「性教育…ですか?」  
 いきなりのマリアさんの依頼に、僕は思わずきき返せざるを得なかった。性教育というと  
あれですか、〔男の子と女の子の体のヒミツ〕やら〔性はエッチなことではない〕等の比  
較的教育的な本を思い浮かべるのですが、それですか?  
「ええ、そうですよ。ハヤテ君にナギの性教育を頼みたいのです。承諾していただければ  
 特別手当も支給できますよ?」  
 特別手当て。それはとても魅力的だけど、仕事の内容が判然としていて二つ返事で引き  
うけるわけにはいかないなぁ。  
「できればもう少し詳しく説明してもらえませんか?」  
 僕がおずおずと言うと、エプロンドレスを纏った女性はニコリと微笑み、軽くうなずいた。  
 
 
「はぁ…」  
 思わず溜め息がこぼれた。自分の隣の枕をチラリと見、今日もそこにいない少女−主の  
ことを想い思案する。  
「幼いとはいえ、ナギももう立派な女性ですのに…こんなことで良いのでしょうか…はぁ」  
 はやくも本日二度目の溜め息を吐き出し、カーテンを通して緑色に輝く朝日をぼんやり  
見つめていると バンッ と勢いよくドアが開いた。  
「おぉ、マリア!今日もいい天気だな! いやぁ爽快爽快。」  
 早起きはいいことだワハハと華やぎ髪を梳かすナギを眇め、マリアは安堵とも不安とも  
つかぬ心の揺れに苛まれる。本当にこのままで良いのか。生理がきて、恋愛にも性にも興  
味が芽生えているであろう少女を使用人と、それも男と夜を共にさせて良いのだろうか。  
その使用人はナギ自身の懇意で雇っている者であり、彼女は彼に告白されたと思っている。  
ナギの思考回路からすると、将来を共にする男なのだから同衾くらい当たり前なのだろう。  
が、そうは問屋が卸さない。もし半端な知識で事にでも及んだら…  
「ん?どうした。何を小難しい顔をしてるんだ? ささ、朝食だぞ!はやく食堂に行こう!」  
 パァっと笑いかけるナギをみると依然色気よりも食い気が勝っているようだが、それが  
いつ反転するともわからない。悪く考えれば、男−ハヤテが襲わないとも限らないのだ。  
もちろん彼のことは信頼しているのだが、人間の理性とは存外脆い。無防備なナギの姿を  
みればついムラムラきてしまったとしてもおかしくない。ならば先手を打つしかない。す  
なわち性の正しい知識を備えさせるのだ。正確な認識をもてばそうそう安易な行為にはう  
つらないだろう。(口にはできませんが、これはハヤテ君自身の教育でもあるんですよね)  
 つまりそういうことだ。  
 
 
「はぁ、大変なことになったな… 特別手当が出るとはいえ、年頃の少女に性教育だなんて。  
 普通そんなこと男の僕に頼むだろうか…?」  
 家とは少し掃除をしないだけで埃がつもり、どんどん朽ちていくものだ。だから少しも  
手を抜くわけにはいかない。上から下へ。これを基本にして家中を掃除してゆく。いや、  
館と言った方が正確なのだが、貧乏性の自分にはいまいちピンとこない。とにかく無駄に  
広い廊下の隅々まで一人ごちながら掃いて掃いて掃きまくる。  
 無心で掃いているうちにお嬢様の書斎の前にきた。今彼女はこの中で勉学に勤しんでい  
るはずだ。絵日記をつけていたり、なかなか可愛らしいところがある。  
「その彼女に性教育…。気が進まない。いや、しかしこれも執事としてお嬢様に必要な仕  
 事なんだろうな。うん。がんばろう!」  
 この時ばかりは自分でも嫌にポジティブだなぁと思ってしまった。  
 
 大晦日の侵入以来、お嬢様は僕の部屋によく来るようになった。ときどき僕を熱っぽい  
眸でみているような気がするが気のせいだろう。侵入はだんだんエスカレートし、いつの  
まにか一緒に同じフトンで寝るようになっていた。  
「考えてみればお嬢様のご両親はここにいないんだ。きっと寂しいのだろう」  
 お嬢様はまだ子供。隣に寝ていてもあまり意識したことはないし、することもないだろう。  
「それが性教育だなんて言われたら、意識しちゃうじゃないか…」  
 そして今夜もさも当然といった顔つきで、肩にバスタオルを引っさげたパジャマ姿でお  
嬢様は安っぽい扉をくぐった。さて、これから性教育をしなければならないのだが、一応  
授業計画は立ててあるから大丈夫だろう。  
「うぅさぶい。今夜も一段と冷え込んだな。はやく暖かい毛布にくるまりたいものだ。ハ  
 ヤテ、寝るぞ。」  
 心なしか頬が紅葉しているようだが、お風呂あがりだからだろう。  
「え?いえ、授業計画はちゃんと練ってありますから大丈夫ですよ。」  
 僕は努めて自然な笑みをお嬢様に向けた。次の瞬間にコブシがめり込んでいた。痛い。  
「何の話をしてるんだ? まぁいい、ささっ寝るぞ。ほら早くしろ」  
 お嬢様はいそいそとベッドにあがり、微笑みながら自分の隣をポンポン叩いている。う  
ん。まだまだ子供だ。この姿をみても僕はなんとも感じないし、もちろん下の自分も同様  
だ。お嬢様は寂しさを紛らわせるために来ているのに、マリアさんは何を勘違いしている  
んだか。  
 でも仕事は仕事。キチンと成し遂げないとな。  
 
