「ほう、出てきたか」  
炎の中から現れた娘に知盛が哂った。  
「八葉もないお前一人に何が出来る?」  
「みんなを置いて私だけ逃げるなんて出来ない!」  
「あの程度の剣で何が出来るというんだ?」  
劣勢は明らかだ。二人はすでに死んだ。他の奴らも炎に撒かれて逃げるのは容易でない。それでもこの女は信じるというのか。面白い。  
「ほう、ならどんな目にあってもその言葉を翻さないと言えるか?」  
「やってみなければわからないわ」  
その瞬間知盛はありえない行動に出た。  
 
「お前たちは下がれ」  
部下たちに命令する。  
「知盛殿??」  
「聞こえなかったのか?お前たちは叔父上と惟盛殿に加勢しろ。こいつはおれ一人で片付く」  
部下たちは納得した顔で炎の中を走っていく。  
「どういうこと?私を片付けるのなら早くしなさいよ」  
刀を構える。  
「そういう意味で片付けるといった覚えは無い」  
鈍い音がして、望美の目の前が暗くなる。当て身を食らわせ、抱え上げる。細い娘だ。これなら抱えて近場の寺院に駆け込める。  
「丁度よかったよ。強行軍でずっと女を抱けなかったんだ。十分付き合えるな?」  
轟々と炎が広がる中を知盛は駆ける。炎とともに悲鳴が聞こえる。どれほどの人々が命を失うだろう。  
それもまた叔父上の役に立つ。怨霊として蘇り、鎌倉方に送られる。  
「怨霊になって叔父上もどうかしちまったな…全部燃やさなくても十分勝てたのに」  
かつての京に思いを馳せる。  
「せめて京北は残して欲しかった…下鴨の桜はよかったんだが」  
燃えて倒れる家屋。焼け焦げた人の残骸。炎の粉を避けて知盛は寺院の奥に駆け込んだ。  
 
「こいつを飲ませたほうが楽だな」  
知盛は薬を出した。ただの眠り薬だが、抵抗が無いほうが楽。携帯した筒から水を出して、口移しで飲ませる。  
飲み込んだ音を確認して衣に手をかけた。  
「目が覚めたときはもうおれのものだ。叔父上に引き渡さないだけでもありがたいと思え」  
衣を脱がせ、思った以上に細い体に苦笑する。  
「仕方ねえ。たまったもんが吐き出せればそれでいいからな」  
血にまみれた甲や防具を取り払い、のしかかる。  
 
寝てる女を抱くのはつまらない。ろくに反応が無い。胸を揉み、秘所にかなり強い刺激を与えても、顔が歪んで終わり。  
「うあっ…あああっ」  
体が波打つだけで終る。あの挑戦的な顔が目に浮かぶ。あの顔を組み伏せたいものだ。  
「こっちはまあまあ濡れたな…時間が無い」  
両足を持ち上げ、知盛は無理やり奥まで切り込む。悲鳴が上がる。  
「まさか生娘とは思わなかったな…見かけと違っていけるじゃねえか」  
嬉々とした表情で奥まで打ち込む。中が締まる。名器と呼べるじゃないか。見た目じゃわからんな。  
「溶けそうだ…くっ」  
強い悦に知盛は一気に精を吐き出した。  
「驚いたな。ますます叔父上に渡せなくなった…このおれを満足させるなんてやるじゃねえか」  
知盛の目の色が変わっている。ただのはけ口に過ぎなかった女が、こんなに良いとはな。ますます執着心が増した。  
「こんなもんはいらねえだろう?」  
望美が携帯してた剣と陣羽織を持つと、寺院の床の隙間に落とす。よほど運がなければさがしだせまい。  
 
陣に戻ると、寺院に信頼できる部下を一人だけ連れ込んだ。  
「この女を見張れ。眠り薬を飲ませれば扱いやすい」  
女の顔を見て部下がうろたえる。  
「しかし神子をいいのですか?頭領に知れたら…」  
「その名は今から呼ぶな。おれの女だ。しかし、この衣も知られているな…何かごまかす手は無いか」  
知盛は考え込む。  
「何か布にくるめばましになりますが…」  
「惟盛にあたってみるか。狩衣の一枚くらいは貸して貰えるだろう」  
「いいのですか?」  
「誰もおれが隠しているとは思うまい?」  
不敵な笑みを浮かべて惟盛のところに向かう。  
 
