これはひとつの勘違いから始まる、お嬢さまとメイドとときどき執事の、すこしエッチな物語
第一話『『変態執事V 〜変態執事の甘い罠 社長令嬢は絶頂の嵐に沈む〜』』
「お嬢様、僕、もう我慢できないです。い、いきますよ!」
『僕はお嬢様の秘密の場所に勢い良く自分の分身を挿し込んだ。
お嬢様は体をのけぞらせて叫ぶ』
「アアアアァン! イイッ!」
「お、お嬢様、僕がもっともっと気持ちよくさせてあげますよ。それっ! それっ!」
「ヒャアアアアン! サイコォー! イッちゃうー!」
『僕の暴れん棒はお嬢様の中を機関車のごとくに暴走しまくった。
そしてそのまま僕らはた
――プツン
突然ディスプレイの電源が切られ、パソコンの画面が真っ黒になる。
無慈悲な指は続いてスピーカーの電源を落とし、パソコンから漏れていた嬌声も途絶えた。
「あ、ああー!」
その代わりのように、静かになった室内に少女のキンキン声が響く。
「な、なにをする、マリア! しばらくセーブもしてないし、い、今、その、すごくいいところだったのに…」
頬をふくらませたナギが振り返ると、そこには腰に手を当てて怒り顔のマリアがいた。
「いいところだったのに、じゃありません。このゲーム、どう見ても十八歳未満はプレイしちゃいけない奴じゃないですか」
「…う。き、気づいてたのか」
「当たり前です! こんなスピーカー何台もつかって大音量で。廊下まで響いてきてたんですよ!」
「そ、そうか? う、うちの防音設備も大したことないな」
「…言いたいことはそれだけですか? ナギ?」
あくまでも悪びれないナギに、そう言ってマリアはにっこりと笑う。
笑顔の奥の静かな迫力にたじたじになりながらも、ナギは懸命に弁解した。
「ち、ちがうんだよ! えーと、…そう!
ほんとにいいゲームというのはこういうちょっとエッチなゲームの中にあることも多いんだ!
エロゲはオタクの最前線と言うしな。
だから私はこう、なんというか純粋に、ゲームに込められた高尚な宇宙的メッセージを読み取ろうとだなぁ…」
「はいはい。本当にいいゲームだったらすぐに全年齢対象ソフトになって生まれ変わりますから、
それまで待っていてくださいね。さ、ナギ、それは没収しま…」
「だ、ダメだ! だいたい移植なんて待っていたらブームが終わってしまうぞ! 時代は流れているのだ。
一年戦争では最強のガン○ムも、二十年やそこらで量産機のギラ・○ーガやジェ○ンにすら歯が立たなくなってしまうように、このゲームだって…」
ナギの言葉にマリアはこめかみを押さえた。
「またよく意味のわからない言いわけがきましたねー。でもダメです。
そもそもこの前、『ゲル○グだってきちんとチューンすればZガン○ムやZZガン○ムとだって互角に戦えるんだー』
と叫んでいたのはナギじゃありませんか」
「う。いやあれは砂漠地帯という地の利があってこその…」
「と・に・か・く。これは没収していきますからね」
マリアはパソコンからディスクを抜き取ると、机の下に隠してあったゲームのパッケージを難なく見つけ、一緒に持っていった。
ドアを後ろ手に閉めて、『ふぅ』とため息をつく。
(やっぱりお年頃ということなのですかねー。
あんまりこういう方面には興味がないようで、それだけは安心していたんですけど。
…注意しようにも、私もあまり得意な分野ではないですし)
マリアは手に持った肌色だらけのパッケージを見つめ、頬を赤らめてすぐに顔をそらした。
「そういうゲームなので当たり前なんでしょうけど、ハダカがこんなにたくさん。
そもそもの趣味がちょっとアレとはいえ、ナギもよくこんな物買えますねー。
…それにしても本当に、どうしましょうか、これ」
正視できない荷物を抱え、マリアはもう一度、深いため息をついた。
その日の深夜。
音が漏れないようにヘッドホンをつけたナギが、机に向かったまま小刻みに身体を揺すっていた。
