3.
ハヤテがヒナギクを抱いて部屋を去った後。
そこに残されたのは、怯えるお嬢様とそのメイドだけ。
「ま、マリア・・・」
「どうしました、ナギ?」
「そ、その・・・ハヤテと、ヒナギクは・・・あのままだと、その・・・二人は・・・」
「うふふ、気になりますか?」
「あ、当たり前だ! だって、私のハヤテが、このままだと・・・っひぅ!? あ、やめ・・・!」
自分への仕置きよりもハヤテのことが気になってしまうナギのいじらしさにマリアは嬉しさを抑えきれず、
その気持ちを行動に変えて表現する。
パジャマに覆われていないナギの首筋の性感帯を指で摩って震わせておいて、
彼女のパジャマを簡単に肌蹴させると幼い胸と秘所に指を這わせる。
「ひぁ・・・!? あふ、や・・・んっ! あぅ、やめ、マリ・・・あぁっ! や、だめ・・・あひ!」
毎晩毎晩飽きることなくナギをよがらせ続けた手指は、彼女の嗜好も弱点も熟知している。
故にナギは抵抗など許されるはずも無く、マリアの思うままにはしたなく声を上げるばかり。
「や・・・んっ! あふ・・・ひ、あ、うく―――っ! あん、マリあっ! まりあぁっ! や、ひぁあ!」
ハヤテとヒナギクのことも気になる。
だが、マリアに耳たぶを甘噛みされ、首筋からうなじにかけてをねっとりと舐められ、
既に尖っている乳首を捏ね回され、潤んだ秘所に指を沈められ、処女膜を撫でるように膣内を弄り回され・・・
「ふゃ・・・あぁあ! ひぁ、あふ! っやぁああ! ひぅ、い、ひゃあんっ! あ、ふ! んぅう!」
すぐに、何も考えられなくなる。
いつもと同じように・・・彼女の思うままに声を上げさせられるだけの、お人形。
とめどなく送り込まれる悦楽に逆らおうという考えすら浮かぶことなく、身体も脳も心も全部蕩けてしまう。
あとはこのまま・・・いつもの様に、溶けるように意識が遠のいて、いつしか夢に落ちるだけ・・・
・・・のハズが、突然に身体を這い回るマリアの指や舌の感触が消え失せる。
「ん・・・マリア? 私はまだ・・・眠っていないぞ・・・?」
恍惚とした、夢うつつといった表情で声をかけてくるナギに、
楽しそうな、そして意地の悪そうな笑みを浮かべながら・・・
「うふふ、私としたことが、うっかりしていましたわね。
ついいつもの調子で可愛がってあげてしまいましたが、今夜はお仕置きですから、
簡単には楽にさせてはあげませんよ〜?」
「え・・・」
そんなマリアの邪悪な雰囲気に気付いたか、はっと目を見開いて身構えようとするが、
既に彼女の愛撫で骨抜きにされた身体は、何一つ本来の持ち主のいうことを聞いてくれない。
「そうですわねぇ・・・ナギがヒナギクさんをどんな辛い目に遭わせたのか・・・
いい機会ですから、身をもって知っていただきましょうかね〜♪」
楽しそうな声で、恐ろしいことをさらりと言ってのけると、
怯えるナギを尻目にサイドテーブルの引出しを開けて、中身をごそっと取り出すと、
ナギにそれが何なのかよくわかるように敢えて彼女の顔の横に並べてゆく。
「ま、マリア・・・? そ、それ・・・使う、のか・・・」
「ええ、折角ですし、全部使っちゃいましょう♪」
「ぜん・・・ぶ・・・?」
「そうそう、でもその前に、まずは先にこれでしたわね〜」
そう言ってナギの両手を掴み、バンザイさせるように頭上へ引っ張り上げると、
ガチャ、と音を立てて彼女の腕に手錠をかける。
「ま、マリア!? なな、何を!?」
「あら、もう忘れちゃいましたか? ナギがヒナギクさんにやったコト、ですわよ?」
「な・・・や、やめろっ! そんな物無くても、逃げないからっ! だから、外して・・・!」
「うふふ、だ・め・で・す・わ♪ 逃げなくても、折角の飾り付けを外されてしまってはいけませんからね〜」
「・・・飾り・・・付け?」
「ええ、これらを全部使って、ナギのこと・・・可愛く着飾らせてあげますから、ね・・・」
そう言って、ナギの傍に並べたたくさんの物のうちの一つを手にとって、カチ、とスイッチを入れる。
途端に鳴り出す、ヴヴ・・・ン、という振動音がこれから我が身に降りかかる責め苦を連想させるが、
ナギはただ・・・怯え震えることしかできない。
そんなナギの姿は、それこそ一線を超えてしまいたくなる程に“そそる”のだが、そこは敢えて踏みとどまる。
例えどのような形であるにせよ、マリアがこの小さな主に抱くのは、主従を越えた家族としての愛情。
だからこそ毎夜のようにその身体を弄びながらも、純潔だけは絶対に侵さなかった。
―――いつか、彼女が自ら選んだ相手に捧げられるように、と。
そして今、彼女は一人の男性を選ぼうとしている。
ならば、惜しいとは思うがこの少女を女にするのは自分ではなく、彼の役目。
そしてその彼が嗜好や良識の壁を越えて少女を散らす行為に走らせるために、
少女を魅力的に、魅惑的に仕立て上げるのが、彼女の役目。
―――うーん、でもやっぱりちょっと惜しいですわね・・・
せめてヒナギクさんの初めてくらい、わたしが頂いちゃってもよかったかしら・・・
でもヒナギクさんはこれからハヤテくんがお世話になる方ですし、
やはり最初にハヤテくんにモノにして頂くべきでしょうねぇ・・・
仕方ありませんわ・・・今はこの過程を楽しむことで我慢して・・・
振動音の音源をナギに近づけると、彼女の可愛いらしい顔が怯えで引き攣る。
恐怖で声が出せないのか、ひたすらイヤイヤするように首を振るその仕草に、
マリアはゾクゾクするような快感を覚える。
―――それに、そうですわね・・・一度ハヤテくんにして貰いさえすれば、
あとは私も・・・ナギの中でもどこでも、好きなように弄ってあげられますから、ね♪
心底楽しそうに、うっとりとした笑みを浮かべるマリアの表情を、
ナギは恐れながらも・・・目を離すことができない。
あの表情をするときのマリアは・・・自分を徹底的に嬲り尽くす。
大事なものは決して奪わないし、傷も痛みも絶対に与えない。
ただ・・・快楽以外の何も・・・上も下も時間も場所も、何もかもわからなくなるまで、
いや、わからなくなってもなお延々と、快楽だけを注ぎ込まれる。
思い出すだけで心は縮み、身体は震え・・・なのに、身体の芯だけは、じゅんっ、と潤んだように熱い。
だが、そんな矛盾もどうせすぐにどうでもよくなるのだ。
諦め・・・というより思考を放棄したナギの身体に、微弱な振動を続けるモノがぴと、と触れる。
びくん、と身体全体が揺れ、頭上の腕のあたりでジャラ、と金属の鎖が澱んだ音を立てていた。