「待遇は三食昼寝付きだ、ハヤテ。」  
「お嬢さま、それは執事以外の何かでは…」  
「おやつも付けるぞ。」  
「まったく、この子ったら…お嫁さんにそんな物言いをしてはいけませんよ。」  
「いやマリアさん。一応僕が旦那なんですけど…」  
 
アウターストーリー in ハヤテのごとく!『HAPPY NEW YEAR』  
 
「あー…まあいいんですけどね、日曜執事ですし、借金を返すわけでもないし…」  
 12月30日、日曜日。ハヤテは久しぶりに執事服でナギの側に立っている。  
「それともうお嬢さまではない。」  
 ナギは満足げに胸を張り、腕を組んで言った。  
「妻を奥さまと呼ぶのも変じゃないですか?」  
「だから名前で呼べってば。」  
「しかし執事が主人をナギナギとか呼ぶのは…」  
「ナギナギいうな!!」  
 
 コンコン  
「あー、奥さま失礼します、ハヤテ君…」  
「あ、姫神さん。」  
「年末年始の事について、確認をしておきたいんです。いいでしょうか?」  
「あー行ってこい、ハヤテ。」  
「では、お嬢さま、すぐ戻りますので。」  
 ハヤテと姫神は一礼して部屋を出た。  
「姫神もクラウスも今日、本宅に出張だよな?」  
 ナギがマリアに確認する。  
「ええ、戻るのは年明けになりますね。留守はハヤテ君や私が引き受けましたから、  
 何かあったら言ってくださいね。」  
「そうか。ということは今年の年越しは三人だけと――」  
「現実から目を背けてはいけませんよ、ナギ?」  
「……いいじゃないか、少しくらい。」  
「ヒナギクさんと歩さんは夕方、伊澄さんと咲夜さんは明日の朝に戻るそうです。」  
「年末年始くらいずっと家族といればよいのに…」  
「ナギの口からこんな家族思いな言葉を聞けるとは…」  
「うるさいな。別に邪険にしてるわけではないが、ここのところ騒がしかったから、  
 三人なら気楽かと思っただけだ。例えば今日は久しぶりにマリアと一緒に寝ようと  
 思ったのだが…」  
「あら。」  
「あいつらがいるのにハヤテを一人寝させるというのも不用心だ。」  
「どちらかというとナギの身の方が危ないと思いますが。私と寝るよりも、  
 ナギはハヤテ君と寝た方が安全ですよ。」  
「まったくだ。そこで今夜はマリアとハヤテと三人で一緒に寝ることにした。」  
 ………………  
「……は?」  
 固まったマリアがようやく聞き返した。  
「だから私が真ん中で、こう川の字になってだな…」  
「いやいや!! 何を考えているんですかナギ!? ハヤテ君を加えるほうがよっぽど  
 問題でしょう!?」  
「心配要らない。夫婦の営みはせずに寝るから…」  
「いえそういう問題ではなく!! 私が男の人と一緒のベッドというのは――」  
「ハヤテが立たなくなるまで絞り取っておくから問題ない。」  
「問題ありまくりです!!」  
「だって今夜はおあずけさせることになるから、どの道、夜までにするつもりだし。  
 そうだな、新婚らしくハヤテと一緒にお風呂に入るか。」  
「だからそういう新婚夫婦と一緒に寝させないでください!!」  
「私の身が危ないのだろ?もともと誰のせいだと…」  
「う゛。」  
「まあ安心しろ。マリアに手を出そうものなら48の殺人技と52のサブミッション、  
 地獄のローラーでハヤテは執事墓場行きだ。」  
 
 パリポリ  
「ナギちゃんはハヤテ君とお風呂中?いいなあ…」  
 歩が煎餅をかじりながら言った。  
「それでマリアさんはここで待機ですか。大変ですね…」  
 ヒナギクがコーヒー牛乳を飲みながら言った。  
「ええ。ハヤテ君が干からびて倒れたら一人では運び出せないから、スタンバイして  
 いてくれと…」  
 マリアが答える。大浴場側のレクリエーションルームにいたマリアは、帰ってきた  
歩とヒナギクをお茶に誘っていた。  
「その今夜の話、ハヤテ君は断らなかったんですか?」  
 ヒナギクが疑問を呈する。  
「結局ナギに甘いんですよ。それにナギが私と寝たくても、自分を一人にすることが  
 できなくて考えた末の事だと匂わせたら、強く拒めないのがハヤテ君ですから。」  
「まあ結婚以来毎日一緒に寝てたから、ハヤテ君も休めてたまにはいいのかな?」  
「歩、ちょっと下世話よ。」  
「今やってては休みの意味がありませんけどね――」  
 ビービービー  
 壁の内線が浴場からの呼び出しを表示して鳴り響いた。マリアが立ち上がって  
受話器を取る。  
「はい、レク室のマリアです。」  
『あ、マリアさん!! お嬢さまがその、ゆ、湯あたりで気分を悪くされまして!!』  
「わかりました。すぐ行きますから、更衣室で休ませてください。」  
『は、はい。お願いします。』  
「それから――」  
『はい。』  
「ちゃんと拭き取っておいてくださいね。」  
『あぅ。』  
 マリアは内線を切って、用意していた荷物を手に取った。  
「まあこんなことだろうとは思いましたが。」  
 歩とヒナギクも立ち上がってマリアの後に続く。  
「四回くらいかな?」  
「三回でも危ないんじゃないかしら。」  
 ………………  
「だって六回もするんだもん…」  
 ナギはマリアの胸に抱きついてぐずっている。  
「…ええとナギ。そんな裸で抱きついてあからさまなことを口走らないで…」  
 マリアは困惑して手を宙に彷徨わせた。  
「ええとすみません…」  
 ハヤテがロッカーの陰から謝る。  
「ナギ、無理しちゃだめでしょ?」  
「自信あったんだ!! だっていつもは二回までだったもん!!」  
 ヒナギクがたしなめたのをきっかけに、ナギがさらに暴露を始める。  
「だけどハヤテがもっと出来るなんて知らなかったから、ハヤテがやれるだけ  
 してあげなくっちゃと思って…!! でもハヤテ何度してもすぐおっきくするし、  
 ハヤテの気持ちいいからついついやめられなくむぐ。」  
「はいはいナギちゃん。マリアさんが困ってるからそれくらいにしましょうね。」  
 歩がナギの口を手で塞いで落ち着かせてから水を与える。  
「ええとすみません…」  
「い、いえ、わ、私は構わないのですけど。」  
 ヒナギクにナギを預け、マリアは赤い顔で答えた。  
 
『わはは、えろえろやなぁナギ?』  
「うるさい!! 夫婦が何をどれだけしようととやかく言われる筋合いはない!!」  
 咲夜から掛かってきた電話を、ナギはベッドの上で受けていた。  
「あのお嬢さま、咲夜さんにとはいえ、あまりそういう夫婦のプライベートは…」  
「うっさい!! だいたいハヤテが二回までのふりをしてたのがいかん!!」  
 ハヤテに八つ当たりするナギに、咲夜の指摘とハヤテの弁明が返る。  
『それは奥さんの魅力が足りんのや。具体的には胸とか胸とか胸とか』  
「ふりではなくて、お嬢さまも僕もそこで満足できてると思ったから…」  
「そんなことはない!!」  
「え、そうだったのですか?」  
「あ、いやこっちの馬鹿サクの話だ。ハヤテもちゃんと満足してると言っている。」  
『やけど六度もいけたんやろ?そらホントはオカズがもっとええなら、  
 もっとせな済まんっちゅうことやないか?』  
「…そんなことはない!! ハヤテ!! 相手が誰でも二回出せれば満足だよな?」  
「人を女の敵みたいに言わないでくださいよ… だいたい僕の経験はお嬢さまだけ  
 なんですから、比較のしようもありません。何回できるかだって、今日ほど  
 したことはないですし。」  
「…そうだな。咲夜、その仮定は無意味だ。なぜなら私がやろうと思えばハヤテの  
 限界の六回まで相手することが…」  
 ナギは口を止めた。  
『ん?ナギ?』  
 振り向いてハヤテに問う。  
「…ハヤテ。念のために聞くが。六回で弾切れだよな?」  
「え、どうでしょう…?多分、まだいけるかも…」  
 ナギは信じられないものを見る目で固まった。  
「というかお嬢さま。もう少し言葉に慎みを持ってくださいよ。咲夜さんに  
 笑われますよ。」  
『あはは、作戦失敗やな。まあナギが男干からびさすなんぞ無理やと思うとったが、  
 なかなかハイレベルな勝負を』プッ・ツーツーツー  
 ナギは通話を打ち切った。  
「ええい失敗ではない!!」  
「何が失敗なんです?」  
「こっちの話だ!! ハヤテ、もう一度風呂に――」  
「だめですよ、ナギ。」  
 ナギとハヤテが振り返ると、顔を赤くしたマリアが立っていた。  
「あ、いたっけマリア…」  
「ええ、最初から。奥さまが破廉恥な御歓談をなさっている間、ずーっと…」  
「ご、ごめんマリア…」  
「すみません、マリアさん…」  
 小さくなるナギとハヤテを威圧してから、マリアは一つ息を吐いた。  
「もう時間も遅いですし、これ以上体に無理をかけては駄目です。」  
「…わかった。ハヤテ、もう休もう。寝支度をしてここに来てくれ。」  
「はい。ホントにすみませんでした、マリアさん。また後で…」  
 ハヤテを見送り、マリアは伸びをして力を抜く。  
「私も支度をしてきますね。」  
「マリア。」  
「はい?」  
「万一ハヤテが『お嬢さまのやり残した分を責任とってくれよヘッヘッヘッ』とか  
 襲ってきたら、大声で叫ぶんだぞ。」  
「どこのチンピラですか。そんな心配はないでしょう?」  
「だってハヤテまだしたくなるかもしれないし…マリアも心配してたろ?」  
「…別にハヤテ君が信用できないから、反対してたわけではありません。」  
「じゃあなんでさ。私とマリアとハヤテでいまさら遠慮する間柄でもないだろう?」  
「……そうですね。本当にそう。」  
 マリアは窓から夜空を見上げた。  
「どうかしてますね、私…」  
 
 トゥルルルル…ピッ  
「…はい、御疲れ様でした。ええ、お蔭で予定通り20分早く。お客様は無事に?  
 …はい。では、現場は朝までに片付けておいて下さいね。……見てませんけど、  
 壊したのでしょう? ……他の人の分はともかく、壊したのでしょう?  
 ……経緯は知りませんけど、とどめを刺したのでしょう? ……はい、よろしい。  
 念のため言っておきますが、片付けに奥義を使ってはいけませんよ。……  
 い け ま せ ん よ ? …はい、ありがとう。」  
 …ピッ  
「…ふう。」  
「シャンパンなどいかがですか?」  
「あ、はい…あ゛。」  
 通路でマリアは固まった。  
「い、伊澄さん…」  
「ナギは無事着きましたか?」  
「え、ええ。…伊澄さん、なぜここに…。」  
「もちろん、帰ってくるマリアさんを待ち伏せすべく抜け出し――」  
「迷子になったんですね。ここ行きと別ルートの遠回りで、階も違いますよ。」  
「……それはともかく。シャンパンなどいかがですか?」  
「……いただきます。」  
 しばし二人はグラスを傾ける。  
「とはいえ、運のいいことに、マリアさんに尋ねたかったことの真偽は、  
 察しが付きました。」  
「……」  
「でも、理由まではわかりません…なぜ、わざとナギを抱かなかったのですか?」  
「…ナギは強い子になりました。」  
 マリアは窓から空を見上げる。  
「愛することも愛されることも、揺らぐことのない自分自身で営むことができる。  
 皆さんがナギを求めても、ハヤテ君を求めても、きっとうまくやっていけます。  
 そして皆さんも強い、というか、たくましいです。ナギともハヤテ君とも、  
 離れるつもりがない。それでいて、そのせいで皆さんの間の絆が壊れることも、  
 壊れると臆することも、きっとないでしょう。」  
 マリアはグラスの水面を揺らす。  
「ただ、私だけが――弱いんです。」  
 止めたグラスの中で静かにシャンパンが揺らめいた。  
「結ばれたナギとハヤテ君に触れていることが、ひどく二人への裏切りのように  
 思えてしまう。ナギが女性を受け入れていれば、そこに安心を感じたりする。  
 優しい姉として振舞うには、二人がいとおし過ぎる。自分の都合でナギの元を  
 離れることなど、出来そうもない。」  
 一つ挙げるたびに、指で窓に横線をなぞる。そしてそれらの上に斜め線を引いた。  
「弱い女が、いざ抱かれるという時に逃げただけです。」  
「マリアさん…」  
「まあ、今日はとても楽しかったですよ。ナギが伴侶を得た記念すべき日ですもの、  
 それが私の誕生日だというんですから最高です。ナギがちょっとえっちだけど  
 良いお友達と仲良くしてるのも微笑ましかったですね。びっくりプレゼントも  
 貰いましたし、年齢ネタもなかったですし、来年のクリスマスもこんなに楽しいと  
 いいですね。」  
「……」  
「…それに、そんなに先行きが不安でもないんです。だって、いとおしい人たちに  
 囲まれて暮らす日々は、きっととてもいとおしいものになるはずですから…」  
 
