『あそこで降参してたらぜってぇこうなってたはずだ(タイトル)』  
 
「………ごめん、コラショ。ぼくにはわからないよ」  
 
 一頻り黙考してから、ゆうきは傍らのコラショに謝罪した。  
 その言葉の意味するところは―――“ふたつめのぼうけん”の断念である。  
「ゆうきくん!」  
 赤く、長い耳のゆうきの相棒が食い下がる。  
 だが、ゆうきの視線は下を向き、惑うように泳ぐばかりだ。何か、見てはならない、と言いつけられたモノをちらちらと窺うように、時  
 
折それは前方に注がれた。  
 その先には…。  
「あら?降参しちゃうの?…そう、残念だけど、しょうがないわね」  
 とても残念がっているようには見えない口調でそういう、一人の少女が微笑んでいた。  
 …ゆうきの考えがまとまらないのも、無理はない。  
 はてなようせい、と名乗った彼女は彼より少しばかり年上だろう外見であったものの、その容姿そのものは、彼の同年代の友人らの平均  
 
を遥かに逸脱する可愛らしさだった。  
 それを前にし、まだ『性』という意識が完全に芽生えていないゆうきも、本能的に雌雄の何たるかをその身に燻らせる。そのもやもやと  
 
した気分が、彼の正常な思考を奪ったのだ。  
 …尤も、彼が戸惑っているのは、もっと具体的なモノも大きな一因なのだが。  
「―――それじゃあ、罰ゲームを受けなくちゃね」  
 と、突然。不穏な言葉とともに、はてなようせいの右腕が振り上げられる。  
 手には『?』の意匠が施されたステッキ。先端には光が収束し、彼女が何か、異常な力を使おうとすることを示している。  
「え?」  
 一瞬のことで、彼女の台詞の意味を読み取れないゆうきは、反射的に顔を上げた。  
 光が、彼の脇を通り抜けた。はてなようせいの、振り下ろされたステッキから放たれたものだった。  
 
「ゆうきく―――!」  
 コラショの声が、不自然な形で途切れた。遅れるようにゆうきが視線を傍らに向けると、彼の相棒が、跡形もなく消えていた。  
「コラショ…?コラショ、どこっ?」  
「心配しなくていいわよ。コラショは一足先に、元の世界に戻っただけだから」  
「え…?」  
「いったでしょ?ば・つ・ゲ・ー・ム。『ぼうけん』に失敗したんだから、君はお仕置きを受けなくちゃいけないのよ」  
 狼狽して辺りを見回すゆうきに、はてなようせいは楽しげに微笑みながら歩み寄る。  
 わからない、わからない、という声だけが尚も反響するこの異質な空間に取り残された当のゆうきは、それを見てこれから自身の身に起こる事態を案じ、後退りする。だが、  
「だめ、逃げられないの」  
 はてなようせいが、猫のように目を細める。次の瞬間、彼女の手にしたステッキがぱあ、と光を放ち、霧散した。  
「え、なにっ…!?」  
 霧散したステッキは粒子となり、舞い散る粉雪のようにゆうきの全身に降りかかった。  
 同時に、ゆうきは自分の体の異変に気づく。手足の関節、肩や腿から指に至るまで、四肢が一切いうことを利かず、硬直したのだ。  
「なに、どうなってるのっ。ぼくのからだ、ぜんぜんうごかないよ!」  
「大丈夫。ちょっと魔法をかけただけだから。罰ゲームが終わったら解いてあげるわ」  
 くすくすと面白がるように笑い、口元に八重歯を覗かせるはてなようせい。  
 次第に目にうっすらと涙を浮かべて怯えていくゆうきにも、彼女は悪戯っぽい笑みを崩さないまま眼前まで迫ってゆく。  
「そんなに怖がらなくていいよ。罰ゲームっていっても、絶対に痛くしたりしないから、安心して?…ん」  
「わっ」  
「あはっ。びっくりしちゃって、かーわいいんだ」  
 やがて肉迫したはてなようせいは、ゆうきを宥めるように顔を近づけて語りかけ、まるで味見でもするように彼の頬にそっと口付け、微笑った。  
 予期しない彼女の行動に、彼は小さな悲鳴を上げ、動かすことの出来ない体を僅かに震わす。触れるだけの口付けだった。だが、それでもそれは、彼の人生で初めての衝撃的な体験だった。  
 
