〜』  
『ふあっ、ああ、あぁああんっ! イク、わたし、イッちゃうぅぅぅぅっ!! ん、あ、ぁあああああっ!!』  
『おや……もうイッちゃいましたか。相変わらず変態さんですねぇ、ヒナギクさんは』  
『はあっ、はあっ……ハヤテくんが、私を、そういう風に、したんじゃない……』  
『そうでしたっけ? ま、それは置いといて……どうします? そろそろ冗談じゃなく、お母さまが起きてきちゃいそうな気もしますけど』  
『……大丈夫よ、たぶん。だから……続けて?』  
『ふふ、そう言うと思いました。じゃ、ヒナギクさん。いつも通り、どうしてほしいのか、ちゃんと言ってくださいね』  
『…………私のイヤらしいおマンコを、ハヤテくんの硬くて太い、オ、オチンチンで……ぐちゃぐちゃに、してください……』  
『よく言えました。じゃ、行きますよ?』  
『うん……きて、ハヤテくん』  
『では……』  
『ん、あああっ!』  
『くっ……ふふ、相変わらずキツキツですよ、ヒナギクさんの中』  
『ふあっ、んんっ、やっ、あっ、あっ、あっ、ああっ! はやてくん、いいよ、いいよぉっ!』  
『さあ、ヒナギクさん……もっともっと、気持ちよくしてあげますよ……!』  
『ふああああっ!! やあっ、だめえっ!! ふあ、あぁああんっ!! もっと、もっとおくまでついてぇっ!!』  
『じゃあ、お望み通りに……!』  
『ああんっ、んああっ、くうっ! ひゃっ、ああああっ、あぁぁぁん、 んあああっあぁぁあ!! ひあ、やあっ、あ、あ、イク、わたし、またイッちゃう、イッちゃうよぉぉぉっ!!』  
『くっ……僕も、そろそろ……ヒナギクさん、一緒にイキましょうか』  
『うんっ、うんっ、いっしょに、いっしょにぃっ! あ、あ、ああああああああああああああああああああああっ!!』  
ブツッ!  
 
 安物のマイクとテープを使ったせいか、録音はここで途切れていた。まあ、ちょうどいいタイミングと  
言えばそうなのかもしれないが。  
 さて。まったく予想すらしていなかったものを聞くことになった雪路はというと……?  
 
「……ど、どうしよう、コレ。さすがにコレを使うわけには……」  
 
 何だかんだ言っても、妹のことを大事に思っている雪路である。寝言程度なら笑い話にもできるだろうが、  
こればかりはそうもいかない。  
 
「仮にこのテープが流出してしまったら、大変なことになるわね……早いとこ処分しないと……」  
「早いとこ、なんて言わずに……今すぐ私が処分してあげるわよ」  
「へ?」  
 
 雪路が声のした方を振り返る間に……声の主は、木刀を一閃、振り下ろしていた。ラジカセごと、テープが  
真っ二つになる。  
 次いで、ラジカセをスッパリと両断した木刀の剣尖は雪路へと向けられる。  
 
「お・ね・え・ちゃ・ん……!? これはいったい、どういうことかしらぁ……!?」  
「ひぃっ!? ヒ、ヒナ、いつの間に……!?」  
 
 バックにゴゴゴゴゴゴと怒りの炎を燃やしながら、ヒナギクが仁王立ちしていた。とても謝って許してもらえる  
雰囲気ではないが……それでも、言い訳を始めてしまうのが人間の性なのであった。  
 
「えー、えーっとね、ヒナ。これには、深ぁい深ぁいワケが……」  
「問答――」  
「いや、ちょ、待ってヒナ、話せばわかるわ暴力反対ラブアンドピース!」  
「――無用ぉおおおおッ!!」  
「うきゃぁああああああっ!?」  
 
 こうして雪路は夜空に浮かぶ星となった。  
 しかし、まあ、アレだ。考えてみれば、間接的にとはいえ、ハヤテの夜這いのおかげで雪路の企みは  
頓挫したわけである。ここは素直に彼を讃えたいと思う。  
 
 
 と、いうわけで……。  
 借金執事・綾崎ハヤテの活躍により、ドンペリ怪人ユキジンの野望は阻止された。だが、いつまた平和を脅かす魔の手が  
彼らのもとに忍び寄るかも分からない。白皇学院に真の平和が訪れるその日まで……って、うわ、何をす、やめくぁwせdrftgyh  
 
「ふっ。と、いうわけでだ、諸君」  
「次回も我々、轟々生徒会タンケンジャーの活躍に……」  
「乞うご期待なのだ♪」  
 
 
 
「えーっと……瀬川さんたち、今回は何もしてませんよね?」  
 
 細かいことは気にするな。そんなわけで、完!  
 
 

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