 お嬢様がジトリとした目で見ている。早くしろというオーラがむんむん出ている。  
「お嬢様、申し訳ありませんが就寝前に少しやることがあります故」  
「なんだ?トイレならいいぞ、いっといれ。」  
 ツッコミ待ち状態なのだろうが、戦略的スルー。  
「どうしたら子供が産まれるかご存知ですか?言っておきますがコウノトリは違いますよ。  
 できれば具体的にご返答ください。」  
「む?私は眠いのだが答えねばならないか? … ならないのだな。う〜面倒じゃ。仕方  
 ない、答えてやるからもう少しその他人行儀な話し方をなんとかしろ。」  
 お嬢様は僕の真剣な表情を見取ってくれたようだ。  
「なんだったかな。たしか雄蕊と雌蕊が合体して受粉すると卵ができてそれを病院で摘出  
 するんだったな。割って出てきて初めて見た顔の持ち主を親と認識するはずだ。」  
 どこまでも真面目な顔だ。顎鬚などないのに親指と人差し指で顎をさすっている。  
「残念ですが違います。あ、そんな悲壮な表情しないでください。一部ですがあってますから。」  
「うぅ間違いなどあるハズない!真実はいつも一つなんだ!」  
「ええ一つですよ。単純にお嬢様が間違えただけです。」  
 お嬢様が僕の胸をポカポカと叩く。恥ずかしさを誤魔化しているのか悔しいのか。  
「だって、だって、首がとれる女児型ロボットを発明した小太りの中年も、金髪になると  
 戦闘力があがる異星人も、何もしてないのに急に子供が現れてたぞ!!わかるワケないじゃ  
 ないか!」  
 頭が痛くなってきた。これは本当に教育の必要性がありそうだ。  
 
「さて、では簡単なところからいきますよ。女性は第二性徴と共に月経がはじまります。  
 これは子宮内膜がはがれて体外へ排泄されることをさすのですが、お嬢様はお済ですか?」  
 お嬢様の顔が目に見えて真っ赤になった。  
「な、な、な、何を言い出すんだ!!そんなことお前に関係ないだろ! さっきからなん  
 なんだ?りょうじょゲフンゲフン 侮辱する気なら許さんぞ?」  
 やっと気づいた。お嬢様はマリアさんから性教育のことをきいていないのだ。なぜだろ  
う?なぜマリアさんは事前に通達しておかなかったのか…  
 みるとお嬢様は本当に怒りかかっているようだ。  
「まぁまぁ落ち着いてください。これは二人の将来のためにも重要なことですよ?幸せな  
 未来を迎えたければ、落ち着いてきいてください。」  
 僕にとって重要なのは借金返済に不可欠な給与のこと。お嬢様については正しい知識だ。  
「ふ、二人の将来って… もぅ 大胆な奴だなぁ… そういうのはもっとこう、ムードっ  
 てやつを考えて… いやでも私もそう思う。うん子作りは重要だな。」  
 そこまで考えてくれているのかと呟いてるお嬢様をみて、僕は何か誤解を招いているよ  
うな気がしたが、事がすんなりと済むのらそれでもいいか、とまたもやポジティブシンキング。  
 が、次の瞬間僕は自分の耳を疑うこととなった。  
 
「なら… 私の体に直接おしえてくれないか…? ほら、習うより慣れよって言うだろ?」  
 ベッドのシーツを人差し指でイジイジしながら、お嬢様はうつむいて言い放った。声が  
微妙に震えてることから緊張していることがわかる。きっと耳まで真っ赤だろう。  
 って僕もそんなに冷静でいられない。体に?体に直接って、やはり子供の作り方をだろ  
うか?そうですか?  
「バカっ、何度もいわせるな… まずは、その…、男と女の体の違いからおしえてくれ…   
 私は産まれてこのかた男性の裸というものをみたことがない。。。 金髪異星人のなら何度  
 もあるが、お前と体格がぜんぜん違うしな… やはり漫画は現実と違うのか」  
 そういうことなら、マリアさんからの依頼とも合致するような気がする。自転車の乗り  
方も講釈をたれられるより、転んで痛い思いをしても練習することが大切だ。そして体で  
覚えれば忘れることはない。実に合理的だ。お金を貰うのならそこまでしないといけない  
とも思う。  
「わかりました。ではお嬢様。そこのベッドに横になってください。」  
そして体への授業がはじまった。        
 