 チュンチュン…  
「…夢。」  
 マリアは目を覚ます。  
 (いえ、夢の中のつもりで、こころの中を少し晒した、クリスマス・イブの記憶…)  
 マリアは身を起こし横を見た。ナギとハヤテが仲良く並んで眠っている。  
 少し考えて、マリアは再び横になった。  
「ゆうべは寝付けなかったから、少し寝てたほうがいいですよね…」  
 ………………  
「マリアさん、ただいまー。」  
「おはようございます、マリアさん。」  
「おかえりなさい。おはようございます。」  
「あー、午前様とはどういうことやーとかゆうてナギが出迎えてくれへんのか?」  
 咲夜が荷物をマリアに渡しながら訊ねる。  
「えー、ちょっと、昨日のアレが腰にきたらしく…」  
 マリアが荷物を受け取って答えた。  
「まあ、それは大変ですね…」  
 荷物が心配そうに話す。  
「ふむ、そらいかん。テレビ局のADに代々伝わるマッサージ術でほぐしたろ。」  
「それは凄そうですね。」  
「なにせ鷺ノ宮家よりも代を重ねとるからな。代替わり激しから。」  
「それは凄そうね。」  
「ほなマリアさん。その荷物役員室までよろしゅうな。」  
「はい。」  
 咲夜はマリアと別れてナギの部屋の方へ向かった。  
「じゃあ伊澄さん、一応お部屋まで…」  
「あ、だめですよマリアさん。荷物の中身を迂闊に読み上げては。家族に見つかると  
 困るものが入っているかもしれません。」  
「……そうですね。」  
「…あの、うまくボケられなかったでしょうか?」  
「え?あ、すみません、気の利いたリアクションができなくて。中々良かったと  
 思いますよ。」  
「…お疲れですか?」  
「ギャグへの反応で体調を測るのはどうかと…」  
「まったくです。」  
「…まあ、ちょっとくじけそうかもしれません。」  
「…はやっ。」  
「だって…ナギがあんまりに無防備なんですもの。」  
「マリアさんも結構、無防備ですよ。」  
 伊澄は微笑んで言う。  
「咲夜とかヒナギクさんは、わりと潔癖なところがありますから安心でしょうけど。  
 でも私はわがままですから…マリアさんを焚きつけて、ハヤテさまが抱いてよい  
 女の一人目としてナギに認めさせる企みも、ナギが、みんなが、幸せになれる  
 勝算があれば、できますよ。」  
「伊澄さん…」  
「マリアさんには勝算があるのでしょう?マリアさんにはその力があります。  
 そして――だからこそ、その力を、自分のために、ナギとハヤテさまに向けて、  
 振るうことができない。」  
 二人はハヤテたちの事務所部屋にたどり着いた。伊澄はその看板を見上げる。  
「今の暮らしは、きっと、一歩手前で立ち止まる、そんな優しい力の生んだもの…  
 結構、気に入っています。」  
「そんな立派なものじゃ…ないです。」  
「だから、悪企みは少し先送りにします。愚痴があったら話してくださいね。  
 マリアさんが今しばらく優しい私達の姉として暮らせるよう、協力します。  
 妹の…一人として。」  
 
「さて諸君!第一回マリアさん焚きつけ会議を始めます!」  
 桂雪路が机に手を突いて宣言する。  
「ちょっと桂先生!みなさん!いきなり人をさらって何をするんですかー!!」  
 椅子に縛り付けられたマリアが叫んだ。  
「叫んでも無駄ですよー。私が昔改造したこの部屋は音も電波も漏らさないように  
 出来てますからー。」  
 牧村志織がにこにこと解説をしている。  
「三千院屋敷にこのような都合の良い部屋があるとは、これも神のお導き…」  
 シスター、ソニア・シャフルナーズが神に感謝の祈りを捧げる。  
「というかマリアさんの発注だったんでしょ?」  
「ふふふ、何に使うつもりだったのかな?」  
「かなー?」  
 花菱美樹・朝風理沙・瀬川泉がきゃいきゃいと盛り上がっている。  
「だからこんな所に連れ込んで何をするつもりですかー!!」  
「ほらマリアさん、おとといヒナが家に帰ったでしょ?それがさぁ、綾崎君…、  
 今は橘君でもなくて三千院君か、まあハヤテ君と五日も一つ屋根の下にいたのに、  
 何も無かったらしいのよ。」  
「ナギの夫なんですから何かあっては困ります!!」  
「歩ちゃんもー。」  
「愛沢さんもご家族にはそう言ってるみたいですねー。」  
「鷺ノ宮嬢に決定的な既成事実が起こると期待…もとい、心配していたのですが。」  
「ということで!!少女たちの幸福のために一肌脱ぐことにした私達は、お昼ごはんと  
 三時のおやつを食べながら協議した結果、マリアさんにも一肌脱いで貰おうと…」  
「そう、脱いでもらおうと。」  
「もらおうとー。」  
「な、何で私なんですか!!」  
 マリアがやや動揺した口調で問いただす。  
「マリアさん、私はね、ヒナがここで暮らすことを許してくれたあなたに感謝して  
 いるの。あなたはナギちゃんとハヤテ君と暮らす権利を独占することも出来た。  
 でもみんなの想いの行き場をここに作ってくれた。ヒナも他の子たちも、きっと  
 あなたに感謝して、幸せになってほしいと思ってる。そしてその幸せが、ここに  
 隠れていると知っているはず。」  
「…駄目です。」  
「あなたがこんな状況を作ったのは、ナギちゃんやハヤテ君がヒナたちと共に幸せに  
 暮らせると判断したからでしょう?だったら、マリアさんはそれ以上に幸せに  
 暮らせるはずよ。ナギちゃんもハヤテ君も、きっと受け入れてくれる。」  
「…駄目です。そんな裏切りをするくらいなら……」  
「…交渉決裂でしょうか。」  
「まあ、雪路の口車に乗ったら何があるかわからないし。」  
「妥当な判断だな。」  
「でもそうすると私達の目的が達成できませんよー?」  
「みっしょんいんこんぷりーとなのだー。」  
「ええいうるさい!!バカにすんなー!!とにかく!!」  
 雪路は声を張り上げ、マリアを指差して言う。  
「今やダーク・マリアさんは我われ闇の反逆軍団の理想を阻む最大の敵となった!!」  
「なったー。」  
「なんですかそれは!!いつ私が世界征服を目指しましたか!!」  
「ていうかいつの間にそんな団体名になったのよ。」  
「よって最終手段をもって目的を達成する!!見よ!!」  
 バン!! ガゴン!! ゴゴゴ…  
 雪路が机を両手で強く叩くと、机は床に沈みこみ、建物を強い振動が揺さぶった。  
 
 ちゅどどどど…  
『牧村さんの科学力は世界一ィィイイイ』  
「なんだあれは!!いや大体わかるが今度は何だ!!」  
 ナギが庭に出て空を見上げる。巨大ロボの上半身の姿をした物体が噴煙を上げて  
上昇して行く。  
「ぬぅ、あれは!!」  
「知っているのかサク!!」  
「うむ、あれは記憶喪失装置!!地球人類からファーストコンタクトの記憶を消し去る  
 こともできる、強力なサイキック兵器や!!」  
「なんでそんなものがうちの地下から発進するのだー!!」  
 ナギが庭に開いたハッチを指差して言う。ハッチの近くにはハヤテとヒナギクが  
駆けつけている。  
「知らん。ウチはネットオークションで出品されとるのを見ただけやからな。  
 何でも、お嬢さまが執事に振られて傷ついた時のために作らせとったが、  
 無事結ばれたので要らなくなったと…」  
「マリアー!!」  
「呼んでも来ませんよ。彼女はあの中ですから。」  
 ソニアがトンファーを構えて立っていた。ナギとの間に伊澄が割り込む。  
「マリアさんがお願いを聞いてくれないので、説得している最中なんですよー。」  
 ソニアの後方で志織が説明する。  
「マリアに何をさせる気だ!!」  
「それは彼女が了承してくれれば、彼女の口から聞けますよ。日没までに了承が  
 もらえなければ…彼女の存在の記憶が、関わりあった人たちから消えます。」  
「そんなことはさせません!!」  
 ハヤテが駆け寄って箒を構えた。ヒナギクも慎重に隙をうかがう。  
「無理ですよ、ハヤテ君。記憶喪失装置は外からの攻撃を受け付けず、中に入るには  
 所有者キーが必要です。そしてキーはあの中…まあそれでも、余計なことを  
 されないように、ここで足止めしておいてあげましょう。」  
『そんな余裕を見せていていいのかなシスターさん!!』  
 歩の声が放送される。  
「ふっ、警備管制室にいても無駄ですよ。警備システムは停止してあります。」  
『そんなことじゃないよ。シスターさんがここにいるということは…  
 ワタル君とサキさんは今二人きりということ!!』  
「な!!しまったぁ!!今日は御両親が留守なのを忘れていました!!」  
「…あいつまだワタルに張り付いてんのか?」  
「ええ、まあ…」  
 あきれたようにナギが言い、ハヤテがうなずく。  
「いいんです!!日本では年下の男の子に対して、エルダーなシスターは恋人以上に  
 優先権があるんですから!!」  
「いろいろ誤解があるようだが、そういうことなら遊んでないで帰れ。」  
「く、言われなくても!!」  
 ソニアは風のように飛び去った。  
 
