とある夜のこと。  
 
いつも通りの慌ただしい一日を終え、ハヤテは風呂に居る。  
その日は咲夜が泊まりに来ている。いつもならこの時間はナギの相手をしているのだが、おかげでハヤテに自由時間ができた。  
「今日はちょっと長湯でもしてみようかな。日々のたまった疲れを取るためにも。」  
ハヤテは一通り体を洗い終えると、タオルを湯船の縁に置き湯に浸かった。  
「はぁ〜、極楽極楽♪」  
ハヤテは僅かなリラックスタイムを楽しむ。  
「ふぁ〜〜…」  
ハヤテは大欠伸をする。  
「このまま目を瞑ったら、心地よく眠れそうだなぁ…」  
ハヤテを強力な睡魔が襲う。  
「この深さなら、溺れないか…」  
ハヤテの意識が薄れ始める。  
「にょいこは……むにゃ、まにぇしにゃむにゅむにゅ………」  
意識が途切れた。  
 
 
 
からからからっ……  
 
浴場の扉が開いた。  
扉を開いた彼女は、眠っているハヤテを見て一瞬驚くが、  
その寝顔を見て心穏やかになる。  
いつものハヤテからは決して見られない、とても幸せそうな顔であった。  
 
彼女は暫く見つめた後、身を清めてから湯に浸る。  
ハヤテのすぐ隣に。  
 
 
彼女はハヤテの頬を人差し指でつついてみた。  
「ふみゅ〜」  
男とは思えない声をあげる。彼女は面白くなり、今度は脇をつつく。  
「ふゎっ…みゅ…」  
少し恥ずかしくなるが、構わず今度は耳に息を吹きかける。  
そして、  
 
はむっー  
 
耳を甘噛みする。ハヤテはか弱く喘ぐ。彼女は軽く罪悪感と背徳感を感じた。  
ハヤテの顔をのぞき込む。  
ハヤテはぐっすり眠っているようだ。  
暫くそれに見とれていた。  
彼女はほほえんだ。  
 
 
 
 
ハヤテは目を開いた。  
 
 
「あの…、何をしてらっしゃるんですか?咲夜さん」  
いきなりの展開に咲夜は焦る。  
ハヤテは目を擦り辺りを見渡し状況を把握した。  
そして彼女をみる。  
「!!!」  
 
ざぶんー  
ハヤテは彼女とは反対の方向を向く。  
「す、すみません!僕、眠ってて気づかなくて…」  
彼女は、そんなハヤテに突っ込まずにはいられず、頭をはたく。  
「ひゃっ!」  
「別になんも悪いことしとらんやないか」  
「え、でも…」  
「気にすんなや、うちタオルちゃんとつこてるし」  
「は、はい、恐縮です…」  
「ま、裸の付き合いって奴や♪」  
「は、裸!?」  
ハヤテは顔を赤らめる。咲夜はぺしっとハヤテをはたいた。  
「ほんま単純なやっちゃな〜!男って全部そんなん?」  
「うぅっ…」  
ハヤテは狼狽える。  
「はぁ、うちが結婚する時はそこら辺ちゃんとしとる奴がええな!」  
「そ、そうですよね…あはは」  
 
暫く沈黙の時が流れる。  
ハヤテは咲夜と少し距離をおいていた。  
 
ハヤテは沈黙に耐えきれずに話しかけた。  
「あの、咲夜さん」  
「ん?なんや?」  
「先程、結婚するなら、ちゃんとしてる方が良いと仰いましたよね?」  
「あ〜、言うたな。」  
「それって、具体的にどういう方なのですか?」  
「…は?」  
「あ、差し支えなければでいいのですが、咲夜さんの好みの男性のタイプって、どんななのかと思いまして。」  
「…タイプ、なあ」  
咲夜は少しだけ考えた。  
「うちな、今まで散々漫才師になりたい言うとったやないか。ほな確かに漫才師は夢としと持っとる。その勉強もしとる。  
けどな、そう簡単になれる程世の中甘くない。それはよぉ〜く分かっとる。  
…でもな、せめて相方くらいは、心から信頼し合える相方ちゃんと作りたいんや。  
それは男女関係ない話や。  
もし生涯を共にするなら、そないな奴がええなって。」  
咲夜は天井を見上げた。  
 
