「アホかお前はああああ!!」
自分でも惚れ惚れするような蹴りを誘拐犯に叩き込みつつ、私は叫んだ。
オランダ? 同姓婚? 何を言っている!
「ハヤテはなぁ!! 心も体も全部私のものなのだ!!! お前なんかに髪の毛一本だってやるものか!! バカタレ!!!」
倒れこむ誘拐犯を最後まで見ることもなく、私は出口へと身体を向ける。
「不愉快だ!! 帰るぞ!! ハヤテ!!」
思わず口走った本音に対する照れ隠しとして、ぶっきらぼうにハヤテへと告げる。
ああ、もう! 本当に不愉快だ!
大体、何で私がこんな目にあわなきゃいけないんだ!
自分でも分かるほどイラつきながら、私はドアへと向かう。
イラつく理由は分かっていた。
誘拐はもう慣れっことはいえ、今回のはいつものソレとは違う。
そう、私が目的じゃない。
誘拐犯の狙いはハヤテ。
それが、余計に私をイラつかせていた。
『ハヤテはなぁ!! 心も体も全部私のものなのだ!!!』
――そう、ハヤテの全ては私のものなんだ。
優しく愛を囁いてくれるその心も。
激しく私を求めてくるその体も。
全て、私のものなんだ。
誰が貴様なんかに渡すか!
「ま、待て……」
ドアノブに手をかけ乱暴に開け放とうとしたその時、私の動きを止める声が聞こえた。
顔だけを動かし、肩越しに声のした方向を伺う。
「今……私のもの、と言ったな」
そこには先ほどの誘拐犯が、片膝を付きながら立ち上がろうとしている所だった。
ほう……私の蹴りを受けて立ち上がるとは。
あまり認めたくは無いが、これも『愛の力』という奴か。
「言ったが……それがどうした?」
「それは……本当なのか?」
その言葉は私に向けられたものではなかった。
男の視線は、私の隣に立つハヤテへと向けられている。
「え、えーと……」
ど、どうしましょう? と私に向かって視線で問いかけてくるハヤテ。
あー、もう、こいつは……
「はっきりと言ってやれ。自分は心も体も私のものだ、とな」
「いや、何かそれって人として駄目な宣言の様な気がするんですが……」
「本当の事だろう?」
「まあ、そうなんですけど……」
まったく……
こういう時にはっきりと言ってくれたら……まあ、ハヤテには無理か。
それがハヤテらしいといえば、ハヤテらしいのだが。
「信じない……信じないぞ……」
男はそう呟きながら、ゆっくりと立ち上がる。
その目にはうっすらと涙が……って、泣くなよ……
「こんなチンチクリンに私の愛が負けるはずが――
「誰がチンチクリンかぁっ!」
――ぐはぁっ!」
あ、思わず足が……
「……まあ、いいか」
「まあ、いいか、って……モロに鳩尾に入ってますけど……」
「気にするな、行くぞ」
「ま、待て……」
地面に這い蹲りながらも、男は私の足首を掴んできた。
……敵ながらいい根性だ。
「ま、まだ私は諦めないぞ……」
「しつこいな……もうハヤテは私のものだと決まっているんだ。潔く諦めろ」
「だったら証拠を見せろ! じゃないと、諦められるかぁ!」
「証拠? ……しょうがない奴だな……ハヤテ、ちょっと来い」
「はい? ……って、お嬢――ムギュゥ」
ハヤテが何かを言う前に、私は無理やりその唇を奪う。
普段の私なら、自分からこういう事はしなかっただろう。
だけど、今はちょっとイラついていた事もあり……ムシャクシャしてやった。だけど後悔は(ry
ま、たまにはこういうのも悪くはないだろう。
いきなりの事に驚き抵抗しようとするハヤテだが、呪いのせいかその力はいつもより弱く、ただ私の胸元をまさぐるだけだ。
私は半開きになっていた唇に舌を割り込ませ、ハヤテの口内へと侵入する。
舌の先で歯の裏、上あご、下あごと、順々に犯して行く。
いつもハヤテにやられている事だ。
やがてハヤテも諦めたのか、自ら舌を絡ませてきた。
甘い唾液を交換し合いながら、お互いの舌を愛おしそうに嘗め回す。
暖かく、柔らかい、ハヤテの舌。それが私の舌へと絡まり、離れ、口内を犯す。
まるで、舌が別の生き物になったかのような激しい動き。
クチュクチュと、淫らな水音が口内から漏れ出し、口の端からは混ざり合った唾液が零れ落ちる。
零れ落ちた唾液が服に染みを作るが、私たちは気にしない。
お互いに夢中になって、口内を貪りあう。
――いつまでそうしていただろうか。
十分にハヤテの口内を堪能した私は、ゆっくりと唇を離した。
まるで名残惜しむかのように、お互いの唇の間にできた唾液の糸が怪しく光る。
ハヤテは羞恥で顔を赤くし、放心状態で荒い息を吐いている。
これも呪いのせいだろうか……思わず可愛いと思ってしまった。
