肌に触れる、ひんやりした硬い感触で、ハヤテは目を覚ました。  
「……?」  
ひんやりした感触の正体は、打ちっぱなし状態で無機質この上ないコンクリートのせいだった。  
どこまでも硬く、自分の存在さえも否定するかのような触感と、心まで冷たくさせる、湿った匂い。  
その感覚が、いやがおうにも自分が地面にうつ伏せで横たわっている事を知らせてくる。  
向こうにぼんやりと光っている、蛍光灯の灯りが見えた。  
とにかく起き上がろうと、四肢に力を入れた瞬間、まるで地面に吸収されたみたいにその力が抜けた。  
手足の感覚はあるのだが、自分の思い通りに動かせない。  
肩と腰から先に、重いゴムのかたまりがぶら下がっているような感覚である。  
中学生時代、年齢をごまかして薬局でバイトしていた彼には、この症状が薬物の摂取に  
よるものだということがピンと来たものの、わかったところで手足が動くわけではない。  
何度もがんばってはみたが、四つん這いになるのがやっとで、立つことすらできない。  
また、仮に立てたとしても、どこかへ脱出するなど不可能だった。なぜなら彼の首には、  
その白い肌を征服するかのごとく、革の首輪と赤銅色の鎖ががっちりと縛り付けられているからだ。  
「…これ…は……」  
 見たことのない、殺風景な部屋。薬物により動かない身体。その身体を縛り付ける、まがまがしい拘束具。  
どれをとっても普通の人間のやることではない。  
この状況そのものよりも、自分をここまで陥れた人物の悪意に、ハヤテは心底恐怖を覚えるのだった。  
 
 
「んもー、ハヤテ君が携帯持ってないと不便でしょうがないわ」  
「はは・・・・・・すみません」  
 つい5時間ほど前。生徒会室のデスクに座り、ぷうとすねてみせるヒナギクと、  
すまなさそうな顔で愛想笑いを浮かべるハヤテ。  
ナギに買ってもらった携帯は、いつも胸の内  
ポケットに入っているが、仕事以外には使わないと決めている。  
ヒナギクには番号を教えていない。  
「でも、いいわ。そのおかげで、こうしてハヤテ君の顔を見て話すことが出来るから、ね」  
世界中で唯一人、ハヤテだけに見せる笑顔。時計塔の出来事以来、  
二人の仲-----といってもほとんどヒナギクの方から一方的にだが-------  
急速に接近していた。  
ハヤテにしても、彼女はもともと異性としてかなり意識していた存在。  
天然ジゴロ炸裂である。  
「それで、今日の放課後なんだけど・・・・・・」  
  またぞろナギがHIKI-KOMORIり始めた最近は、ヒナギクの  
部活のない日の放課後はほとんどデートの時間である。  
といっても生徒会の仕事をハヤテが手伝うだけのことなのだが、  
ハヤテも執事という職務との二足のわらじを履いている以上、  
どこかへ遊びに出かけたりなどということは、なかなか出来ることではなかった。もっとも、ヒナギク自身はハヤテと一緒に過ごせさえすれば彼女は満足なようで、そんなわがままを言い出したことはないが。  
「3時に来てね。わかった?」  
エレベーターの前までハヤテを見送り、上目づかいで念を押す。  
名残惜しい気持ちを悟られまいと強がっているのが見え見えで、  
思わず抱きしめたい衝動に駆られるのを、やっとのことで押しとどめた。  
「わかっていますよ。じゃあまた、あとで」  
軽く手を振って、ヒナギクと別れる。そこから先、ヒナギクの顔を見た記憶がない。  
 
 気のせいだろうか。手足を動かすこともままならないハヤテの耳に、  
先ほどから足音のようなものが聞こえる。高く響く、  
硬いものに何かが当たる音だ。気のせいでなければ、だんだんそれは近づいてくる。  
速くなっていく自分の心臓の鼓動が、はっきりと聞こえ出した。  
 
3時に生徒会室。ヒナギクは確かにそう言った。  
ハヤテが生徒会室のある時計塔に着いたのは3時ちょっと前。  
頂上まではエレベーターで1分弱。何度も昇っているので覚えているはずだった。  
 