「…ナギお嬢様は、良い相方ではないのですか?」  
咲夜は少し間をおいて答えた。  
「ナギな、うちが漫才師目指すことに反対はせんし、ボケもかましてくれる。  
けど、心が足りんねん。ナギは親友やけど、なんつーかな、何か物足りないねん」  
 
咲夜はハヤテを見つめた。  
「なぁ……………ハヤテ」  
「えっ? あ、はい」  
ハヤテは、いきなり名前を呼ばれて驚いた。  
 
 
「うちの相方をやらへんか?」  
 
 
ハヤテが初めて咲夜に会った時、「漫才トリオ」に誘われた。  
そのときは軽く流したハヤテであった。彼女が冗談で言ってると察したからだ。  
しかし、今の咲夜は冗談で言ってるとは思えなかった。本気で悩んでいるように感じられた。  
本気で「漫才の」相方を探しているのだと思った。  
 
しかし、ハヤテは咲夜が言ったことを思い出す。  
 
『心から信じ合える相方をちゃんと作りたいんや』  
 
ハヤテは慌てて首を横に振る。  
「い、いけませんよ!僕なんかが咲夜さんの『生涯の相方』になんて…」  
「…はぃ?」  
咲夜はキョトンとする。  
「自分の人生を左右することなんですから、もっと慎重に…」  
「おぃ、聞こえてへんのか?」  
「咲夜のお気持ちは大変嬉しいですけど…」  
「…………………」  
「ですから、ね?まだ結婚できる歳でもないんですから、この話は保留に…」  
「ドあっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」  
「あべしっ…!」  
咲夜ツッコミ基強烈な右アッパーを食らわす。  
ハヤテは華麗に宙を舞ったのであった。  
 
ざぶんー  
 
 
ハヤテは勢いよく水面に叩きつけられ、沈んだ。  
 
 
ハヤテは慌てて顔を水上に出した。  
「ぶはぁっ……はぁ、はぁ」  
ざっぷざっぷ  
咲夜が威勢良くハヤテに近づく。  
「な、なにするんですか!?」  
「おまえ、アホか!?アホなんか!?」  
「へぇっ!?」  
咲夜は両手でハヤテの首を掴み激しく揺らす。  
「うわゎゎゎゎゎゎ」  
「なっにが、『生涯の相方』や!勘違いも甚だしいわ!」  
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」  
なおもハヤテを揺らし続ける咲夜。  
 
ふと、ハヤテは視界が安定しないながらも気づいた。  
「ひゃ、ひゃくやひゃん!」  
「あ〜?なんやねん」  
咲夜は動きを止めるが、首を離すことはない。  
ハヤテは気を確かに咲夜をみる。  
『や、やっぱり…』  
「さ、さくやさん、かお、おかおが…」  
「はぁ?顔がなんやて?」  
「やけに、赤いです。」  
「な…!?」  
咲夜は指摘されて戸惑う。事実、咲夜の顔は赤かった。  
「じ、尋常じゃなく赤いのですが…」  
「なっ、いや別にこれはそのな…」  
咲夜の手の力がぬけ、ハヤテは漸く自由を手にする。  
「かはっ、けほけほ…。」  
「………」  
どうにも咲夜の様子が変だ。そうハヤテは感じた。  
 
「あ、あの、大丈夫ですか?まさか熱でも…」  
「そ、そんなもんないわ…」  
「そ、そうですか?」  
「そうや!こ、これはただ逆上せただけや!」  
「なら良いのですが…」  
 
咲夜は俯いた。  
『な、なんやねん!うち、どないしたん!?なんでこない胸が高鳴ってんねん…  
あかん、ハヤテの顔、まともに見れへん…。こないなこと始めてや。さっきまで何もなかったやんか、ほんまどないしたんやろ…。  
いつからや、ここ来た時は平気やったし…』  
 
ふと、ハヤテの言った言葉を思い出す。『生涯の相方に…』  
 
ボッー  
 
咲夜の顔から煙が噴く。  
『はぁ?な、何が恥ずかしいねん!う、うちから言った言葉やないか。  
うち、一体全体どうなって…  
…なんでこないなって』  
 
「咲夜…さん?」  
ハヤテに呼ばれてハッとする。  
ハヤテは咲夜の顔をのぞき込んでいた。咲夜の目前にハヤテの顔がある。  
ハヤテにここまで顔を近づけられたのは初めてだ。  
「な……へ?」  
咲夜は後ずさろうとする、が…  
 