「牧村さん、あれを止められませんか?」  
 ハヤテが志織に問いただす。  
「入らなければ止められませんねー。シスターが言っていたように、入るには  
 所有者キーがいるんですよ。マリアさんの注文を受けて作ったキーは一つだけ  
 ですから、私も持ってません。」  
「新しく作るわけにはいかないんですか?」  
「所有者のマリアさんの指紋認証か、譲渡パスワードが必要ですよー。」  
「『ダーリンのバカ』や。」  
 全員が咲夜を振り返った。携帯電話を操作しながら咲夜が話す。  
「即決で自動再出品しとったからさっき落札した。入金したらメール来たんやけど、  
 これが譲渡パスやろ?所有者キー引き渡してもらおか。」  
「何枚要ります?」  
 志織がカードキーと処理装置を取り出す。  
「三枚。」  
「…いいんですか。」  
「これはマリアさんに頼まれていた業務ですから。」  
 志織がコードを入力し、咲夜の指紋を登録した装置に、カードキーを通していく。  
「後はあそこまで行かなくちゃね。」  
 ヒナギクが上を見据える。  
「え。ヒナギクさんも行くんですか?」  
「何よ。当然でしょ。」  
「だって高いですよ?」  
「平気だったら!! 乗っちゃえば下は見えないし、何とかなるわ。」  
「そういって降りられなくなったことが何度あったか…」  
「もー!!マリアさんが困ってるのにそんなこと言ってられないでしょ!!」  
 ヒナギクはカードキーを受けとって一枚をハヤテに渡す。  
「ヒナギクが行くなら私も行くぞ!!」  
 ナギがカードキーをヒナギクからひったくった。あわててハヤテがそれを取り上げ  
ようとする。  
「駄目ですよお嬢さま、危険ですからここで待っていてください。」  
「マリアを助けるというのに私が出んでどうする!!」  
「だから僕達にまかせて…」  
「そうですよ。ナギが怪我をしたら、マリアさんが悲しみますよ。」  
 伊澄がナギの手からカードキーを引き抜いた。  
「あ、こら返せ伊澄!!」  
「ああおとなしくして下さいお嬢さま…」  
『あーハヤテ君、敷地内のヘリとかはやっぱりロックされてるみたい。けど…』  
 歩の声が伝わる。  
『企画七課の出動設備は生きてるから、それで行くね』  
 ブオン  
「え?」  
「あ?」  
 ハヤテの足元に突然穴が開いた。ハヤテとナギが落下していく。  
「ハヤテ君、ナギ!!ちょっと歩、これ…!!きゃーっ!!」  
 ヒナギクも足元に開いた穴に吸い込まれた。  
 
 ピピピピ…  
「風力、風向き、角度…これでよしっと!」  
 歩がコンソールを操作し照準を合わせる。  
『毎度お騒がせしております。ただ今より、面白いビデオの店、レンタルビデオ  
 タチバナ名物、執事便が発射されます。皆様、白線までお下がりください。』  
「…いっきまーす!!」  
 ピシュン!! ピシュン!! ピシュン!!  
 
「ヒムロ、ビデオ屋さんがまた空飛んでくよ。」  
「そうですね。フッ…ビデオ屋さんも大変ですね。」  
 
「な・ん・で・う・ち・か・ら・は・く・お・う・の・と・け・い・と・う・に・  
 つ・な・が・っ・て・い・る・の・だ・!」  
「ええと、マリアさんの協力で、企画七課の緊急発進設備に屋敷から接続する工事が  
 先日完成していたらしく…」  
「ま・り・あ・ー・!」  
 
『ええと、ナギちゃんはハヤテ君がガードしたから大丈夫。定員オーバーしたから  
 乗せられなかった伊澄ちゃんは準備出来次第――』  
「なあ伊澄さん。記憶喪失装置はどうやって記憶を消すと思う?」  
「製作者に聞いた方がいいと思うけど…」  
 伊澄が見回すと、すでに志織はいなかった。  
「…サイキック兵器として売られていたのでしょう?全人類級の記憶操作となると、  
 とてつもないパワーが必要だろうけれど、そういう力を組み込んでいるのでは。  
 原理を説明されても、私にも多分良くわからないと思うわ。」  
「うむ。メールの添付ファイルによると、そないな力を使うモードの上に、  
 より確実に記憶消去を実行するモードがあるらしいで。」  
「そのモードとは?」  
「全力全開な火力で物理的に記憶を消去する、エクセリオンモードやて。」  
「…それはわかりやすいですね。」  
「まあそないなモードを使うアホはおらへんやろ。ほれ、このモード発動中には  
 機体が光に包まれるっちゅうけど、そないなことは――」  
 咲夜が上を指差すと、淡い光に包まれた記憶喪失装置が浮かんでいた。  
「……アホがおる。」  
「ナギ達にこのことを―」  
「待ち。……モードに入ると通常の停止は効かん。強制停止せなあかんが、  
 全機関停止して墜落や、脱出の時間もあらへん。」  
「…歩さん。私の発進は中止してください。咲夜、少し離れて。」  
 伊澄は懐から札を取り出し、発動させる。青い炎に包まれた札から、伊澄の体に  
光の筋が絡みつく。全身が光に覆われた直後、伊澄の足元から複雑な光の折れ線が  
四方八方の地面に広がった。  
「うお、なんや!?」  
「八葉の巫女が命ず!!」  
 全方位の遠方に青い光の壁が立ち上がり、一帯の空間はその外側と区切られた。  
「マリアさんに依頼され作り上げた、地脈の力を利用した防御結界…。物理的な  
 攻撃なら、核ミサイルから水鉄砲まで無効化します。」  
「そうか。水鉄砲も防ぐんか。そら高性能やな。」  
「ええ。夏になるとそれで人の服を濡らして透けさせる人がいますから…」  
「小さい頃のこっちゃないか。」  
「小さい頃からそうやってえっちな悪さをしていたというのが問題なんですよ?」  
「へいへい。」  
「あとは…頼みます。ナギ、ヒナギクさん、ハヤテさま……」  
 
「わーっはっはっはっ!! よくここまでたどり着いたわねナギちゃん!ハヤテ君!」  
 記憶喪失装置の操縦室に立つ雪路が、二人に向かって高笑いを響かせる。  
「……」  
「……」  
「ふっ、恩師が自分達の前に立ちはだかる意外な展開の前に声も出ないようね!!」  
「予想どおりよ馬鹿教師ー!!」  
 ヒナギクが背後から雪路を蹴り倒した。  
「あ、ヒナギクさん無事でしたか。」  
「フッ…、このニンジャマスター・ユキジの気配に気付いていたとは、さすがは  
 我が妹…。」  
「何がニンジャマスターよこのカラス忍者。いい年して忍者コスなんかしてるから  
 ナギたちも引いてるじゃない。」  
「お姉ちゃんまだ若いもん!! ゲンナリ斎じゃないもん!!」  
 雪路は宙返りで立ち上がる。  
「30代は若くないんだから馬鹿なことしてるんじゃないわよ!!」  
「言ってはならんことをー!!」  
 雪路が手裏剣をヒナギクに放つ。ヒナギクは正宗を振りながらそれをかわす。  
「あ、ハヤテ君そこ罠を仕掛けたから。」  
 ちゅどーん  
「ハヤテ君!!」  
「ハヤテ!!」  
「ハヤテ君!!」  
 戦っている二人を避けてこっそり捕らわれのマリアに近寄ろうとしたハヤテは、  
 床の爆発を受けて壁へと転がった。すぐ膝をついて起き上がる。  
「受身取りましたから大丈夫です!!」  
「ヒナ、引きなさい。このスイッチを押したら、マリアさんの回りで大変なことが  
 起こるわよ。」  
 雪路が懐からリモコンの様な物を取り出し間合いを取った。  
「くっ、お姉ちゃんのくせに手際がいい…!!」  
「さあ、日没まであまり時間がないわ。マリアさん、私達に味方してくれるかしら?  
 破壊神を復活させ、理想の魔法の王国を築くという私達の計画に…」  
「しません!!ていうか話が違うじゃないですか!!」  
「桂先生!!マリアさんは世界征服を目指す上でそんな破壊するだけの力に頼ったり  
 する人ではありません!!」  
「ハヤテ君も人が世界征服するつもりみたいに言わないでください!!」  
「いやマリア、こんなの作らせておいてそれはどうかと思うぞ。他に変なこと  
 してないだろうな?例えば屋敷にバリアを張ったり……」  
 マリアは目をそらした。  
「マーリーアー?」  
「えーあー、か、桂先生!!だから世界征服とか言う話じゃなかったでしょう!?」  
「そーね。ナギちゃんとハヤテ君の愛人になって頂戴って話だったわね。」  
「あっ…!!」  
 
「なんだそれは!!」  
 ナギが意表を突かれた調子で問う。  
「簡単なことよ。今ここに暮らしてる子たちには、もっとナギちゃんやハヤテ君と  
 仲良くなってもらいたい。一番上手くいきそうなのがマリアさん。だから強く  
 お勧めしているってわけ。」  
「教師が不倫を勧めないでください…」  
 ハヤテは困った顔で言う。  
「私は愛の教師。BGMは”先生、ここにバカがいます”」  
「ああっ、一瞬世界征服とか信じかけたけどやっぱり!! お姉ちゃんそんなことは  
 大きなお世話よ!!」  
 ヒナギクはかなり怒った調子で非難した。  
「そうかしら?自分の事を忘れられても愛を求めるわけにはいかない、それも愛ね。  
 けど、そんな重い愛を持つ人こそ、愛を求め与えられるに相応しいと思わない?」  
 雪路がマリアの方を示す。  
「マリア……」  
「マリアさん……」  
 マリアはうつむいて顔を隠している。  
「ついでに美人ときた。お嬢さまも少年もマリアさんの色香の前にはよいではないか  
 よいではないかあーれーっと…」  
「あんまりふざけた事ばかり言ってると…」  
 ヒナギクが携帯電話を取り出してダイヤルを始めた。  
「ちくるわよ?」  
「あ!! ヒナそれはだめ!!」  
 慌てて雪路が止めに来る。  
「ハヤテ君!!」  
「痛ッ!!」  
 ヒナギクは携帯電話を雪路の手に投げつけ、リモコンを取り落とさせた。  
「マリアさん、じっとして!!」  
「!ハヤテ君!!」  
 ハヤテは怒涛の加速でマリアに向かって突進する。ハヤテが駆け抜けたあとを  
罠の爆発が覆っていく。  
「ハヤテ!!マリア!!」  
 ドドドドドーーーンンン……  
 
「痛ったー…この携帯電話ごつくない?すごい痛かったわよ?」  
「IT時代には携帯電話も武器になるのよ。」  
「なんか違う。あ、電話掛かってないでしょうね。」  
 倒れた雪路がヒナギクの携帯電話を拾って確かめる。切り伏せて正宗を突きつけ  
ていたヒナギクがあきれたように言う。  
「この中は圏外よ。」  
「あーそうだった。はっはっはっ……」  
 雪路は笑ってヒナギクを見上げる。  
「騙したわねヒナー!!」  
「騙される方がドジよ。」  
「だってヒナがあいつに告げ口しようとするんだもん。」  
「彼氏がいるのに人様に不倫を勧めて回るのが悪いのよ。いいかげん身を固めたら?  
 お義母さん達も泣いて喜ぶわよ。」  
「えーだってもう少し独身貴族でいたいしー。」  
「そういうのは自立した人が言う言葉よ!!」  
「わたしはもう傍若無人よー!!」  
「ええと、色々言いたいことも、この後の問題もあるのですが…」  
 ハヤテがマリアを抱えて戻ってきた。ナギが駆け寄ってマリアに抱きつく。  
「とりあえず記憶喪失装置を止めましょう。オンラインマニュアルを見ながらだと、  
 手間がかかるかもしれません。」  
「あーだいじょぶよ。私マニュアル見ないでも操作できたから。画面見てれば、  
 かんたんかんたん。」  
 雪路がひらひらと手を振る。  
「それじゃ、さっそく…」  
 ハヤテはマリアをナギに預けて操作パネルに向かう。画面には記憶喪失装置の発動  
タイマーがカウントダウンされている。右下に停止ボタンが表示されていた。  
「あ、ほんと簡単そう……」  
 停止ボタンはグレーアウトしていた。  
「ちょっとまてー!!」  
「ど、どうしたのハヤテ君!?」  
 ヒナギクがハヤテに駆け寄る。ハヤテはグレーアウトした停止ボタンを連打した。  
『エクセリオンモードは解除できません』  
『もう少しやらせてください』  
『いつかは止まりますが、それは今ではありません』  
「桂先生!!なんですかエクセリオンモードって!!」  
 停止を拒否するメッセージを見て、ハヤテは振り返り雪路に叫んだ。  
「え?知らないわよ?時間セットしてパワー最大にしてスタート押しただけだもん。  
 なんかウィンドウいくつか出てきたけどOK連打したら動き出したし。」  
「確認メッセージをスルーしないでください!!」  
「エクセリオン…あった。…何これ!?」  
 ヒナギクがヘルプを検索して説明を表示する。ハヤテはそれを読んで固まった。  
ナギとマリア、雪路も近寄って覗き込む。辺りに沈黙が流れた。  
「いい?エクセリオンモードは使っちゃだめ。」  
「「「「あんたが言うな!!!!」」」」  
 雪路がどつかれている操縦室の中に、音声メッセージが響く。  
『発動まであと10分です。Take a good journey―』  
 