なるほど、ハヤテが執拗にキスを迫ってくる理由がなんとなく分かった気がする。
きっと、私も同じような表情をしていたのだろう。
「……どうだ? これでもまだ諦めきれないか?」
いつの間にか足首を掴んでいた感触は消えていた。
視線を下に向けると、男が涙を流しながら、こちらも放心状態で固まっていた。
いや、だから泣くなよ……
「……っは! い、いや、この程度で諦めるほど私の愛は弱くはない! 大体、キスがどうした! それ位、私にだって出来る!」
「やらないでください!」
貞操の危機を本能で悟ったのか、ハヤテが瞬間的に突っ込みを入れる。
「お、お嬢様もお嬢様です! い、いきなりこんな事……」
「こんな事? お前はもっとひどい事をベッドの上でしているじゃないか」
その台詞に、男二人が固まったのが分かった。
「ふーん、なるほど。ハヤテは自分でも酷い事だって分かっていながら私にあんな事やそんな事をしていたのか」
「ぼ、僕は別に……」
「一昨日もあんなに私の中に出したのに?」
「っ!」
「危ない日だから止めてって言ったのに、ハヤテはまったく気にしないで中に出してたな。
逝ったばかりで敏感になってる私を、休ませる間もなく責め立てて。まだ腰が痛いぞ」
「そ、それは……」
目が泳ぐハヤテ。モジモジするその仕草は、その服装もあいまってかなり破壊力が高い。
そう――苛めたくなるほどに。
私はハヤテに後ろの回りこむと、そっと股間へと手を伸ばした。
「えっ! お、お嬢様!」
「うるさい。ハヤテは黙ってろ……そこの男、見せてやろう。もっと決定的な証拠をな」
すでにハヤテにソレは、ズボン……じゃなかった、スカート越しでも分かるほどに硬く隆起していた。
まあ、あれだけ濃厚なキスをすれば、そうなるのも当たり前だろう。
実際、私のソコもすでにしっとりと濡れているのだから。
湿ったパンツが張り付いて気持ち悪かったが、今はそれ所じゃない。
私はハヤテを焦らす様に、ゆっくりとスカートを脱がせていく。
やがて、衣擦れの音と共にスカートが地面へと落ちた。
華奢な体に、可愛い服。だけど股間からは立派に隆起したペニスがその存在を主張している。
そのギャップにクラクラしながら、私はそっとペニスへと手を伸ばす。
ハヤテは羞恥で赤く染まった顔を俯かせていたが、体は正直だった。
早く触ってくれと言わんばかりに、ヒクヒクとペニスが脈打つ。
「なんだ、ハヤテ? こんな状態でも感じているのか? まるで変態だな」
その言葉に、ハヤテが震えるのが分かった。
ショックを受けたのではない事は、さらに硬く反り返ったペニスを見れば分かる。
ハヤテは――本当に感じているのだ。
「こんな変態を執事に雇うなんて、私もどうかしているな。まったく、こんな汚いものを主人の前に晒して……なあ、変態執事?」
そして私はハヤテのペニスを力任せに両手で握る。
気持ちよくさせようなどとは微塵も思っていない行為だった。
「ひやぁぁあぁぁぁ!」
力任せに握っただけ。
ただそれだけなのに、ハヤテはまるで女の子のように嬌声を上げながら、絶頂へと達した。
ペニスからは勢いよく精液が放たれ、地面を白く汚していく。
……これがいつも私の中に……
予想以上の量の精液に、私は思わずゴクリと唾を飲む。
一昨日、これを何度も注がれた子宮が、キュンと熱を持つ。
パンツの湿り気が増したのは、気のせいじゃないだろう。
「なんだ、この程度でイッたのか? いつもはこんなものじゃないだろう?」
「お、お嬢様……もうやめてください」
「そう言った私に、お前は止めてくれたか?」
「う……」
精液を全て吐き出したハヤテの体から力が抜けた。
ペタリと地面へと座り込むハヤテ。だけどペニスはまだまだ元気に反り返ったままだ。
「まだまだこんなものじゃないだろう? お前が私にした事に比べれば、まだほんの序の口だ」
「……」
ハヤテは何も言わなかった。
ただ、下から私を見上げるだけ。
だけど、私には分かった。
その体から滲み出る苛めてオーラは消えることなく、むしろもっと強くなっている。
そしてその瞳は、期待に満ちた光が宿っていた。
「夜は長いんだ……さあ、もっと見せ付けてやろうじゃないか」
――苛められるのもいいが、たまには苛めるのもいいものだな。
そんな事を思いながら、私はハヤテの前へと回り込んだ。
私を苛める事ができるのは、世界でハヤテだけで――そして、ハヤテを苛める事ができるのは世界で私だけだ。
この心も、体もハヤテのもので……そしてハヤテの心も体も私のものだから――