『曖昧バスト83センチ』
最近、私はどうかしていると思う。
ひとりの男の子に恋をして、その人を想う気持ちが膨らみ続け、私を苛む程に大きくなってしまった。
ハヤテ君のことが好きなのだ。
それは分かった。
でも、どうしていいか分からない。
告白してしまえば楽になるかもしれない。
でも、それは怖い。
怖いから、ハヤテ君に自ら近寄ることができない。
今はただ、微妙な距離を保って、想いを心に仕舞い込んで、彼を見つめるくらいのことしか、できない。
そんなことしかできない私が私を苦しめる。
「ねぇ、美希。分らないことがあって、どうすればいいか、本当に迷った時、あなたならどうする?」
生徒会室。いつものように生徒会長の仕事をこなしながら、ソファに座っている頼れる友人に遠まわしに質問をしてみる。
同姓で、友人であっても、それでも直接悩みをぶつけるのは恥ずかしかった。
それに対し、美希は紅茶を啜りながら、
「今日の数学の問題のことか? 意外ね、ヒナに分らない問題があるなんて」
「私も完璧ってわけじゃないもの。……今までに解いたことのない、経験したことのない問題はどうやっても、簡単に解くことは無理だと思うのよ」
自分がハヤテ君を好きだと気付いたのにも時間がかかったんだもの。
それに、恋愛というのには無縁な私だから。
「ふむ。それでは参考書を読んでみるというのがいいんじゃないか? 参考書というのは、そういう時にあるものだし」
まぁ、私としては分からない問題はやらないのが一番だと思うが、と美希は笑った。
参考書、ね……。
「そういうものなの……かしら」
「ほぉ……ヒナらしくもない、弱気ね。問題というのは深く考えず、もっと簡単に考えれば思ったよりも楽にとけたりするものだぞ?」
そうは言っても、ハヤテ君への気持ちを簡単に考えることができたのなら、こんな苦しむことはないのだと、思う。
「ともかく、がんばれ生徒会長とでも言わせて貰おう」
「うん、ありがとう美希」
私だって、ずっとこのモヤモヤをすっきりさせたい。
うじうじしてるのは私らしくない。
うん。
自分の心に素直に――やってみよう。
『初Hは中学生の夏休みに!!』
ボン、と思考が爆発した。
「は、はわ、っ!」
急いで読んでいた本をパン、と閉じる。
そして、沸騰した顔を上に向ける。
「……もぉ」
美希が参考書っていうから、本屋で気になった女の子向け雑誌をペラペラと立ち読みしてみるものの……
こんな、こんなえっちな本をみんな読んでるのかしら……。
恋愛ってそ、その、き、き、キスくらいから始まるものじゃないの?
でも……
『初デートから初Hへの男の子の落とし方! カレを獣に!』
「うー……」
見れば見るほど、過激なことがその雑誌に書かれている。
最近はこういうことが普通なのかしら?
「ヒナさん?」
「歩?」
制服姿の歩がそこに立っていた。
「ちょっと参考書見にきたんだけど……、あ、ヒナさんもそういう本読むんだ〜」
「あ、ち、違うわよ! その、料理の雑誌を探してて、その、それで、これは間違いなの!」
手早く、雑誌を元あった場所へと戻す。
でも。
歩になら相談できるかもしれないわね……。
「どうしたのかな? そんなに難しい顔をして」
「歩――」
けど、私はそこで口をつぐんだ。
「ん? どうしたのかな?」
迷う。
言っていいのだろうか、と。
歩もハヤテ君のことが好き。
だから、この気持ちを理解してくれるだろう。
けど、私がハヤテ君のことを歩に話すのは……。
「……なんでもないわ」
「ハヤテ君となにかあったのかな?」
「ひゃうっ!」
思わず転びそうになった。
「あはは。ヒナさん顔に書いてあるよー」
ふ、不覚!
でも歩は笑って、そのまあ話し続けた。
「分かるよ、ヒナさん。ハヤテ君は自分から行動を起こさないもんね」
ちらっと私が置いた本を見て、
「そうでもしないと、振り向いてくれないんじゃないかな、ハヤテ君は。だから、ヒナさんが悩むのも分かるよ。私も諦めたわけじゃないから」
「歩……」
私がなにか言おうとすると、それを遮るように歩は私の手を握った。
「頑張って! ヒナさん! あれ? でも、私もハヤテ君が好きだから、ええと、私は何を言えばいいのかな? うーん……」
頭を抱える歩を見て、私はさらに決意を固めた。
私は白皇学院生徒会長、桂ヒナギク。
こんな優柔不断はダメなのよ。
生徒会室に鍵を掛け、購入した雑誌を熟読する。
でも、そこに書いてある卑猥な文章たちは私を何度も悶えさせた。
だって、エッチエッチエッチって何よこれ!
