「天下一舞踏会〜DAISY or two〜」  
 
 
 
 
「サキ……」  
 何かに操られるようにサキはワタルを抱き寄せる。  
「ん……ぅ……んぅ」  
 サキの唇とワタルの唇が重なる。  
「んん………」  
 とても柔らかくて、とても暖かい。そのサキの温もりがワタルの口を塞いでいる。  
「んむ……はふぅ……んむぅ、ちゅ、ふ……」  
 ファーストキスはレモンの味とかよく言うが、コレは全くの別物だった。  
(…………甘い、これが……キス)  
「ふぅ……ちゅぅ、……んふぅ…」  
 ぐ、とサキは手を背中に回し、さらにワタルを引き寄せる。  
「ぷはっ、サキ……無理にこんなことする必要はねーよ……」  
『KISS : KISSだけで相手をその気にさせたら勝利』  
 両者の背後にある20に区切られたゲージ。  
 これが興奮している度合いを示すらしい。  
 合格点は15。相手を――口付けだけでそこまで興奮させろ、ということ。  
「若……、橘家を再建させるチャンスかもしれません……それとも、こんなこと私とでは……嫌なのですか?」  
「っ!! ちげーよ、サキとなら、まあ……」  
「ありがとうございます、若」  
 ぐい、とワタルに顔を寄せ――また重ねる。  
「んっ……ふっ……ちゅうっ……」  
 サキの舌がワタルの唇の隙間に入り込む。  
「――――!?」  
「……はふ、んむ、……ちゅるるっ」  
 その舌が唇以上に、熱く、甘く、柔らかく、ワタルの思考をどろどろに溶かしていく。  
 口内をなぞるようにぬめっていくサキの舌。  
 ピピピ、とサキのゲージが3まで点灯する。  
(こいつ……)  
「ふうっ、はむぅ、んちゅぅ……んんぅ、じゅる、れる」  
 さらにワタルの唾液を自分の口へ持ってこうとくねる舌。  
「じゅず……ぁふ…んむむ、れろぅ……」  
 一旦舌が引くと、今度は甘い蜜を載せた舌が進入してきた。  
(サキの……か)  
 果実のような甘さが口の中へと浸透する。  
 さらに蜜を塗り込むように這う舌。  
「んじゅ……、ちゅ……ちゅりゅ…じゅ…れる……ちゅう」  
 互いの舌が絡み合い、何かを吸い取るように纏わりつく。  
 
 ピピピピ、と7までサキのゲージが上がる。  
「んぅっ……」  
 口を離す、口元から零れた唾液が色っぽい。  
「若……若の味……おいしい」  
 ピ  
「……若…………」  
 ワタルの背後……そのゲージが1つ上がる。  
「嬉しい……」  
 がば、と抱きつき一気に舌をワタルの口の中に捻じ込む。  
「んむぅ……んちゅ……ちゅ……はふ…ちゅうー」  
 舐めまわる舌。  
 ピ、ピ、と秒を数えるように、上がっていくサキのゲージ。  
「……んちゅ……れうっ!」  
「ずずっ……」  
 ワタルがサキの舌を吸い上げる。  
 ピピピピピピピピピピ、ボン。  
 サキのゲージの天辺が吹き飛んだ。  
「あ……」  
「……あ」  
 
 
「サキ……その……わりーな」  
「いえ、お礼を言うのはこっちです、若」  
「は?」  
「その……いつか、こんな機会じゃない時にも……して、欲しいです」  
「……気が向いたらな」  
 既にお互いの顔はトマトのように赤かった。  
「……ありがとうございます」  
 にこ、とその赤い顔で可愛らしくサキは笑うのだった。  
 
 
 
――橘亘 二回戦進出。  
 
 
 