つるっー  
足が滑った。  
いきなりのことに声も上げられずに、そのまま後ろに転がる。  
 
 
いや、転がり「そうに」なった。  
 
 
一瞬のことだった。  
ハヤテは瞬時に立ち上がり、右手で咲夜の左腕を掴む。そして、グイッと引っ張った。  
「うわっ…」  
更に、左手を咲夜の腰に回し安定させる。  
ダンスのポーズに見えないこともない。  
 
「大丈夫、ですか?」  
「あ、あぁ」  
やはり、どうしてもハヤテを直視できない咲夜。  
ましてやこの状況、心臓の鼓動は高鳴るばかりだ。  
 
咲夜はまた俯く。  
 
ふとハヤテは、二つのことに気づく。  
 
まず一つ目。  
咲夜はハヤテによって支えられていて、仰け反っている。  
その体型により、咲夜の胸が強調されている。  
『…大きい、ですね』  
最近、咲夜の成長が著しいことは、ハヤテから見ても分かった。  
また、咲夜の服のセンスは良く、その胸のふくよかさをひきたてていた。  
ハヤテは、そういう意味で見慣れてはいた。しかし、今の体型はその魅力的な胸を更に強調させている。  
ハヤテの視点からは将に谷間が伺える。身体に巻かれたタオルが、何故か興奮させた。  
ハヤテはなるべく咲夜の顔を見るようにした。  
 
二つ目。咲夜の顔を見ようにも、咲夜は俯いている。その見ている、と思われる先を追う。  
 
『あ……あああっ!』  
慌てて咲夜を助けたため、忘れていたのだった。  
この状況がなかなかマズいということは分かった。誰かに見られたら、終わる。  
『咲夜さん、怒ってますよね、こんな格好でこんなこと…』  
 
ハヤテはフルチンだった。  
 
咲夜は俯き、目を閉じていた。  
『泣きたい…』  
「こんなこと」でこうも狂ってしまう自分が恥ずかしく、情けなかった。  
 
「咲夜さん?」  
ハヤテは辿々しく呼びかける。  
「だ…」  
「だ?」  
「黙っといてくれへん?」  
「え…」  
「暫く、このままで…」  
そう言うと咲夜は右手でハヤテの左腕を、優しく掴む。  
 
ハヤテは動揺する。  
咲夜の表情や仕草、あらゆる点でいつもとは違う。  
失礼ながら、女の子らしさで満ち溢れていた。  
その所謂「デレ」が咲夜にもある、その事実はハヤテに更なる興奮を与える。  
『うっ、やば…』  
ハヤテのモノが硬くなり出す。一度勃起が始まれば、それがおさまることはなく、益々硬度を増す。  
どうにかごまかしたかった。  
 
『どうにか、顔をあげてもらわないと…』  
ハヤテは咲夜を掴んでいた右手を離し、そっと咲夜の頬に触れてみた。  
咲夜はピクリと反応し、ハヤテを見上げた。  
『よし!』  
咲夜が俯かぬよう顔を近づける。それは、キスをしようとしてるようにしか見えない仕草だった。  
勿論、当の本人に自覚はない。  
 
『な、ちょ…ハヤテ、何する気や?き、キスか?キスなんか?』  
咲夜は力なく思考する。  
『キスするってことは、ハヤテはうちのことが…?  
あ、アホか!この鈍感でなんだかんだで純粋なこんな女々しい執事がか!?  
………ありえへんな。仮にこいつがそういう感情を持ってるとして、その対象がうちなわけ、あらへん。  
それに、うちやてハヤテのこと好きな訳や…ない…………  
ない、筈やった。  
こいつが勝手に勘違いして、うちはそれにムキになって…。  
『ムキ』?うちがが?な、なんでうちがムキにならな…ならな……  
…もうわからへん。分かっとるんは、今将にハヤテがうちにキスしようとしてるっつうことくらいや。  
うちは、どないすればいいねん。こないなこと初めてやさかい、わからんわ。  
ああハヤテ、そないな真剣な顔で見つめんといて。もっと狂ってしまいそうや…』  
そう思いながら、咲夜はハヤテのその瞳に見入った。  
 
ハヤテの顔は真剣そのものだった。  
『殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される殺される(ry』  
しかし、今の状況を正確に捉えることは不可能だった。  
 