どこもかしこも男の子の気持ちを考えてないじゃない!
それと、
『男の子は胸を強調した服でデートすればベッドイン確立80%』
「……」
ぺたぺた。
そこには広大な水平な大地があって、山はない。
「……もぉ」
自分でやって恥ずかしかった。
それに、すごい自己嫌悪に陥った。
「はぁ……」
ないものはないんだからしょうがないじゃない。
私が女の子らしくないことぐらい分かってるもの。
さらに続きを読んでみると、
『男の子を落とすのに必要なのはテクニック! あなたのテクで彼はメロメロ!』
そのあとに続く淫猥な技術の習得方法。
こ、こんな恥ずかしいことをしないと……ハヤテ君は振り向いてくれないのかしら……。
「……」
結論、私には無理。
こんなことをしたら恥ずかしくて死んじゃう。
自分の心に素直にやっていくと決めたのに。
「困ってるようだね」
男の声が背後から聞こえる。咄嗟の判断で振り向き、臨戦体勢を取る。
が、
「神父さん?」
「君はどこの特殊部隊なんだ。素晴らしい反応すぎる。しかし、今日はそんな話をしにきたわけではない」
そう言うと、神父は懐から三つのビー玉のようなものを取り出した。
「人というのは時に自分の力だけではどうにもならない壁にぶつかることがある。
壁の向こうにある幸せは分かっているのに、その壁を乗り越えることはできない。
だから、そういう時には道具に頼るといい」
三つの玉を掲げる神父。
「まさか、あと四つの玉を集めると願いが叶うのかしら? それはそれで楽しそうね」
「そうではない」
「じゃあ、その玉には才能が入っていて能力者と……」
「君は少し少年漫画を読みすぎなようだ。ただ、才能というのは完全に的が外れているわけではない」
神父は微かに笑い、
「一つの玉は君の胸を膨らませ、一つの玉は君にテクニックを与え、最後の玉は君に勇気を与えるだろう。ちょっとした秘密道具さ」
「あなた、未来の猫型ロボットだったの……?」
「通りすがりのただの神父だ。さぁ、好きに使いたまえ、後悔する前に」
私は差し出された三つの玉を受け取った。
「でも」
「しないで後悔するよりも、して後悔する方が心地いいものだ。何事も、行動を起こさなければ何も変わらないものだよ」
しないで後悔するよりも――
して後悔する――
後悔はしたくないわ。
でも、なら、このチャンスは逃しちゃダメよね。
私は三つの玉を順番に口に入れていった。
「効果は今日の深夜零時まで。神父らしく、私は祈らせて貰うよ」
ふにふに。
ふにふに。
「……ぁふ」
自分のした行為で耳まで真っ赤に染まってしまった。
制服をはちきらんばかりに、布地を押し上げている柔らかい二つのそれを自分の手でもんでみたわけだ。
「それにしても……なんなの、これ……」
ずっしりとくる、そのパイナップルの重み。
とてもじゃないけど、毎日この重さに耐えるのは困難だと思われる。
「おっきなひとも大変なのね」
そう呟くと、エレベーターが動き出すのが見えた。
ハヤテ君を携帯でこの生徒会室に呼び出したから、あのエレベーターを動かしたのは彼だろう。
「……ふぅ」
ぐっ、と拳を握る。
大丈夫、大丈夫よ。
今の私にはこの『胸』と『技術』と『勇気』がある。
今の私なら大丈夫。
「さぁ、来なさい……」
私の力で振り向かせてあげるんだから――!