「何だこれは…」  
血なまぐさい匂いに顔を顰める。そこらじゅうが血の海。濡れた足音。靴に赤い飛沫が飛ぶ。戦になれた知盛でも立ち去りたくなる。  
「ああ、丁度いいところに来ましたね。知盛」  
惟盛が嬉しそうに怨霊を見ている。衣装に血の汚れがないのは地上に浮いているせいか。少しは人間のことも考えてほしいものだ。  
側に今朝の倍の大きさになった怨霊ー鉄鼠ーがじっとしてる。  
「見てください。可愛い鉄鼠がまた大きくなりましたよ」  
吐き気を押し隠して、知盛は応じてみせる。顔が引きつる。  
「よかったな…惟盛殿。怨霊が力を増したのか」  
「ええ、八葉の残りは役に立ちました。反対の力でも叔父上に掛かれば怨霊を増強する役に立つ…ああ、すばらしい」  
やばい。これ以上居たら吐く。言葉も聴きたくない。形だけ頭を下げ、落ちていた布を拾って逃げ出した。  
 
「うわああ!血がああ!何ですかこれっ!」  
待っていた兵は布を触ったとたん後ずさった。知盛が改めて見直すと、確かに血まみれだ。黒い布だから分からなかった。  
「しまったな。あいつの趣味が悪すぎたんで狩衣を借りるの忘れた…すまん」  
「仕方ありません。これでいきます。これだけ血がついてれば誰も近づかないでしょう」  
兵が諦め顔で望美の上に布をかぶせる。  
「まて。こいつは…」  
「何ですか?」  
兵の質問に知盛は首を振る。  
「いや、いい。ちゃんと見張れ、手足も縛っておけ。だがあまりきつく縛るなよ。俺が抱くのに困る」  
 
京が燃えていくのと同時に源氏の残党狩りも範囲が狭まった。この程度なら、部下に任せられる。怨霊使いと組ませれば無理がない。  
そう主張して知盛は休みの許可を得た。一日寺院で神子を抱いた。薬が効いてるままだが、この前よりゆっくり抱けた。  
体中に痕をつけて回る。跡がつけられるところは足先から首筋まで及んだ。正気に戻ったときどんな悲鳴をあげるか。ぞくぞくする。  
「いい味だ…源氏の奴らは馬鹿だな…こんな上玉が居たのに気づかなかったか」  
薬がきいて、華奢な体は柔らかく多少無理な姿勢も受け入れる。顔が歪むのも構わず打ち込んだ。  
「殿…薬が切れそうです。どうしますか?」  
「明日からは薬なしだ。武器も持たない女は縛っておけばいい。楽しみはこれからだ…ふふふ」  
部下は調子を合わせてうなづく。  
 
寺院の一室で目が覚めた。激しい衝撃がくる。体中が痛い。夢じゃない。一体どうなってるの?  
「やっと目が覚めたか?待ち焦がれたぜ」  
「なにこれっ…どうしてこんなっ」  
「それだけ質問が出来るならまだ正気か」  
舌打ちして知盛が哂う。望美ははだかで上に知盛がのしかかっていた。違和感に顔を顰める。  
「眠り薬でお前は何度もおれに抱かれたんだ。みろよ。俺のものが中に入ってるのが分かるだろう?」  
「!!」  
望美が体を見て蒼くなる。赤い印が体中についている。薄いのも濃いのも。一度じゃない。しかも腹の中に異様な塊が動いてる。  
「やあああっ!」  
「所詮は女だ。おれが抱けば、寝ていても幾らでもイイ声で啼いてくれたぜ」  
顔を覆って泣き出す。まずは成功だな。ではこの事実を告げたらどうなるか?知盛は例の黒い布を望美につきつける。  
 
「なにこれっ…臭い」  
顔を顰める望美。  
「そんな顔をするとお前の八葉が泣くぜ。良く見てみろ」  
「ええ?」  
望美は布を見直した。黒いだけじゃない。かすかに梵字の一部が読める。記憶が蘇る。  
「これ…まさかっ」  
「これ…まさかっ」  
「分かったか。さすがは神子だ。奴が聞いたらあの世で喜ぶぜ」  
肩が震えだした。気丈な顔がうなだれていく。娘の変化を楽しみながら、知盛は続ける。  
「布切れだけと怒るなよ。叔父上と惟盛がお楽しみの真っ最中だ。二人とももう原型はとどめていねえ」  
布を握り締めて、号泣する望美。  
 
