「どうして望美がいないんだよ?」  
「奥方は温泉に行っておいでですよ、頭領」  
家人の答えにも熊野頭領の顰め面は変わらない。家人が笑いを必死で堪えている。  
「何で俺が帰ってきたのに、望美がいねえんだよ。ちゃんと迎えるって約束したのに」  
「奥方は頭領のために綺麗になりたいって入ってなさるんですよ?」  
「はあ?十分望美は綺麗だぜ。そんな必要ねえ。俺が認めるんだから間違いない」  
「頭領…」  
家人たちが揃って口をあんぐりとする。こんなところはまだまだ子供だ。奥方がいなくてすねるなんて。  
女心がわからないお方ではなかろうに。  
 
「迎えに入ってくる。食事はいらねえ。どこの温泉だ?」  
「例の場所ですよ…ちゃんと烏を独りつけてますから」  
「俺が行くといってるんだ」  
「…わかりやした。頭領」  
家人たちは肩を竦めた。どうも奥方のことになると頭領は人が変わる。いつもの怜悧な判断が狂ってしまうようだ。  
こればかりは先代に忠告してもらわないと治らないだろう。  
 
例の場所とは望美専用の湯。外から人が見れないように簡単な壁を立て、石をつんで簡単な湯船を作った。  
望美の話からヒノエが作らせたもの。外には望専属の烏が周りを伺っていた。  
 
「うーん、いい気持ち。まだ漬かりたいんだけど…この日焼け跡もしみも綺麗にしたいなあ」  
伸びをして望美は空を仰いだ。日が傾いて、そろそろ約束の時刻だが、去るのが惜しい。湯船に数輪入れた蜜柑の花を掌に乗せる。  
「いい香り…もっとたくさん入れたいけど、掃除大変だからなあ」  
戦続きで肌の手入れを怠っていた。今からでもシミは消したい。女心に時代は関係なかった。  
「奥方、そろそろ湯から上がってくださいまし。美人の湯と申しても、のぼせては困ります」  
「はーい。分かったわ。今行きます」  
望美は、薄い着物に着替えて外に出た。湯上りでほのかに全身が赤く染まっている。  
「奥方、毎日通わなくても十分美人ですわ」  
「そう?ここに通いだして、少しシミが薄くなったんだよ?ヒノエくんよろこんでくれるといいな」  
専属の烏ー朱鷺ーは望美の手を取る。望美より少し年上。色黒で長い髪を後ろで一つに束ねている。機知に富み、はきはきした物言い。  
望美とすっかり仲良しになっていた。女の烏といえど、武道は極めている。経験を買われて、望美専属の烏になった。  
 
「本当は、シミだけじゃないの」  
「奥方?」  
「結構傷が多いんだよ。大きいの、小さいの、数え切れないくらい。出来れば綺麗な体でヒノエくんに抱いて欲しくって。  
それに、今の私、ただの小娘なんだよ。ヒノエくんが飽きたらどうしようって…だから綺麗になろうと思ったの」  
朱鷺が困った顔になる。戦女神と謳われながらも、これほど不安を抱えていたのか。異界の客人ゆえ、無理も多かろう。  
「奥方っ…頭領はどれほど奥方を想っているかお分かりですか?」  
「朱鷺さん?」  
「本当は温泉を作るのを嫌がっておりました。館の者も反対でした。館から近いといっても、熊野で女一人で動くのは危険。  
それでも、奥方が望まれたからの一言で押し通したんです」  
「ええ?」  
「最後は先代が援護に回られて、決まったんですわ」  
ーいいじゃねえか。作ってやれ。船を一つ作るよりは安く付く。温泉通いして、丈夫な体になれば、いいややがばんばん産めるだろ?  
ヒノエ、お前も閨が存分に楽しめて一挙両得ってやつだ。がんばれよ!ー  
「頭領の顔といったら、赤くなるやら青くなるやら、笑いが絶えませんでした」  
「ヒノエくんが叶わないって意味がわかったよ…朱鷺さん」  
 
