「あ…あの木」  
ハヤテが通りかかった場所にはあの時の場所があった。  
(ヒナギクさんとここで初めて会ったんだっけ…懐かしいな)  
スズメの子供を木に戻し自分が降りれなくなったヒナギクを思い出しハヤテは少し笑ってしまった。  
 
「コラ、何笑ってるの」  
そう言って出てきたのは今の話の主役ヒナギクである。  
「うわっ、ヒナギクさん何処からでてきたんですか?」  
「人を虫みたいに言わない、私はここたまに通るのよ」  
ヒナギクが少々不機嫌な様子で言う。  
 
「あのスズメも巣立っていったんですね」  
「うん、あの時カラスに食べられないで良かった…」  
巣にもう雛はいなかった、大人になったと言う証拠だ、  
そのことを二人は嬉しそうに話している。  
 
「…ねぇハヤテ君、両親に捨てられた時…どう思った?」  
ヒナギクが尋ねた、  
「いつかそうなる気はしてたんで…でも金額には驚かされましたね」  
ハヤテは笑って答えを言う。  
 
(…そうなんだ…でも……私が求めてた答えって…いったい…)  
ヒナギクと似た境遇を持つハヤテ、  
優しかったという繋がりを持っていたヒナギク  
ずっと粗末に扱われ続けたハヤテ  
この二人の両親に対する思いはまるで違うだろう。  
 
ヒナギクは思い出の木に近づいていった、  
(ここで会わなかったらハヤテ君とはどういう出会いをしてたんだろう…)  
ふと感じる少しの不安、だがその不安が大きくなっていく気がした。  
「ハヤテ君…私とここで出会わなかったら…どういう出会いをしてたと思う?」  
ヒナギクが不安げに尋ねる、  
「遅かれ早かれヒナギクさんとは出会っていたと思いますよ、接点を持たないことなんて考えられないし」  
 
ピクッ  
 
ヒナギクは自分の不安が無くなっていくのを感じた。  
「ハヤテ君!こっちに来て」  
ヒナギクがハヤテを呼ぶ、  
近づいていくハヤテ  
 
チュ  
 
いきなりキスをした。  
「ヒ、ヒナギクさん…?」  
ハヤテの顔はこれ以上ないってぐらい紅潮している。  
「いままでの色んな意味でのお礼!ハヤテ君からもなにかちょうだいね、じゃあね」  
ヒナギクはそう言うと走って帰っていった。  
 
呆然とするハヤテ、  
(僕からのプレゼントこれ以上素敵なプレゼントって一体…)  
走って息を切らしているヒナギク、  
(ハヤテ君、今なに考えているかな…ナギの執事でもいっぱい思い出作れるよね…ハヤテ君)  
儚い――――だけど自分の初恋も自覚していない少女の思いはいつか必ず叶うだろう。     =END=  
 

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