ハヤテのごとく! IF 【カサブランカは誰(だ)が為に咲く】  
 
 
 
様々な人々が色々と考えさせられた試験期間もなんとか終焉を迎え、滞りのない生活の兆しを見せ始めていた放課後。  
白皇学院の敷地内にある時計塔の最上階。 そこに居を構える生徒会室を訪れる人影が一つあった。  
 
その人影は女生徒で、扉の前で襟を正したりしている。 そして彼女はすぅと右手を掲げ――  
 
ゴッ、――ゴンゴン  
「――――」  
厳格なノックの音に返されるはずの返事は無く、ただ静寂だけがその返答となった。  
空間に佇んでいるその手は空しく、また侘しさをも携えつつあった。  
 
「んっもう…ヒナったら手伝えって言っておいてコレなんだから……」  
重厚な扉を目前にしてひとりごつ。 花菱美希はそれだけでもう腐りきっていた。  
彼女を呼んだらしい相手はどうやら不在。 それならば、と美希は勝手知ったる生徒会室とばかりに扉に手を掛けた。  
 
キィ…  
さしたる抵抗も感じさせずに扉は開く。 そしてそのまま両手で一気に押し開けた。 部屋からは籠った空気が流れ込んでくる。  
停滞している気配を肌で実感しながらも、やはりこの部屋の主は不在なんだという事実が、より一層彼女を腐らせていった。  
 
「――さて…どうするか……」  
コツコツと室内に響く靴音だけが妙に大きく聞こえて美希は思わず歩みを止めた。 質の良い木製の机を眼前に捉えて思慕する。  
そっと手をつき瞼を閉じれば、脳裏に浮かび上がってくるのは若年にして生徒会長、現学院の最優等生――桂ヒナギクの姿であった。  
 
「ヒナは…どう思ってるんだろう……」  
つつ、と指で机の表面をなぞりながら美希は考える。 『ヒナは綾崎ハヤテに恋をしている』 これはもう確定であり事実だ。  
では自分のことはどうなのかと。 おそらく仲の良い友人、もしくは生徒会の一員。 客観的に考えてもここ止まりであろう。  
 
「――――」  
スーッと流れていく指先が机の縁を渡り、鋭角ながらも少し丸みを帯びた角へと辿り着く。 目線の先には卓上のステーショナリー。  
美希の胸中には様々な想いが去来して、その感情で埋め尽くされる。 憧れ。 尊位。 尊敬。 敬愛。 ――愛情の裏返し。  
入り混じる感情が思わず胸を焦がしていた。 と同時に苛立ちや不安などがむくむくと表れて心に翳りをも示す。  
だが、たとえ負の感情が頭を過ぎったとしても、ヒナギクに対する思慕はより燃え上がることになるのも彼女は知っていた。  
美希は両手を胸に置き、ほぅと溜息をついた。 その瞳はどことなく潤いを蓄えているようにも見える。  
ふと目に止まった一本のペンを手にし、じぃと見つめる姿がどことなくぼんやりと儚げで、見る者を魅了する佇まいを彷彿させる。  
 
彼女はただ想いを募らせていた。 そして昂る気持ちを抑えきれなくなったのか、美希はそっと身体を机に寄せていった。  
 
ピッ  
「コレで…よし、と――」  
美希はポケットからリモコンを取り出すとこの部屋にも仕掛けておいたビデオカメラを操作し、その活動を沈黙させた。  
作業を終えた彼女は机の上に両手をついてスィッと腰を落とし始める。 その表情は微熱を帯びて薄く赤く染まっている。  
窓側を眺める形の姿勢そのままでゆっくりと机の角へと身体を傾けていく美希は、自らの股間をあてがい重力に身を任せていった。  
 
「んっ……」  
微かに漏れる吐息。 美希の大事な部分に掛かる圧力が全身を通り抜けて自然と口から零れてきていた。  
(こんな所で…んんっ…我慢できなくなるなんて…私は欲求不満なの……か?)  
頭では理解を示そうと必死になって理性を促すが身体は欲求に自由を奪われている。  
次第に前傾を取りつつある美希の身体がそれを物語っていた。  
 