音がさらに近づいてくる。気のせいではない。確かに足音だ。  
誰かがこの部屋に近づいてくる。コツ、コツ、コツ、  
 
昔のアメリカ映画に出てきそうな、ジャバラ式ドアのエレベーター。  
ゴウンゴウンと凄い音を立てて上昇していく。  
早くヒナギクに会いたくないといえば嘘になる。  
最上階まで、旧式ならではののろさが恨めしかった。  
 
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、  
コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、  
 
チーンというベルの音。ナギの屋敷で生活するようになり、  
ヒナギクという存在も出来て、ハヤテの野性は牙を鈍らせていたのかもしれない。  
その存在に気づくのが一瞬遅れた。出口の死角から飛び出してきた黒い影の奥、  
世界が塗りつぶされる前に確かに見たあの顔は  
 
「ハ〜ヤ太君☆」  
場違いに脳天気な瀬川泉の声が、殺風景な部屋に響き渡った。  
 
「瀬…川……さん」  
 薬物のためか恐怖のためか、喉が引きつって声が出ない。  
ハヤテをここまで陥れた張本人が今、ここに姿を現している。  
白皇学院の制服を身にまとい、短めのボブカットに、トレードマークの丸い髪飾り。  
元気印の笑顔もいつものままだ。こんな状況下に無ければ、  
気軽に挨拶の一つも交わしているであろうほど、いつもの瀬川泉であった。  
「おや、お目覚めかな?」  
 相変わらずの笑顔のまま、一歩一歩、ハヤテの元へ近づいてくる。  
  「やだなー、そんなに震えないでよ。怖いことなんかしないから」  
  「ここはどこですか?僕をどうするつもりなんです?何が目的なんですか!」  
 「えー、そんなにいっぺんに聞かれても、答えられないよー」  
 壁にもたれかかっているハヤテの真正面に、ひざを抱えて腰を下ろす泉。  
ハヤテの瞳の奥をじっと覗き込んで来た。間近で見ると、泉も綺麗な顔立ちをしている。  
こんな状況にもかかわらず、思わず赤面してしまう。ハヤテのそんな反応を見て、にっこりと微笑む泉。  
「ここは長野の、私のおじいちゃんの別荘の地下室だよ。今はもう誰も使ってないから、  
ハヤテ君を監禁しておくのにはちょうどいいかなって思って」  
「長……いやいや前提が間違ってますって!監禁とか犯罪じゃないですか!」  
「関係ないよ」  
 泉の顔から笑いが消える。ハヤテが初めて眼にする表情だった。  
「そんなの……関係ないよ。だってこのままじゃ……ハヤテ君はヒナちゃんのものになっちゃうじゃん。  
私がまともに行ったらヒナちゃんに勝てるはずないもん。だから……だからこうするしかなかったんだよ。  
こうでも…監禁でもしなきゃ私のことなんか見てくれないと思ったから……  
いろんな意味でやっちゃいけないことだって判ってるよ。ハヤテ君に軽蔑されちゃうなって事も。  
だけど、何にもしなきゃチャンスなんて来るはずないから!…来るはずないから……」  
「瀬川さん……」  
頭をハンマーで殴られたような衝撃だった。泉の想いの深さ。  
この歳で自ら犯罪まがいの行為に及んでしまうということがどういうことか、  
ハヤテ自身、身をもって知っているだけに、  
こんなにまで彼女を追い込んでしまった自分の鈍感さが情けなかった。  
自分はたまたま失敗したから道を踏み外さないで済んだだけのことだ。  
一歩間違えば、もっと幼い女の子を、自分の手で恐怖に突き落としていたことになる。  
そう思うと、こんな目にあわされたとはいえ、泉を一方的に責める気にはどうしてもなれないハヤテだった。  
「瀬川さん……僕はその……何て言ったらいいか……」  
 自分が首輪でつながれていることも忘れて、  
動かすことすらままならない手を泉の肩に差し伸べようとする。瞬間、  
「あはははは!」  
けたたましい笑い声をあげて、泉がおかしそうに転げまわる。  
「え?あの……えええ?」  
「ビックリした?本気だと思ったでしょ?もー、ハヤテ君ったら全部真に受けちゃうんだもん。  
可愛いよねー☆」  
ふたたび脳天気な笑い声が、室内にこだまする。  
泉の演技にだまされたと気づくのに、かなりの時間を要した。  
「せ、瀬川さん……っ!」  
怒りと羞恥で、ハヤテの顔が赤く染まっていく。  
「にはは、ごめーん。ハヤテ君があんまり可愛かったから、つい……さぁ」  
 罪悪感からか、ようやくハヤテをとりなす泉。  
よっぽどおかしかったと見えて、指で目尻をぬぐう。ただ、その時間が不自然に長かったことに、ハヤテは気づいたかどうか。  
 