「えっと、まずは男性と女性の体の違いからでしたね。僕が立てた計画ではもうすこし後  
 にやるハズだったのですが、まぁ少しの前後なら計画全体には支障ないと思います。」  
 僕はそう言うと、カバンからプロジェクター本体とペン型小型カメラを取り出した。部  
屋の照明をやや落とし、カメラから伸びるケーブルを本体端子に接続した。昼の間に買っ  
ておいた自慢の一品だ。もちろんお金はマリアさんの財布から出ているのだけれど。  
 最近は量販店よりもネット通販の方が往々にして安いのだが、早々に揃えておきたかっ  
たので自ら秋葉原へと足を運んだ。純粋な電気街と思っていた町並みの変わり様にいささ  
か戸惑ったが、ここでは割愛しておこう。  
「これは32dBの静音設計ですので、稼動音等は気にならないはずです。  
 さらにDMD?HD2+チップを採用しているため非常に高画質ですよ。」  
 スイッチを入れると光の道筋がベッドの向かいの壁へとのび、ちらちらとチンダル現象を  
引き起こした。ポスターの類は何も貼られていない簡素な部屋だが、今はちょっとした  
シアターへと変容している。  
 
 壁には床が、すなわち僕が手にするカメラに写された映像が、手の揺れに合わせてブレ  
ながら放映されている。僕はお嬢様にパジャマのズボンとショーツを脱ぐよう指示した。  
「私から言い出したことだが、いざ脱ぐとなると恥ずかしいな…」  
 羞恥心に頬を赤らめながらも、緩慢な動作でズボンとショーツを同時にずり降ろしてい  
く。ベッドの上だから動き辛いのか、それとも照れているのか。おそらく後者だろうから  
僕は気を利かせた。  
「あの、恥ずかしければ全部脱がないで、フトモモのあたりで止めても大丈夫ですよ。用  
があるのはお嬢様の性器だけですから。」  
 お嬢様はピクリと反応し、ほっとしたような挙動で手を止めた。  
 今のお嬢様はベッドに横たわり、両腕を胴体のサイドに置いている。ズボンは中途半端  
にズレさがった状態で、下腹部と局部、それに足の付け根だけが露出している。ひょっと  
したら全て脱いだ状態よりも扇情的かもしれない。  
 
 と、ここにきて初めて焦りにも似た小さな感覚をおぼえた。それは些末で気にする程の  
ものではなかったが、確かにお嬢様の下半身をみて感じたようだ。まぁそれも無理ないと  
思う。産まれてこのかた女性性器の実物など見たことないのだ。それがたとえ毛も生えて  
いない幼い性器だったとしても、今の僕には十分刺激的なのだろう。  
 お嬢様のそれはまさに幼かった。自分の知識ではそこに毛が生い茂っているはずだが、  
前述のとおりつるっつるの無毛だ。いっそ清清しい。しかしそこはやはり性器。モーセの  
渡った海が閉じかけて兵士を襲おうとしているかのような割れ目があり、その先端はぷっ  
くりと膨らんでいる。未熟の果実というか、未発達故の美がそこにあった。  
 僕がマジマジと凝視しているのに気づいたのだろう、お嬢様が声を張り上げた。  
「な、何をしているんだ! ジロジロ見るな! そういう失礼な奴と、よく喋る口だけ野  
 郎は真っ先に死ぬんだぞ!なんとか拳〜と意気揚揚と飛び込んでも噛ませ犬で終わるのが  
 関の山だ!ハヤテ!お前はそういうやっわぷっ…」  
「はいはい、恥ずかしかったんですね。すみません。すぐに始めますからご容赦ください。」  
 僕はサブマシンガンの如き喚きを口を塞いで止めると、両脚を広げカメラをすっとお嬢  
様の性器へと近づけた。瞬間、壁一面にお嬢様の性器が映し出された。本や教科書よりも  
やはり実物で、それも自分のものの方がより良く身につくだろう。全てはお嬢様(と借金)  
を思ってのことだ。  
 