 頬に残る一瞬の柔らかな感触による動揺を誤魔化すように、彼ははてなようせいへと問いかける。  
「あの…ば、ばつ、げーむって…なにするの?」  
「簡単よ。君はこれから十分間、ただ我慢すればいいの」  
 ゆうきに近づけた顔を一度離し、彼と同じ目線ではてなようせいはあっさりと言い放つ。  
「がまんって、なにを?」  
 言葉の意味がわからないゆうきは、反射的に質問を繋げる。すると、  
「おしっこ」  
 にっこりと笑って、はてなようせいは台詞の欠損を埋めた。おそらくは、彼に問い返されることを見越しての言い回しだったのだろう。  
 証拠に、その単語を聞いたゆうきのかっと恥じるような顔色の変化を見て、彼女は確信めいた微笑を浮かべた。  
「え、そ、そんなのっ」  
「一年生になったらね、おしっこしたくなっても、授業の合間の休み時間じゃないと、おトイレには行けなくなるのよ?  
 たったの十分間も我慢できないんじゃ、君は一年生にはなれないわよ?」  
 迫るように言葉を重ねるはてなようせいに、ゆうきは萎縮する。  
 だが、次の彼女の台詞が、彼を奮い立たせた。  
「…もしかして、お家を出る前におトイレに行くのを忘れてきたのかなー、ゆうきくんは。  
 見かけよりずっと子供っぽいのね、意外」  
「そんなことない!ぼくは、かっこいい一年生になるんだ!一人でトイレにも行けるし、もししたくなってもがまんできるんだっ!」  
 ゆうきは再度、自身の決意を誓い、口にした。  
 ―――それが、彼女の挑発だとは知らずに。待ち望んだ言葉を聞き届け、はてなようせいは彼に悟られないよう、口元を微かに緩めた。  
 
「そう、よかった。さすがゆうきくんね。もしちゃんと我慢できたら、無事に元の世界に帰してあげるわね」  
「え…!?」  
 満足げに笑うと、はてなようせいはゆうきの体に体重を預けるように寄りかかった。  
 振りほどこうにも動けないゆうきの体は、外から力をかけても決して倒れるどころか、傾きもしなかった。少女の小さな体の微熱だけが押し付けられる奇妙な感覚に、ゆうきは戸惑う。  
「なにするのっ?」  
「ほら、ゲームはもう始まってるんだよ。私のことは気にしないで」  
 無理な話だった。はてなようせいは無邪気に笑っているが、その言動は明らかにゆうきの動揺を誘ってのものだった。  
 異性との密着―――それがゆうきの友達であるのなら、幼い彼がそれほど意識することもなかっただろう。だが彼は同時に、はてなようせいほどの規格外の美少女に肉体を絡められて全く反応しないほど、男として未熟でもなかった。  
「ひゃうっ!」  
 突然―――ゆうきの股間に圧力がかかる。  
 あろうことか、はてなようせいはゆうきの脚の付け根…まだ発達しきっていない性器を、ズボンの上から右手で弄り出したのだ。  
 揉み込むような指の動きに、彼は言いようのない刺激を覚え、悲鳴を上げた。  
「なに、を」  
 そこ、おしっこがでるところだよ…とは、続けられなかった。遮る様に、はてなようせいが微笑った。  
「んー?ああ、ごめんね、ゆうきくん。十分間、私も暇だから、ちょっとだけ君の体を弄らせて貰うわね。  
 そんな顔しなくても、おちんちんを触ったくらいじゃおしっこは出ないわよ、安心して」  
 意地悪く笑って、はてなようせいは視線を落とし手遊びを再開した。  
「あうう」  
 股間の器官に、長ズボンの上から包み込むようなもどかしい圧迫感。はてなようせいは右手をスプーンのように構え、衣類越しにゆうきの性器を上下に擦る。ゆっくり、ゆっくりと。  
 …おちんちん、という、男性の象徴たる部位を示す幼児語が女の子の口から紡がれたことに反応したのは事実だった。  
 だが、ゆうきはもっと別の、もっと色々な刺激に見舞われた所為で―――その性器は、『雄』の本能をもたげていた。  
 
