「こんなところで買わなくてもいいだろう」  
「だって何処も100円均一なんだよ?」  
「ちゃんといいものを見定めて買いなさい」  
翡翠の渋い顔を無視して花梨ははしゃいでる。翡翠から見れば買うに値しない品だが、女心は不思議だ。  
買い物籠にはきれいな色のビンが詰まっている。見てるだけならきれいだが、こんなにたくさん買い込んでどうするのだろう。  
「それは一体なんだい?」  
「マニキュアに、アイシャドウに、口紅に…」  
「君の目と口は一つしかない筈だけど…一体何年分だい?」  
「それ言わないで〜春色メイク出切るから嬉しいっ」  
翡翠が大きなため息をついた。私の姫にはこんな安っぽいモノはつけて欲しくない。どうしたら目を養ってくれるのかねえ。  
 
翡翠がもう一つ嫌なのは、人々の視線だった。みながじろじろと二人に視線を送る。場所柄人で込み合うのは仕方ない。  
翡翠の顔立ちは芸能人で十分通用する。そんな翡翠と花梨の組み合わせは人々の目を引き付ける。  
「そろそろ行かないかい?」  
「うん。行こう、翡翠さん」  
「……そんなに買いこんだのかい」  
花梨はビニール袋を片手に意気揚々と歩いてる。そんなもののために何店も回ったのか。がっくり。  
「メイクの練習にはいいでしょ?最近はやってるの。このアイシャドウ欲しかった〜」  
100円の品がそれほどすばらしい品物か?翡翠の顔が険しくなる。  
しかし同級生との付き合いは侮れない。花梨にも友達は必要だ。人付き合いに慣れておけば後々役に立つ。  
「幾らはやりでも安物はねえ」  
無欲な将来の奥方に翡翠は困惑している。  
「せめて私と居るときはそれなりの品を身につけて欲しいのだけど」  
 
車が止まった先。目の前には大きなホテルの看板。  
「翡翠さん…今日ぐらいは抜きにして」  
「姫に付き合って本屋めぐりと雑貨店めぐりをしたよ。そろそろ私に付き合っておくれ」  
「…はああい」  
半分諦め口調で花梨は翡翠に腕を絡める。今日の翡翠はとっても不機嫌だ。安物は駄目って言うのに何店も回らせちゃった。ごめんね。  
だってどうしてもあのシャドウ欲しかったの。まだ私にはシャネルやクレドは早いよ。翡翠さん、今日は何時で帰してくれるのかなあ。  
 
今日の部屋は和風。緑の畳が広がっている。土壁に、障子、座布団。竹を組み合わせた照明。旅館みたい。  
「たまにはこんなのもいいねえ」  
「翡翠さん、嬉しそう…」  
どんどん脱いで着替えてる。やはり和が落ち着くのかなあ。  
「浴衣に着替えておいで。花梨」  
 
花梨は浴衣を持って姿見の前に立つ。片手にハンガーを抱える。どんどん脱いで掛けていく。  
「こういうところはいいなあ」  
花梨は服を掛けて、下着も脱いだ。浴衣だけ。以前散々下着を脱がされる様を鏡で見せ付けられた。  
たっぷり言葉で苛められて、啼かされた。  
「どうせ脱ぐんだからいいよね」  
花梨は下着も片付けて翡翠の前に行く。  
 
「いいね。よく似あうよ」  
翡翠も浴衣に着替えている。花梨の浴衣に手を掛けた。  
「おや。どうしたんだい」  
白い肌が、胸が曝け出される。少し大きくなった胸が揺れる。  
「たまには翡翠さんに合わせようと思って」  
翡翠の顔が明るくなった。  
「ふふ、いいねえ。あの奇妙な下着は脱がせにくく大変だったから」  
花梨は内心嘘だろと突っ込みつつ、翡翠の頭に手を絡めた。首筋から、肩に印がつく。体が震える。  
「座ったほうが楽だよ?」  
くすくす笑う声に促され、花梨は正座した。  
 
「そうじゃないよ、姫」  
困った顔で翡翠は花梨の後ろに回る。軽く肩を引かれ、花梨は翡翠の胸の中に納まる。  
「ああんっ」  
両手で胸をもまれ、声が上がる。仰け反った花梨の顔がよく見える。翡翠は楽しげに何度も声を上げさせた。  
華奢な体が飛び跳ねて、赤く染まる。  
「今日はうんと可愛がってあげようね」  
「はあっ…」  
目が潤んで、口で息をしてる。十分私を翻弄してるよ。汗で化粧は落ちてしまうのだから、私と一緒のときは素顔でいて欲しいねえ。  
化粧のことはよく分からないが、化粧の落ちた顔は色むらが出て、興ざめだ。なら始めからしないほうがいい。  
 
「花梨は化粧をしなくても十分に綺麗だよ」  
「ええ?きれい?」  
「ああ、十分に輝いてるよ」  
快楽に酔う花梨に睦言を囁く。潤んだ目も半開きの唇も甘い声も私を誘う。どんどん浴衣を脱がせる。帯も解いてしまう。  
「おや…今日はまた驚かせてくれるねえ」  
いつもの邪魔な下着はない。白い太ももから茂みまで見下ろせる。花梨の匂いがする。  
「姫君、嬉しいよ。そんなに私を待っていてくれるとは」  
軽く開いた足の奥を目指す。軽く擦るだけで蜜が手を汚す。  
「ああんっ」  
「これなら三本はいけるねえ」  
指が入り込むととたんに中がうねる。蜜を出し、もっと刺激を求めて、動いている。良いところをぐいぐい押すと、一番高い声になる。  
頂点に押し上げてやる。片手で胸を弄び、華をかき回す。華芽は親指で押して、円を描く様に潰す。  
どんどん動きを早めると、何度も花梨と目が合った。涙を流しながら喜ぶ顔はいいね。何度でも見たくなる。  
「もっともっと溺れておくれ」  
「うあああっ!」  
何度目かに体が反ると、そのまま固まり、がくがくと震えた。  
 
開放された指を抜き出すと蜜が噴出した。零れ落ちて床を汚す。  
「さあ、私を楽しませておくれ」  
欲に駆られて腰を持ち上げ、はちきれそうな自身に近づける。ずるっと音がして強い快感が広がった。  
「くうっ」  
「ああああっ」  
瞬時に奥まで食い込む。花梨はきつく締め付けてくる。  
「まだ…まだだよっ…」  
目を細めて、翡翠は激しく上下に揺らす。花梨の声は形にならない。時々唇が動く。ひ、す、い、と読めた。  
「私のことだけ考えていればいいんだよ」  
動きが激しくなった。浅く、深く、予想のつかない動きに花梨は翻弄される。もう何も考えらない。  
このまま溶けてもいい。時間の感覚もなく二人は激しい時を過ごした。  
 
「今日はとてもいい子だったねえ」  
上機嫌の翡翠。花梨は疲れて、動くのも大儀だ。時計は一応門限内。だが、こんなに翡翠が燃えるとは思わなかった。  
とりあえず翡翠が門限内に帰してくれるだけでよしとしよう。  
「ああ、花梨。私と会うときは素顔でいいからね」  
「そんなあ?せっかくおしゃれの練習が出来る機会なのに」  
「練習だけとは思えない量だがねえ」  
「いいでしょう?きれいになりたいの」  
翡翠は考え込んだ。安物から花梨が卒業できるのはいつだろうか。友達と仲良しはなのはいいが、安物は困る。  
新たな難問に翡翠は頭を抱えていた。  
 

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