眉目秀麗、容姿端麗、だが今時の言葉で云えばクールビューティという言葉がより似合いだろうか。
いつもの勝ち気な微笑は今日は陰をひそめ、伏し目がちの長い睫毛の下で揺れる瞳と固く結んだ艶やかな唇が何やら秘めた悩みを思わせた。
岬はしなやなか指にそっと持ったそれを今ひとたび確認すると、ふうと溜め息をついた。
類い稀な美貌に自覚はなかったが、キャップと伊達眼鏡で軽い変装をして、勇気を出して薬局にそれを買いに行った。
―妊娠検査役―結果は危惧した通り…といえば良いのか。
(陽性…か。困ったなぁ)
美しい眉根がひそまる。心の中で相手の男が浮かんだ。
(有原とは付けてしたから…別所くんか、衛の子…よ…ね)
「さき姉、いる?」
窓から声がして岬は慌てて手元のそれを紙袋に隠した。
「何?今の」
窓から部屋に入ってきた幼馴染みの少年の怪訝そうな問いに岬は挑発的な笑みをもって答えた。
「エッチ。女の子には色々あるのよ?」
衛は一拍おいて強かに赤面した。
「ご…ごめん、さき姉!よ、よく分からないケド…」
聞いちゃいけなかった事を聞いてしまったらしいと焦る衛。
「ぷっ、冗談だったら…。で、私に何か用事?」
「あ…えっと、宿題…教えて欲しいんだ、けど…」
緊張と照れと微量の後ろめたさの、ないまざった声音であった。
「秀才の衛が私に教わるコトなんてないでしょ?」
岬がくすくす笑うと衛が困った顔をする。
「えーと…それは…だから…」
「…口実つけて私に会いに来た…ってトコかな?」
「う……うん」
「よく正直に云えました」
ベッドに座り岬が脚を組み替えると衛の目が釘づけになった。
衛の熱い眼差しに気付いた岬はミニスカートだった事をすっかり忘れていた事に気付く。
(あ…そーゆー意味じゃなかったんだけど…遅いか)
「さ、さき姉…!」
ベッドに押し倒されて唇を奪われる。
「ん、ちょっと、衛…」
貪るように舌を絡められ岬の瞳が閉じていく。
(この間したばかりなのに…もう溜まったの…?中学生なのに…)
「ダメ?さき姉…」
岬は優しく首を振った。
「いい…よ、衛だもん」
「好きだ…さき姉…!」
(…中学生には相談できないよね…やっぱり別所くんが適任かな)
ごそごそと自分の上で動く衛の髪を撫でながら岬は明日の予定を考えていた。