「あれ、ゆうきくん。どうしたのかしら、君のおちんちん、なんだか硬くなってきたみたい」  
 緩慢な動きでゆうきの秘部を摩りながら、はてなようせいは意地悪く笑った。  
 彼女のわざとらしい口調での実況も、ゆうきにはそれと理解出来ない。出来るはずもない。それは、ゆうきにとって生まれて初めての経験なのだから。  
 その言葉は真実、はてなようせいではなく、そのままゆうきの疑問そのものであった。  
 とくん、とくん、と。ゆうきは徐々に自分のモノに何かが流れ込み熱くなっていくのを、のぼせてゆく様な頭で実感して、呻いた。  
「…ぅっ」  
 一息、生唾を飲み込む。  
 すぐ眼下には、先ほど、そして今も尚、ゆうきの思考を狂わせ続ける、大元の原因がある。  
 …はてなようせいは左腕をゆうきの肩に引っ掛け、首に絡め、空いた右手でゆうきを愛撫している。  
 そうして、下半身。後退りする姿勢のまま魔法で固められたせいで、ゆうきの両足はやや前に投げ出されるような、奇妙な位置を保っている。彼女はその右足に軽く跨る様に、ゆうきに体を預けている。  
 そのせいで、ゆうきは先にも増して目を奪われる。はてなようせいが身を動かす都度、ひらひらと眩惑するように揺れる―――その、特徴的なスカートに。  
「ぁ…」  
 ぴくんっ。意識した途端、性器が一際強く戦慄いた。  
 ―――鋭角的な、連綿と続く険しい山と谷を象るような意匠のスカートの隙間からは、一点の曇りもない、白く、それでいて健康的なピンクがうっすらと映える、綺麗な肌色が覗いていた。  
 二つの幼い腿は、ゆうきの発達しきっていない雄の部分を魅了してやまない。  
 ゆうきはまた一つ、生唾を呑んだ。同時に、視線ははてなようせいの腿に釘付けになる。否。厳密には、その奥にあるものに。  
 先ほどから、ゆうきはずっと気になっていた。はてなようせいは姿を現してからずっと、スカートをことあるごとにヒラヒラと翻すのだ。下にあるものを『隠す』というスカート本来の意義でいうならば、あまりにも不向きな形状のそれを、だ。  
 
 彼女は絶対に見せない自信があって、ゆうきをからかっているのか…真実はゆうきの知るところではないが。  
 …幼いゆうきとて、普通女の子はスカートの中に下着を穿いているということくらいは知っている。しかしだからこそ逆に、背徳的なまでに興味を煽られた。  
 何度となく、スカートの深い『谷』から腿の根をちらちらと窺い、未だ一面の肌色を遮る異物を見ぬ彼は思ったのだ。彼女はもしかして、穿いていない≠フではないか―――と。  
「――――――気になる?ゆうきくん」  
「ぇ…?!」  
 突然の問いに、視線を上げる。ゆうきの顔の間近、下から覗き込むようにしてにやにやと口端を吊り上げるはてなようせいの顔が、そこにあった。  
 硬度を増しつつある彼の秘所を包んだ手の動きを止めたまま、彼女はまたいつでも運動を再開できる形で、彼の反応を待っている。  
 …全て、気づかれていた。自身の関心が、はてなようせいの暗部に注がれていたことを指摘され、ゆうきはうろたえる。  
 それは何もかもが、はてなようせいの術中なのだが、勿論ゆうきはそんなことは知る由もない。彼女はそんな彼を、更に追い詰めてゆく。  
「もしかして、見たいのかしら?ゆうきくんってば、見かけによらずおませさんなのね」  
「そんな、こ、と…」  
「恥ずかしがらなくてもいいわよ。…どうなってると思う?この下」  
 見上げるように、首を僅かに傾げて問うはてなようせい。当然、ゆうきにそれを口にする余裕も度胸もあるはずもないが。  
 動きを止めた手に、ゆうきに分からないほど緩やかに、静かに、力を込め直しながら。全てを見透かしたように、彼女は続けた。  
「………見せてあげようか?」  
「―――え?」  
「スカートの、し・た」  
「…っ!」  
 瞬間、ゆうきの上ずった声が響いた。一際強く、息を呑み込んだ。  
 だがやがて、期待と羞恥の入り混じる表情を浮かべる彼の挙動を見て、はてなようせいは噴出すように破顔した。  
 