「そんなにヘコまないでよ、いっぱい愛してあげるから……ね!」  
 何だ、と思う間もなくハヤテの唇にかぶさったやわらかで温かい蓋。  
目の前には、うっとりと瞳を閉じた泉の顔。  
キス。キスしている。  
 その単語だけが頭の中でリフレインする。思考が完全に停止し、  
それ以外考えられなくなってしまう。ただ、  
お互いの唇を押し付けあっているだけなのに、頭の中がミルクに溶かしたように乳白色に染まっていく。  
 「んん……んふっ……はやて…くぅんっ」  
 だらしなく開いたハヤテの唇を割って、泉の舌が侵入してくる。  
同時に、熱い液体が直に喉の奥へと流し込まれる。  
まるで雛鳥が親鳥からえさをもらうように、  
泉の唾液を何のためらいもなく飲み込むハヤテ。  
手足が動かないとはいえ、完全に無抵抗の状態であった。  
 「くはぁ……」  
存分に口腔粘膜をからませあって、  
唇を離すと、二人の唇の間に、どちらのものともつかない唾液が、糸を引いて垂れた。  
 
瀬川さんとキスしてしまった……  
 泉とのキスの圧倒的な快感と衝撃に、完全に放心状態のハヤテ。  
泉が何か言っているが、ハヤテの耳には入っていない。  
 それをいいことに、ネクタイをはずし、ベルトをゆるめて、ハヤテの着ている服を脱がせていく泉。ハヤテがやっと気がついたのは、体を覆う最後の一枚に手をかけられた時だ。  
「…………ってわあぁーー!何してんですか瀬川さん!」  
 すんでのところで我に返り、これだけはと死守するハヤテ。  
衝撃で青ざめていた顔が、たちまち真っ赤に染まる。  
「何だぁー、気づいちゃったか〜。男の子の服って複雑だから時間かかっちゃったよ」  
「そ、そういう問題じゃ……」  
いままで無抵抗だったことに気づき、ますます赤くなるハヤテ。  
ぷしゅうううという効果音が聞こえてきそうである。  
「……脱ぐの恥ずかしい?」  
 上目遣いでハヤテを見つめてのお願い。  
あまりの可愛さについ「そんなことないですよ」と言ってしまいそうになる。  
「当たり前でしょ!だいいち僕を裸にしてどうしようと------」  
 その言葉が終わらないうちに、  
「じゃあ、私も脱げば恥ずかしくないよね?」  
「え……-」  
 二の句をつぐ間もなく、泉はすっと立ち上がると、  
リボンをするするとほどき、制服を脱いでいく。  
 白いブラジャーのひもが見えたところで、  
われに返り目をぎゅっと閉じて下を向くハヤテ。  
16歳にしてはウブ過ぎる反応である。  
「だ・め」  
   