 お嬢様の様子を観察する。上半身を半分浮かせ、壁に映った光景と僕の手に握られたカ  
メラとを交互にみている。呆けたように開かれた口はわなわなと震えている。  
「はい、映像に注目してください。まずは女性の体から教えていきますよ。」  
 お嬢様はいまだ放心状態だが、構わず始める。  
「今映っているものがヴァギナと呼ばれる器官です。本来は膣のことを指す言葉なのです  
 が、日本では女性性器全体を呼称するのに使われているようです。さて、どんどんいきま  
 すよ。これが恥丘です。」  
 僕は胸元からとりだした収納式指示棒をかしょんかしょんと伸ばし、お嬢様の恥丘を突  
 ついた。刹那、お嬢様の体が文字通り飛び上がった。  
「ひゃっ! い、いきなり何を!? えぇいやめぇい! その打神鞭のようなものをしま  
 え! 私のここは大極図じゃないぞ!」  
 壁の映像が大きく揺れ、また性器を映し出した。お嬢様は肩で息をしているが、体勢は  
元通りだ。意外と律儀なところがある。  
 しまえと言われたら仕方ない。僕はかしょんかしょんと収納し、悩ましげな表情で問い掛けた。  
「う〜ん、困りましたねぇ。将来のために各部位の名称・役割を知っておいた方が良いの  
 ですが、嫌ですか? はぁ、僕の将来も心配だ…」  
 なんとなく先ほど感じた“誤解”を利用してみる。すると効果覿面。お嬢様は慌てだした。  
「ち違うのじゃ! これは、その、棒の先っぽが冷たかったからだ!暖かければ問題ない!  
 そうだ、ハヤテっ、お前の指を使え!」  
 …このお嬢様はさらりととんでもないことを言う・・。思いつきというか、後先考えないというか。  
だが指示されたからにはできる限りそれに従うしかない。彼女は自分の主だ。  
 
「では気を取りなおして、ここが恥お…」  
「ひゃわわわっ!!」  
 指で触った瞬間、お嬢様が奇声とも嬌声ともつかぬ声をあげた。  
「あの、お嬢様…」  
「なんだ!声をあげちゃ悪いか!?わざとじゃない、ついだ!つい!」  
「はぁ、しかし毎回そんな声をあげられては進みようがないのですが…」  
「む… わかった、できるだけ声を出さないよう善処しよう…」  
 お嬢様は難しい顔をして、うむむと唸っている。羞恥やら怒気やら焦燥やらで頭はオー  
バーヒート寸前なのだろう。水冷式冷却キットでも買ってこようか。  
「3度目ですが、ここが恥丘です。」  
「っ!」  
 僕はちょんとお嬢様の恥丘に触れた。今度は歯を食いしばって耐えてくれたようだ。う  
ん、これなら授業も円滑といえなくともそれなりに進むだろう。  
 続いて割れ目の両端を指でつまみ、くいっと少し広げてみる。カメラをより近づけ、内  
部が壁に映し出されるようにする。  
 
 お嬢様は新しい刺激に発作的に深く速く息を吸ったが、今回も耐えてくれたようだ。そ  
して壁に放映された膣を目の当たりにし、目を白黒とさせる。鮮明な画像は内部を余すと  
ころなく映しだし、そこが湿っていることまで克明に伝えてくる。  
「ここが大陰唇。こっちは小陰唇です。」  
 広げる指を親指と人差し指に変え、あいた他方の指でその個所を指差す。  
 お嬢様は壁にくぎ付けになり、自分の内部を呆然と見つめている。さすがに開きが悪い  
ため全てが見えるわけではないが、大体の情報を伝えるには十分だろう。  
「この奥にあるのが、見えませんが処女膜です。」  
「知ってる。なにかの漫画で処女膜を破ったのなんのと、漢どもが騒いでいた。膜を貫通  
 するのだから、さぞかし痛かっただろうに…」  
 お嬢様がぼんやりと呟く。猿のお尻並に赤くなった顔にやや荒い呼吸。大丈夫だろうか?  
「よくご存知ですね、お嬢様。 でもちょっと誤解してるみたいです。処女膜とは膣口にあ  
 るひだのことを指すんですよ。だから破くといっても障子に穴を開けるようにするわけで  
 はないのです。さらに言うと、処女膜は激しいスポーツ等でも破けたりするので、一概に  
 それを処女か否かの判別に使えるわけではないのですよ。」  
 少し余計な情報が混じってしまったが、多くて困ることはないだろう。  
 お嬢様は依然ぼんやりとしている。情報を与えすぎただろうか?すると、またもや過激  
な発言が飛び出した。  
 