「なんてね、君にはまだ早いわよ。ほらっ」  
「あぅ…っ!」  
 はてなようせいの中指と薬指が、布越しにゆうきの性器の根元付近をくいと挟み上げた。  
 いきなりの圧迫による刺激に、ゆうきはびくんと顔を仰け反らす。  
「君くらいの年頃の子は、まずはとにかく、何でも自分の頭で想像すること。正解を知るのは、それからでいいのよ。  
 小さいうちから目に見えるものにばかり囚われてたら、想像力のないつまんない大人になっちゃうもの。  
 ゆうきくんは、そんな男の子にならないことっ。約束だよ?」  
 彼の顕著な反応に満足を得たのか、はてなようせいは嬉々として講釈を述べる。  
 だが、当のゆうきは息を荒げ、彼女の説法など頭に入っていないようだった。  
「っと、ごめんね。ゆうきくんには、まだちょっと難しいお話だったかしら」  
 それを見て、はてなようせいは自戒するように笑った。  
 …彼女の懸念は、真実、的を射たものであった。だが、ゆうきとて全てを理解できなかったわけではない。  
 先のことなどわからない。つまらないおとな≠ニいうモノがどういう存在なのかも理解しがたい。  
 そんな彼が、唯一つ彼女の言葉の中から読み取れたのは。  
「………じぶんのあたまで…そうぞう、する…」  
 はてなようせいが、自分にスカートの下を見せるつもりがないということ。  
 満たされない幼い雄の欲求を処理するために、彼は熱く加速する思考に踊らされるように、本能のまま、彼女の秘所に思いを馳せ―――欲情した。  
 奇しくもそれは、はてなようせいの忠告どおりに。  
「…うぅ!!」  
 どくんっ。熱く滾る血液が、ゆうきの性器に脈動する。  
 初めて、ゆうきのモノが、自身を包み込み愛撫するはてなようせいの右手を内側から押し返した。  
 脈動は更に勢いを増し、ゆうきのモノの硬度は幼いながら、確実にそれとわかる勃起へと駆け上がってゆく。  
 
「あはっ、すっごく元気」  
 スプーンを模した手を押し開かれたはてなようせいは、心底嬉しそうに笑顔で、可愛らしい八重歯をちらつかせる。  
 負けじと、彼女も愛撫のギアを上げてゆく。ズボンの上からでも、最早目視だけで認められるサイズまで勃起しつつあるゆうきのモノに、細く華奢な五指が這い回る。  
 指はそれぞれが別々の生き物のように、陰嚢、根元、茎、先端、下から順に撫で回していく。その動きは明らかに、男を愉しませることを熟知した技巧だった。  
 布越しだというのにはてなようせいの愛撫は的確で、圧迫しながら性器の正確な位置を確かめていくようだった。そうして、やがて彼女は『急所』を探り当てた。  
「面白いわ、ゆうきくんのおちんちん、どんどんかちかちになってくね」  
「う、うううっ」  
 素知らぬ素振りで、はてなようせいはからかうようにゆうきに解説する。  
 いらぬ衣擦れが起きぬよう、親指の付け根と人差し指で、ズボンの生地を竿に貼り付けるように固定して。彼女は親指の腹で、性器の先端を優しく撫でていく。  
 幼く、未発達で、勃起して漸く僅かに赤い亀頭の先端を包皮の末端から覗かせる程度のゆうきのペニス。その、露見した極微小な面積の亀頭を、彼女は手探りだけで的確に刺激する。  
 亀頭が被った包皮の『窪み』には、既に先走りの水溜りが縁から零れるほどに分泌され、潤っている。  
 布に覆われているものの、内で下着を濡らしながらも、粘性の強いソレを媒介して快感を当人に問答無用で叩き込んでいく様子は、今にもねちょねちょという淫猥な音が聞こえてきそうなものだった。  
「はて、な、ようせい…」  
 程なくして、ゆうきに限界が訪れる。  
 彼は自身の下腹部に込み上げてくる何かを感じ、搾り出すように少女の名を呼ぶ。  
 
