その日、綾崎ハヤテは白皇学院の図書室で借りた本を木の下で読んでいた  
冒険物でハヤテはそれを熱心に読んでいた  
そして、本を読み終わりハヤテは本を閉じた  
「あー、面白かった。教会の地下にあるダンジョンで主人公が毒のトラップにかかった時はどうなるかと思った」  
ハヤテはそこまで言うと、ん?と首を傾げた  
「あれ?なんだか妙に主人公に親近感が沸いたな・・・」  
そしてまたハヤテは首を傾げたがその思考はすぐに中断させられた  
「独り言言ってると変な人に見られるわよ、ハヤテ君」  
「ヒナギクさん?」  
ハヤテは真っ先に自分が寄りかかっている木の枝を見た  
「こ、こんにちは・・・」  
案の定そこには白皇学院生徒会長で高所恐怖症の桂ヒナギクがいた  
「こんにちはヒナギクさん、また降りられなくなったんですか?」  
「仕方ないじゃない!チャー坊がまた巣から落ちてたんだから!」  
耳まで真っ赤にしてヒナギクはそうまくしたてた  
うーと、涙目になっているヒナギクを可愛く思いこのままにしておきたかったがそうもいかない  
「ごめんなさい、降りるのを手伝えばいいんですね?」  
ハヤテは受け止められる手を広げる  
「話が早くて助かるわ、それじゃあ・・・」  
ヒナギクはえいっ!と言って気から飛び降り木の枝から飛び降りた  
ハヤテも受け止める準備ができていたから前のようにはいかない――――――はずだった  
問題なのはヒナギクが跳んだ距離  
ハヤテの予想よりも少し多く跳んでしまったためハヤテは急いで後ろに跳び何とかヒナギクを受け止めた  
「あっ―――――――!」  
しかし急に後ろに跳び直後にヒナギクを受け止めたためにバランスを崩してしまいハヤテはヒナギクを抱きとめた体勢のまま後ろにドン!と音をたてて倒れてしまった  
「いたたた・・・」  
ハヤテが目を開けるとそこには  
「・・・・・・・」  
今にも鼻の頭と頭が触れそうな距離に真っ赤になったまま固まったヒナギクの顔があった  
突然のことにハヤテも顔を真っ赤にして固まってしまった  
二人はその体勢のまま暫くの間見つめ合っていた  
しかし五分を経過したところで静寂は破られた  
「あぁぁぁぁぁ!!!!!!」  
二人はびっくりして声のしたほう向いた  
そこにはハヤテの主であるナギ怒りの形相で立っていた  
「は・・・・は・・・・・」  
「「歯?」  
「ハヤテの馬鹿―――――!!!!」  
みみをつんざくような叫びにハヤテとヒナギクは身を縮こまらせた  
その拍子にハヤテとヒナギクがさらに密着してしまいそれを見たナギは  
「ハヤテなんかヒナギクとデートでもしていればいいんだー!!」  
と叫んで走っていってしまった  
 
唖然とする二人、ちなみに体勢はいまだまったく変わっていない  
やっと気づいたハヤテとヒナギクはばっと離れたが  
「がっ!」  
ハヤテは勢いをつけすぎて真後ろの木にゴン!と鈍くも周囲の木に停まっていた鳥がいっせいに飛び立つほどの大きな音をたてて頭をぶつけた  
その衝撃でハヤテの意識はブラックアウトしていった  
「う・・・う、ん・・・」  
気絶していたハヤテは夢を見ていた  
(あれ・・・?なんだろう?)  
(暖かくて、柔らかくて、気持ちよくて、心地いいや・・・)  
それは本やドラマなどの中での表現で言えば母親に抱かれているようだというものだった  
しかしハヤテは母親にまともに抱かれたことはおろか愛情を感じたこともなきに等しかった  
だからこそ、ハヤテはそのときとても心地よく感じたのだった  
そのときに、唇に何かふれたような気がしたが特に気にならずすぐに忘れてしまった  
そしてハヤテはその心地よさの中に身を沈めた  
 
 
 
ハヤテが目を覚ましたの意識を失ってから一時間が経っていった  
一番に視界に入ったのはヒナギクの顔だった  
ヒナギクは気絶したハヤテに膝枕をしていたのだった  
「あ、起きた大丈夫?ハヤテ君?」  
その頬は少し朱がさしていた  
普段のハヤテならすぐに飛び起きていただろうが  
なぜかそうはしなかった  
「なにかして欲しいことがあったら言ってね」  
そう、微笑みながらヒナギクは言った  
ハヤテはそのときヒナギクに惹かれていることに気づいた  
その優しさに、その母性に、その愛情に、その微笑に  
ハヤテは彼女のことが好きだということを自覚した  
「ヒナギクさん・・・」  
「ん?なに?」  
「もう少し、このままで居させてくれませんか・・・?」  
ヒナギクの顔が少し赤くなったがすぐにまた微笑んで  
「ええ、いいわよ」  
と快諾した  
そしてハヤテは再び眠りについた  
主のことも、何もかもを忘れて  
自分が今までずっと求めていたもの  
愛情、母性、優しさ、暖かさ  
その全てを与えてくれる  
好きな人のそばで  
再び、心地よい眠りについた  
 
〜fin〜  
 

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