「一樹君。今日こちらに遊びに来るというのは、お姉さんはご存知?」  
「ええ。おととい珍しく姉が帰って来た時に、年末年始の予定を聞きあったので、  
 知ってます。」  
「ほう、そうですか。仲のいい御姉弟でいいですねぇぇぇ……」  
「そんなことはないですよ。」  
「シスター、みかん取って〜。」  
「泉、みかん食べ過ぎると黄色くなるわよ。」  
「カロチノイドによる柑皮症ですね〜。」  
「さすが牧村先生は物知りですね。」  
「だあああ!!なんでこんなに大勢うちに溜まりに来るんだよ!!」  
 ワタルが茶菓子を台所から運んできてキレた。  
「若、御友人や先生に失礼ですよ。」  
 台所からサキが声をかける。  
「いやすまない、ワタル君が両親のいないのをいいことに若い男を連れ込もうと  
 しているのを邪魔してしまって…」  
「誰が!! 連れ込もうと!! してるか!!」  
「若、女性に声を荒げてはいけませんよ。」  
 台所からサキが声をかける。  
「何が女性だ!!こいつらの精神年齢は一樹の姉と同レベルのガキだぞ!!」  
「えー。私たちも歩ちゃんもオ・ト・ナだよ?ねー、一樹くん?」  
「え。姉は皆さん程大人では…」  
「ふむ。では君のお姉さんがいかに大人かということをじっくりと…」  
「花菱さん?」  
 台所からサキが声をかける。  
「若の前で不適切な話題は避けてくださいね?」  
「……了解。」  
「ったく。話の様子だと揃ってナギんとこ行ってたんだろ?ずっとあっちにいりゃ  
 よかったじゃんか。菓子だっていいもん出たろうし。」  
「いえ、もともと長居をするつもりはなかったんですよ。日没前にはおいとまする  
 予定で、決してしてやられたわけではなく、ちょうどきっかけができたので…」  
「何の話だ?」  
 ワタルが首を傾げる。志織が笑って続きを話す。  
「ゲームの話だと思ってくださーい。チーム戦だったんですけど、こっちが親で、  
 三千院さんチームが子で、こっちは思う存分イカサマが出来るんですね。それで、  
 勝つつもりはないけどそれを隠して、ちょっと大事なものを賭けてもらって、  
 大一番を演出すると、そういうイベントをやってきたんです。」  
「はあ。迷惑な話だな。」  
「でも結構三千院さんチーム、強かったですから。わざと負けるというより、  
 有効手をそのまま通す感じで進めていけば勝ち進んでくれましたし。こちらは  
 三人ほど棄権しましたし。」  
「…めんどいのは嫌いよ。」  
「そういうことにしておこうか、泉。」  
「そういうことにしておこー、理沙ちゃん。」  
「今もう大将の桂先生も投了してる頃だと思いますよ。」  
「桂先生も巻き込んだのか。そりゃ大迷惑な話だな。」  
「というか張本人なんですけどね。」  
「牧村先生。しかし桂先生はちゃんとゲームをきちんとこちらの負けで終えてくれる  
 でしょうか。万一勝ってしまうと賭けの賞品の処理が面倒なことになりますよ。」  
「大丈夫ですよー。万一問題が起きても、迷子になった最後のイカサマカードが、  
 そろそろ向こうのチームの手札に現れるころですから――」  
 
「自分だけが我慢すればいいと思っていても、回りに思わぬ問題が起こる可能性が  
 あるという教訓がこの事件には……」  
「ありません!!」  
「ハヤテ、手は三つだ。」  
 ナギが状況を検討した結果を話す。  
「一つ、攻撃の始まる空に脱出する。  
 二つ、伊澄の結界を信じて待機し、弾切れを待つ。  
 三つ、緊急停止コマンドを打ち込んで墜落する。」  
「二つ目の勝算は?」  
「かなり高いわ。」  
 ヒナギクが説明する。  
「個々の兵装は結界で防げるレベル。記憶消去成功率が100%に達しないと別の地区に  
 移動しないから、結界内に留まったまま数時間で打ち尽くすはずよ。」  
「わかりました。それで行きましょう。念のため、僕は、ここで緊急停止を準備して  
 おきます。皆さんは脱出機に移動しておいてください。」  
「ハヤテ!!」  
「先生。」  
「うおっしゃ!!」  
 雪路がナギを担ぎ上げて駆け出す。  
「離せ馬鹿ーー!!」  
「骨は拾ってやるわよーー!!」  
「ちょ、お姉ちゃん!!……ハヤテ君、ナギの所へ帰ってこなくちゃ駄目だからね!!」  
 ヒナギクがマリアの手を引いた。  
「ハヤテ君。あなたがナギと行くべきです。」  
 マリアがハヤテを睨む。  
「いえ。これは執事の役目です。それに…」  
 ハヤテが首を振る。  
「僕が帰るところに、お嬢さまと、マリアさんと、ヒナギクさんたちがいる。  
 そんな暮らしを守らせてください。」  
「……ばか。」  
 マリアはハヤテに背を向け、そう言い捨ててヒナギクと駆け出した。  
 
 ピピピ  
「あー、牧村さんの歴代ロボの中でもこれは頑丈だな… 僕の必殺技で打ち抜くほど  
 威力を出すと、体がとても持たない… 何が仮想敵なんだろ?」  
 カードを挿入すれば緊急停止できるよう準備して、ハヤテは万一に備えていた。  
「伊澄さんの術で、いま張ってる結界の様に個人以上のリソースが使えれば…  
 でも、それができれば伊澄さんも乗り込んできてるよなあ。」  
 モニタにはナギ達が脱出ポッドに乗り込んでいる様子が映る。  
『Count 10,9,8,…』  
「うまくいってくださいよ…!!」  
『…4,3,2,1,0. Fire.』  
 ゴゴゴゴゴオオオオオオオオオオオオ!!!  
 機体が細かく振動する。ハヤテは外部モニタを見つめた。雨あられと放たれる  
ミサイルが、空中で次々と青い光になって弾けていく。  
「よし、まずはOK…!!」  
 記憶喪失処理率を表すモニタの数字は0%から動かない。続いて第二弾の攻撃が  
始まったが、同じように結界に阻まれて消えていく。  
「よし、これなら…」  
『処理率が低すぎます。作戦範囲内の再スキャンを行います。』  
 攻撃が中断され、アナウンスが流れた。  
「え?」  
『再スキャン完了。機内に対象を発見。誤爆に注意してください。』  
「えええええええ!?」  
 ハヤテがモニタに飛びつく。画面の中では脱出ポッドに向けて機関銃が向けられ  
ようとしていた。  
「ちくしょー!!」  
 カードをリーダーに叩き込む。そしてコンソールの下に潜り込んだ。  
 ババババッ  
 頭の上を銃声がかすめ、反対の壁にめり込む。  
『緊急停止します。飛行機能停止。有人脱出ポッドは自動的に射出されます。  
 ―Good-bye.』  
「ふう、お嬢さまたち無事だろ…」  
 コトン  
「か…」  
 ハヤテの前に黒くて丸い爆弾が落下した。  
「でえええええええ!!」  
 
 カッ  
「…の巫女が命ず!!」  
 ちゅどーーーーん……  
「……え?」  
 ハヤテが目を開けると、ハヤテの周囲だけなぜか爆発から免れていた。爆風で  
焼け爛れたその外側と無事な内側は、赤い光の幕で区切られている。そしてハヤテの  
目の前に、刀身に放電をまとった西洋剣が突き立てられていた。  
「脱出します。剣の柄をしっかりと掴んでいてください。」  
 ハヤテの上、コンソールに乗っていると思われる位置から、女の声がした。  
「え、その声は…」  
『大気に満ちたる地脈の龍よ……』  
 ゴゴゴゴゴ……  
「わ!わわ!!」  
 空気が揺れ地鳴りのような音がした。ハヤテは思わず剣の柄を両手で握る。  
『剣に封じられし雷神よ……』  
 バシャァァッ!!  
「う!!」  
 剣が雷の光を放つ。ハヤテは眩しさに目をつむった。  
『我が呪文の成就に力を貸したまえ。…ディ・ヴムー・スティン!!!!』  
 ガワオォォ…!!  
 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ……!!  
 雷音と地響きが一層高まっていく。  
『大地と大気の精霊よ!! 古の契約に基づきその義務を果せ!!』  
 カカカッ  
「ちょ、なにするつもりですかっいす…」  
 
『天地爆裂!!!!』  
 
 カッ  
 グワァァァァァァァ!!!!  
 
「おいおい伊澄さん。撃つの止めて落ち出したかと思うたら、こっぱみじんに  
 砕けおったで。」  
 双眼鏡で眺めながら咲夜があきれたように言った。  
『あああヒナさん!!ハヤテ君!!マリアさん!!ナギちゃん!!』  
 歩の取り乱した声が流れる。  
「凄まじい雷気… 一体…?」  
『あ!!三千院湖からSOS信号!!』  
「お、生存者がいるようや。自爆装置でもあったんかな。なんにせよもう結界は  
 ええやろ、伊澄さん。湖行ってみよ。」  
「咲夜、あなた…」  
 咲夜は伊澄の手を取る。伊澄は咲夜の手の震えに気付いて言葉を切った。  
「…そうね。行きましょう。」  
 二人は手を取って駆け出した。  
 
「ハヤテ……」  
 湖の岸で膝を突き、煙の立ち登る方を見ているナギに、誰も声を掛けられない。  
「ナギ!!」  
「ヒナさん!!」  
 歩の運転する車が咲夜と伊澄を乗せて辿り着いた。  
「歩…」  
 ヒナギクも泣きそうな顔をしている。  
「マリアさんと…桂先生?……ハヤテさまは?」  
「これから骨を拾いに行くとゴブッ!!」バシャァッ  
 雪路がヒナギクの正宗の一撃で湖に叩き込まれた。マリアは首を振る。  
「ハヤテは生きてる!! 絶対!! 生きてるんだから!!」  
「…あれに残っとったんか。」  
「…救助隊が着いたころだから、望みを、グスッ、捨てずに…」  
「…ハヤテ」  
 ナギは天を仰ぐ。  
 ぉι゛「ハヤテーーーー!!」ょぅさまあーー  
「「「「「「「え?」」」」」」」  
 全員が空を見上げる。上空から落下してくる物体がどんどん大きく見えてくる。  
「あああああああ!!」ドボン!!  
「ぐはあ!!」ズンッ  
 そして雪路の上に落下した。  
「…ハヤテ?」  
「…ぷは。あ、はい、お嬢さま?ご無事でしたか?」  
 ハヤテが安心したように笑う。  
「ハヤテ!!!!」  
 ナギが駆け出してハヤテに飛びつく。他の少女達も次々に湖に駆け込んだ。  
「ハヤテ、ハヤテ、ハヤテのばかぁ…」  
「お嬢さま、ほら、泣かないで…」  
 一同はしばらく喜びに沸き立った。  
 