「ふ、ふぁっ…あっ、んんっ……ぁっ……」  
制服のスカートの上からむにゅむにゅと股間を角に押し付けて、美希は貪欲に快楽を貪ろうとしていた。  
その圧迫が恥丘を押し上げ、膣口を刺激し、子宮にまでも届こうとしている。 なおも腰の圧力は止まる所を知らない。  
ググッググッと押し当てられていく美希の子宮の奥からは、じんわりとした熱が漂い始めてきていた。  
 
「はぁっ、はぁっ…っうぅっ…あ……あぁ…ヒ、ナ……」  
先ほどから手にしていたペンが美希の視界に入る。 ぼうっとした表情で力なく見つめている。  
そのペン自体がヒナギクであるかのような眼差しで、ぼんやりとした視線を注いでいた。  
そして股間を机の角に押し付けるままの姿勢で美希は緩慢になりつつある動作のなか、そのペンをぺろっと舐め、口に含んでいく。  
 
「はっ、ふぁっ…ちゅ…くちゅ…ちゅぱっ……」  
くちゅくちゅと淫靡な水音が美希の口から聞こえてくる。 だらしなくも口元からは収まりきれなくなった唾液が流れ落ちていく。  
つぅ、と垂れてくる涎も気にしない素振りで、もの足りないといった表情を浮かべつつも美希はペンを口元から離す。  
てらてらと光に反射して輝きを増しているペンを再度じっと見つめる美希。 そして視線を下へとゆっくりと降ろしていった。  
(ダメッ、んぁっ…これ以上続けたら…はぁ…も、もう止まらなくなる……それにもし誰か来たら……ゃんっ)  
美希の思考は行動とは一致せずに、その自らの手をペンを携えて股間へと誘い始める。 もう片方の手は胸に伸びていた。  
自我と無意識の狭間で戯れていたスカートをすぅーっと捲り、そろりと指先を下着に近づけていく。  
(ッ!! ぁっぃ……)  
美希は自分の思うよりも熱くなっている股間に多少の驚愕の顔を表したがすぐにその表情を変えた。  
まるで悪戯好きで善悪の判断もつかずに、これから面白いことが起こりそうとだけ思っているような、期待に満ちた顔。  
その顔に微熱を帯びた頬が混じりあって、より淫靡さを醸しだしている。 結局、美希の誨淫は止まらなかった。  
 
「んくっ!!」  
くちゅり――指先に感じた水気を確認するかのように下着に触れている。 同時に感嘆の声も漏れていた。  
そしてその持っていたままのペンで、自らの股間をなぞり始めた。 すりすりとした軽い衣擦れの音が彼女の耳に届いている。  
唾液によるペンの潤いのせいだけではなく、次第にその音は、ちゅ、くちゅ、という艶かしくも生々しい音に変貌を遂げていった。  
(あっ、やん……なんて…いやらしい…音なの……)  
思うよりも勝手に、手の動きはなおも継続されていた。 やわらかい下着の生地の上から秘裂のスリット沿いにペンが這われていく。  
ちゅくっ、ちゅくっ、と淫らな音を立てて水気を増していく感触に、気持ち悪さで堪え切れなくなった美希は下着の縁に指を掛けた。  
 
「あぁ…脱いじゃった……」  
ずるりと膝上辺りまで下着を引き摺り下ろした美希は、はぁと嘆息するが、すぐにまた頬は上気し、瞳が潤んでいく表情で――耽る。  
胸を触る手のひらがふにゅっとしたやわらかい感触で広がると、その顔つきは愉悦になった。  
また口元はだらしなくもいやらしく、薄く開いたままで、まるで何かをおねだりしているかのよう。  
剥きだしとなった秘裂が外に晒され、ひんやりとした空気がそこをくすぐっていく。 美希はこそばゆくも開放感に囚われていた。  
 
