「もぅ!! またウチをそんな風にバカにしよって!! アホタレ執事!!」  
「わぁ!?」  
 ほとんど突き飛ばされるように、椅子に座らされたハヤテの足の間に、咲夜は跪いてストンッと腰を下ろした。  
「これでもなぁ、これでも……これでも……これでも…………」  
「咲夜さん?」  
 はじめは見下ろすハヤテを、挑むかのように睨んでいた咲耶だが、顔をみるみると真っ赤させながら、視線をどんどんと下げていく。  
 そしてある一点でぴたりと止めた。  
「経験豊富なおねーさんなんや、……ぞ」  
 手を伸ばす。  
 震えているのを悟られまいと懸命になりながら、でもやっぱり震えてしまっている指先を、恐る恐るでハヤテの股間へと伸ばす。  
 咲夜が何をしようとしてるのか、ニブい借金執事が気づいたのは、  
「え!? え、え、さ、咲夜さん!?」  
 自分の主人よりは年上とはいっても、まだあどけなさが残るいたいけな少女の手が、ふかっと優しく覆い被さったときだった。  
「な、な、なな、何を一体してるんですか!!」  
「……わかっとるくせに」  
 顔は伏せられているので、ハヤテからは咲耶の表情は窺い知れない。  
 それでもその切なそうな声から、少女がどんな顔をしているのか、想像するのは誰であれ難しくはなかった。  
「これからするのはな、アホタレ執事。ギャグとはちゃうんやで。信じんでもええけど……本気やから」  
「んッ……」  
 股間に添えてるだけだった手を、咲夜は言葉を紡ぎながら、形を確かめるみたいにゆっくりとゆっくりと、こねるように上下に動かす。  
 するとさすがにハヤテも、今まさにやりたい盛りの、思春期ど真ん中ストレート。  
 窘める為に開いた口からは、咲耶のはしたない行いを思わず、歓迎するような声が漏れてしまった。  
 ハヤテの顔も咲夜に負けないほど一気に赤くなる。  
「うえぁあ!?」  
 そのうえそこにさらに上乗せして、咲夜がびっくりして手を離してしまうほど、急激に牡器官が硬く大きくなってしまっていた。  
 わなわなと指差し仰け反る咲夜の眼前で、ズボンを軽く突き破らんばかりである。  
「よ、よしゃ。じゅ、じゅじゅ、準備は万端……みたいやな」  
 顔を明らかに引きつらせ、声は上ずりどもりながらも、咲夜は迷いを振り払うように、素早く次の行動に移った。  
 ジーーーーッ  
 チャックを降ろす音というのは、何だかとてつもなく間抜けである。こういった特殊な状況では、なおさらそう感じてしまうはずだ。  
 少なくともハヤテが感じているのは、まず間違いなくそれは疑いない。  
 
「おわあわぁ!?」  
 びっくり箱みたいに飛び出してきたそれは、またしても咲夜に驚きの声を上げさせ、芸人のような派手なりアクションで仰け反らせた。  
 元気一杯の勃起。  
 ぶっとい血管を浮かべているそれは、ぴたりと、咲夜の眉間の辺りに狙いをつけていた。  
「か、顔に似合わず、ご、ごっついやんけ、じ、自分の……」  
 下着の戒めから解放されて、エグいほど笠を広げている亀頭の裏側を、誇らしげに(かどうかはわからないが)見せつけている。  
 咲夜の視線を釘付けにするのに、充分以上のインパクトと破壊力だった。  
「……どうも」  
 ハヤテは一応の礼を言ってはみたものの、それはそれはもう滅茶苦茶にバツが悪い。  
 眼をついっっと、申し訳なさそうに、明後日の方向へと逸らす。  
「ほんなら、イ、イクでっ!!」  
「え?」  
 だから見ていなかった。  
 だから心の準備ができていなかった。  
 だから、  
「ひゃうッ!!」  
 ねっとりとした温かい粘膜に包まれたとき、思わず女の子みたいな、舌足らずな可愛い声が洩れてしまった。  
 とはいえ、  
「んぶぅッ!?」  
 やはりハヤテも立派な男の子である。  
 不意打ちで襲われた快感パルスの衝撃に、思わず咲夜の小さな栗毛の頭を、股間に押しつけるように抱きしめていた。  
 これには咲夜は堪らない。  
 恐る恐るグロテスクな物体の先端を、ちょこっとだけ咥える予定だったのに、丸く尖ったピンク色の肉の槍で、喉の柔らかい部分を、  
これまたハヤテと同様に不意打ちで、したたかに突き上げられたのである。  
「んううッ!? かはぁッ!! ごほっごほっ!!」  
 すぐに気づいたハヤテが、慌てて離さなければ、えらいことになってたかもしれない。  
 はぁはぁと荒い息を整えながら、咲夜は恨みがましくハヤテを睨みつける。その瞳は完全無欠で涙目になっていた。  
「殺す気かぁ!!」  
 でもそうやって怒鳴りながらも、しっかりと咲夜の拳は、《オイシイやん》、とでも言いたげに、ぎゅっと握り締められている。  
「す、すみません」  
「ほんま頼むで? 大人しくしときや、悪いようにはせぇへんから」  
「はい…………って、あれ?」  
 普段の習慣と反射で謝ってしまったが、何かもっと自分は、違った台詞を言わなきゃいけないんじゃないか?  
 