「あ゛の゛ち゛ょ゛っ゛と゛た゛す゛け゛て゛……」  
 
「へっひょふほうはっへはふはっはほほ?」ずずずずー  
「お姉ちゃん食べながらしゃべらない。」ずずー  
 濡れたので風呂に入り、それから年越しそばを用意すると夜もかなり更けてきた。  
「ええと、さっきも聞きましたが、伊澄さんが助けにきてくれたんじゃなかったん  
 ですか?」ずずー  
「せやから伊澄さんは、やっぱりそばつゆは関西風やな。」ずずー  
「サク、一つ話し終えてから次に移れ。」ずずー  
「先ほども申しましたように、結界の維持の為に留まっていましたから…」ず…  
「うん、ずっと最初のとこにいたよ。伊澄ちゃんそっくりな子だったの?」ずずー  
「そっくりというか、声がそっくりで、顔は暗くてあまりはっきり見てないんです  
 けど、感じが似てて、多分同じくらいの年で、髪も同じ長さで、和服で…」ずずー  
「伊澄さん、御親戚?」ずずー  
「いえ、マリアさん、心当たりはありません…」ず…  
「それで、なんかいきなり現れて、呪文一発で記憶喪失装置を粉々にして、  
 魔法の剣が魔獣になって、その子を乗せて飛び上がって、僕はその足に掴まって、  
 湖の上に来たと思ったら、『またお会いしましょう』とか言われて放り出されて、  
 皆さんのところにドッボーンですよ。」ずずー  
「正確には私の上ね。」ずずずずー  
「すいません…」ずずー  
「謝ることないぞハヤテ。元々先生の自業自得だから。」ずずー  
「でもそれって趣はちょっと違うけど鷺ノ宮さんの領分よね。」ずずー  
「あ!ヒナ、私のフォローは!?」ずずずずー  
「まあ助けてくれたんなら味方やん。誰でもええやんけ。」ずずー  
「そうよねー。」ずずずずー  
「敵がいうな。お姉ちゃん、食べ終わったら帰るのよ。」ずずー  
「ハムスター、先生を”送る”のを頼まれてくれないか。」ずずー  
「先生が良ければ”送り”ますよ。」ずずー  
「あ、悪いわねー。じゃお願いしちゃおうかなー。」ずずずずずずー  
 
 ピピピピ…  
「風力、風向き、角度…これでよしっと!」  
 歩がコンソールを操作し照準を合わせる。  
『毎度お騒がせしております。ただ今より、面白いビデオの店、レンタルビデオ  
 タチバナ名物、教師便が発射されます。皆様、白線までお下がりください。』  
「…いっきまーす!!」  
 ピシュン!!  
 
「ヒムロ、ビデオ屋さんがまた空飛んでくよ。」  
「そうですね。フッ…ビデオ屋さんも大変ですね。」  
 
 ピッ  
「まあこれで勘弁してやる。」  
 ナギは自室の椅子に腰掛け、時計塔を映し出しているテレビをリモコンで切った。  
その後ろにハヤテとマリアが立っている。  
「…えーとナギ、それじゃ紅白でも見ましょうか。」  
「はっはっはっマリア。先生は勘弁してやったがまだ御仕置きせねばならん者が  
 残っているじゃないか。」  
「…えーとお嬢さま、牧村さんとかシスターとかですか。」  
「はっはっはっハヤテ。そんな小物はほっておけ。というかいちいち出向くのは  
 めんどいし。もっと身近な問題に目を向けようじゃないか。例えば主人の屋敷を  
 秘密結社の秘密基地か何かと勘違いしているメイドとか――」  
「あ、いけない。タマとシラヌイのエサを下げないと……」  
 マリアはそんなことを言いつつ逃げ出そうとする。  
「はっはっはっマリア。どこへ行こうというのかね?」ピッ  
「きゃーっ!!」  
 ナギがリモコンのボタンを押すと、四本のロボットアームがマリアに絡みつき、  
動きを封じ込んだ。  
「ナ、ナギ、いつの間にこれを…!!」  
 ナギは椅子の上に立ち上がって腰に手をあて胸を張る。  
「はっはっはっ、いつまでもやられてばかりではないのだよ。」  
「あーお嬢さま、何をなさるおつもりで?あまり酷いことは…」  
「大丈夫だハヤテ。ハヤテにも手伝ってもらうから…」  
 側に来たハヤテの頭を抱いて、マリアを横目で見ながら告げる。  
「ほんの軽い御仕置きだ。」  
「お、お嬢さま!?」  
「ナギ…?」  
「……お願い、ハヤテ。」  
 ナギはハヤテの耳の側で震える声で囁き、強引に顔を振り向かせた。  
「あっ、お嬢さ…」  
「ん……」  
 
「うんっ、っむ、ん、んじゅ、んうぅ、はっむ……」  
「んっ、ナギ……」  
 ナギがハヤテの足元にひざまずき、ズボンのチャックから屹立しているペニスを  
小さな口に含んで愛撫している。ハヤテは時折声を飲み込み、ナギの頭を撫でて、  
その奉仕を褒めた。  
 チュ、キュ、ピチュ、ジュルル…  
 ナギは水音を立てて、一心不乱に固い肉茎に舌と唇を絡めていく。最初は自分達を  
見詰める視線を気にしていたハヤテだが、ナギがその度強くしゃぶりついてそれを  
とがめることを繰り返すうち、ナギとの行為に没頭していった。  
「……」  
 取り押さえられているマリアは、抗議の言葉が無視されて以後は、ただ黙って  
二人の行為を見詰めていた。ナギとその意を受けているだろうハヤテが、解放も  
行為の中断も取り合わない無言の態度のうちに、見ていろというナギの要求を察し、  
目を逸らすことをしなかった。  
「ふんんっ、む、んく、うう、んっんっっ…」  
 ズチュ、チュチュ、ジュ、シュチャッ…  
 ナギはハヤテのペニスを掴む手を根元にずらし、より深く亀頭を咥え込んだ。  
苦しげな息を吐きつつ、口と手でハヤテに摩擦と圧迫を加える。  
「……んんっ、ぷはっ…はあっ……」  
 フェラチオを中断し、ナギは大きく息をついた。手をペニスに掛けたまま、  
上目遣いでハヤテを見上げる。  
「ね、ハヤテ、服、脱がせて……」  
 ハヤテは頷き、片膝をついた。入れ替わりにナギが立ち上がり、ハヤテの指先が  
自分の衣を剥いでいくのを見守っていく。  
 最後の下着まで脱がされたのを見届け、ナギはハヤテのネクタイに触れて言った。  
「ハヤテも脱いだら、来てね。」  
 そしてリモコンを拾い、ベッドに飛び乗って横手に腰を下ろす。  
 ピッピピッ  
「きゃ…!!」  
 マリアを捕まえているアームが彼女を持ち上げ、ゆっくりとベッドの上に運んだ。  
とすん、とナギの反対側に着地する。ナギはころんと寝転がり、中央に仰向けに  
なると、リモコンを枕脇に押しやってハヤテに呼びかけた。  
「ハヤテ、まーだ?」  
「はい、今…」  
「それも脱ぐー。」  
 ベッドに足を踏み出したハヤテの動きが止まる。自分の下着を見て、ナギを見て、  
ちらりとマリアを見て、またナギを見る。目が合ったマリアがあわてて俯いた。  
「脱ぐー。」  
「…はいはい。」  
 吹っ切るようにスパッと下着を脱ぐ。足早にベッドに歩み寄り、胸と股間を手で  
申し訳程度に隠しているナギに覆い被さった。  
 
「んっ…」  
「む…」  
 胸の上に置かれたナギの手の手首を掴みながら、ハヤテはナギの唇を奪った。  
そのまま口付けしながら、掴んだ手をナギの胸から引き剥がしてシーツの上に  
押さえつける。  
「……はっ、あっ、ぅうんっ!!」  
 ハヤテはナギの口から唇をずらし、あご、のど、首筋、うなじと舌を這わせた。  
さらに一度離してから肩に口付け、今度は小さな膨らみの頂を目指してゆく。  
「ふわっ、あっ、ハヤテっ…」  
 ハヤテがナギの乳首を吸い寄せる。存分にこね回してから離し、乳首の周りを  
舌で舐め回す。股間に添えられていたナギの手は、脇にずれ落ちシーツを掴んだ。  
 乳首とその周囲を交互に繰り返し愛撫してから、ハヤテの口がナギの下腹まで  
つーっと舌先で触れて移動する。そして両手を引いてナギの足首を掴み、ゆっくりと  
開脚させていく。ナギは解放された片手をハヤテの頭に乗せてぎゅっと抱え込んだ。  
「んーっっ…はぁっ、ふっ、…あぅんっ!!」  
 ハヤテの舌がナギの割れ目をなぞった。わずかに潤い始めていたそこを、優しく  
ほぐしていく。襞に舌を割り込ませ、膣口を探り当てる。  
「あんっ、ああ、あっああぁんっ、ぅんっ!!」  
 秘裂が愛液とハヤテの唾液で十分湿ってから、その体液を舌に乗せ、ナギの  
クリトリスにこすり付けた。  
「ひゃ、ああふぁんんっ、あんんっ!!」  
 ナギの敏感な突起を舌で舐めながら、ナギの襞を片手でいじり、指先を愛液で  
濡らす。濡れた指先で割れ目をかき分け、膣口に指をゆっくり挿入する。  
「んんっあっ、ああっ、はんんっ!! あんっああんっああぁぁ!!」  
 指と舌で責められ、ナギは性感の高まりに溺れてしまう。ハヤテの与える快楽に  
動物的な反応を返し、ただひたすら快感を貪っていた。  
「ああっ、ふ、あ?」  
「…ナギ、そろそろ入れますよ。」  
 ハヤテが口を離し、指をこねたままナギに告げる。  
「ん、あ、うんっ、ハヤテの、ちょうだい、いっぱい、してっ…!!」  
「ナギっ…!!」  
 ハヤテはナギの足をぐっと持ち上げ、自分の腰をナギの股に引き寄せた。そして、  
自分のペニスを愛液で濡れた手で二、三度こすったあと、狙いをつけて、一気に  
挿入した。  
「ああああぁぁっ!!」  
「ナギ…んっ…ほら、奥まで入りましたよ…」  
「あうっ、んあっ、はっ、ハヤテ、ハヤテぇ……」  
 ペニスの先でナギの奥を叩いて到達を確認する。ナギの息が落ち着くまで、胸の  
上下の動きを眺めて待つ。頃合を見て、激しいピストン運動を開始した。  
「あっ!! あっ!! あ!! んあんぁああぁんっ…!!」  
「はっ、ふ、ナギ、いい、ですかっ!」  
「あ、んぁ!! ん、いい、あああっ!!」  
 ナギはハヤテのペニスが叩き込まれるたび泣くような嬌声を上げる。シーツを握り  
締め、頭を振って視界を揺らす。目に入るものがハヤテに揺さぶられて揺れ動く。  
「あはぅ、ひあっ、あんっ!! んあやっ、ああんんっ、んああ!!」  
「ん、ナギの、気持ちいい…」  
 ハヤテはナギのヴァギナをこじ開ける感触をもっと堪能しようと、休まずいっそう  
激しく抜き差しを繰り返す。潤滑液も溢れ男を受け入れることにももう慣れたはずの  
ナギの膣は、心地よい接触感を与えながら、しかし恥らうような締りを失っては  
いなかった。それがハヤテを興奮させる。  
「ハヤテ、ああっ!! んんあっああっ!! んっはんんっ、あんっ!!」  
「ナギ、ナギ…!!」  
 