ハヤテがこちらを見ないようにしているのに気づくと、ハヤテの頬を両手ではさんで自分の方に向けさせる。  
「私もハヤテ君の脱ぐところ見たんだから、ハヤテ君も私の脱ぐところ見なきゃだめだよ」  
 そうじゃなくて---------とツッコもうとして思わず目を開けてしまったハヤテ。  
そのまま目が閉じられなくなってしまう。  
 白いコットンのブラジャーとパンティに包まれた、初めて見る泉の肢体がそこにあった。  
 ちょっと力を入れて抱きしめたら折れてしまいそうに華奢な肩や腕。  
さほど大きいというわけでもないのに、こんなにも存在感を放つ、二つの胸のふくらみ。  
お腹から腰にかけてのラインは、まるで異性の目を魅きつけるために計算されたような、  
やわらかくいやらしい曲線を描いている。  
 一つ一つのパーツが、この身体がすでに「少女」ではなく一人の「女」であることを主張していた。  
 ハヤテの目を十分に意識しながら、いやむしろ見せ付けるように、  
初々しいストリップを続ける泉。ハヤテに勝るとも劣らない白い肌が、ぼんやりとした蛍光灯の光を浴びて、あやしく光っていた。  
 「私も……脱いだよ。だから、ハヤテ君も……」  
 酔ったような表情で、一歩一歩、ハヤテのほうへ近づいてくる泉。立てないハヤテのちょうど眼の辺りに、女性の最後の部分が迫ってくる。見るな見るなといくら強く言い聞かせても、自然に眼が吸い寄せられてしまう。  
「そ、そんな格好で……恥ずかしくないんですか!」  
 どぎまぎしているのを悟られまいと、つい声が大きくなる。  
「恥ずかしくないと……思う?」  
 ハヤテの前にひざまずき、その手を握ってくる泉。  
振りほどくことはできなかった。その華奢な手が、  
小刻みに震えていたからだ。  
「せ、瀬川さん……」  
 唾を飲み込むハヤテ。言葉は出てこなかったし、口にする必要もなかった。  
「だから……ハヤテ君も……ね」  
 論理的に考えれば全く一方的な理屈なのだが、  
どうしても抗いがたい迫力が、今の泉にはあった。  
意を決したように自ら最後の一枚に手をかける。  
肉欲のためというより、今の泉の心に答えなければと、ハヤテの優しさが自然にさせた行動だった。  
「…………っ」  
 ついに生まれたままの姿になったハヤテ。泉の真摯さに打たれても、  
自らの意思で行ったことであっても、羞恥を感じることに変わりはない。  
雪のように白い肌を真っ赤に紅潮させて、全てをさらしてくれた彼女の前に、全てをさらす。  
首にかけられた、ものものしい首輪が、より存在感を増している。  
「……私、怖い?」  
 床に手をついて、泉が眼をのぞき込んでくる。  
心の奥まで見透かされるような、純粋な感情のこもった眼差しに思わず視線をそらしてしまう。  
「……そうだよね、おかしいよね。冗談でも、こんなところにいきなり閉じ込めたりしちゃってさ……」  
「あ、いや……」  
「……これなら、怖くない?」  
 見る間に、どこからかハヤテの首についているのと同じ、  
黒い首輪を取り出す。あ、と思うより早く、反対側の壁の金具に鎖をつないでしまう。  
「…………えへへ。これで、同じだね☆」  
 奇妙な構図だった。広さ5平方メートルほどの狭い室内に、  
お互い壁に鎖と首輪で拘束された、裸の少年と少女。  
鎖の長さは、壁同士のちょうど半分程--------そう、お互いがやっと抱き合えるくらいの距離-------  
 
「ああ、この顔、この肌、この温もり……ずっと、ずっと……」  
体温が感じられるほど間近にある、泉の裸体。艶っぽく濡れた、  
呆けたような眼差しで、じっとハヤテの眼の奥を見つめてくる。  
その眼差しに呼び起こされたかのように、急に湧き起こった強い衝動で、  
ハヤテの理性が内側から破壊されていく。  
「さっきの……つづき……しよ」  
 その呪文を唱え終わった後には、もう唾液の交換が始まっていた。  
今度はためらうことなく、泉の裸体を強く抱き寄せるハヤテ。  
二人の唇は一度離れまた重なり合い、舌と舌とを絡ませあう。  
じっとり濡れた泉の舌は、いつまで味わっても飽きそうになかった。  
舌先を突き出した泉が、その舌先をハヤテの唇から顎へ、  
そして首輪に縛られた首筋へ移動させる。  
愛しい彼の一部を自分の身体に取り込もうとするかのように、  
夢中で白い肌の上をなぞり続けた。  
「瀬川さん、そ……そこは……」  
細い指先がハヤテの太ももへと伸びた。  
メスの意志か本能か、ハヤテの眼を見つめる熱い視線は外さないまま、  
的確にオスの快感腺をなぞっていく。  
「あ……うっ!」  
女の子のような声を上げて、無意識に快感を訴えるハヤテ。  
未だ誰の指先をも許したことのない、一番敏感な部分に、泉の手が触れた。  
「ハヤテ君のここ……すごく……熱くなってる」  
 熱っぽい声で、泉が囁く。  
「あ、くぅっ……駄目です……そこは……」  
「これが……男の子の……ハヤテ君の……おちんちん」  
 初めて眼にするペニスに、その眼差しが溶ける。  
予想したよりもずっと大きく、熱かった。  
女の子よりも女の子みたいな顔で体つきのハヤテが、  
その下にこんな「生き物」を飼っていることが、意外に感じられる。  
その事実を知っているのはナギでもヒナギクでもなく、  
自分だけなのだと思うと、妖しい悦びの感情が湧き上がるのを抑え切れなかった。  
「そんなに……見ないで……恥かしいから……」  
本当に女の子がベッドの中で言うような台詞だが、ハヤテの口から出てくると違和感がない。朱に染まった肌と、ピンク色の先端部分が描いた卑猥なコントラストを、泉は飽きることなく見つめていた。  
 