 と。  
 ハヤテが思えたのは一瞬だった。  
 ぬぅるるるる〜〜〜〜  
 咲夜はふるふると紅い舌を目一杯伸ばして、勃起を根元から亀頭へと、ゆっくりとゆっくりと、探るようにしながら優しく舐めあげる。  
「ひッ!?、んンッ……ふぅ……んン……んぅ……ぅああッ!?」  
 ハヤテの唇からはあっさりと、恥ずかしい嬌声第二波が、喉を晒しながら高々と洩れた。  
 今度は咲夜の頭を抱え込みはしなかったものの、牡の本能で腰はぐっと、口内を突き刺そうとするみたいに反り返ってる。  
「ぅッ……んむッ……ん……むぅッ…ぶも………ふぷ…………」  
 中学生。  
 知識としては《フェラチオ》というものを知ってはいるが、無論当然至極ごもっともで、実際に男にするのは初めての経験だ。  
 少女にとっては最早拷問に近い。  
 ちゅぷ…ちゃぷ……ちゅるる……にゅちゅ……ちゅぷ…………ちゃぷ……にゅちゅ…………  
 それなのに咲夜はもう、苦しくって鼻ですんすんとしながらも、ハヤテの勃起から唇を離そうとはしなかった。  
 男とは思えないほど細い腰。  
 咲夜は抱きつくみたいに手を廻して、健気に頭を振りたくろうとしている。  
「んぅッ……ふぅんんッ………ん……んンッ………ふぅ…………んむぅ……………」  
 ただ小さく狭い口内では、問答無用で巨大なハヤテの勃起を、満遍なく愛撫することなどは、頑張ってはみてもとてもできそうにない。  
 亀頭だけが重点的にしゃぶられている。  
「あッ、咲……ああッ……も…ぼく………もう……ダメッ……あぅううッ………ふぁッ!!………咲夜さんッ!!」  
 結果としてはそれがよかった。  
 たどたどしい口唇愛撫ながらも、ツルツルとしている勃起の表面を丁寧に、それでいて情熱的に舐めしゃぶられて、ハヤテは悦楽の  
階段を五段飛ばしで、それはそれはもう、スピーディに登って上り詰めてイッた。  
 びゅぐっ!!  
 笠を広げて亀頭が膨らみ内側から爆ぜる。  
「んンッ!?」  
 口唇愛撫初体験の咲夜は、これには驚いて、目を白黒させながら勃起を吐き出した。  
 びゅッ・びちゅッ!!  
 そしてそこへ待ってましたとばかりに、ハヤテは咲夜の顔を目がけて、避けようもない至近距離から、青臭い精液を容赦なく浴びせる。  
 
 びゅッ・びゅぐぅんッ!!・びゅ・びゅるる〜〜〜〜  
「…………」  
 しつこいくらいに放たれるハヤテの精液に、咲夜は顔を白く汚されながら戸惑った。  
 なんやろ……この気持ちは…………。  
 メッチャひどいことをされているはずなのに、ドキドキと胸は高鳴り、身体は狂おしいくらいに熱く火照っている。  
 これが女の幸せってやつなんか?  
 額から唇に垂れてきた精液を、咲夜はぺろりと、ハヤテの視線を意識しながら、舌を考えうる限り、淫らに動かして舐め取った。  
「あ……う……うう……」  
 言葉にならない言葉を発しつつ、ハヤテの勃起が巻き戻し映像みたいに、むくむくと大きくなっていく。  
「…………」  
 咲夜は恥ずかしそうに目を逸らしながら、  
「次……イッてみよう…………」  
 まったく売れる気配すらないダメ芸人のような、全然張れてない声で、小さく小さく口の中で呟いた。  
 
 
                                           終わり  

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