***  
 
 
――某教室。  
「これはこれは……ヒナギク女史」  
「クラウスさん……だったかしら?」  
「ええ、覚えていただき光栄ですな」  
「それで……あなたもこの変な戦いに参加するんですか?」  
「……本来なら三千院の執事風情が参加すべきではありませんがな……私にも会いたい人というのがいましてな、名も知らぬ相手ですが」  
「あら……洒落た夢ですね。なら――本気で相手しましょう」  
『テスト 数学 : 点数の多いほうが勝利』  
 表示されてるもののはそう書かれていた。  
 目の前に現れる2枚の紙。  
 片方はびっしり文字が書かれてあり、もう一枚は2行しか書いてないものだった。  
「それでは……私はこちらを」  
「私はこっちですな」  
 ヒナギクはびっしりと書かれた方を、クラウスは短いほうを選んだ。  
「クラウスさん、別に私と同じこちらでもいいんですよ?」  
「いえ、私はこちらで構いませんぞ」  
(ヒナギク女史……いくら短くとも2行で難問などありえん、失策だな)  
「〜♪」  
 サクサクと解き始めるヒナギク。  
(さて――私も)  
『とある数字があり、その数を除く約数の和がその数自身と同じとなる(6=1+2+3 のように)数字が奇数であるとき、とある数字を答えよ』  
(楽だな……この勝負、貰った)  
「……」  
 15分経過  
「……」  
「〜♪」  
 25分経過  
「…………………」  
「〜♪」  
(解けん…………?)  
 制限時間は30分。  
(そ、そんな馬鹿な……)  
 ちらり、とヒナギクの問題を覗き見する。  
『ケンタ君が100円を持って80円の消しゴムを買いました。 おつりはいくらでしょう。』  
(…………20円)  
 …………。  
(馬鹿なぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁっ!!)  
「あら、クラウスさん。時間ですよ、ホラ」  
 
 自動的にテストが採点されていく。  
桂雛菊 100点  
倉臼征史郎 0点  
「私の勝ちですね。それでは、ごきげんよう」  
「馬鹿なっ!! 何故っ!?」  
「……舌切り雀を読んで、出直したらどうかしら?」  
 クラウスの嗚咽をBGMにヒナギクは部屋を出た。  
 
 ちなみに――クラウスの問題は完全数を求める問題。  
 完全数においての奇数は現代まで――発見されていない。  
 
 
――桂雛菊 二回戦進出  
 
 
***  
 
 
「な、な、なな、何ここーっ!? そしてどうして私水着ーっ!?」  
「ねーさん、やかまし。今説明あったやん。強制参加ってのは気にいらへんけど願いを叶えてくれるんなら話は別や」  
 西沢とサクは屋内プールのプールサイドで突っ立っていた。  
 綺麗なプールで、ナギの屋敷にあったのと似てる。  
「水着はファンサービスやろ、不人気者への。はっはっは、ねーさん人気ないんやなー――つまりウチもやんっ!!」  
 くわっ、と叫ぶサク。  
「ねーさんそこは突っ込みや。突っ込まん者人にあらずや。無様なひとりノリツッコミになってもうたやん」  
「ご、ごめんなさい……」  
(この子……○学生?)  
 疑問が浮かんで質問しよう、とした時に文字が中空に浮かび上がった。  
『フェラチオ : 先に対象をイかせたら勝利』  
「………………ぶっ!!」  
 勢いよく口から空気が漏れた。  
「ねーさん、いい反応するやん」  
(ふぇ、ふぇふぇふぇふぇふぇふぇ、ふぇらちおっ!?)  
 
――フェラチオ  
 性交(セックス)の前戯として行われることが多い、女性が男性器を口に含んだり、舌を使って刺激する行為。  
『用意ができたかい?』  
 どこからともなく響く声。  
『対象ってのは彼のことだ』  
 すた、と海パン一枚の――彼が現れた。  
 その彼は――  
「ハヤテ……君?」  
 が2人。  
「何や、自分。何で増えてるん?」  
『これは綾崎ハヤテではない。――量産型ハヤテだ』  
「りょ、量産型っ!?」  
「何か弱そうやな……」  
『ちなみに赤いのはレアで力が3倍だっ!!』  
「赤い人間ってなんやねん!」  
『以上っ』  
「あ、逃げた」  
「しゃーないな……」  
 サクが片方のハヤテの前に立ち――海パンを下ろした。  
「うひゃっ! な、何してるのっ!?」  
「何ーってねーさん。ナニに決まってるやん」  
「ダジャレじゃなくて――」  
 脱ハヤテを見る。  
 自然と落ちる目線。  
 ぱおーん。  
「あわわわわわ」  
 ぼぼぼ、と顔を沸騰させ、目線をそらす。  
 でも脱ハヤテのそれが絶対重力のようにぐいぐい、と歩の視線を誘い込む。  
「………」  
(あ、あれがハヤテ君の…………)  
 ぽーっ、と見とれる。  
「ねーさん、はよう準備してや。勝負なんやしスタートは同時にせな」  
「はへっ?」  
 じと、と促すサク。  
「フェラ対決やろ、さっさとコイツイかせるんや」  
 