そういう行為があることは知っていた。それをすると男の人が悦ぶことも。  
でも股間にぶら下がっているものを口にふくむなんて、いくらなんでも不潔な気がして仕方がなかった。  
だから今こうして、ハヤテの男を口で愛している自分が不思議だった。強制されたわけでもなく、  
自ら進んで。  
愛情と欲情に潤んだ瞳をペニスに絡めながら、その美貌を、ゆっくりとハヤテの股間に沈めていく。  
 膨らんだ先端にそっと柔らかな唇を重ね、  
そのままゆっくりと野太いそれを呑みこんでいく。  
生温かい口腔で包み込み、その下でエラの部分を刺激すると、  
ハヤテが喘ぎ声を漏らす。  
「あっ、そこは……っ!」  
「うんっ……あむ………好き」  
 もっとハヤテに悦んでもらいたくて、泉は執拗に愛し続ける。  
袋の後ろを爪の先でくすぐりながら、裏筋に何度も舌を往復させ、  
そのまま先端をためらいなく咥えこむと、尿道口の中まで舌を差し入れる。  
自分でも驚くほどの的確さだった。  
「だ……だめです、そんなにされたら、僕もうっ……」  
 快感に身をゆだねることに慣れていないハヤテは、本当に限界になるまで我慢し続けてしまう。  
あ、先っちょが膨らんだ、と口の中で感じる間もなく、  
「ああああああぇう!僕……僕ううぅ!」  
 ハヤテの白いお尻がびくびくと痙攣すると同時に、  
比喩でなく、本当に泉の口の中で何かが爆発した。  
小さな喉の奥へ容赦なく打ち込まれる、熱く煮えたぎった液体。  
瞬く間に気道を圧迫し、ぬらぬらと光る唇の間から、大量のそれが逆流する。  
口を開けると、生臭いにおいが肺の奥まで浸入してくるようだった。  
でも、それが決して不快ではなかった。  
 
「ごめんなさい……出しちゃいました……」  
おねしょを見つかった子供のように、足を開いたまま、  
泣き出しそうな眼でうるうると泉を見つめてくる。  
出されたものを手のひらにすくってみると、  
まるで溶かしたバターのような白くどろりとした液体が、  
手のひらの上で踊っていた。  
「これが……ハヤテ君の……せいえき……ねばねばして……熱い……」  
自分の排泄物をまじまじと見つめられるのが、  
ハヤテ自身の羞恥心をさらに煽るらしく、もはや泉の顔すらまともに見れていない。  
そんなハヤテとは対照的に、生まれてはじめて目にする精液に、心奪われる泉。  
「……この、おちんちんから出るねばねばを、私のあそこの中に入れれば、  
ハヤテ君の赤ちゃんができるんだね……?」  
泉の両眼がキュピーンと光る音を聞き、ハヤテはあわててのけぞった。  
「……いやいや!瀬川さん、何を怖いことを……」  
「にゃ〜?ここはそう思ってないみたいだけど?」  
「はうぅ!……そこはっ……」  
 もはや手馴れた手つきで、素早くハヤテの股間に手を伸ばす。  
一度快感を味わってしまったペニスは、ハヤテの意志とは無関係に、  
もっと気持ちよくなりたいと悲鳴を上げている。  
先端の血管が切れそうなほど充血し、ちょっと先端に触れただけで、  
何かを急かすようにどくどくと脈打っているそれを、泉はやさしく包み込んだ。  
 