「うん?なにかしら」  
「ぉ…っ、ぃ…ぇ…!」  
 いつの間にか、頬をほんのりと上気させて、はてなようせいは再び顔をゆうきへと向ける。  
 その表情は、やはり全てが彼女の思惑通りに運んでいることが読み取れた。  
 そうとは知らないゆうきは、ただ自分の体に起こる異変に困惑する。  
「トイレに…いかせて…!おしっこっ…おしっこ、漏れちゃうよ…っ!!」  
 目に涙を溜めながら、それでもソレがどういった感覚なのか知らないゆうきは、必死に異変を目の前の少女に訴える。  
 びきびきと隆起する、幼い彼にとっては排泄器官でしかない性器を駆け上がってくるどろどろの欲望の塊を、彼は尿だと誤認している。  
 だが、それこそが狙いであるはてなようせいが、それにまともに取り合おうはずがない。  
「だーめ、まだ十分経ってないもの。云ったでしょ?たったの十分間もおトイレを我慢できないんじゃ、一年生にはなれないって。  
 ちゃーんと我慢しなくちゃ、だめよ?」  
 云いながら、はてなようせいは愛撫の手を更に加速させる。  
 既にとろとろと包皮の縁から溢れている先走り液を、彼女は下着の衣擦れを利用し、丹念に竿や陰嚢、性器全体に塗りこんでゆく。  
 十分すぎるぬめりと摩擦は圧倒的な心地よさで、張り詰めたモノを縦横無尽に支配する。  
「あっ、あっ、あっ…!!」  
「がまん、がまんー」  
 加速する愛撫のリズムに合わせて、ゆうきは悲鳴めいた喘ぎを漏らす。見上げるはてなようせいは、謡うように紡ぐ言葉の意味と真逆の意図で、手の抽送をぐいぐいと早めてゆく。  
 そうして、一際強く、下着の内面が、露出した亀頭の表面をずりっ、と擦り上げた時―――。  
「あ―――あ、あうあああっっ…!!!」  
 
 ビュグウゥッッ…!!  
 
 ――――――達した。はてなようせいの愛撫がもたらした摩擦は、ゆうきの理性を、粉々に決壊させる。  
 亀頭の先端の鈴口から、マグマのように滾った精液が次々と撃ちだされてゆく。同時にゆうきの脳髄に、制御など利こう筈もない、出鱈目な快楽が叩き込まれる。  
 マグマは全て、外に放たれることなく、自身を包み込んだ布に受け止められ、やがて下着はべとべとの汚物と化す。  
 尚も下着の外に溢れる精液は、次第にじわり…と染み出し、ゆうきのベージュの長ズボンの股間に、黒くみっともない跡を残した。  
「くすっ。あったかぁい…それに、君のおちんちんぴくぴくしてるみたい」  
「あ…あ、ああ…」  
 ゆうきにとって、初めての射精が終わる。  
 熱を外へと排出する快感に恍惚としたのも、ここまで。やがてゆうきは、自身の晒した無様な失態に愕然とする。  
 股間に生暖かい、液体の染み込んだ下着の感触。覚えがある感覚だった。今より幼い日、何度となくしたおもらし≠フ後味の悪さによく似ていた。  
「ぼく…ぼく…いちねんせいになるのに…おもらし、しちゃった、よう…うう、ぐすっ」  
 目にたまった涙が、頬を伝う。体さえ動けば、ゆうきは四つんばいに崩れ落ちているところだろう。  
 ゆうきは未だ気づかない。自身が吐き出した液体が、尿とは全く別のものである事実。そしてそれが、はてなようせいによって誘発されたものであることに。  
 排泄の面倒を全て自分一人で見られるようになったことは、ゆうきにとって一年生になるために築いた矜持だった。事実はどうあれ、彼にとっては紛れもなくその崩壊である。彼はただただ、目を伏せて、嗚咽を漏らす。  
「…もう、しょうがないわね、ゆうきくんは。おしっこ我慢できないなんて、一年生失格よ?」  
 真っ暗に閉じたゆうきの世界に、はてなようせいの声が響いた。呆れ半分の、笑ったような声だった。  
「え…?…ええっ?!」  
 目を開くと、さっきまで自分を覗き込んでいたはてなようせいがいない。  
 一瞬呆けたゆうきだったが、視界のすぐ下で、何かがもぞもぞと蠢いているのに気づき、視線を落とす。  
 ―――そこには、自身の股間に、顔を密着させるはてなようせいがいた。  
 
