「(うぅ…雛祭りで浮かれてたけど勉強しないと期末があぶない、でもマリアさんも忙しいし…)」
楽しい祭りも終わり、次は苦しい期末テスト。
雛祭りでのゴタゴタもあってかすっかり忘れていたハヤテに迫るものは危機感だった。
「(…最近優しい感じするし…ヒナギクさんにでも頼もうかな…)」
そう考え僕は生徒会室に足を進めるのでした…
カツ カツ
エレベーターは使ってはいけないと言われてるので階段で生徒会室に行く事にした。
「ふぅ………」
昇りきったところで少しため息をついた、
そして視線の先にはなぜか少し顔の赤いヒナギクが椅子に座っている。
「あ、えっと…ヒナギクさん、いきなりなんですが一つ頼みごとを聞いてくれませんか?」
場の妙な空気をごまかすようにハヤテが口を開いた。
ヒナギクから返答が返ってこない、
何か怒らせてしまったのかと不安になるハヤテ。
少し近寄ろうと歩を進めた瞬間ヒナギクが椅子から立ってハヤテの胸に飛び込んできた。
「…っ、ヒ、ヒナギクさん…!?」
ハヤテの顔は真っ赤だ、しかしヒナギクの方もそれ以上に顔が赤くなっている。
少ししてハヤテはある事に気付いた。
「(…泣いてる?)」
ハヤテの胸で誰にも弱さを見せた事のないヒナギクが泣いていた。
「ヒナギクさん……なんで泣いてるんですか…?」
聞いてはいけない気がした、だけど今自分の胸で泣いてるこの少女を放っておくのはもっといけない気がした。
「…ハ、ハヤテ君…お義母さんに酷いこと言った時…どうすればいいの…?」
涙交じりの声でヒナギクが問いかけてくる、
しかしハヤテに答えを出す事はできない。
「…なにが、あったのか…教えて頂けません?」
「…最近、いつもお義母さんがハヤテ君の話をしてて、その時にお義母さんが
『ヒナちゃんと綾崎君の子供だったらかわいいでしょうね』
それを聞いたとき私…お義母さんに…『本当の親じゃないのにそんなこと』って…」
ハヤテには母からの愛情も、優しい義母もいない、
しかしヒナギクが悲しんでる理由は痛いほどわかった。
「そんなにヒナギクさんの事を思ってるお義母さんなら…
なにも怒って無いと思いますよ…?ヒナギクさんが怒ってしまった原因になった僕が言うのもなんですけど」
ハヤテは少し笑って自分の答えを伝える。
「…違うの!ハヤテ君の事が好きだから、ムキになって怒っちゃって…感情が高ぶって…」
その言葉を聴いたハヤテの顔がさきほどのヒナギクより紅潮する。
「ぼ、僕の事が……ですか?」
ハヤテがおそるおそる確認する。
ヒナギクが小さく頷く、そして涙で濡れた顔を上げる。
ヒナギクは目を瞑っている、そして二人の顔の影が近づいていく。
二人の顔の距離が0になる。
カチッ
歯がぶつかり合う音がした、そんなことも気にせず二人は唇を離さない。
「ふはぁ…はぁ……はぁ……………」
先に唇を離したのはハヤテだった、緊張のせいかイキが続かない。
目の前ではヒナギクがおねだりの目こっちを見つめている。
ピシッ
ハヤテの中のなにかにヒビがはいった。
ガバァ
ヒナギクを強引に抱き寄せる、ハヤテの行動に驚くヒナギク。
「ん…、あんぅ…んあ…んゅ!?」
唇を強引に奪われ口の中に舌が侵入してくる、それを拒みはしない。
「プハァ……」
二人が話した唇からは唾液の橋がかかっている。
「ハヤテ君…このまま私を好きにして…」
ハヤテは小さく頷きそのままソファに押し倒した。
――――――――――――――――………
横では彼女が寝ている、涙で濡れていた顔が再び涙で濡れてしまった。
また苦しい思いをさせてしまった、
だけどその分だけ彼女を幸せにしよう。
そう心に決めてハヤテは生徒会室を後にした。
数ヵ月後
何度も体を求め合った結果、ヒナギクのお腹は徐々に膨らみ始めていた。
「ハヤテ君、次の日曜日挨拶に来てよ」
いつかは言われるとわかっていたハヤテだったがやっぱりいざとなると焦る。
「はい、わかりました失礼の無いようにします…」
そして当日
ヒナママは持ち前の性格からかまだ二人が若いのにも関わらずいつ結婚するのかまで聞いてきた、
そしてヒナパパは…また出張中だそうだ。
そしてそのまた数ヶ月後
二人の子供が生まれた。薄藍色の髪の毛に目が凛としている女の子だ。
この出産は極めて極秘に行われた、もちろんナギには内緒で…
ハヤテにはまだ問題が山積みになっているそれを全て解決するのは容易ではないだろう
だがもしそれを乗り越えたならば、
どんな日々も二人いや三人で笑いながら過ごせる日々が必ず訪れるだろう… =END=