「…ん、く」
深夜だというのにスタンドの明かりすら点けていない。
夜の暗がりの中、月明かりとパソコンのディスプレイが発する光だけがナギの顔を照らす。
「ん、…マリアが、ゲームに興味なくて、よかった。
データはもう、ハードディスクに、インストールされているから、あのディスクがなくても、…ふ、ぅ、続きが、できる…から、な」
画面の中では変態執事に犯されている令嬢が、しきりに身悶えていた。
ディスプレイに映る令嬢が声をあげると、画面の前のナギも連動するようにビクンと肩を震わせる。
「…ひぁ! あ、ぁあ、これは、ちょ…と、しげ、き、が…」
ナギは本来利き手のはずの右手ではなく、左手で画面を操作していた。
その、理由は…
「う、ぁ。ゆび、が、とまらな…」
…スカートの下にもぐりこんでいる右手にあった。
「ん、んぁ、…ぁ」
白いショーツの上、布地越しにもぷっくりと浮き上がった丘にその手は伸ばされていた。
細くて小さな指が、カリカリと布の表面をひっかく。指が敏感な谷間をなぞる度、
「く、ふ…」
ナギの身体が小さく震える。
やはりはずかしいのか、それとも誰かが部屋に入ってきたときのための用心のためか、
最初の内はスカートのすそがめくれる度に直していたナギだが、今は乱れるに任せていた。
いつしかマウスを操作していた手も止まり、ナギはもはや画面を見ていない。
ただ虚ろに潤んだ瞳で一心に行為に没頭する。
「ん、ふ…くぅっ!」
マウスを持った左手に強い力がこもり、ゲームのメニュー画面が開く。
「ぁ、んんっ! ん、んぅ…」
ナギは気づかない。耳鳴りのような血流に追い立てられるように、指を動かし続ける。
――しかし、
「ふ、ぅ…。…はっ、はっ、ん、く…。…はぁ、はぁ」
身体が単調な刺激に慣れてしまったのか、今一歩のところで昇り詰めることができない。
快感の頂点に達する前に、ナギの幼い身体に体力の限界が訪れた。
「はぁ、はぁ、はぁ、…くっ。…やめだ、やめ。こんなこと」
ナギは耳にかかったヘッドホンを投げ捨てる。
「べつにそんな、きもちよくなんてならないじゃないか。サクのアホめ、また適当なことを言いおって。
…まったく。時間を、ムダにした」
ナギは気だるげに前屈みになっていた身体を起こすと、『変態執事V』のソフトを終了させ、パソコンの電源を切った。
ベッドにもぐりこむと、今まで感じたことのない疲労感に、シーツにくるまれた身体が弛緩する。
「ま、サクのことだ。どうせどっかで適当に聞きかじっただけで、…ふぁあ。
実体験なんて全然だろうが…。あいつ意外とかんじんなとこはヘタレだし…ん、ねむ」
ベッドの上で身体を横にすると、縮こまるように身体を丸める。
「ゲームも、ろくでもない、奴だったし。せっかく、わざわざ色々検索して、執事とお嬢様のソフトを、探した、のに…」
満たされない何かを埋めるように、行き場を求めた両手が引き寄せられ、足の間に収まった。
そのままの体勢のまま、ナギは苛立たしげに肩を揺する。
「だいたい、そもそもハヤテがわるいのだ。あいつにあの主人公くらいの強引さがあれば…。
あ、いや、それではただの変態になってしまうから、あの半分くらいでいいか」
暗がりに向かって威勢よく文句を言いながらも、強い眠気と疲労感に、だんだんとまぶたが下りてくる。
それでも薄れない興奮をまぎらわそうともじもじと足をこすり合わせるように動かすと、
先程の行為で火照った部分にまたじんわりと熱がこもった。
「ハヤテの、バカめ。私だって、もう子供じゃ、ない、のに…」
グッと身体に力を入れると足の間にあった手が足の根元に強く押しつけられ、痛みに似た峻烈な衝撃が走った。
強すぎる刺激のせいか、つぶったまぶたの奥から雫がこぼれる。
「…ハヤテ。私は、女の子、として…見ては…」
闇の中。ナギの涙も呟きも、白い枕に吸い込まれて消えた。
つづく…よ?