「え、えーと……」  
「なんや、ギブ? 願いがあらへんの? ウチはある、上方お笑い大賞の決勝進出や」  
 ――願い。  
(私は…………)  
 好きだった少年が突然学校へ来なくなった。  
 彼と――偶然再会した。  
 それで――チャンスの神様が目の前にいるかもしれない。  
「――やるわ」  
「はっはっは、相手がおらんとつまらへんしな。やるで」  
 両者、引けない願いを込めて――始める。  
 
 
「ハヤテ君……脱がすよ」  
 するする、と海パンをすり下ろす。  
 目の前に野生の像が現れた!  
「う、わー……」  
 ちっちゃくて可愛らしい弟のそれとは違った立派な男性の象徴。  
「な、舐めるよ?」  
「はい……」  
「ふはっ!? ハヤテ君喋れるの!?」  
「はは……一応は。よろしくお願いします、西沢さん」  
「う、うん。気持ちよくなって――ハヤテ君」  
 
 
「はむっ……ちゅぅ……」  
 サクの熱い、柔らかい粘膜がハヤテのペニスを包み込む。  
「んくっ、ふはぁ……ちゅぱ……ちゅぷ」  
「いきなり……咥えるんですか……」  
「……っぱはっ、量産機が文句ゆーんやない。あんたは感じてるだけでえーの。んむっ……はむ……ちゅう」  
 絡み付く粘膜、亀頭を舐め回す舌。  
 年齢不相応のテクニック。  
「んむぅ……ちゅぷ、ちゅぅ……」  
「あ、あ……」  
「れろれろれろ……んむぅ…」  
 亀頭を時計回りにぐるぐると、舌を這わせる。  
 思わずハヤテの腰が引く。  
「ひゃんや……まらまらやひぇ……」  
「何を言って……」  
「んちゅう……ちゅぶ、ちゅ、んむ……れる…ちゅ、ちゅ」  
「くっ……」  
 サクがさらに顔を動かし始める。  
「んぅ……ちゅ、はぅ……ちゅ、ちゅぶ、ちゃぶ、……ちゅ……れる」  
 絶妙な舌使いがハヤテを刺激する。  
「ん、んんっ……、なんや……自分、腰、今度は前に出とるやん」  
「え……?」  
「ふふ……そのままイき……はむぅ……ちゅる、れる、はちゅ……」  
 カリの溝を舌が這い回り始め、裏筋にも舌が責めこむ。  
 完全にハヤテの弱点をサクは発見した。  
(ココと、ココや……)  
 ぐっ、とその部分を舌で押す。  
 
 ぴく、とハヤテの腰が震える。  
(単純やなぁ……でも、ラッキーや)  
「ちゅる、はむ、……ちゅぶ、れろ、ちゅるっ」  
「あ……」  
「ちゅぶ、……むぅ、ちゅるる、はぅ、ちゅちゅ、……ぺちゅ、ちゅうううっ」  
 上目遣いでハヤテを見る。  
 恍惚とした表情で甘美な快感に浸ってる少年がそこにはいた。  
「がぶ」  
「にゃあっ!!」  
「何や自分……女の子が舐めとるんやで、しっかり見とき」  
「は、はい」  
「んふ、ふむっ、れる……んむ、じゅ、じゅぅ、はむ、ぺちゅ、じゅちゅ……」  
 わざと見せつけるように派手に口をモゴモゴさせ、音も大きくたてる。  
「んちゅ…ちゅぅ、じゅちゅぅ……じゅ、じゅ、じゅぅぅぅ、ちゅぅっ」  
 最後と言わんばかりに一気にペニスを吸う。  
「あ、あ――――」  
 
――――ビュルッ!! ビュクッ! ビュッ! ビュルッ!  
 