「じゃあそろそろ……メインイベント、いってみる?」  
 壁にもたれたハヤテの鎖骨に手がかけられた。  
泉の笑顔は、すでにいつもの「いいんちょさん」ではない。  
立てないハヤテのうつろな眼を見つめながら、  
甘えるように自らを串刺しにさせようとする。  
「せ、瀬川さん、駄目です……ん!……む……」  
この期に及んでまだ抵抗の言葉を吐こうとする口を、  
ぽってりとした舌で強引にふさぐ。  
熱い鉄のようにたぎっているペニスの先端を、  
それ以上に熱くなっている、女の子の一番大事な部分にあてがった。  
「ハヤテ君、駄目だよ、初めてのときは男の子がリードしてくれないと」  
「え?それじゃ瀬川さん……まさか……」  
「泉って呼んで。今だけでも、私がハヤテ君の女だって、思い知らせて」  
そのとき、どういう思いがハヤテの中を駆け巡ったのかわからない。  
ただ次の刹那、身体がぎゅっと強く抱きしめられた。  
「…………っ!」  
 身体の中心を駆け抜ける、鋭い痛み。ハヤテの「おちんちん」が、  
泉の「あそこの中」へと侵入を果たす。生涯に一度、  
たった一人にしかささげられないプレゼントを、あ  
れほどひそかに恋した男の子に受け取ってもらえた幸せのしるしだった。  
不意に、泉の身体が中に浮く。形のいい胸乳が、ハヤテの胸の少し下辺りで押しつぶれる。  
「あッ!はぁンっ!…」  
泉の処女膜を引き裂いた凶器が、その本性を存分に発揮し始めた。  
泉の身体の中心に自らの色を注ぎ込もうと、ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅという粘着音とともに、  
速射砲のように泉の肉体を突き刺してくる。  
その動きを歓迎するかのように、貫通されたばかりの二枚のビラは、  
もっと私を奪ってとばかり、嬉々として侵略者に汚されていく。  
「いいんっ……好き……好き……」  
 ハヤテの侵入によって目覚めさせられた女の性が、  
力強くたくましい存在に征服されることへの快感。  
まさに獣のように、互いに性器をこすり付けあうことのみで、愛を感じている。  
「あン」  
 泉の処女を十分に蹂躙したあと、いきなり女穴からペニスを抜き出し、  
軽々と泉の身体を抱え上げるハヤテ。  
強引に泉に四つん這いの体制をとらせると、  
ものもいわずに、まだ破瓜の証が癒えない肉穴へと突き立てる。  
「ああんっ……ハヤテ君っ……」  
 処女喪失のことなど微塵も考えず、  
ただ自分というメスの存在のみを追い求めているかのような性交。  
なのに泉は、腰を誘い入れるように震わせ、  
あまつさえハヤテの熱い肉体をもっと感じたくて、  
はしたない媚声をあげ、尻を捧げて、もっと激しい責めをせがんでしまう。  
 瞬間、ハヤテの指が泉の尻をぐいと引き寄せた。  
後ろからの責めが小刻みなものになる。  
さっき目の当たりにした、ハヤテの精液が頭をよぎる。  
 中に出されたら、赤ちゃんができちゃう。  
 いまハヤテとしているのは、紛れもない子作りだ。  
ハヤテに捧げた白い尻が、強く握り締められた。  
「ううっ……泉っ!」  
 全身が炎に包まれたように熱くなる。  
「ああああああっ、!!!」  
 ハヤテのペニスの先端から、純度100%に近い精液が、泉の一番奥にどくりどくりと放出される。  
 愛するハヤテの遺伝子をたっぷり注ぎ込まれた泉の女性器は、  
恥ずかしそうに、しかしちょっぴりうれしそうに、ひくひくと収縮を繰り返していた。  
 
「……すいません、その、中途半端なことしたら、瀬川さんを傷つけてしまうと思ったから……」  
「……にしてもさあ……ハヤテ君……」  
「……やり過ぎました」  
「なんだかもの足りないよ〜」  
「ええ--------?」  
「ここを見つけるの……ハヤテ君のご主人様が先か、  
虎鉄君が先かわからないけど……それともヒナちゃんかな?」  
「そ……それは……」  
「ま、私もつながれちゃってるから、どっちにしろこの姿で発見されるんだけどね☆」  
目をつむったハヤテは、ひんやりした硬い感触が肌に触れた。  
 

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