「あ、ハ、ヤテ、来そう、ああ!!あっあっ!! う、あっ、あっ、あっ」  
「ナギ、いけそう?いいよ、イっていいよ!!」  
 ハヤテに絶え間なくされていたナギの声色が変わる。ハヤテも興奮した口調で  
ナギの訴えに応じ、ますます腰を盛んに振り立てる。  
「あっあっあっ!! あっイク、あっあっ、ハヤテ、ああっあっ!!」  
「僕も、出すから、先に、イって、ほら、ほら…!!」  
「あっ!!あっあっあっ!!イッちゃ、あっ、あっ…!!」  
「ナギ、いいよ、いいよ…!!」  
「あっ、あっ、あ・あ・あ・ああああぁぁあーーっっ!!」  
 ナギが手足を引きつらせて絶頂に達した。ハヤテは声を上げながら小刻みに腰を  
前後させ、ナギに入れたモノを追い込んでいく。  
「う、うぉ、ナギ、出る、んっ、んんんっ…!!」  
 ハヤテはナギに深く杭を打ちつけ、動きを止めて欲求を解放した。じっとナギを  
見下ろして、愛する少女の中に放つ時間を味わう。  
「あ、ハヤテっ……!!」  
 ナギがハヤテの終わりを感じて視線を合わせた。  
「ナギ…」  
 ハヤテは微笑んでナギの手を握った。抱えていた足を離し、ペニスを引き抜く。  
「ハヤテ、んっ、いっぱい、出たね…」  
「ナギはちゃんと気持ちよくなれましたか?」  
「うんっ。…んしょ、っと…」  
 ナギは足先を軸にベッドの上を寝転がり、脇に頭を覗かせた。  
「全部見てくれた?マリア?」  
「……ええ。これが御仕置きなら、もういいでしょう?反省してますから、もう  
 こんなことは止めてください。」  
「悲しかった?」  
 ナギの問いにマリアが冷静に答える。  
「いえ、だって私は―」  
「だって、」  
 ナギがマリアの言葉を遮って語りかける。  
「マリア、泣いてるよ。」  
 
「私はね、マリア。私がハヤテと結婚しても、マリアは私の側にいるものだとずっと  
 決めてかかっていた。」  
 ナギはハヤテの体に手を触れながら話し出した。  
「ハヤテに出会って、いつか結ばれることを夢見始めた最初から、その夢の中には  
 マリアの居場所があった。もっと前、大人になった自分を考えた時も、当然の様に  
 そこにはマリアが居て、私が望めばマリアはいつまでも居てくれるに違いないと  
 疑わなかった。もっと後、マリアが私と同じ人を好きだと知った後でさえ、」  
 俯いているマリアが身を硬くする。  
「ハヤテを離さないことがマリアを失わない為の方法でもあると勝手に思ってた。」  
 ナギは立ち上がりマリアに歩み寄る。  
「でもそれはマリアの優しさに甘えてた。どんなにマリアが私とハヤテに愛情を  
 持ってくれているかを知っていた筈なのに、マリアにどれだけ我慢させているか、  
 私は本当には解っていなかった。」  
「我慢なんてしていません。ナギといることは、私の幸せなんですから。」  
「それは疑ってない。でも、だからこそ、マリアがその幸せを支えに乗り越えてきた  
 寂しさを、私は見過ごしてきたんだと思う。」  
「だからどうするというんです?私はナギのその気持ちだけで十分です。ナギは  
 沢山のライバルに打ち勝ってハヤテ君の愛を手にしたのに、ここで人に譲るような  
 らしくないことをするつもりですか?」  
「違うよ、マリア。ただ私は、マリアは私の側にいるものだと、本当に決めて  
 しまいたいんだ。」  
 マリアの頬にナギが手を添える。  
「私が誰を愛しているとか、マリアが誰を愛しているとか、ハヤテが誰を愛している  
 とか…そういったことの前に、決まっていることだと。同時に、私もマリアの  
 側にいることが決まっていると。マリアの寂しさや優しさが、馬鹿な私にもすぐ  
 分かるくらい、切り離せない場所に居るべきなんだと。」  
「駄目、ナギ…あなたが私を、そんな風にそそのかさないで…」  
 マリアが俯いて目をそらした。  
「そそのかしているんじゃないよ。確認するんだよ、私達の絆を。マリアが私を、  
 私がマリアを求めても当然で、何も遠慮することはない…それこそ夫婦のように。  
 そんな関係が私達にふさわしいと、確認してもらいたいんだ。」  
「お嬢さま。マリアさんを困らせてはいけませんよ。」  
 ハヤテが諭す。  
「マリアさんのことが大事なのは分かりますが、無理を言っては駄目です。」  
「ハヤテ、私は何も無理を言ってはいないぞ。無理をしてるのはマリアだ。」  
「マリアさんは気持ちを押さえているかもしれませんが、それもお嬢さまのことを  
 大事にしたいという意思からのはずです。お嬢さまにこうまでされても拒むのを、  
 これ以上強いてはつらくさせるだけでしょう?」  
「なんだよー。したのは私だけじゃないだろー。ハヤテもマリアに見せるの  
 つきあってくれたじゃんかー。」  
「いや、あれはですね、お嬢さまがあんまり真剣な声で頼むので…」  
「私があんなに止めて下さいって頼んだのに聞いてくれませんでしたよね?」  
「それは、あの…」  
「男は乙女の願いに弱いのだ。」  
「ほう?」  
「いや、マリアさん誤解ですって!!」  
「何が誤解なのかしらハヤテ君?」  
「いやだからマリアさんが乙女らしくないってことじゃなくて!!」  
「けど人妻よりもあれってことだよなー。」  
「ほほう?」  
「だから!! マリアさんが未亡人で管理人さんとかそういうこととはべつ」ギ…  
「ほほほう?」  
 ヒュンヒュンヒュンヒュン!!  
「うわぁぁぁ!!」  
「え゛。」  
 マリアを捕らえていた四本のアームが離脱し、凄まじい速さでハヤテの手足を  
掴んだ。さらにギリギリと四方へ引っ張られる。  
「あああハヤテ!!」  
「ぐあ。」  
 抵抗空しく、ハヤテは手足を伸ばされてベッドの上に仰向けに固定された。  
 
「だからやってみた後ならお嬢さまも諦めると思ったんですよ〜…」  
「奇遇ですねーハヤテ君。私もそういう見込みでいたんですよー。」ぐいぐい  
「あ痛っ!! マリアさん耳引っ張らないで痛っ!! 痛っ!!」  
「ううう…なんでマリアがアームのコントロールを…」  
 ナギは涙目で頭の両脇をさすっている。  
「はっはっはっナギ。私に隠れて上手く仕掛けてたつもりでしょうけど、まだまだ。  
 すぐに見付けて細工をしておきました。そう簡単にやられはしませんよ。」ぐいー  
「あ痛たっ!! 両耳はやめて痛っ!! 痛っ!!」  
「くそー。だが!! 諦めるように仕向けようなんて策略には負けないぞ!! これは  
 マリアが私の燃える小宇宙を恐れている証拠!! ハヤテの死を無駄にせぬ為にも、  
 ここで引くわけにはいかんのだ!!」  
「いやあ痛っ、お嬢痛たっ、死んでません痛ーっ!!」  
「……」ぐいぐいぐいー  
 マリアは黙って耳引っ張りを繰り返す。  
「ふーんだ。」  
 ハヤテの耳を離すと、マリアは寝転がってナギ達に背を向けた。アームがハヤテを  
解放する。  
「どーせ私はピチピチじゃありませんから、無理に誘ってもらわなくていいです。  
 年食って見える女と遊んでもつまらないでしょーしぃー。」  
「や! そんなことはないですよマリアさん!! ねお嬢さま!?」  
「そ、そうだぞマリア!! お前はまだ若い!! だいたい未亡人の管理人さんは最初は  
 20か21だったのだ!!」  
「え、そうでしたっけ。」  
「ああ浪人生の二つ上だからってそこは思い違いしてたとしても黙ってろハヤテ!!」  
「ふーーーーーーーーんだ。」  
 マリアはシーツを人差し指でいじっている。  
「ハヤテ君だってナギだって、若い子の方がいいんでしょー。今ならよりどりみどり  
 ですから、私なんかお役御免にして彼女達とよろしくやってください。」  
「マリ…」  
「マリアさん!!」  
「!きゃっ!!」  
 ハヤテがマリアの腕を掴み体を仰向けにさせる。横から乗り出しマリアの顔を  
見つめて言う。  
「マリアさん、それは僕らはマリアさんを頼もしい年上の女性として尊敬して  
 来ましたから、大人のイメージを持っているのは事実ですが。だから魅力を感じて  
 ないなんてことは絶対にないです。お嬢さまにとっては今も綺麗なお姉さんで、  
 僕にとっても、あのクリスマスイブからずっと、……美しくて優しい女性です。」  
 マリアは、ついと目を逸らす。ナギは何か言い掛けて、言葉を飲み込んだ。  
「だから、年上に見ている様なことを言ったら怒ってみせてくれてかまいませんが、  
 僕らがマリアさんを好きで、頼っている気持ちを信じてください。僕は別に女性と  
 してのマリアさんが気に入らないわけではないんです。お嬢さまとマリアさんと  
 過ごした日々は幸せでした。今の暮らしも幸せで、力の限り守りたい。けれど、  
 マリアさんには幸せになってほしい、出来るだけ幸せにしたいから、マリアさんが  
 苦しむことや、将来の幸せを掴む邪魔をしたりしてはいけないと…」  
「……ばか。」  
 マリアがつぶやいた。  
「え?」  
「ハヤテ君、女性を振るときにはもっと冷酷に告げた方がいいですよ。それが、  
 優しさというものです。でないと、新婚家庭に住み着かれたり、メイドさんが  
 御恩を裏切ったりしちゃいますよ。」  
 クスクスと笑いながらマリアが顔を見せてハヤテを見つめる。  
「ナギに愛されたい。私を愛してくれる男の人は、ハヤテ君でなくては、いや。  
 ハヤテ君とナギに、幸せに、してほしい……」  
「マリア!!」  
「ちょ、マリアさん!?」  
 喜ぶナギと慌てるハヤテを見て、またマリアが笑う。  
「ハヤテ君が悪いんですよ…私みたいな弱い女に、そんな甘い言葉を囁くから。  
 最後にはハヤテ君が拒んでくれるからナギやあなたを裏切らなくてすむ。  
 …そんな人任せな気持ちでいた女が、よろめいてしまいました。」  
 
「いやマリアさんもっと自分を大事にしないと!!」  
 ハヤテは必死にマリアを説得しようとする。  
「あら。ハヤテ君は私を大事にしてくれないんですか?」  
「だからその前の段階でですね!!」  
「マリア。」  
 ナギが話に割り込む。  
「私はマリアと夫婦のように側にいると決めた。今やこれに異論はないな?」  
「ええ。」  
「お嬢さま、ちょっと冷静に…」  
「ハヤテ。」  
 続いてハヤテに向かって言った。  
「はい。」  
「今日は何日だ?」  
「え?ええと、まだ新年には早くて、31日ですね。」  
 ハヤテは時計を見て答える。  
「日曜の昨日、大晦日の今日、そして元日の明日と、何をする約束だったか?」  
「…日曜執事です。」  
「主人の妻に相当する女性に、三千院の執事たるもの敬意を払わねばならんよな?」  
「お、お嬢さまそれは…」  
「まあ安心しろ。マリアの命じる事に従えと言ってるわけではない。私も命令で  
 ハヤテのしたくないことをさせようというのではない。」  
「そ、そうですよね。」  
「では、ハヤテ。三千院ナギの執事として嘘偽り無く答えよ!!」  
 ナギはハヤテをビシッと指差してのたまった。  
「マリアとえっちしたいか?」  
「……お嬢さまぁぁぁ!!」  
 ハヤテが情けない叫びを上げた。  
「回答拒否は侮辱罪だ。虚偽回答は反逆罪だ。『いいえ』は不敬罪なので、  
 もう一度質問が繰り返される。」  
「どこのお姫さまですかーー!!」  
「三千院のお姫さまだ。」  
 勝ち誇るように胸を張るナギの前で、ハヤテは両手を突いてうなだれた。  
「ナギったら、立派になって…」  
 マリアが涙ぐむ振りをする。  
「いやお嬢さま、こんなことはまずいですよ。当主のおじいさまやクラウスさんや、  
 橘の義父や義母に知れたら……」  
「あ、あなたたちの婚姻届を準備するときに、橘の御夫妻からは許しが出てます。」  
「え゛。」  
「私や彼女達も遠慮することはないですよと。その時は固辞しましたけど。」  
「ああっ、悪い人たちじゃないんだけどやっぱりどこかずれてる…」  
「ジジイやクラウスも大丈夫だ。ジジイはこんな面白いことは見て楽しむタイプだ。  
 クラウスは主人の家庭内のことについて、究極には立ち入らない古い奴だ。」  
「クラウスさんと姫神君が本宅に行っているのは、この屋敷の現状を帝おじいさまの  
 威光で各方面に認めさせるためです。今住んでいる彼女達とハヤテ君がどういう  
 関係になろうとも、ならずとも、干渉されない保証を得るためです。この役目を、  
 クラウスさんは引き受けてくれました。」  
「そんなことまで、クラウスさんが……」  
「まあ万一ということもあるから手を打っておいたが、さっそく役に立ちそうだ。  
 そういうわけだから、社会的な心配はいらないぞ。」  
 ナギがハヤテににじり寄り、ハヤテは焦り出す。  
「え、ええと!ワ、ワタル君とかサキさんに軽蔑されちゃいます!! これでも僕、  
 義兄としてワタル君にけっこう慕われてたんです!!」  
「むしろ同情されるんじゃないでしょうかね?」  
「そうだな。なんにせよワタルの義姉の私が、きっちり教育してやるから安心しろ。  
 サキさんは…まあ処女のうちは仕方ないな。ワタルが18になるまであと二年弱か、  
 それまで耐えろ。」  
「だからそういうオヤジくさい発言を慎んでくださいよー!!」  
「ハヤテ。」  
「お嬢さま……」  
「何もためらわず、答えて。素直な、自然な気持ちを…」  
 
