「あの、桂ヒナギク」  
そう言うだけで学院内では全て説明がついてしまう少女。  
俺に限らず、学院内で桂ヒナギクを知らない奴なんて存在しないだろう。  
非の打ち所のない完璧な生徒会長。勉強もスポーツも万能の優等生。何より目を奪うほどの美少女として。  
学院のアイドルなんて陳腐な表現が、ヒナギクにはすんなりと馴染む。  
いや、高嶺の花とかいう表現の方が的確なのかもしれない。  
それはつまり普通の人々には手の届かない存在なのだ。  
 
桂ヒナギクについて性的な妄想を抱く奴は多いだろう。  
健全な若い男性なら当然のことかもしれない。  
美しく整った顔や綺麗な長い髪を乱してみたいと思ったり・・・。  
あの理知的な唇から淫らな言葉を引き出したり・・・。  
細い白い喉をのけぞらせたり・・・。  
 
普段の姿からして、妄想を掻き立てられてしまうのだ。  
制服の上からはわからないくらいの微妙な胸の膨らみ。  
スカートの裾から覗く綺麗な足。  
体育の授業で見る、健康的な白い体育着とスパッツ。  
下着がうっすらと透ける夏の制服。  
プールでの可憐なスクール水着姿。そして部活の時の凛々しい剣道着姿。  
 
もし抱きしめることができたら、どんな匂いがしてどんな感じがするのだろう。  
あの綺麗な長い髪に触れながら、重ねる唇はどれほど柔らかいのだろうか。  
あのつつましい胸に触ることができたら、ほっそりとした太ももに手を滑らせることができたら。  
そしてその奥の秘密の場所は、ヒナギクらしく薄いのか、それとも意外と濃い方なのか・・・。  
綺麗な花弁を優しく刺激してあげたら、ヒナギクはどう反応するだろう・・・。  
感じやすく声をあげてしまう性質なのだろうか、それとも快感を感じても外には隠す性質だろうか・・・。  
ベットの中のヒナギクに次第に全身の肌が赤らみ、汗ばんでいく事を指摘したら、可愛く真っ赤になって  
「そんなこと言わないで」と懇願するのだろうか・・・。  
 
そんな風に、ヒナギクを想う男なら想像するだろう。  
いや、そんな生易しい想像だけでなくて、ヒナギクはもっともっと凄い事をされているに違いない。  
想像の中のヒナギクは、淫らで、何でもしてくれて、何でも受け入れてくれてる女の子なのだ。  
 
そんな「あの、桂ヒナギク」に最近親しい男の友人ができたらしいとの噂がある。  
噂の相手は、少し前に学院に転入してきたいつも執事服に身を包んでいるあの野郎だ。  
「ヒナギクの自宅に、あの執事が泊まったりしているらしい」  
「ヒナギクの誕生日の夜、あの祭りの後に真夜中二人だけで時計塔からでてくるのを見た」  
そんな噂話を聞いても、俺は少しも信じなかったし、まるで動揺もしなかった。  
矛盾するようだが、現実のヒナギクは、可憐で、清らかで、男性となんて  
唇を合わせた事すらない清楚で高貴な乙女。  
いくら淫らな想像をしていても、本当のヒナギクはそういう清らかな処女なんだと本当に信じ込んでいた。  
旧校舎で、偶然その二人のあんな残酷で綺麗な行為を見てしまうまでは・・・・・。  
 

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