「なにするのっ?」  
「決まってるじゃない。ゆうきくんがお漏らししてズボンを汚しちゃったから、綺麗にしてあげるの…んっ」  
「ひゃあ…!?」  
 信じられない光景だった。一度だけ困惑するゆうきを見上げたはてなようせいは、やおらズボンの染みに口付けたのだ。  
 ゆうきの股間に現れた『世界地図』に、薄いピンクの唇をちゅ、ちゅ、と押し付けては吸い付かせる。時折舌を突き出して、ガーゼで傷を消毒するように、彼女は丹念に、布に染みこみ異臭を放つ白濁液を吸い取ってゆく。  
 ゆうきはただただ、彼女が唇を押し付けられるたびに、まだ敏感なままの性器に加わる刺激に悲鳴を上げながら、彼女の事後処理が終わるのを眺めていることしか出来なかった。  
「はい、終わり。もう動けるわよ、ゆうきくん」  
「え?…わわっ」  
 ぺろりと舌なめずりをして立ち上がったはてなようせいが微笑んだ途端、ゆうきはどしんと尻餅をついた。後退りの姿勢から、そのまま束縛を解かれたのだから無理もないが。  
「あはは、ゆうきくん、かっこわるいわよ」  
 からからと、無邪気に笑うはてなようせい。対するゆうきは、浮かない顔だ。  
 一通りの恥はかききった後なので、尻餅をついたことが恥ずかしかったわけではない。彼の懸念はもっと別にあった。  
「…ねえ、はてなようせい」  
「うん、なにかしら?」  
「ぼく、これからどうなるの」  
「…え?」  
「ぼく、罰ゲームに負けちゃったんだよ。はてなようせいは、ぼくをどうするの?」  
 そう。この情事は、そもそもはそういう意図で始まったものだった。  
 罰ゲーム―――十分間トイレを我慢できたら、無事ゆうきは元の世界に帰れる筈だった。逆に言えば、我慢できなければ、無事ではすまないということだ。  
 そして、彼は負けたのだ。冷静になった今、その後の処遇を心配するのは、当然だろう。  
 
「―――あれ?いってなかったかしら」  
 だが―――はてなようせいの応えは、実に軽いものだった。  
 ずっとゆうきをからかい通しだった彼女らしからぬ、さも想定外といわんばかりの反応に、ゆうきはぽかんとしてしまう。  
 やがて、はてなようせいはにっこりと花のように笑って、屈みこむ。  
「ゆうきくん。おしっこを我慢できない今のだめな君は、一年生になれないわ。それはわかるわよね?」  
「………うん」  
 渋々、ゆうきは認めたくない事実を肯定した。…それが皆、誤認であるとは知らないまま。  
 …全ては、はてなようせいの計画通りだった。彼女は尻餅をついたままのゆうきの鼻先に指を突きつけて、宣言した。  
 
「そ・こ・で!君がちゃんとかっこいい一年生になれるまで、私が一緒に住んで色々教えてあげる!  
 一人前になれるまで私から逃げられるなんて思わないことっ!いーいっ?」  
 
 言葉どおり。ゆうきは無事には′ウの世界に帰れなかった。  
 ―――――――――こうして。ゆうきの、新たな生活が幕を開けたのだった。  
 
  〜………BAD END?〜   
 

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