 ぎりぎりでペニスを抜いたサクの顔に熱い樹液が降りかかる。  
「わっ、アツう、……いつまで出るねん、これ」  
「はぁ……はぁ……」  
 脈を打ち続けるペニスが白濁液をどんどん吐き出し、サクの顔を汚していく。  
「あぁ……ナギもすごい出がいいの執事にしとるなぁ……」  
 べとべとになった顔を歪めて、ちゅ、とハヤテのペニスの最後の一滴を搾り取った。  
「さて――」  
 もう一人の少女を見る――――  
 
 
「んぐっ、んむぅ!!」  
 歩にフェラチオのやり方は全く分からなかった。  
 口に一気に含むと、喉に熱く、まだ柔らかいモノが当たった。  
「んぶっ、ちゅうっ!! てる、ちゅぶぶ」  
 それでも歩はあきらめない。  
 彼に気持ちよくなって欲しい。  
 ただその一心で、奉仕する。  
「んぐぅ、ずちゅ、んん、ちゅうう、ずじゅ」  
 絶え間なく顔を前後させる。  
 舌でぺろぺろとハヤテのものを舐め続ける。  
「んぐっ……ちゅるぅ、ちゅぅぅ、ずじゅじゅじゅじゅ!」  
「あ……」  
 ハヤテが熱い吐息を漏らす。  
(ハヤテ君が感じてる……!)  
「んぶ、れろぉぉ、ずじゅ、ちゅるる……ちゅぶっ」  
 ハヤテの様子を見る歩、それが――まさに上目遣い。  
 
「……ず……んん、ちゅぶ、ずずずっ!」  
 激しく顔を上下に動かし、唇で扱き上げる。  
 溢れるようにだらだら流れる唾液が絡み、その動きはとても滑らかだった。  
「んぐ…ちゅぅぅ、ちゅぶ、じゅぶ、じゅるるるるっ!!」  
「は……あ」  
 吸う、ということを始めた歩はハヤテがその行為で腰を振るわせたのを見た。  
(吸うと……いいのかな?)  
「ちゅぅっ、ずじゅぅ……じゅるっ、じゅぶぶ、ずちゅぅぅぅぅっ」  
「……っ」  
 ハヤテの体が身震いを始めた。  
「ン、ずちゅう……ず、ず、んぐ、ちゅぷ、ちゅぅぅぅ」  
 亀頭がビクビクと震え、大きくなり始めた。  
「んちゅぅぅぅ、ずちゅ、ちゅう、ぢゅるるっ!」  
「西沢さん……」  
「ぢゅるるるるるっ!! んぐ――――っ!」  
 頬をへこませ、勢いよく吸い上げる。  
 
――ドクッ!! ドクン!! ドクゥッ!!  
 
「んぶっ……んんんんっ! じゅぶ……んん」  
 ハヤテのモノの先端から温かい液体が迸り、歩の喉に当たり、さらに口内に溜まっていく。  
「ん……んぐ……んぅ……コク、んぐぐ、コクン」  
「はぁ……」  
「ん……ぷは」  
(……飲んじゃった、ハヤテ君の精液……)  
「西沢さん」  
「はいっ?」  
「気持ちよかったよ……それとキミの勝ち」  
「はい?」  
 すたすた、とサクが歩いてくる。  
「数秒の違いでねーさんの方が早かったらしーんや、これからがんばり」  
「あ……ありがとう」  
「それと――恋愛もな」  
「へ?」  
「好きなんやろ、こいつ」  
「え、あ、え、」  
「はっはっは、がんばり。この男も難儀やな」  
「あ、あ、ありがとう」  
 サクの笑い声のみがプールに木霊していた。  
 
 
――西沢 歩 二回戦進出  
 
 

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