「ん、んっ……」  
「ん……」  
 ベッドの中央に座ったマリアを、横からハヤテが抱きしめてキスをする。マリアの  
体の強張りを、反対側からナギが手を握り背に張り付いて緩めようと応援する。  
「ふ…んんっ……」  
 ゆっくりと、ゆっくりと、マリアはその身をハヤテにゆだねていく。唇の中に彼の  
熱い舌が割り込めるように、強い腕が火照る体をもっと抱え込めるように、体の力を  
抜いていく。  
「ん、きゃ!!」  
 辛抱強くマリアを溶かしたハヤテが、マリアの体を胸の前で背から抱きしめた。  
マリアの目の前でいたずらっぽい目をしたナギが手と膝を突いて見上げている。  
「マリアさん…」  
「んあ!!」  
 ハヤテはマリアの膨らみをメイド服の上から手のひらで握り、ゆっくりと数往復  
動かした。続いて胸に触れられて恥らうマリアの胸元を脱がせていく。  
「あ、ハヤテく、んむっ…」  
「はむんっ…」  
 ナギが背を伸ばしてマリアの口を唇でふさぐ。近寄って両手をマリアの頬に触れ、  
望むままに唇を絡めた。その間も手際よくハヤテはマリアの胸をあらわにしていく。  
マリアは目を閉じ、腕を折りたたみ、手のひらをきゅっと握って、口付けと脱衣を  
受け止めた。  
「マリアさんの胸、綺麗ですよ…」  
 双丘を剥き出しにさせたハヤテがマリアの耳元で囁く。  
「んっ、ぁんっ、んんんっ!!」  
 熱い囁きに反応し、胸への接触に声が漏れ、そして裸の乳房をなぞるように  
掴まれて、喉の奥から声無き叫びが上がった。  
「胸、敏感なんですか、マリアさん?ソフトなのと……強めなのと……どっちがいい  
ですか?」  
「ふ、んん、ふんっ、んっ、ん…んんっ、ふ、んんっ!! んっんんっ!! む!! んー!!」  
 ハヤテが優しい愛撫と激しい愛撫を交互に加える。マリアの口からは、それを  
みっちりとふさぐことに専念し始めたナギの為に、こもった吐息しか聞こえない。  
だがそれだけでも、愛撫の仕方に応じて異なった感じ方をしていることがわかる。  
「どっちも…気持ちいいみたいですね。揉み心地、僕もとても気持ちいいですよ…」  
「ん、ぁんんっ!!」  
 口と乳房を蹂躙され、マリアは時々身をよじりながら官能を高めていく。ハヤテの  
欲望を込めた手の刺激が次々と白い肌に重ねられ、ナギの吐息とハヤテの声が頭の  
前後で響き合った。  
「そろそろ、ここは……」  
「んぁああああっ!! ひあっ!! ああっ!!」  
「んはっ?」  
 ハヤテの左手がマリアの乳首をきゅっとつまみ取る。膨らんで敏感になっていた  
突起をいきなり強く刺激され、マリアはナギを振り切って仰け反り、高い叫びを  
上げた。  
「もう、すごく硬くなってますよ…」  
「は!! はぁあっ!! んあああ!!」  
「ほら、お嬢さま…」  
「お?」  
 ハヤテは左胸の乳首を指で弄りながら、右胸の乳首をナギに向けてせり出すように  
マリアの乳房をしごいた。  
「ん、美味しそう… む…んっ…」  
「あ、ナギっ、ひぃん!! あっあっ、ぅあんっ!!」  
 ナギがマリアの右乳首にしゃぶり付く。唇で、舌で、歯先で、上手に味わう。  
「ちゅ… えっちなマリア、ん、おいひいよ…」  
「ひゃぁああ!! ああっ、ううん、ああぁっあっあっ!!」  
 マリアは胸元に来たナギを抱えて、二人に責められている両乳首から溢れ出る  
快楽に押し流される、自分自身をつなぎ止める。そうして頼るものを得たマリアは、  
かえって送り込まれる快楽のなすがままに、胸への愛撫に気を占められてしまった。  
だからハヤテが右手を降ろしてスカートをめくり、股間に手を伸ばしているのが、  
意識の外に置かれ、迫る次の攻め手に気付かなかった。  
 
「うぁああぅっ!? あんんっ!!」  
 ハヤテがマリアの下着の上から秘所をこすると、マリアは一段と色づいた声で  
反応した。反射的に足を閉じるが、ハヤテの手を股間から除くことは出来ず、場所を  
把握したハヤテは秘裂に沿って指を動かす。  
「ふぅん!! ひん、あっふっあぁん!! あんっ!! ああんっ!!」  
「マリアさん、ここ、濡れてるじゃないですか。」  
「あっ、いやっ、あんっだめっ!! あっあっああぁっ!!」  
「だめ、じゃないでしょう?ここが、いいんでしょう?」  
「あっあああああっ!!」  
 ハヤテは強く右手をマリアの股間に食い込ませ、左乳首を弄っていた左手を、  
ナギが乳首をついばむ右胸に回し、後ろに引き寄せてナギの口から奪い取った。  
「んっ、もう…」  
「お嬢さま、マリアさんお嬢さまに乳首を舐めてもらって、気持ちいい、気持ちいい  
って…たくさんここをぬるぬるにしちゃってますよ。」  
「ちが、ふぁんっあん!! あふあっん!!」  
 不機嫌な顔を見せたナギだが、ハヤテの囁きに興味をそそられ、しゃがんで  
マリアの股間を覗き込む。  
「あぅ、や、ああぁんっ!! はあんっ、あんはあんあんああん!!」  
「……ん、マリアー、えっちな匂いがするよー…」  
「や、ナギ、んあ!! ハヤテ君、ああっ、んやぁああっ!!」  
 顔をマリアのデルタに近付けて意地悪な声でナギがマリアをからかう。マリアは、  
濡らし、感じて痴態をさらす羞恥に、震えるような興奮さえ感じ始めた。  
 ハヤテはマリアの胸に添えた左手はあまり動かすことなく、股間に差した右手で  
秘所を愛撫することに集中した。他をよそに女陰を淫らにさせられるマリアは、  
まるでそれが自分がそういう望みと特にいやらしい器官を持つことを示しているかの  
ような錯覚を覚えさせられてしまう。マリアを抱くハヤテが、自分の精神と肉体の  
代弁者であるかのような錯覚が、マリアの羞恥を一層強める。  
「マリア…これ、触ってごらん…」  
「あ…? あんっ…!!」  
「あ、お嬢さまっ…!!」  
 ナギがマリアの左手を背のほうに導いて、ハヤテの勃起したペニスに触れさせた。  
一度驚いて離れたマリアの手が、再びゆっくりとそこに掛けられる。  
「ん、マリアさん…!!」  
「あんっ、ああっ、ふああぁんっ!!」  
「ほら、マリアが触るとハヤテ、気持ちいいって…」  
 ナギにそそのかされるままに、ハヤテに花弁を弄られるままに、マリアは初めて  
触れる男性器を握り、熱い軸をゆっくりとこねた。  
「あっ、マリアさんっ、マリアさんっ!!」  
「ああんあっ、あうっ、きゃうんっ!!」  
 ハヤテの反応がマリアに、してあげたい、という感情を呼び覚ます。ペニスを  
握った手をたどたどしく動かし、背と腰をハヤテの体に寄せ、右手を股間を愛撫する  
ハヤテの腕に絡め、胸を抱くハヤテの手に乳房を擦り付ける。そして、わずかずつ、  
無意識に、閉ざした足が緩んでいった。  
「ん、は、マリア…さん…!!」  
 ハヤテはマリアのアプローチに、喜び勇んでテンションを上げた。腰にマリアの  
体を引き付け、怒張したペニスを押し付ける。耳たぶを噛み、息を吹きかける。  
胸を抱く腕を、乳首が当たるように掴みなおす。手首を深く股間に押し込み、  
足が緩んで自由度が上がった股間で指を暴れさせる。  
「あんっ!!あんあんんああん!!ああ!!あああぁああ!!」  
 
「うーん、マリア、飛んじゃいそう…」  
 弾き出されたナギがつぶやく。そしてナギはハヤテの背に回り、立ち膝で胸を  
押し当てた。  
「ん、ハヤテぇ…」  
「あふっ、お嬢さま!?」  
 ナギは手をハヤテの下腹に回し、ペニスを探り当ててしごき出した。それなりに  
男性器への愛撫に慣れたナギの手管は、マリアのウブな動きとは比べ物にならない。  
ナギは本気で射精を促すように手を動かす。  
「マリアさんっ、イって、ください!!」  
「ひああぁ!!あああ!!ひあん!!あぁん!!あんっっ!!」  
「ほえ?マリア?」  
 ハヤテは自分が出してしまう前にマリアを登りつめさせてしまおうと、それまで  
控えていたクリトリスへの本格的な愛撫へと突入した。下着の上からだが、すでに  
高まりきった体の敏感すぎる部位を連続して刺激され、マリアはたちまち快感の  
高みへと叩き込まれる。  
「あぁ!!あんぁ!!ん!!んぁ!!んん!!」  
「…マリアさん!!」  
 ハヤテの指がマリアのクリトリスを押さえつけたとき、ついにマリアの体が  
硬直した。  
「んん!!んーぁ、あ、ぁんんぁああああぁぁぁああ!!」  
「…マリア、さん……」  
「……んあぅ、はー、ふ、んうーー、はぁーっ…」  
 ハヤテはそっとマリアをベッドに横たえる。そしてまだ息子をいじり続けていた  
ナギの細い腕を引き剥がした。  
「お嬢さま、駄目ですってばー。」  
「んあ、ハヤテ、出していいのに…」  
「マリアさんは初めてなんですから、男は長引かせない状態の方がいいでしょう?」  
「あ、そっか…」  
 ナギはハヤテの腰に手を伸ばすのを止めて、マリアの横に這い寄った。  
「聞いた?マリア… ハヤテ、優しくしてくれるって…」  
「んんっ… ナギ…」  
「ん…マリア…」  
 マリアの顔に寄って囁き、舌と唇を絡め合わせる。  
「…お嬢さま、そろそろ代わっていいですか?」  
「…ん、ハヤテ、妬ける?」  
「いえ、マリアさんの服を脱がさせてもらおうと…」  
「…妬けない?」  
 ナギが少し不安そうに問いかける。ハヤテはナギの髪を優しく撫でて答えた。  
「僕はナギの愛を信じてますから。どんな時も、何をしてても、疑いはないです。  
 だから、これくらいのことは…」  
「ハヤテ…」  
「ゲームやアニメに夢中になっている時のことを思えば、そんな時でも愛してると  
 誓ってくれたナギに嫉妬を持つほどのことではないと…」  
「…なんか馬鹿にされてる気がするぞ。」  
 眉をしかめるナギを見て、マリアがクスクスと笑う。  
「笑うなマリア。…ありがとう、ハヤテ。実はちょっと、不安だったんだ。」  
「さすがに相手が男性だと、生理的に困ってしまいますが。というか、  
 僕がマリアさんを抱くのをお嬢さまが嫉妬もせず認めたことの方が…」  
「認めてないぞ。」  
 ナギの言葉にハヤテが凍りつく。  
「マリアがハヤテに手を出してもいいというだけだ。ハヤテの浮気は許してない。」  
「ちょ、お嬢さまいまさら!!」  
「だからマリアに手を出したらまず冥王星までぶん投げてやらねばならんのだが…  
 月が邪魔するので、まだ完全に技をかけることが出来んのだ。命拾いしたな。」  
「…邪魔してるのは地球の重力じゃないかしら。」  
 ナギの小悪魔的な笑みを見て、ハヤテはほっと息をつく。ナギはハヤテの体を  
引き寄せて、自分とマリアに触れ合わせた。  
「…ハヤテ。私も、ハヤテの愛を、信じてる。きっとこれからもたくさん嫉妬して  
 見せるけど、絶対私を大事に思ってくれてるって、信じていいよね…」  
 