「ハヤテ。私の処女膜は健在だろうか?なぁ確かめてはくれないか?」  
 僕はたじろいだが、このような発言にはだんだん慣れてきた。黙っていると思ったらこ  
んなことを考えていたのか。お嬢様の顔にかかった髪を手で払いのけつつ  
「それは難しいですね。お嬢様のここはこれ以上開きそうにないですし、みわける術もあ  
 りません。」  
「なら、いっそお前が破いてくれ… 誰かに破られて怖い思いをする、あるいは既に破れ  
 ているのではないかと疑心暗鬼にかられる。そんなのはいやだ。ハヤテ、お前が私を貫い  
 てくれれば、両方の悩みはいっぺんに霧散するんだ。なぁ?断らないよな?」  
「いえ、しかし僕はお嬢様の使用人であって、キズをつけるわけには…」  
 お嬢様が熱っぽい顔と双眸でジトリと睨み付けてくる。  
「なんだ?私の指示に不満があるのか? 私がいいと言っているのだ、はやくやらんかぁ!  
 それともお前は再起不能野郎なのか!? 新手のスタンド使いか!? くそっ!裁くの  
 はおっむぱっ!!…」  
 手がつけられない… どうやら本気で言っているようだがどうしたものだが。あぁ視線  
が痛い。そんなにジトリと睨まないでください… しかたない…  
 
「わかりました。では譲歩案を出します。女性の体に関してはここでいったんお終いにし  
 ましょう。まだ乳房や鎖骨などいろいろポイントはあるのですが、仕方ありません。お嬢  
 様の処女喪失の儀に僭越ながらも一役買いましょう。しかしここで条件です。」  
 なんだ?と目で訴えてくるお嬢様。僕が口を塞いでいるからだけど…  
「次は男性の体について学んでください。それを踏まえて、お嬢様には再度検討をしてい  
 ただきたいのです。よろしいですか?」  
 沈黙がただよう。お嬢様は逡巡しているようだ。迷うことはないと思うのだが。選択肢  
はこれしかないし。  
 お嬢様がむーむー言っている。僕は慌ててお嬢様の口から手をはずした。  
「ぷはぁ、貴様!私を殺す気か!この愚か者!えぇい!その条件のんでやる!だがいいか、  
 私の決意は決して揺るがんぞ。覚悟しておけ!。」  
 僕はお嬢様に微笑みかけた。親が子に見せるような笑み。下半身丸だしのいまいち威厳  
に欠ける姿だが、やはりお嬢様気質は生きているようだ。 さぁ、そうときまったら新しい教材  
を… って、お嬢様何をなさっているのですか?  
「ん?決まっているだろう。はやくはじめるぞ。」  
 お嬢様は当然だ、といった表情で僕のズボンのファスナーを降ろし始めた。  
「ちょっ、待って!待って下さい! 男性教材はくらうs あぁっ!」  
 
 ハヤテの手から放たれたカメラは床に落ち、ただ一点を映しつづける。  
 旧式テレビに質素な机。角部屋特有の天井に床に置かれた東スポ。  
 壁にはナギがハヤテのものにしゃぶりつく光景が映し出されていた…  
 
 
 皆さんはフグが自らの毒で死なない理由をご存知だろうか?これには諸説があるのだが、  
僕はこれが正しいような気がする。簡単に言うと、フグの毒はテトロドトキシンといい、それが体  
内の弁と結合し機能を停止させてしまうため死に至るのだ。しかしフグのそれは毒と結合  
しない。結合しないということは機能が止まらず、すなわち死なないのだ。ということは  
人間にも……………はっ!! ぼ、僕は何を…!? しまった。あまりのことに思考がト  
リップしてしまったようだ。いかんいかん。現実を直視しないと…  
 ってやっぱりダメだ!これは理解の範疇を超えている。  
 なぜお嬢様が釣り針に刺さったミミズに食いつく魚のように、僕のあそこを咥えている  
んだ!?ミミズて、自分で言って自分でヘコんでる場合じゃない。戦闘時はランドワーム  
くらい、ってまた現実逃避してる!ダメだ。向き合わないと!  
「あの、お嬢様?再度おたずねしますが、何をなさっているのですか?」  
「二度は言わん。」  
 あうっ。変なところで強情なんだから…  
 こうしている間にも、お嬢様は僕のアソコを口のなかでしゃぶっている。まるでタバコの  
フィルターをなめるように。  
 と、タバコが葉巻になりだした。僕は慌てて腰をひく。それこそちゅぽんと音がしそう  
なくらいに。お嬢様はあっという表情で遠のく僕のアソコをみつめる。その口とは、唾液  
が掛け橋となり繋がっている。  
 
