ゆうきは、半ば驚いていた。小学校が見たこともない空間に変化したことに、戸惑いを隠せなかったのだ。  
しかし、その戸惑いはすぐに消えた。ゆうきはこの空間に、何らかの安らぎを感じたからだ。  
「ここは・・・どこなんだい、コラショ」  
「はてな空間だよ。世界の一切のはてなが、ここに集約しているんだ」  
「しゅうやく・・・」  
「あ、ゆうきにはまだ難しかったね」  
 コラショとの会話を止めると、音が聞こえた。いや、音ではない。声であった。  
「こえが、きこえる」  
「世界中で謎を解けず、何も分からずに死んでいった霊の怨嗟の声さ。知りたいものが知れず、無念の内に倒れた者たちの、ね」  
「へぇ」  
 ゆうきはコラショの言葉が一寸も理解できなかった。大人であれば、この事実を聞いて卒倒するだろう。  
しかし純粋で無知なゆうきは、コラショの言葉が分からない。故にゆうきは、人ごみの中にいる、とだけしか考えられなかった。  
もしかしたら、この空間に入ってからの安心感はそれが原因かも知れない。  
だが、ゆうきはそれ以上に、敏感に何者かの気配を感じていたのだ。実際はその者こそ、安心感を生み出す源であった。  
「あ、あれ」  
「やっと見つけたかい、ゆうき」  
 ゆうきが見たのは、少女だった。いつから居たのか。普段は見たこともないような、異様な風体であった。  
体を桃色に包み、宙に浮き、不可思議な杖を手にしていた。スカートの丈は短く、病院で見た看護婦のような帽子を被っていた。  
一見、ゆうきとさほど変わらない歳のように見える。だがゆうきは、この人は自分よりもはるか年上である、ということを何となく感じていた。  
 
ゆうきは、どうしても少女のスカートの短さが気になった。短すぎるスカートを、見たことがなかったのだ。  
太もも。ゆうきはまだその部位の名前は知らなかったが、そのうっすらとした肌色に、幾許かの興奮を覚えた。  
今まで幼稚園で見た幼女の、誰よりも魅力のある太ももであった。  
ゆうきは考えるより先に、今はまだ粗末である自分のモノが、ぴくり、と反応していた。  
「ボク、名前は」  
 少女が口を開いた。柔らかい唇の動きが、ゆうきの目に焼きついた。  
「なかま・・・ゆうきっていいます」  
「へぇ・・・ゆうきクンって言うんだぁ。ふふ、かわいいね」  
 心臓が燃える。初めての経験だった。  
「あ、あの、ぼ、ぼくぼくぼく・・・その」  
「なぁに?」  
「き、きみはいったい、だれ?」  
「あたし?あたしは・・・そうね、はてなようせい、よ」  
「へぇ・・・。その・・・か・・・かわいいね」  
「ふふ、ありがとう」  
 ゆうきは、はてなようせいがちらり、とコラショを見て、ウィンクするのを見た。  
ゆうきはその行為の意味が分からなかった。  
「オッケー。じゃあね、ゆうき。ボクは向こうで応援してるヨッ!」  
「えっ」  
 
 振り向くと、コラショは既に消えていた。異次元の空間に、少女とゆうきだけがいた。  
「ちょっとまってよコラショ!」  
 コラショへ届くはずのない声が、寂しくこだました。その時、ゆうきは周りの声がなくなっていた事に気づいた。  
無音が二人を包んだ。  
「コラショ!やめてよ、こわいよ!」  
 後ろから、はてなようせいに肩を叩かれた。  
「ねぇ。あたしがいるのに、何が怖いの?」  
 ゆうき自身も何が怖いのか分からなかった。言葉に出来ない不安だけが、胸中にあった。  
「教えてくれないかな、ゆうきクン」  
「・・・わかんない。わかんないよ。なんか、よくわかんないけど、とにかく・・・こわいんだ」  
「あたしを見て」  
 ゆうきは、はてなようせいを見た。目と目が合った。ようせいは、にこり、と笑っていた。  
ゆうきは安心を感じた。それは、この空間に入ってから感じていたような、名状しがたい安心感であった。  
そして、どことなく恥じらいをも感じ、視線を下にそらした。遠くから眺めたあの太股が、目の前にあった。  
 もはやゆうきには、何を考えることも出来なかった。母とは違う女性と近くにいることに慣れていなかったからか。  
女性。もはやゆうきにとって、少女は少女でなくなった。幼稚園の女の子の友達とは違うと、幼心ながらも完全に理解した。  
そして母とも違っていた。ゆうきには、はてなようせいは未知の存在であった。  
 ゆうきは、生涯において初めての、性的な興奮を感じた。もちろん、語彙の無いゆうきには、興奮の感覚はあれど  
それが何か、というものを理解するまでには至らなかった。それでもゆうきの心は、興奮で満たされていた。  
そしてその心の動きは、ゆうきの身体に顕著な変化を起こしたのである。  
 