ちゅく…ちゅ、ぢゅくっ……  
「あぁんっ!! あっ、あっ、あっ…ぁはぁっ!!」  
指の腹とペンを横にした状態で、ぐしょぐしょになりつつある秘裂を擦っていく美希。 ぴらぴらとした襞をも絡めて責めていく。  
ぐちゅぐちゅと、より派手な水音を立てている秘裂から、快感だけを貪ろうとして懸命に指を蠢かしていたが、ちらっと視線を繰る。  
求めているものがあった。 私の欲しいものがそこにある。 だから当然、とでも言うような表情で誰もいない机に目を傾ける。  
自己の判断がつかないといった様でふらふらとした足取りのままにスカートを上げ、その裾を口に咥えると彼女の瞳が怪しく煌いた。  
(汚れちゃうけど…あとで掃除すればバレない…よね……)  
快楽を得るのに邪魔だった布切れは今はもう排除されている。 股間をさらけ出している状態で、直にぴとっと角へと押し当てた。  
 
「ふぅぁっ!! ふぁ、ふあ、ふあぁぁぁ……ヒ、ヒナの……ばかぁ……」  
その言葉の意は確かではないが、自分の理想にそぐわぬゆえの逆恨みか、彼女は不満げだ。  
それなのに無機質でひやりとした感触は美希の襞を直接刺激し、膣からは蜜が垂れている。  
身体の反応に驚いたのか彼女はピクンッと身体を震わせて一瞬躊躇したように見えた。  
だが彼女の戸惑いは本当に一瞬で、すぐにまた身体の奥から溢れてくる快感にその身を委ね、行為を重ねていく。  
ずにゅずにゅと美希の秘裂が彼女の身体と共に妖しく揺れている。 時折漏れる喜びの声が揺れる身体と奏で合う。  
小刻みに蠕動を繰り返す指が秘裂をなぞり、襞をまさぐる。 時折つぷ、と膣を伺うペンが新しい快楽を呼び起こしているようだ。  
 
「ひゃっ!! んっ…コレ…ぃぃ……」  
激しさを増していく行為の中で、美希はもう止まれるようには見えなかった。 いつの間にか胸を激しく揉みしだいている。  
制服の上からむにゅむにゅと自分の胸を弄ぶ美希の喘ぎが大気に揺らいでいく。 腰は前後に動き続け、股間を擦る手が円を描く。  
自分の想いを詰め込んだかのような勢いで、ぐりぐりぐりぐり、と執拗に掻き回している。 ぬめりを帯びた音が序列をつけていた。  
 
ちゅくちゅくちゅくちゅく……  
「くぅっ、んぁっ!! か、角とペンの両方で…あ、当たってるぅ……ヒナぁ……  
 も、もっと、私を見て……はぁっ、あんっ、あっ、あぁっ……やぁあああん!!」  
すでに美希は自分の世界、自分とヒナギクだけが登場人物の境地、そんな想いに耽ってい、現実などはまるで意にそぐわぬ志し。  
そのような体感で心ここにあらず、禁断の扉が開きつつあることにも無我。 調律を取るかのように自分を高めている。 ――しかし  
 
無粋な音を伴って、彼女の世界は砕かれた。  
 
――ギィィィ  
「フッ、こんな公然な所で自己愛とは……」  
「はぁっ、はぁっ、はぁ…………ぅぁ!? あ、あ、あぁぁあああ!!」  
驚愕と焦燥、困惑と羞恥、未曾有の窮地。 美希は今しがた行ってきた行為の対価にしてはあまりにも莫大な支出を求められる。  
ほんの少し前までは密室だった部屋の扉が片方だけ開き、背をもたれ閉じている扉に悠然と片足を掛けつつ両腕組みで現われた人物。  
朝風理沙は毅然とした態度で両目を瞑りながら斜に構え、ひしゃげた口元を隠しもせずに美希に言葉を投げかけた。  
 
「らしくもないな。 自分の殻に籠るときはまず周囲の環境を確認することが大前提だぞ」  
「あ? あぁ、そうね……ってぇ!? み、見てたのか!?」  
あぁ、と一言。 まるで独り言のようなトーンで理沙は呟き、颯爽と美希のいる方角へと身体を向き直した。  
そのまま緩みがちな視線を傾けながらゆったりとした動作でカツ、カツ、と距離を詰めていく。 美希は硬直していた。  
 