「確かに僕は男性の体について教えると言いました。しかし、こんなことをしろとは指示し  
 ていないですよ?」  
 僕はいそいそとソレをしまおうとする。そこにお嬢様の手が伸びた。  
「いいじゃないか、それを教材にすれば。私のモチベーションも俄然アップするぞ?とい  
 うよりこれは命令だな。ハヤテ。これ以上続けるのなら、ソレを使え。」  
 譲歩案を出して譲ったのは僕の方なのに、その上にさらに自分の要求を通そうとしてい  
る。さすがお嬢様といったところか… 一度言い出したらきかないことは、身をもってよ  
く知っている。ためらいはあるが、やはり従うしかないのか…  
「しかたありませんね。たしかに男性性器の形状は個人差が大きいですし、できるだけ多  
 くのサンプルを目にした方が良いかもしれません。お嬢様の熱意にほだされました。」  
 僕は迷いを捨て、一度隆々たる我が分身をしまってからズボン・トランクスを脱ぎ捨て  
た。お嬢様は手で目を覆うなど少女らしい殊勝な態度は見せず、ただただ凝視している。  
「どうですか?これが男性性器ですよ。今は萎んでいますが、勃起時は日本人男性標準サ  
 イズより少し大きいくらいの17cmです。この状態だと少し皮が被っていますが、勃起時に  
 は全て出ますよ。」  
 恥ずかしさを見せないためにも、僕はプロフィールを一気に言った。お嬢様の視線がココ  
に集中している。お互い性器を露出しているわけだ。  
 
 そのことを意識すると、僕のアソコは顕著な変化を見せだした。マズイ。お嬢様の性器  
をみて欲情したなどとマリアさんに知れたら… “クビ”だ。  
 しかしその反面、これはチャンスだとも思う自分がいた。つまり勃起する過程をみせる  
ことができるのだ。これは有益な情報なのではないか?  
「お嬢様。よくみていてくださいね。今から僕のココは大きく、長く、硬くなります。これは  
 性的興奮を覚えた証であり、性行為の準備が整うことも意味します。」  
「もう見ている。」  
 お嬢様の顔色はやはり赤い。これだけ持続して赤さを保っていられるのだ。若いってい  
いなぁ。  
 そのお嬢様の目の前で僕のサムライブレードはゆっくりと、しかし着実に切っ先をあげ  
ていき、その切れ味を誇ろうとしている。  
 勃起するところを誰かに見られたのは初めてだ。なんというか、こういうのも悪くない。  
 お嬢様の性器を見る。おいしそうだ。さっきまで冴えていた頭がボウっとしてきた。銭  
湯にいけばフルーツミルクとコーヒーミルクを間違えてしまいそうだ。  
 やはり見せたのは間違いだっただろうか。教える側の僕が理性を失いそうになってどう  
するんだ。存外に人の理性とは脆いものなんだな…  
 
 しかし僕は最後の一線を越えるようなことはしない。頭が朦朧としようと、B-29がつっ  
こんでこようと、それに竹槍で挑めと言われようと、僕は職務をまっとうする。  
「いいですか?ここが亀頭です。」  
 僕は剥けたそこを指さし教授しだした。  
「由来は、そのまま亀の頭に似ていたからです。別名カリともいうのですが、これは雁と  
 いう鳥の頭部と似ていたため、雁の訓読みのカリがついたわけです。また、性交時に最も  
 感じやすい部位の一つがこの亀頭です。僕のは陣笠形と呼ばれる形状なのですが、形に  
 は個人差がありますが故、これが全てとは思わないでくださいね。」  
 お嬢様はほうほうと頷きながら、より顔を近づけてくる。余計意識しちゃうじゃないで  
すか… 僕の44マグナムはすっかり勃起しきり、血管が浮いてしまっている。ともすれば  
理性が暴発しそうなロシアンルーレット風の緊張の中、僕は懸命に続ける。  
「ここが陰嚢です。ここで精子が作られるのですが、精子は熱に弱いです。ブリーフ派の  
 性力は弱い、とされるのは体と陰嚢が密着するため、体温で精子が死滅してしまう場  
 合があるからです。ブリーフ派を否定する気は毛頭ありませんが……」  
 やはり僕の脳は普通の状態ではないみたいだ。精子・卵子の説明をすっ飛ばしてこのよ  
うな話しをしてしまっている。お嬢様を見る。やはり魅力的だ。無毛な性器は倒錯した保  
護欲をそそられるし、小ぶりな胸だって掌によく馴染むだろう。  
 