咲夜はそんなハヤテを見て、  
『ハヤテ、そんなにうちのこと…?』  
などと現実とは大凡かけ離れたことを考えていた。  
 
『こないな真剣な顔でうちに迫るなんて…本気なんやね、ハヤテ。ほんならその想いに答えなあかんな。  
…正直、おまえのことはよぉわかっとらん。せやけど、せやから、ハヤテのこと、分かってみたい。  
なあ、ハヤテ、本当にうちでええんやな?後悔せえへんな?  
ナギやなくて…  
 
そうや、こいつにはナギがおる。こいつ、うちなんかにちょっかい出しとる場合じゃ…』  
 
「咲夜さん…」  
 
咲夜は、ハヤテの熱い眼差しに断固たる決意を見いだしてしまう。  
『……ええんやな、ハヤテ。覚悟はできとるっつうわけやな。なら、うちはこの身をもって…』  
 
咲夜は目を閉じた。  
 
『え…?咲夜さん、どうして目なんか瞑って…。  
あれ?なんか顔近づけてきてる…って、まさか!?』  
 
時既に遅し。  
咲夜とハヤテの唇が触れあった。  
舌を絡ませるでもまさぐり合わせるでもなく、ただ触れ合うだけのキス。  
ハヤテはただそれを受け入れる他なかった。  
 
『や、やってもうたわ!うち、ハヤテと、ハヤテと!』  
咲夜は幸福感と罪悪感とが入りみだる不思議な気分になった。  
『ナギ、すまんな…』  
咲夜はハヤテの右手を振り払い、両腕をハヤテの背中に回し、しがみつこうとする。  
『もっと、触れてみたい…』  
咲夜はロマンチックでエロチックな気分に浸っていた。  
 
しかし、ハヤテはそれどころではない。  
咲夜からのキスに焦るが、それ以上に、勃起がバレることをおそれていた。  
咲夜はハヤテの身体にしっかり掴まり、立ち上がる。  
そして、  
 
ギュッ  
 
ハヤテを抱きしめた。  
そして当然、勃起したそれが咲夜に、咲夜の腹部に当たる。  
 
『うぁぁぅっ、な、なに感じちゃってるんだ僕は!!  
咲夜さんと僕を隔てるのはたった一枚のタオルだなんて…!  
というか、…バレる!』  
 
一方咲夜は、やはり違和感を感じ取っていた。  
『これ、まさか…!?』  
キスをしながらも、落ち着いて考えてみる。  
『ハヤテ、勃起しとるやないか、間違いない…  
お腹に、熱くて硬くて大きいのが当たっとる…  
ハヤテ、うちに欲情しとるんか?うちと、したいんか?  
…うちは、ええよ。ハヤテにやったら、抱かれても…』  
 
咲夜は腰を上下左右に動かし、ハヤテの勃起したそれを擦る。  
すると、ピクリと反応した。  
 
『ああ…!ハヤテの、ビクビク言うとる…。うちも、なんか疼いてきた…。  
もう、我慢できひん!ハヤテに、ハヤテにいじられたい!』  
咲夜は唇を離した。  
咲夜はこの上なくうっとりとしている。  
一方ハヤテは状況を把握できずに、なすがままにされる他なく、  
「はやて…」  
もう、我慢できひん!ハヤテに、ハヤテにいじられたい!』  
咲夜は唇を離した。  
咲夜はこの上なくうっとりとしている。  
一方ハヤテは状況を把握できずに、なすがままにされる他なく、  
「はやて…」  
などと甘くささやれてしまっては、その見たことのない表情に見ほれるのは致し方のない話であった。  
 
「うち、ええよ。ハヤテの好きなようにしたって…」  
またも、今までに見たことのない淫靡な笑みにハヤテは、悟る。  
『そうか、これは夢なんだ。いつのまにか逆上せて眠っちゃったんだな。  
そうだ。咲夜さんは、こんなこと言う人じゃないもんな。  
…夢の中でくらい、自分に正直になったって』  
 
「咲夜さん!」  
ハヤテは咲夜を強く抱きしめた。  
「ぃゃ…」  
勃起したモノが当たるが気にしない。敢えて強く押しつけた。  
咲夜の荒い鼻息が肩にかかり、こそばゆい。  
 
「今から」  
「え?」  
「今から、貴女を滅茶苦茶に犯します。」  
「……」  
咲夜は黙って頷く。  
「自分の欲望に素直になろうと思います。」  
頷く。  
「…とか言いながら、結局は『犯す』なんてことはできないでしょうけど」  
二人は笑い合う。  
「その、お願いします」  
 
二人はまたキスを交わした。  
 

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