「さて、どうやって元に戻すんだい?奇跡を見せてくれよ、神子殿?」  
泣き崩れる望美を無理やり起こした。体位が変わり、奥まで入る。全身がひきつった。  
「あーーーっ!!」  
「誰がお前を助けるんだ?龍神かい?鎌倉方か?」  
暴れる体を捕まえ、力の限り打ち込む。奥までしっかり埋め込み、隅から隅まで堪能する。  
「体は正直だな。こんなに俺を飲み込んで足りないか?」  
「いやああ!!」  
「泣け…わめけ…さあ、龍神を呼べよ…どうした?」  
一度で終らず、二度三度と体を引き起こして抱いた。苦渋に満ちた顔がよがる様を楽しんだ。  
事が終ると、兵に世話人を探すよう念を押して、知盛は立ち去った。  
 
翌日、惟盛が興奮して戻ってきた。俺を見たとたん、延々と敦盛を殺した話を続ける。同じ怨霊でも経正とは大違いだ。  
「八葉といえど私の敵では在りません。残りも探し出して見せますよ。ああこれが青葉の笛です…ほら」  
自慢げに懐から出した笛。確かにあいつがいつも牢で吹いていたもんだった。  
「自慢するのもいい加減にしろ。八葉でも経正の弟だったんだ。経正にはいうなよ」  
「うるさいですね。私はもう非力ではないのですよ。鉄鼠とともに残りの八葉も、探し出して殺しますよ。ふふふ」  
ちっとも俺の言葉を聞いてない。そんなにおやじの名を騙るあいつが憎いか。兄弟の情も目に入らないのか。  
「ところでその笛、一日貸してくれるか?おれも吹いて見たい」  
「ええ、いいですよ。いい音色です。必ず帰してくださいね。それはわたしのものです」  
簡単に礼だけ言って、その場を立ち去る。  
しかし案の定、大騒ぎになった。経正は悲しみのあまり部屋に篭ったという。仲介に借り出されて、時間が無駄に掛かった。  
怒りがこみ上げる。何で惟盛はいうとおりにしなかったんだ?あんな怨霊にはなりたくない。  
「これで後五人か…後どのくらい持つかな?神子よ」  
 
「ああ、殿、あの女はかなりの難物です」  
「お前の顔を見れば分かるな」  
夕刻寺院に付くと、兵の顔は青あざがついていた。手足にも爪の痕がついている。  
「苦労も今日までだ。今夜でけりをつける。世話人の用意をしろ」  
「殿、お気をつけて」  
兵の顔に苦笑しながら、知盛は寺院に入る。手足を縛られた女が横たわる。  
「出してよ!」  
「お前は俺の獲物だ。逃がすか。生きたまま大人しくなってもらう」  
 
好戦的な顔を尻目に足だけ縄をはずす。「おっと」強いけりを避け、みぞおちに一発入れた。  
「やあっ!」手際よく両膝を持ち上げ、背中に縄をとおしてしばる。二重に巻いて解けないようにする。  
「いい景色だな。お前のあそこが良く見えるぜ」「いやああ!痛い!」  
「あの布切れでこれか。随分頑固だな。後悔するぞ」  
ぐっと手を秘所に食い込ませる。ぐしゃぐしゃと音がし始めて、女が顔を背けた。  
「口を開けよ。感じてるだろう」  
奥まで弄び、華芽も押しつぶすと体が跳ねた。  
「ひいいいっ!」  
「いい声だ。それがお前の体だよ。俺に抱かれてよがってる」  
ころあいと見て腰を掴み思い切り突き刺した。ころころ転がるが、また方向が変わって違う快楽が得られる。  
縛られた両足ががくがくと震える。快楽に溺れ始めた体。だが顔は苦渋に満ちている。時折上がる悲鳴は気持ちがいい。  
「そんなに我慢してると還って感じるぞ」  
「くっ…うう」  
悔し涙にくれる顔を見ながら、打ち込むのは最高だった。ドクンと中が波打って、一度目の頂点を迎えた。  
 