「ヒナギクさん? 僕に何か……って何ですかそれ!? ロシアの新兵器ですか!?」
ハヤテ君は目を丸くしてあたふたする。
私はそんなハヤテ君に一歩一歩近付き、
「ん……」
その唇にキスをする。
「ん――!!」
後ろに下がろうとするハヤテ君を抱き寄せて、唇をより密着させる。
ハヤテ君が困惑しているのがよく分かる。
でも、唇を重ねて改めて思う。
私はこの男の子が好きなんだって。
「ん、……ちゅ…ぅ……んむ……」
頭の中は次々とどうやってキスをしていけばいいかということが完全にインプットされている。
それに従って、私はハヤテ君に熱烈なキスを続ける。
「んふ……りゅ……」
「っ!」
舌をハヤテ君の中へと侵入させる。
温かい口内に自分の舌を這わせていく。
「ちゅ……る、ぇう…ちゅぷ」
自分の舌に染みていく自分ではない唾液の味。
今まで味わったことのない、ハヤテ君の味。
「ちゅぱ……はちゅ……んっ、…む……ぁ」
「んっ!――さんっ! ヒナギクさん!」
力に任せて無理やり、引き剥がされる。
「どうしたんですかヒナギクさん!? それに、その胸……」
ハヤテ君が顔を赤く染めながら、私の大きくなった胸をちらっと見る。
そんな戸惑っているハヤテ君に私は、
「こ、これは夢よ!」
あ、あれ?
私、何を口走って――
「夢、ですか……?」
ハヤテ君が周りを見渡して、もう一度私を見る。
その、私の胸部を。
「ああ、そういうことですか。だから、いつもと違ってヒナギクさんの胸が……」
その言葉に、無性に腹が立った。
どうせ私には女の子らしい部分なんてないわよ。
でも、でも、
今日のこの時くらいは、
「んっ――」
精一杯、力の限り彼のことを抱きしめる。
「ヒナギク、さん……ちょっと、その、胸が……」
「これはあなたの夢よ。だから、あなたは何も考えなくていいの」
気が緩んだハヤテ君の体をそのままソファに押し倒す。
恥ずかしい、けど
あの雑誌には女の子がリードすることで男の子が興奮することもあるって書いてあったわ。
それに、そうするために手に入れた『技術』よ。
いまさら、顔を赤らめてる場合じゃないわ。
「ヒナギクさん、だめですよ、こんなの――」
「だから、これは夢。あなたが望んでることなのよ。もぉ、何度も言わせないでよ」
す、とハヤテ君の股間に手を伸ばす。
そして、つーっとその部分を服の上から撫でる。
「あっ――」
服の上からでも、分かる。
その、硬度と熱が。
「ふふ……、体は正直なのね」
「ヒナギクさん、それは普通僕のセリフだと思います……」
「い、いいじゃない!」
ぐい、と一気にハヤテ君のベルトを外し、ズボンとパンツをずり下ろす。
逞しくなっている男の例のアレが露となる。
「わ……ちょ、ちょっとこれって大きすぎじゃない!?」
雑誌に載ってた平均よりも大きいんじゃないかしら、これ……。
それに、雑誌に載ってたものよりも、なんだか、生き生きしてるわ……。
「その、ヒナギクさん? そんなにじろじろ見られると恥ずかしいんですけど……」
「わ、私の方が恥ずかしいわよ! もぉ! いいわよ」
上半身の制服と下着をさっさと外して、グラビアアイドル顔負けのバストを外気に触れさせる。
「すれば、いいんでしょう?」
ふわふわの二つの果実を手で寄せて、それをハヤテ君の分身に近付ける。
そのままでは挟みこめないから、手で胸をちょっと反らして、寄せて、調節する――そんな自分に違和感を覚える。
自分が覚えたことのない知識や技術が勝手に頭に入ってきているのだから、仕方のないことだとは思う。
とりあえず、その技術を駆使しなきゃ……。
「くっ……」
むにゅぅ――
自分でも驚きの柔らかさの乳房が見事にハヤテの肉棒を包み込む。
「まるでマシュマロの柔らかさよね……」
「……それも僕のセリフだと思います」
ハヤテ君の苦笑い、それはある意味余裕とも読み取れなくもない。
まだ、気持ち良くないんだ。
だったら、
「えいっ」
両端からぎゅう、と巨乳を押してみる。フワフワながら、弾力のある巨乳はハヤテの男根をより深くに沈めていく。
さらに、刺激を与えようと胸を揉むように、こねる。
「あ……、どんどん硬くなってってるわ」
今までも硬かったのに、まだ硬くなっていくというの……?