 神経が、思考回路が下半身に吸い取られているような気がする。まずいことになった。  
無性にお嬢様を抱きたくなった。そしてあの幼い割れ目に全てをぶち込みたい。小さな胸  
を揉みしだき、乳首に吸い付き、お嬢様の喘ぐ姿がみたい。この激情はもはや僕のちっぽ  
けな理性では押し留められそうにない。ああ、ここでお嬢様を犯したらどうなるかな?マリア  
さんは怒るだろうか。悲しむだろうか。クラウスは僕を殴り飛ばし、クビにするだろうな。でも、  
それらをこの身に受け止めてでも、お嬢様を得ることには価値があるように思える。犯したい。  
世間知らずの、ちょっと口の悪い我が侭なお嬢様をぐちょぐちょに犯したい。マリアさんにも一  
因があるんだからな、男の僕に性教育をやらせたマリアさんにも責任がる。お嬢様を犯したら  
真っ先にマリアさんのところへ行こう、そしてマリアさんの…………  
「ん? しかし待てよ―― 」  
 お嬢様が僕の釣り竿に手を伸ばしている。掴む気だろう。  
 待てよ、マリアさんはこうなることを予見できなかったのだろうか?あれほど優秀な人だ。男の  
僕と女のお嬢様を密室に入れ、性教育などさせたら行きつく先は目に見えているハズなのに。  
 
 湯沸し器のようにしゅっしゅと煮えたぎる僕の理性に、一粒の氷が投入された。ややも  
すると溶けそうになる氷は、しかし冷たさを増していきお湯を冷まそうとする。  
 考えてみるとお嬢様の様子も変だ。恥ずかしそうに顔を赤らめている割には、素直に性  
器を露出させたり僕のアソコにしゃぶりついたり、行動が大胆に過ぎる。初めて異性の体  
を目にするような少女のとる行動だろうか? そして今も―――  
 僕の竿が掴まれた。両手で包み込むように、慈しむように優しく掴まれた。僕の心臓が  
ドクンと跳ね上がった。理性を熱する炎は火力を増し、紫色になっているだろう。その中で  
僕の一片の氷が奮闘する。  
 やっぱりだ。お嬢様は決して無知な生娘なんかじゃない。性交すらなくとも、それなりに  
知識を蓄えている。僕は意を決して口を開いた。  
「お嬢様。何か隠してませんか?」  
 お嬢様の手がドキリとしたように震えた。紅葉のように小さな手に握られた僕の分身は、  
これ以上ないくらいに脈動している。よく耐えられたものだ。  
「わ、私は何も知らんぞ?どどど、どうしたんだ急に?」  
 わかりやす子だ。動揺が顔にも手にも口にも現れている。  
「おかしいと思ったんですよ。お嬢様、あなた実はこの計画のことご存知でしたね?いや、  
 それどころかお嬢様が立案したのではないですか?お嬢様は教育の必要などない程、知っ  
 ているのではないですか?」  
 僕は一気に核心へと迫る。お嬢様は明らかに狼狽している。  
 
「計画?な何のことだ? 知識は、確かにある程度はある。ほら、某巨大掲示板でも『繋  
 がったまま歩くなんて…』とか『先生抱いて』のAAが流行っただろ?最近の少女漫画は  
 そういうシーンが多いんだよ。」  
 嘘をついている者、誤魔化そうとしている者の特徴をそのまま踏襲した饒舌。  
 僕が猜疑の眼差しでお嬢様をみると、彼女は慌てた様子をみせ、覚悟したような目つき  
を見せてからバッとパジャマを脱ぎ捨てた。上半身裸のすこし寒々しい姿だ。  
 突然のことに驚く僕の手をお嬢様が握った。そして自らの胸へと押し当てる。  
 ふにょっとした感触が手中に広がった。  
「私を、抱いてくれ。」  
 そしてそのまま手を引かれ、僕はベッドに倒れこんだ。手の中にはまだ胸の柔らかさが  
ある。僕は意識せず、本能でそれを揉んだ。まだまだ熟れていないが、揉むに不自由は  
ない。全体をやさしく揉みほぐし、外側から内側へと圧力をかけていく。  
「んっ、あ。うぅ…」  
 お嬢様の口から吐息が漏れた。気持ちいいのだろうか?僕にはそれはわからないが、そ  
のやわらかさに取り付かれたように執拗に乳房を責めた。脂肪を揉んでいるうちに先端の  
可愛らしいピンクの突起がピンと伸びた。僕はそれを見逃さずクリッと摘み上げる。  
「んあっ。ハヤ…テ… きゃぅ!」  
 電気ショックをあびた心肺停止者のように体を弓なりに反らし、お嬢様が嬌声を上げる。  
 先ほどのかすかな理性は脂肪の塊の前にひれ伏し、その中に埋もれてしまった。  
 
