スー  スー  
 
「寝ちゃってるな……」  
ここは生徒会室、静まりかえった校舎の最上階、  
ヒナ祭り祭りも終わり学校にいるのは二人だけ…  
 
「(………かわいいな…ヒナギクさん…)」  
前にヒナギクの家に止まった際、あらためてキレイだと言う事は気付いていたが、  
寝ている無防備なヒナギクはいつもの数十倍可愛かった。  
 
 
「(……あ、プレゼント持ってきてない…このまま帰ってる間にヒナギクさん帰っちゃったら…)」  
そんな事を考えてるうちに…  
 
「んっ……」  
ヒナギクが目を覚ました。  
 
「え?あ…ヒナギク…さん…」  
「あ、綾崎君…」  
 
二人の間に静寂が包む、それ破ったのはヒナギクの一言だった。  
 
「大分遅くなったけど…あの時の続きしようか…」  
ヒナギクが真剣な表情になってハヤテを見つめる。  
 
「えっ…!?あのっ…続きって…?」  
ハヤテは心当たりがないのであたふたしている。  
 
「今日決闘って言い出したのはあなたよ?綾崎君!!」  
ヒナギクは少し怒った様子でハヤテにつっかかる。  
 
「あ…決闘の話ですか…その話はもう解決したんで…僕は…」  
「解決!?ハヤテ君の方ではしてるかもしれないけど私は一週間以上もやもやして…夢にまであなたが出てくるのよ!」  
ヒナギクはハヤテの軽率な発言に怒りに任せて自分の言いたかったことを言った。  
 
「夢…ですか…?」  
ヒナギクの失言?ともとれる部分をハヤテはポカンとした表情で聞き返す。  
 
「……!!べ、別に綾崎君が好きだからとかそんなんじゃなくて…吊橋の時にいじめられたからくやしくて…」  
ヒナギクの声が小さくなっていく、  
「ヒナギクさん…」  
ハヤテは全ては察知できないが一週間ヒナギクが悩んでいた事は十分理解できた。  
 
 
少しずつヒナギクに近づいていく、ヒナギクの目の前まで来た。  
ヒナギクはハヤテを、緊張・羞恥・期待・恐怖。色んな物が混ざった目で見てくる。  
 
「正直に言います…今日僕はプレゼントを忘れてしまいました。そこで考えたんですが…」  
そう言うとハヤテはヒナギクにさらに近づき、  
 
ギュ  
 
そっと抱き締めた。  
「…は、綾崎君…これがプレゼント?」  
抱き締められたが何故か落ち着いてる自分を不思議に思うヒナギク。  
「いえ、これが準備みたいな物です…僕はヒナギクさんを絶対離しませんからね?」  
ハヤテはそう言うとヒナギクと一緒に窓の方向へ歩き出した。  
「えっ!?ちょ…綾崎君!?…いやっ…ダメっ…」  
ヒナギクの抵抗空しく窓際まで来てしまった、見えるのは絶景の夜景。  
だがヒナギクにしてみれば恐怖の対象でしかない。  
 
「いや〜〜〜〜、あ、綾崎君!!後で酷いわよ!?…だからお願い…離して…」  
ヒナギクはハヤテの胸に顔を埋めてまったく外を見ない。  
 
「大丈夫です…僕は絶対に離しません…だから…」  
ハヤテの言葉を信じヒナギクは少しずつ目を開けた。  
 
「……キレイ…………」  
勇気を振り絞って見た物は確かに見る価値のあるものだった。  
「もう…高い所は大丈夫ですか?」  
そうハヤテは聞いているがヒナギクはハヤテにギュっとすがりついている。  
 
「…ずっと…見たこと無かったなぁ…こんな景色…」  
ヒナギクがそう言葉をもらす、  
「…良かった…喜んで頂いて幸いです」  
ハヤテの顔に笑顔が戻る。  
 
「でも綾崎君…もう誕生日終わってるわよ…」  
時計を見るともう12時を回っている。  
「あ、じゃあ…今年は何も渡せませんでしたね…」  
ハヤテがまた落ち込んだ顔になる。  
 
クスッ  
 
ヒナギクが少し笑ってハヤテの方を見る。  
「じゃあ…これで許してあげる」  
 
チュ  
 
短いが甘い二人のファーストキス、  
「…!!!…え…あの…僕なんかで…」  
「ハヤテ君じゃなきゃダメなの!!二回も私にあんな怖い思いさせたんだから…」  
ヒナギクが少し頬を赤くして言う。  
 
「ヒナギクさん…今、呼びか…」  
ハヤテが言い終わる前に唇はヒナギクの唇で防がれていた。  
 
 
「………ヒナギクさん…」  
「ん、何…?」  
「お誕生日おめでとうございます…」  
「……ありがと」  
 
こうして少女の一日遅れの誕生日は続いていく。    =END=  
 

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