でも、気持ち良くなってる証拠よね。
そうだとしても、少し聞いてみたくなった。
「ど、どう?」
二つのものを蠢かせ、さらに気持ち良くなるように刺激を与える。
「はい? あ、その、気持ちいいです」
笑顔でこたえるハヤテ君、もちろんそれは快い笑顔だったけど、それは今の状況には合わない。
私はさらに、自分ではない技術に頼る。
「ん……」
とろぉ、……ちゅぷ。
「ひ、ヒナギクさん!?」
「黙ってなさい。今は私がしてるの」
唾液を谷間に流し込む、ローションよりも唾液の方が男の子は興奮する、と知識は伝えてきている。
その通りにしてみたけど、これは……想像以上にいやらしいものね……。
自分の谷間の中で唾液が光って、さらにいやらしい。
「う、動かすわよ」
にちゅ……にゅぷ……ぢゅぶ……。
上へ、下へ、定期的に擦っていき、だんだんとリズムにのる。
にゅる、にゅるっ、とその潤滑さに肉棒も少なからず反応を見せ始める。
「……んっ……」
「ハヤテ君? これ……?」
ハヤテ自身の先端からは少量の粘液が染み出ていた。
これが、その……かうぱーってやつね。
気持ち良くなっている証拠だわ。
この調子で……やるわ。
「……我慢したら許さないわよ?」
「え?」
一言忠告した後、
「いくわ」
指を胸に食い込ませ、二つの乳房をそれぞれしっかりと掴み、今までの倍以上のストロークで肉棒を攻め立てる。
「う、うわっ!」
ずちゅ! じゅるん! ちゅじゅ! じゅぶ!
唾液なのか、ハヤテのカウパーなのかは分からないが、水滴が飛び散り、ハヤテの肉棒はビクビクと脈打つ。
「んっ……」
ハヤテ君の顔を見ると、さっきまでの余裕はもう見られなかった。
ただただ、快感を得ているようだ。
「ふふ……」
パイズリの速度を上げようとも、しっかりと二つの乳房を寄せて、締め付ける。
そのせいで、乳房は淫猥に歪み、まるで肉棒を扱くためだけの性器になってしまったかのよう。
じゅ! ぶじゅ! ぬじゅ!
泡立った唾液とカウパーの粘液が肉棒をコーティングし、テカテカと光る。
「あ……そろそろ、ヒナギクさん……!」
「出して……!」
一段と肉棒が脈打つのが分かった瞬間、目の前で何かが飛び散った。
「あ……ああっ!」
白濁した粘液が顔、胸へと次々襲いかかってくる。
ビクビクと、その砲台は精液を吐き続け、止まることを知らない。
「ん……」
熱い。
でも、とても濃いハヤテ君の匂いに、少しくらくらする。
「す、すいません!」
やっと射精が終わると、ハヤテ君は体を起こし、何の躊躇いもなく土下座をした。
ちなみに、下の方はそのままで。
「いいのよ」
顔に付着した精液を指ですくい、にちゃにちゃと指で弄ぶ。
初めて見る精液はとても私の心を揺るがした。
「そのかわり……続きを……して?」
自分でも、驚いたくらい甘い声が出た。
ハヤテ君は静かに、頷いた。
「あの、ヒナギクさん? ひとつ、いいですか?」
あっさりと空間的上下関係は反転して、ハヤテ君は私を覆うようにしている。
「ええ。どうかしたの?」
私は平然とした振りをしているけど、これはこれでドキドキするわ。
あんなことして、今さらだけど……、
私は男の子とそういうことをしたことがないし……。
「これは夢ですよね。だから、中で出してもいいんでしょうか?」
「そ、そんなことをする前に聞かないでよ!?」
中だし……、それの意味くらいは知識を手に入れる前からでも理解できるわ。
精子を子宮に注いで、受精させる。
そして、こどもを……。
ハヤテ君との、こどもを……。
う、う〜!
「あ、あの、ヒナギクさん? 顔がすごい赤くなって……」
ぽーっと脳が茹ってしまっていた。
「……もぉ」
「ヒナギク、さん?」
もう、後には引けないのよね。
だったら、せめてハヤテ君に気持ち良くなってほしい。
「……早く、しなさい」
「え?」
「女の子を待たせる気? それともこういうプレイが好みなのかしら、ハヤテ君は」
わざと、強くあたる。
「それじゃあ――」
ハヤテ君の大きなものが私の入り口にあてがわれる。
「いきますよ」
ぐ、とハヤテ君が腰を押し進めていく、
ぬちゅ……ぬぬ――
だんだんと私の中へと入ってくる、熱く、硬いもの。
ずりゅん!
「っ!!」
今までに味わったことのない痛みが一瞬体を走ったものの、その痛みはすぐに消えた。
今のが、破れたってことなのよね……。
思ったより、たいした――
「では、動きますね」
「え? ちょ、ちょっと」
ずん、と貫くような感触がした。
つい、声が漏れてしまう。
「ぁふ……」
膣内がジンジンとする……でも、あれ? ちょっと気持ちいい……?