 気持ちいい。女性の胸とはこうも柔らかいものなのか… 僕は気がつくと胸にしゃぶり  
ついていた。乳をねだる赤子のように、桃色の先端を吸い上げた。  
「あ!ハヤテ!!そこはっ あっ…んっ…んぅ!」  
 甘ったるい声が狭い部屋に響き渡る。お嬢様の目には涙が浮かべられ、口からはだらし  
なく涎が垂れている。  
 ひとしきり胸を弄りたおした僕は、左手をそっとお嬢様の股間に伸ばした。  
 フトモモを撫で、痴丘を揉む。お嬢様のそこは既に男性性器を受け入れる準備が始まって  
おり、つまり濡れていた。そこ指で愛撫するとくちゅりと粘り気のある、卑猥な音がした。  
「こんなに幼くても性交はできるんですね。最初の質問。初潮はもう迎えたと判断して相違  
 ないでしょう…」  
 僕はまたもや朦朧としてきた頭で適当なことを言い、その舌で新たな音を紡ぎ出した。ピチャ  
ピチャと淫靡な音色を。  
 僕に性器をなめられたお嬢様は、既に平素の落ち着きを失っている。  
 顔を赤らめ、舌の動きにあわせて喘いでいる。  
「あっあっ… んくっ… んあっ…」  
 僕はどうしてしまったのだろう。こんな年端もいかぬ少女に手をつけて。幼体に興味は無いと  
言ったあの言葉は嘘だったのだろうか。自分をも騙したのだろうか…  
 
 出力をMAXにあげたライトセーバーはもはや制御できない。先端からたらたらとエネル  
ギーの残滓をこぼして、今すぐにでも斬りさかんとしている。  
 僕はお嬢様の脚をぐいっと広げ、そのなかに腰を割って入れる。お互いの性器が向き合  
い、世紀の再会まであと数分!といった按排だ。  
 僕は目を瞑り、先端をお嬢様のそこへと肉薄させ、ぴとりとくっつけた。それだけで僕の  
そこは射精感にとらわれていた。思えば三千院家に仕えてからというもの、忙しさに追わ  
れて自慰などする暇がなかった。相当溜まっているのだ。  
 お嬢様が潤んだ目で僕をみてくる。抵抗しないということは、このまま挿入してもいいの  
ですね?挿れますよ?  
「バカ… はやくしろ…」  
 僕は唾を飲み込んだ。何故か今までのことが走馬灯のように思い出された。  
 お嬢様に誘拐目的で近づいたこと。ネコ(とお嬢様は言い張る)と戦い、微妙な友情を築い  
たこと。クラウスを説得しこの家の執事になれたこと。サクヤちゃんとも知り合い、この前は  
お嬢様と一緒に初日の出を見にいった。  
 それがこの一瞬で崩れるのだ。  
 
 僕はゆっくりと先っぽを押し入れた。まだほんの数ミリ入れただけなのだが、お嬢様の  
顔は苦痛に歪む。やはりこの幼い性器に入れるのは無理なのでは…  
「いい。そのまま続けろ。」  
 お嬢様は僕の不安を感じ取ったのか、唇を引きつらせた笑みを向ける。  
 そんな健気な、痛々しい笑みをみて――――僕の気持ちは急に冷めた。  
 こんな小さな子に何をやらせているんだ… 自責の念が急に湧いてくる。いくら誘われ  
たからといって、これはないだろう。そして、誘うという行為自体に疑問があるんだ。しっか  
りしろ、僕。  
 それからは速かった。「なぜ男の僕にたのむのか。」そんな最初の疑問が再燃し、僕の理  
性は氷河期に投げ込まれたかのように一瞬にして冷め、冷静な判断を下し始めた。  
 これは明らかにおかしい。なんだ?このお嬢様は。まるで“こう”されることを待っていたよう  
じゃないか。僕を甘く見るな。  
 僕はわずかに埋没していたモノを引きぬくと、素早くズボンを装着した。  
 お嬢様は僕の突然の行動に付いて行けないのだろう、呆然とした、寂しげな瞳で僕を見て  
いる。 そんな目をしても無駄ですよ。  
 
 とにかく僕は一刻も速くこの部屋を出ようと思った。くるりと踵を返し、扉へと走る。  
後ろでお嬢様が絶望と悲壮にかられた表情でみているのがわかる。だが僕は戻ら  
ない。過ちを犯す前にここから出よう。そしてマリアさんに助けを求めるんだ。  
 僕は振り返ることなく勢いよく扉を開けた。  
 そして外に飛び出そうとして、目の前が真っ暗であることに気づいた。  
 気づいたときには時既におそし。僕は室内へとはじき返された。  
 豆鉄砲をくらった鳩のように目を見開き、前方を見つめる。  
 そこにはマリアさんがにこりと仁王立ちで立ちふさがっていた。  
 
 迂闊だった。マリアさんはお嬢様の味方なんだ…  
                                            〜つづく〜  
 
 

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