「おやぁ?ふふ、ゆうきクン。この膨らみは、なーにーかーな?」  
「えっ!?」  
「チャックを・・・下ろしちゃえ〜っ!」  
 はてなようせいが、ゆうきのズボンのチャックを一気に下ろした。ぼろん、とゆうきのモノが外に出た。  
幼稚園を出たばかりの無垢な少年のペニスが、歳相応の怒張を見せていた。  
「ひゃあぁっ!?」  
「ふぅん、やっぱり児童はモノも児童だね。まぁいいや、ちょっとお邪魔するわね」  
 ぱくり。ゆうきのペニスが、はてなようせいの口に全て入った。  
「あ・・・あぁ、あああああ、ああっ!」  
 一旦ペニスを解放し、ぺろ、と先を舐める。そして、再び口で包む。  
「き、きたないよぉ、そこは、おしっこするところだよおっ!!おちんちん、きたないよぉっ!」  
 そう言いつつも、あの唇が、自分のモノに触れている。そう思うと、ゆうきは顔が真っ赤になり、拒絶をしなかった。  
「ぁむ、はぁ、あぁ、ゆうひふん、あなはほんほに、しょおはくへい?ぷはっ、歳にしてはなかなかいいものじゃない」  
「あぁ、そんな、そんな」  
「戸惑っているのね、未経験のことに。でも、これで終わりじゃないんだよ?」  
 微笑んだ。その顔に、ゆうきはもう何も言えなかった。好きにされてもいいや。ゆうきは、真っ白の頭でそれだけを考えた。  
 
 舐める。柔らかな唇が自分のペニスを包み、舌で舐め回される。  
「あぁ、あああ、なにか、なにかくるよ、おしっこかも、おしっこかも!」  
「いいよ・・・あたしの顔に、ぴゅぴゅって、出していいんだよ・・・」  
 ぴゅっ。白いものが、はてなようせいの桃色の髪の毛にかかった。ゆうきは、その白いものを見たことがなかった。  
自分のモノから見たこともないものが出てくるのが、ゆうきにとっては恐怖であった。  
「あ・・・、なにこれ、なにこれ!ぼく、びょうきになっちゃったの・・・?」  
「ふふ、違うわよ。安心して、これは精子っていうの」  
「せーし・・・?」  
「そう、精子。君のパパは、これをママの中に入れたの。そして、その精子がゆうきクンになったのよ」  
「へぇ・・・」  
「本当はこれが出るのはもっと成長してからなんだけどね。あたしが、勝手に魔法で精通させちゃった」  
「せーつー・・・?」  
「おちんちんから精子がでるようになること。みんな経験するんだよ・・・?」  
「そうなんだ。ふしぎだね」  
「ひとつ勉強になったね。おめでとう!これであたしは君のものになったから、お名前をかかないとね」  
 名前。コラショから何か言われた気がする。何かを渡された気がする。  
「そうだ!おなまえシールだ!」  
 覚えたての平がなで自分の名前を書き、ペリリと剥がし、はてなようせいの頬に貼った。  
『なかま ゆうき』  
   
 ゆうきの顔は、仕事を終えたビジネスマンの顔のように、清々しかった。  
「コラショ!ママ!パパ!おわったよ・・・」  
 
おわり  
 

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