さらに、止まることなくハヤテ君のピストンが私の快感を大きくしていく。
私、初めてなのに……!
「ん……は、ぁ…んん!」
粘膜同士が擦りあう感覚。
表現することなんてできない。
ただ、されるがままで、頭の赤は真白だ。
「んぅっ! う、ぁぁん! …はうっ!」
ぬちゅ、ずちゅ、くちゅ――。
淫猥な水音が響き、自分が想像以上に濡れていることに気付く。
それも、そうよね。
好きな人と、してるんだもの……!
「う、んっ! ぁふぅ! あっ! あくっ!」
「ヒナギクさん、可愛いですね、それにすごく締め付けがよくて、気持ちいいです」
「ひっ――!」
耳元で囁かれるように、言われる。
「ぁぁぁあああっ!」
どうしようもない快楽が爆発する。
どうすることもなく、その快感の奔流に身を任せ、体を痙攣させる。
「ぁ、ぁふぅ……!」
「軽くいっちゃったんですね、ヒナギクさん。でも、まだまだですよ」
「ふぇ?」
グチュ! ヌチュ! ヌブ!
「ぅっくぅぅ!」
最奥を突くようなピストンが私に襲い掛かってくる。
「どんどんいきますよ!」
完全に子宮口の場所を理解しての突きは、脳神経を焼き切ってしまいそうなほどの悦楽を与えてくれる。
「あっあっ、…うんっ…ひっ、ふっ、はぁんっ!」
今の私を誰かが見て、さっきまで処女だったなんて、誰が信じるだろう。
今の私は誰が見たって、セックスに溺れた女だ。
「ぁぁんっ! あふ! はっ! んんう!」
涎をたらし、情けなく喘いでる。
誰にも見せられない痴態。
「んぅっ! ぁ! はふぅ! んく!」
「ヒナギクさん、ぼ、僕もう――!」
ハヤテ君の腰の速度が今までの中で最速となる。
それに、ビクビクとすでに痙攣を始めていた。
「いいわ……きなさい――! ん、んふぅ!」
ドピュッ!! ビュル! ドクッ!
熱いなにかが私の中で弾ける。
「ぁ、ぁぁぁっ!」
何もかもが溶けてしまいそう――!
ぎゅぅ、とハヤテ君が私を抱き寄せる。
とくとく、とハヤテ君は未だに私の中に精液を注いでいた。
「すき……」
「……ありがとうございます、ヒナギクさん――」
ちゅっ。
最後にキスをして、ハヤテ君にとっての夢は終わりを迎えた。
生徒会室で一人、私は呟いた。
「なんで夢なんかにしちゃったのかしら……」
後悔が止まらない。
既成事実ってわけじゃないけど、なかったことになるってのは、いい気分はしない。
しっかり処女は貰われたのだし。
しっかり種付けされたのだし。
「……もぉ!」
でも、もうどうにもならないのよ。
「仕方ないのよ、ね」
「そんなことはない」
「わぁっ! い、いきなり現れないでよ!」
いつの間にか生徒会室のソファに神父が座り込んでいた。
「君には黙っていたのだが、実は――」
「勇気を与えるってのは嘘って話かしら?」
平然と言ってみる。
正直、最初から気づいてたもの。
「……そうか。『君は最初から彼に近寄る勇気を持っていたのだ。だから、あとはきっかけだった。だから、後悔することはない。これから、君はその勇気でまた、彼にアプローチすればいい』と言うつもりだったのだが」
「そんな陳腐な物語、今どき通じないわよ。でも、あなたには感謝してるわ」
「……。ならば、私はもう去ろう。オチをつけれなかったしな」
オチって何なのよ、と言う前に、神父は消え去っていた。
早いわ。
その刹那、エレベーターが動き出し、誰かが上ってきた。
「ヒナギクさん、手紙を持ってきました。下で、先生に頼まれまして」
……目を合わすのが辛い。
でも、ハヤテ君にとっては夢だったのだから、毅然とした態度でいなきゃ……。
「ありがとう、ハヤテ君」
手紙を受け取り、差出人を確認して机に置いておく。
「そういえば、昨日。ヒナギクさんの夢を見たんですよ」
「――え?」
そ、それは!
今ここでそんな話を――!?
「その時のヒナギクさん、すっごく可愛かったので、いい夢でした」
「あ……ええ、ありがとう」
私はハヤテ君に背を向けて、堂々とした態度で礼を言った。
背を向けた理由はもちろん、
その、真っ赤になってしまった頬を――隠すためだ。
end