「んあっ……」  
 最後の衣服であるショーツを引き抜かれ、マリアは思わず声を上げた。  
「マリアさん、とても綺麗です…」  
 仰向けに横たわるマリアの体を、ハヤテがその足元から眺める。マリアは片手で  
繁みをその視線から隠した。もう片手を握り枕を並べて横向きに寝そべるナギが、  
隣で恥らうマリアの顔を見詰めている。  
「マリアさん…」  
「ん…」  
 ハヤテはマリアの足先から腰に向けて手を肌に滑らせ、体を前に進めた。足や腰を  
触りながら、マリアの胸の上辺りまで頭を持ってきて、表情をうかがう。  
「んぁあああっっんん!!」  
 マリアの乳首と内股が、ハヤテの口と指で愛撫される。交互に左右の乳首を噛み、  
熱くなっている肌をまさぐった。  
 ひとしきり責めると、ハヤテは顔をマリアの目の前にせり出し、マリアの手に  
片手を乗せ、もう片手を太ももに乗せた。  
「足を…開いて。大丈夫、怖くないから…」  
「……っ……はいっ……」  
 ハヤテの言葉に、マリアは羞恥心を棚上げにしてわずかに膝を折り開く。ハヤテは  
片膝をその内側へ置き替えた。  
「こっちの指でするから、この手はこっちの手を掴んでて…」  
 マリアの太ももと手を指であやす。言われるままに、ハヤテの手を探って握った。  
「ほら、指…」  
「あんんっっ!!」  
 ハヤテがマリアの花弁をそっと撫でる。マリアはかなり大きな反応を見せ、一度  
達した後の体が治まりきっていないことを示した。  
 ハヤテはもう少し秘唇の奥へ優しく指を触れさせる。濡れ具合も反応も、処女で  
なければもう前戯が要らなそうなくらい進んでいた。  
「ああっんっ、ああぅ、ああんっ!!」  
「マリアさん、ここ、とても可愛い……」  
「ああああ!!」  
「ん、熱くて、なか、気持ち良さそう…」  
「あ、いやぁ、あんっ!!」  
 ハヤテは念を入れつつ、自分とマリアの気分を高めようと、言葉と指でマリアを  
刺激する。マリアは手を握り締め、足を閉ざそうとしてハヤテの足に阻まれた。  
「ああぅ、うんんっ、ああっ!!」  
「…んっ、マリアさんっ!!」  
 マリアもハヤテもどんどん興奮がエスカレートしていく。  
 
「あ、だめぇ、あ、ハヤ、テ、くんっ…!!」  
「マリアさん、はっ、っ!!」  
「んんっ!!」  
 マリアが追い詰められた声を上げるまでになって、ハヤテは秘所から指を離し、  
その手でマリアの足を押し開いた。両膝をマリアの足の間に置いて、立ち位置を  
前後に微調整する。  
「ふぁ、ハヤテ君っ?」  
 ぼーっとしているマリアの向かいで、ハヤテが股間の剛直を反り返らせていた。  
その男性の欲望の印は、ハヤテがマリアに覆い被されば、強い腕に割り開かれた  
マリアの股間に突きつけられるように狙いがつけられているが、今のマリアには  
そこまで細かい手はずを察することはできない。ただ、いよいよその時が来たと、  
それだけを悟って、心臓の鼓動を激しくする。  
「マリアさん…いいですか?」  
「は、あっ、はいっ……!!」  
 ハヤテの最後の確認の言葉に、マリアが引き返せない承諾を与える。  
「あ、ハヤテ君…!!」  
「マリアさん……」  
 ハヤテは前に倒れて腰をマリアの太ももの間に寄せた。片手で体を支え、片手を  
ペニスに添えて、張り詰めたそれの先端を濡れた花弁の中央に押し当てる。  
「んんんっうんんっ…!!」  
「ん…!!」  
 亀頭が侵入口を求めて秘唇を蠢くだけで、ハヤテもマリアも言葉にならない快感を  
味わう。強く誘惑されたハヤテは次の段階を求めて膣口に辿り着くと、狭い入り口に  
すぐさま先端を押し込んだ。  
「はあっあっあっっ!!」  
「あ、うぉっ…!!」  
「ひあ!!ああ!んああ!!」  
「んああ…マリアさん…!!」  
 ハヤテは衝動と理性、征服欲と庇護欲のぶつかり合う混濁の快楽を味わいながら、  
マリアの処女の証の前で踏み止まっていた。  
「マリアさんっ、マリアさんの初めて、貰いますっ!!」  
「ひっ!!いっ、あひいぃっ…!!」  
 ゆっくりと、ハヤテのペニスがマリアの処女を散らして進んでいく。葛藤していた  
ハヤテの意識は、破瓜を宣言することで、愛しい女性の処女を奪う行為に集中し、  
欲求と配慮がすべてそのことに向けられた。  
「ひあ!!あぁあ!!んんぁぁんああ!!」  
「マリア、さん…」  
「ひん!!んあぁあぁっ!!あっ、ふっ…!!」  
 マリアは痛みに叫び、喉を仰け反らせ首を振った。やめて、とだけは言うまいと、  
わずかに残る意識で自我を保つ。ハヤテはきついマリアの中をさらに進む。ペニスに  
添えていた手をベッドに突き、腰を突き沈めていく。  
「マリアさんっ、奥まで、入った…!!」  
「はうっううっっ、ひぁ!!あ!!ああぁ!!」  
「マリアさん、マリアさんっ…!!」  
 ハヤテは締め付けられているペニスを一番奥にぎゅっと押し付け、動き出したい  
欲求を堪えて、マリアが落ち着くのを待った。傷と侵入の痛みの中、マリアがやっと  
ハヤテの呼びかけに反応できるようになる。  
「あぅ、ハヤテくんっ…」  
 
「マリアさん、入りましたよ…ちゃんと、マリアさんを、貰いました…」  
「うあ、あ、うんっ、うんっ…!!」  
「マリアさん…」  
 ハヤテがそっと頭を屈めてマリアの唇に口付ける。マリアも刹那、痛みに最大限に  
抵抗して、唇から愛情を伝えた。  
「は、ふ、ひぁん、ハヤテくん、うれしいですっ… 痛いけど、あっあっああっ……  
 しあわせに、してくれたっ…!! ハヤテくんっ…!!」  
「僕も、とても、幸せで、マリアさんが、大好きですよ…」  
「ん、い、んはぅっ、ハヤテくん、ね、あとは好きに、動いて、いいです…よっ…」  
「マリアさん、初めての時は無理は――」  
「はじめてだからっ、はっひああっ!! …それくらいしかっ、愛してあげるのが、  
 できないんですっ…… ふ、んうっ… はじめてからっ、ハヤテくんだからっ、  
 愛して、あげたいっ…!!」  
「……マリアさん…」  
「ひゃ、ハヤテ、くんっ…!!」  
「わかりました。マリアさん、マリアさんを、思いっきり、愛します。少しの間、  
 無理を、堪えてください。マリアさんに愛してもらえるから、多分、僕はすぐに  
 気持ちよくなって、痛いのは終わりますから…」  
 ハヤテはそう告げて、ペニスをゆっくりと引き戻す。マリアの膣口に亀頭を埋めた  
位置で止まり、体を構え直した。  
「んぁああっ!!」  
「いきます!!」  
「んんあぁ!!ひあっ!!ああぁっ!!」  
 腰の運動でマリアの中に連続して凶器を叩き込んだ。マリアの叫びに構わず、  
膣の圧迫をものともせず、ペニスがなぞる肉壁の凹凸や亀頭が叩く最奥の感触を、  
ひたすら汲み出しむさぼっていく。  
「はふっ、あふ、う、あひぅ、んっっ、ああ!!」  
 マリアが苦しげな呻きを上げる。ハヤテは彼女の処女喪失の苦悶を、それに耐えて  
いてくれる愛情を、しっかりと体で覚えるべく感覚を研ぎ澄まし、行為に熱中する。  
「マリアさんっ、いい、熱いよっ!!」  
「はぁああ!! あ!! ひ!! んん!!」  
 ハヤテはマリアの熱と締りを最大限感じられる、ちょうどよい位置を探って、  
そこに男根を繰り返し深く埋め込む。引けばすぐ戻りたくなり、押せば病み付きに  
なりそうな刺激が得られ、慣れとも合わせてペースが上がり、快楽も高まった。  
「マリアさん、気持ちいい、あ、マリアさんの中で、僕のがっ…!!」  
「ふあ、ひ!!ふん、ふう、んあんっ!!」  
 ペニスから高まる肉の快楽が、マリアの女に侵入して性欲を満たす状況からくる  
精神の快楽をますます刺激する。欲求が心と体の奥底から高まり、さらに激しく  
マリアを求める。マリアは求められているということにすがって、叫び呻きながらも  
苦痛を受け入れた。だがこれが長く続けば、おかしくなってしまいそうな不安にも  
あがらわなければならないでいた。  
「んっ!!んっ!!んんっ…!!」  
 不安を押し留めてマリアが呻く。ハヤテは荒い息と共に腰を動かす。しばし、  
間奏のように音と喘ぎと息のみの時が過ぎる。  
「マリアさん、もう、もうすぐ…!!」  
 間奏が終わり、ハヤテの興奮した声が最後の節の始まりを告げる。  
「出そう、いっちゃいそうに、なる…!!」  
「あ、ハヤテくんっ…!!」  
「マリアさん、気持ちいい、出したいっ…!!」  
「ん、なかで、んはああっ!!」  
「んっ、マリアさん、出る、マリアさんの、中で、もう出る、いくよっ…!!」  
「はうん!!ひ、あふ、んぁぁあっ…!!」  
 ハヤテは限界に来たペニスを、マリアの奥に小刻みに叩き付け、膨らんだ亀頭で  
膣奥をえぐる。一突きごとに、精液が溜まっていくのが分かる。  
「いくよ、マリアさんっ…!!」  
「ん…あ……!!」  
 マリアの中に深く差し込まれたハヤテのペニスから、大量の精液が溢れ出る。  
男を初めて受け入れた場所が、その純潔を奪いつくされた。  
 

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