鼓動がやけに大きく聞こえる。疲れているのに、意識は鮮明だ。いつもと違う。何でかわかんないけど感じるの。ヒノエくん、どうしちゃったの?いつもより激しいよ。
「はあっ…もう…駄目ええっ…」
眠りの淵に逃げ込もうとするのに逃がしてくれない。
「だめだよ…姫君…もう少し付き合ってね?」
熱を帯びた声が望美の意識を引き戻す。
もう顔を上げる力も残ってない。うつ伏せに倒れこんだ望美の腰を引き上げ、先ほどまで繋がっていた場所を晒す。赤く充血した華から二人分の体液が流れて、白く筋を作る。
「ここはまだ欲しそうだよ?」
「ふああああっ!」
華に指を突っ込まれ、望美が喘ぐ。ぐしゃぐしゃとかき回されるだけで体が反応し始める。体の奥が熱くなり、動き出す。
腰がゆらゆらと動き出し、強い刺激を求める。
「自分から腰を振るなんて…淫乱だね」
「ちがうっ…ああっ…いわないで…」
くすくすと笑う声に顔から火が出るほど恥ずかしくなる。否定したいのに、体は正直に快感を伝えてくる。ヒノエの指に、声に全てに反応する。顔は見えないけどきっと意地悪な顔してる。
立ち上がる気配がして、腰に彼のものがふれてくる。二度も果てても又復活して、熱を伝えてくる。
私の上に覆いかぶさってくる。
背中に息を感じて、固まってしまう。
「望美のなか、最高だから、何度でも入れたくなる…」
一番弱いところを突いてくる。耳元で囁かれると、いやといえない。ため息が漏れる。
「ねえ、これで最後だから…」
甘い声にとうとう望美は白旗を振る。消えそうな声で答える。
「最後にしてっ…お願いだから」
「言ったね?取り消しは聞かないよ?」
「ああっ…ああん…うああっ」
「のぞみのなか…さいこー」
腰を掴まれて奥まで抉られる。強い突きこみに目の前が白くなる。予想がつかない動きに煽られ、快感が増す。
深く入れたと思うと浅く入れてかき回す。水音も気にならない。繋がっている部分に神経が集中する。
「嘘つきだね…また濡れてきたよ」
「うあっ…ああっ…ああん」
床に顔をつけたまま望美は快楽に落ちていく。手を突いて衝撃を堪える。ヒノエの動きは激しく、腰がずり落ちそうになるのを引き戻し、突いてくる。床に広がった髪が波打つ。
「俺をこんな風にしたのは…お前だよ」
「なに?よく…わかんない…」
がくがくと揺すられ、快楽の波の中で、途切れ途切れにヒノエの声を聞く。声を出すのも辛い。ヒノエの動きだけが鮮明に感じられる。
「お前しか欲しくない…こんなの初めてだ」
「ひ…の…え…」
望美が聞いているかどうか分からないままに、ヒノエは真情を口にする。いつもと違う切ない声。歳相応の顔が覗く。
意識が飛びかけた望美にもその声が届く。溶けそうな感覚が薄れる。消えかけた体力を集めて、望美は言葉を搾り出す。
「私の全部…あげるから…側にいて」
「望美…いいのか」
「好き…ヒノエくん」
「ひゃあっ…」
「そんなこといわれたら…止められないだろっ」
一気にヒノエくんの動きが激しくなって、目の前が真っ白になった。どんどん波がくる。そこから先は覚えていない。
翌日目が覚めたときは日が高く上がっていた。
「お目覚めかい?姫君」
「やだ…もうお昼っ…ごめんなさい」
慌てる望美をヒノエが抑える。
「寝てろ」
「え?」
「無理させたのは俺だ。姫君が謝ることはない」
とても哀しそうな顔。
「昨日、海賊が来たんだ。みんな戦ったけど、死人が出たんだ…まだ十にならない子供だった…」
ヒノエくんの声が曇る。両手を組んで俯いてる。
「俺に責任はないとみんな慰めてくれた。でも海賊の動きを察知できなかったのは俺の責任だ…熊野を護ると誓ったのに…親父にも…みんなにも」
声が震えている。これが別当の仕事なんだ。二十歳にならないのに、こんな重い責任を抱えていたんだ。
思わず起き上がってヒノエくんの手に私の手を重ねる。
「泣いていいよ。私がいるよ。ヒノエくん」
「望美…お前…最高の女だよ」
これからは私がいるよなんていったら笑われるかもしれない。二人で熊野を護ろうよ。だから何でも言って…体でなく言葉で…お願い。