「余計なことを言ってんじゃねえよ。朱鷺」  
噂の当人ーヒノエが、腕を組んでいつもより軽装で近づいてくる。腕や足の防具をつけてない。すねた顔になってる。  
「朱鷺さんのせいじゃないの。私が色々悩んでたからっ」  
間に望美が割ってはいる。  
「ほんと、おまえ、戦女神なんだな。もう戦は終ったのに」  
苦笑してヒノエは望美を抱きしめる。いきなりキスの雨を降らせる。朱鷺の存在は眼中にない。  
「ちょっとーっ。ちょっといきなり何してるの…」  
「可愛いよ。望美。そんなに俺が心変わりするのが不安?それなら大丈夫だって教えてやるよ」  
にっと笑うと、ヒノエは望美を抱きかかえて小屋に入っていく。地雷を踏んだと気づいたが、もう遅い。  
「朱鷺さんっ、止めてー、朱鷺さんってばー」  
空しく望美の声が響く。すでに彼女の姿はない。烏は頭領の命には服従だ。  
 
もともとここは狩人が使う小屋に似せて作った。脱衣所といっても二人が入ると座る場もない。一人寝るのがやっと。  
「久しぶりに二人ではいるのもいいね。丁度広さもいいし」  
「ヒノエくんってばああ」  
「綺麗になりたいんだろ?もう一度入るんだ。いいじゃん」  
小屋に入り、床に下ろされた望美はあたふたと抵抗を試みるが、挫折。ヒノエはさっさと服も脱いでアクセサリーも外しに掛かる。  
「ちょっと待って…うああ…」  
後の言葉が続かない。いまだにヒノエの裸身は見慣れない。赤面して固まる。上半身を起こして、後ずさりしたが壁に突き当たる。  
「そんなに俺の裸は見たくないの?いつも見てるくせに」  
「!!」  
羽の形のイヤリングとペンダントが床に落ちた。くすくす笑いながら、膝を突いたヒノエが耳元で囁く。  
「姫君がいないと寂しいんだよ。暖めてくれないの?」  
跪くと固まった望美の服を脱がしにかかる。  
「嫌といっても帰してはやらないよ。姫君」  
 
「ふああんっ」  
唇を奪われて、なみだ目で睨むしかない。荒々しい口付けに意識がかすむ。手首を握られて、壁に押し付けられる。  
自然に唇は開いて、舌を絡め、唾液を混ぜ合わせる。辞めてくれない。首を振っても角度を変えて、舌を入れてくる。  
抵抗する気力を奪い取ると、ヒノエは両手をはなした。だらりと落ちた両腕はヒノエの背中に回される。  
唇を離すと、言葉のかわりに嬌声が漏れる。つっと涙が落ちた。  
「はああ…ひのえっ…ああ」  
「ここまで感じやすくしたのは俺だよ?手放すと思う?」  
 
着物のあわせをぐっと引っ張り、二の腕あたりまで引き下ろす。白い胸がふるっと揺れた。  
ところどころ赤い印が残る。湯浴みの後でいつもより血色がいい。硫黄の匂いがつくが、仕方ないな。  
鋭い視線で新たな跡がついてないのを確認すると乳房をぐっと掴んだ。体が跳ねる。傷跡なんて見慣れてるよ。姫君。  
「やあああ…くっ…」  
「可愛いね。こんな小さな傷を気にしたの?」  
俺が唯一認めた本物の姫君。龍神に認められた清浄な強くて熱くて脆い花。いつ浚われないか俺のほうが不安なのに。  
 
首筋から肩、鎖骨と舌が這っていく。いつもより熱い。印も残しながら、二の腕まで行く。舐めて、印をつけると、腕が上下に動く。  
日毎ヒノエに抱かれた体は素直に準備を始める。手の中できゅっと先端は締り、転がしやすい。集中的にせめてやる。  
体はヒノエの動きにあわせてゆらゆら動く。髪が何度もうねる。言葉を考えるまもなく、快楽に落ちていく。  
「どんだけ傷があるのか確かめてやるよ。望美」  
薄い木の壁は二人分の重みにみしみしと音を立てる。  
 
「綺麗だよ。姫君」  
「うそっ…長い刀傷もっ…ああっ」  
「この程度?熊野じゃ普通だね。甘く見ないで欲しいな」  
散々胸で遊んだ右手を下に下ろしていく。代わりに硬くなった先端を口に含んで舐めてやる。面白いように声が変わる。  
右手がわき腹から大腿のあたりを撫でてやると少しずつ両足が開いていく。  
薄い着物はほとんどあわせが開いて、体を半分以上見せている。白い肢体は無駄な肉がついてない。これだけでも十分美しいのに。  
 