「ん、一部始終な、それにしても……らしくもない、一言言ってくれればいいではないか」  
そう言い放ち、にじり寄ってくる理沙の口角はほんの少しだが釣りあがっている。 それを捉えた美希はようやく身体を起こした。  
ズザッと半歩、片足だけを後退させて身構える美希に、理沙はお構いなしといった様子でなおも詰め寄る。  
追い詰める側と追い詰められる側、一見して狩る側と狩られる側の想定で二人の距離は歩が至近。  
 
「ちょ、ちょっと…なによ! 近付かないでって……」  
「くくく…なに、せっかくのハプニングなんだ。 あいにくカメラは持っていないがこの目に焼き付けておこうと思ってな」  
にたり、とした笑みを見せつつ美希のすぐ傍に寄ってくる理沙がスッと彼女の肩に触れた。  
ビクッと身体を上下に震わせる美希に構わず、躊躇もせずに背後に回り首に右手を掛け左手で腰を巻き込む。  
ぴったりと隙間もなく密着する二人の身体がゆらゆらと揺れている。 美希は抵抗しているようだが体格の良い理沙には敵わない。  
 
「な、な、何を…するの……」  
「まぁまぁ…っと、こんなこともあろうかと家の賽銭箱からくすねてきた甲斐があったというものだよ」  
意味深な言葉を発する理沙がゴソゴソとポケットから何かを取り出す。 それは可愛らしい色合いをした小型のローターだった。  
『なんでそんなものが』と懸命に抵抗をする美希が問いただす。 理沙は一言『知らん、神の思し召しだろ』などと飄々と言い放つ。  
そしてリモコンのスイッチへ指先の力を込めていく。 それはカチッという音と同時にブゥゥン、という振動音をも引き連れてきた。  
小刻みに振動を続ける桃色の楕円体を理沙は考えもなしに躊躇わず、ただ美希の股間に押し付けた。  
 
「んひゃっ!! や、止めなさいよ、こんな…っあぅっ! 非生産的な…こ……んぁっ!!」  
「何を持って非生産的だと言うのかね? そんなものは自分で生産性を賄えるようになってから言うべき台詞だよ」  
禅問答のような会話がやり取りされる最中でも、理沙はその手の享具を離さないどころかグリグリと美希に擦り付けていく。  
ビリビリとした振動をその手に感じながら、理沙はすでにいやらしい蜜でびちょびちょになっている股間に気を取られていた。  
 
「ほう、なんだかんだ言っても身体は正直なんじゃないのか? んー?」  
「んんっ、ぅはぁっ! んあ、な、何言ってるのよ…お、オヤジ臭い……」  
じゅくりとした秘裂の感触に理沙は思わず感情が昂ぶられていく。 最初はちょっとした悪戯心だったのだろう。  
だが次第に呼吸は荒くなり、顔からは微熱を表す薄い汗が滲んでいた。 ぺろりと赤い舌が口角を嘗め、目を細めている。  
自分の行動によって美希がコントロールされつつある現状に興奮を隠せないでいる様がその表情から読み取れる。  
軽度の異常体験により、行為は徐々に止め処をなくしていく。 興にそそられたつもりだった動作がもう一段階、進められていった。  
 
「まあいいじゃないか…たまさかにはこんなのも面白い」  
「お、面白くなんか……ないッ!! い、いやぁっ!!」  
理沙は首に回していた腕をそのまま下にずらし制服の上から美希の小ぶりな胸をまさぐり、手のひらで弄び始めた。  
そして構えていたローターを携えながら、美希の襞に指を掛けて膣口から奥の秘密の部分に分け入っていこうとしている。  
ググッと捻じ込もうとする理沙と懸命に拒もうともがく美希。 さきほどから変わらず二人の身体は密着したままでいた。  
交わる体温を互いに捉えているのだろうか、徐々に二人の口数が減り動きもゆったりとしたものへと変わっていく。  
やがて美希は抵抗を断念し、理沙の誘惑へと堕ちていくのであった。  
 
(了)  
 

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