鋭い気配を感じて快感の余韻が残る体を起こす。  
「当分その縄は切れないな。その顔はそそるぞ。神子」  
無言で睨んでくる。いい顔だ。壊したくなるほどに。  
「抱かないの?」  
「少しは休むさ。それより、こいつが手に入った。見覚えはあるだろうな?」  
ころころと笛が転がる。わざと神子の手に届くようにしてやる。  
「あ…敦盛…そんなあっ!」  
「ほう、お前の前でも笛を吹いたのか。あれは気の毒な奴だ。八葉にならなければ生きていられたものを」  
「敦盛くんっ…そんなのない!」  
「そんなに哀しいか。後五人だ。いつ何処で殺されるかみものだな」  
にっと笑って今度はくるっと体を転がした。蛙のような姿。  
「あああっ!」「奇跡は起きなかったなあ。これで三人だ。どうするんだ?神子姫?」  
 
また涙を流し始めた望美を抱く。後ろからどんどん犯していく。嗚咽の声が時折高くなり、快楽に酔っていることを示す。  
「どうだ。感じてるだろう。悔しいか?」「あああっ」  
「俺に抱かれて、泣き叫べ、ほらよ」  
ぐっと強く押し込み回すと悲鳴が上がる。長い髪が跳ねる。  
「まだ余力があるな。これで終わりじゃないぜ」  
望美は最後には抵抗する意思さえ失せ、声も出さなくなった。両足の縄を解くと、だらりと横たわる。  
「どうした?俺を殺す機会だぞ?」  
無言だ。体力を使い果たしたのか、動きもしない。長い髪が表情を隠す。  
「抵抗したければ好きにしろ。待ってるぜ」  
言い捨てて、知盛は着替えを始めた。  
「手足を縛っておけ。逃げたら困る」「裸ですがいいのですか?」「裸でも構わないぞ。俺が抱くだけだ」  
「いえ、それはっ」困惑した兵に苦笑する。「そうか忘れてたな。この布でもかけてろ」  
足取りも軽く戻っていく。そろそろ壊れてもいい頃だが。まあ時間をかけてやるさ。  
 
本陣に戻る途中でも、煌々と炎が見える。昼と見まごう用に明るい。京中、南は燃え尽き、京北まで及ぶのも時間の問題だという。  
「そんなに燃やしたかったのかよ。叔父上。これじゃもう桜は見れねえな。そろそろ鎌倉方が出てくるだろう。用意しなくては」  
炎を睨んで、知盛は少しずつ先の予定を立て始めた。鎌倉と京が距離が離れてるのが厄介だ。間者は全滅。情報がとれない。どうしたもの  
だろう。  
 
翌日、ようやく経正が顔を出した。二人がかりで仲裁に入り、ようやく対立は解けた。何度この馬鹿げた争いが続くんだ。  
「よろしく頼むぜ。経正」「弟があの道を行くのは分かってました。気遣いなくお願いします」  
還内府殿は苦労が耐えないな。叔父上の錯覚で頭領引き受けてあの惟盛と協力するという難題を押し付けられて。  
さあ、あの女を壊しに行くか。  
 
日が落ちる前、寺院に着くと、兵が恐る恐る聞いてきた。  
「すいません。あれで良いんですか?」  
「どうした?何かあったか?」  
「いえ…様子がおかしいんです。食事もとらず、そこらじゅう酷いもんで…」  
兵が怖がるのも無理ない。いろいろな悪臭が集まった匂い。その中に女が転がっている。空ろな目。仇敵が入ったのに動かない。  
試しに両手と両足の縄を解いたがそのまま動かない。まるで人形だ。  
不安そうな兵を安心させてやる。  
「もう大丈夫だ。気が狂ったのさ。これで他の奴らに見られても言い抜ける。ラッキーだな」  
兵が安堵の表情を見せる。叱責を飼うと覚悟していたらしい。  
「質問されたら、身元のわからん狂い女と言えばお咎めなしだ。世話する奴をさがせよ。いいな」  
「はい」  
知盛は上機嫌で軍議に向かう。一人の女に執着するなんてらしくない。だが極上の悦を与えてくれるなら別だ。これでおれのもの。  
刃で殺すだけが始末じゃない。神子姫が死んだことに変わりはないだろう?  
「俺が浄土に連れて行ってやるぜ?何度でもな」  
 

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