「お前は美しいよ。伝説の神様に見込まれて、俺に選ばれた」  
「ひあっ…ひのえっ…いいいっ」  
「だから胸を張っていろ…選んだのは俺だ」  
片手を茂みの奥に伸ばすと、熱い蜜が指をぬらす。こんなに濡れて、俺を誘ってるくせに、まだ不安なの?  
指を増やし、かき回してやると腰が波打った。上の芽も一緒に擦り上げる。どんどんお前の匂いが強くなる。硫黄の匂いよりいいよ。  
「ああああーーー!」  
達した体が何度も壁を打つ。震えが収まると、斜めにからだがずり落ちる。指を引き抜いて、床に寝かせる。  
両足を広げると、華はまだ蜜を流していた。早く入れたくてぞくぞくする。肩に足を引っ掛けて、腰を浮かせた。  
 
「いつだってお前が欲しいんだ。いちいち場所なんか考えられねえ」  
「あーっ…あああっ…」  
望美の胎内は熱い。一度でイきそうでおもわず奥歯を食いしばる。何とか入り口まで戻し、また奥までつき上げる。  
中に捕まらないように動きを早くする。生じる悦に自身が更に立ち上がり、奥底まで抉る。  
嬌声と体のぶつかる音と木がきしむ音が響く。  
 
光が弱くなっても、夜目のきくヒノエには望美の体が良く見える。  
お前の中も最高だけど、俺が動くたびに曲線を描く背中も。深い繋がりを求めて絡みつく締まった脚も。全部綺麗だよ。  
「あああ…くるよお」  
「もうすこしっ…のぞみっ…くうっ」  
繋がったところがすごい熱い。一気に弾けて、落ちていく。  
 
一度達して、気を失った望美をヒノエは湯船のほうに運んでいく。汗で手が滑る。  
「一度は一緒に入りたかったよ。この湯には入ったことがなかったね」  
望美を抱いたまま、湯船に入る。脱力した体を支え、一度座らせる。長い髪が湿気に湿って、うなじが覗く。そこにも痕をつける。  
白い背中にも傷があちこち見える。刀だけじゃない。不規則な形をしたのは、怨霊と戦って受けた毒の傷痕だろう。  
「誰が嫌いになれるかよ。お前と一緒に戦った証じゃねえか」  
望美を抱きなおして、いきり立ったモノの上に落としてやる。高い声と一緒に長い髪がうねってヒノエの顔にまで広がる。  
狭い小屋はいつもより反響が効いてる。甘い喘ぎ声が欲を煽る。歯止めが利かない。  
「のぞみっ…のぞみっ…」  
華奢な体を揺さぶって、奥まで入り込む。目の前が白くなる。離せない。離さない。激しい想いが、ヒノエを突き動かす。  
湯の中で二人の体が絡み、零れた蜜と体液が広がっていく。  
 
「あ、あれ?ちょっと夜っ!あーーっ!」  
「うるさいな。耳元で怒鳴るなよ」  
望美が気づいたときはヒノエの背中。本宮の光がうっすらと見える。もうすぐ帰れるんだろう。  
風に乗って蜜柑の花の匂いが流れてくる。ああ、甘い匂いだ。おなかすいたなあ。早く食べたいなあ。  
「早く帰らないとみんな心配するからな。じっとしてろ」  
「何で私…おんぶなの?あーー!」  
「いちいち叫ぶなって」  
「何でいきなり二回もするの??しかもあんなとこでっ!食事おそくなっちゃったよ!」  
あまりに予想通りの反応にヒノエが笑い出す。笑いが止まらず、望美が怪訝そうに聞いてくる。  
「ほんと読みやすいよ。姫君」  
「どういう意味よ?」  
「聞きたい?姫君?」  
「ちゃんと言ってよ、ヒノエくん!」  
ヒノエが笑う。本当に姫君は最高だよ。あんな台詞いっといてまだ言うのかい?もう一度ちゃんと教えてあげるから。  
「じゃあ、食事のあとで部屋に行ってよ。ちゃんと教えてやるからさ」  
その言葉を真に受けた望美は、部屋から寝所に連れて行かれた。  
 
「さっきやっといてまだ?ヒノエくんのバカああ!えっち!」  
部屋から聞こえる悲鳴に、朱鷺は「よかったですね。奥方」と呟いて部屋を去っていった。  
 

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