熊野水軍の応援ででかろうじて源氏方は勝利を収めた。陣内に歓喜の声がこだまする。  
 
夜、熊野水軍の水軍衆も加わり、祝宴にわいた。源氏方に大きく戦の流れは傾き、苦戦続きだった兵たちにもようやく笑顔が戻った。  
 
宴の中、朔がそっと望美を陣の外に連れ出した。暗い闇の中波の音が聞こえる。人々の騒ぐ声が聞こえる。  
「いい加減疲れたでしょう?みんなにいちいち付き合わなくてもいいのよ。望美」  
「みんなの士気を高めるのも仕事の一つでしょ?」  
「貴女は他にもっとしたいことがあるでしょう?」  
朔はぽんと望美の肩を押した。  
 
「ほら、あそこで待ってるのよ。いってらっしゃい」  
木々の向こうに人影が見える。暗闇でもすぐ分かる。見覚えのある羽根型の耳飾り。赤い髪。  
「朔…いいの?」  
「兄上のお許しがあるから大丈夫」  
「ありがとう。朔」  
「いいのよ。あなたの恋を応援するって行ったでしょ?朝までに戻っていらっしゃい。いいわね」  
 
少し照れた表情で望美を抱きしめた。  
「半月、寂しい思いをさせたな。望美」  
「怖かったよ…ヒノエくん。信じていたけど、何度も不安になった。二度と会えなかったら、熊野水軍が来なかったらどうしようかって」  
思わず涙が出た。  
「俺も心配だったよ。半月で姫君が俺のことを忘れてしまいやしないかとね…」  
「忘れられるわけないでしょ。いつも私を驚かせて…海賊に襲われた時だって…ヒノエくんはもう私の一部になっちゃったんだよ」  
 
ヒノエが照れくさそうに笑った。  
「そんなこと言われると、都合よく取っちまうぜ?」  
「いいよ。私の中、ヒノエくんでいっぱいにして。半月分全部埋めてくれる?」  
「姫君から誘われたら嫌とはいえないね。恋しくて何度眠れない夜をすごしたか…体で教えてやるよ」  
 
そこから先は唇と手に変わった。言葉にする間がもどかしい。野外ということも忘れて二人は抱き合う。  
 
「これ邪魔だよね…」  
ばさりと陣羽織が地上に落ちた。陣羽織を脱いでしまうと桃色の着物とブラウス、スカートだけになる。  
「積極的なのはいいけど、俺の楽しみを減らさないでくれよ」  
「時間がないんだよ…眠らないと」  
「駄目」  
両手を一まとめに頭の上に押し付けて、ヒノエは唇をふさいだ。舌を入れて絡める。それだけで望美はくらくらした。息をすることも忘れて意識を集中させる。  
 
抵抗が弱くなると手を離す。離れた手はヒノエの背中に回されて、さらに力が加わる。  
 
「はああっ…どして?」  
「思い切りがよいけどね、あまり寒い思いはさせたくないんだよ。姫君。もう冷えるから…ね」  
「あんっ…」  
 
着物の上から胸を揉まれて、甘い声が上がる。服の上からでも硬くなった処は十分感じられる。布の摩擦と指の刺激でさらに刺激が強い。  
望美は身をくねらせて、髪を乱した。  
 
「ああん…強くしないで」  
「いつもより感じてるね。寂しかったせい?それとも一人でしてた?」  
「そんなわけないでしょ…ばかああ」  
 
涙目で、感じてるせいで舌ったらずな口調が面白くて意地悪を言ってしまう。それさえも媚薬になる。  
 
「こっちもそろそろ入れ時かな?」  
 
スカートの中に入った手が下着をずらす。生暖かい濡れた感触に笑みが浮かぶ。下着はそのまま下に落されて、望美が身をすくめた。冷たい空気が入る。同時に自分の中が熱くなっているのが分かり、顔を横に向ける。  
 
「顔見せてよ。姫君?」  
「やあっ…つっ」  
 
胸を強く捕まれて、痛みが走る。それさえ今の望美には快楽に転じる。体が波打って、顔を上げるとヒノエと目が合った。いつもと違う顔にぞくりとする。  
 
「ねえ、もっと乱れてよ。半月分、気持ちよくしてあげるから」  
「ひっ…ああああっ…」  
 
同時に上と下を嬲られ、望美は嬌声を上げた。先端を擦られ、胎内には指が三本入り、中をかき回される。中からどんどん熱くなり、体液が流れ出していく。  
目の前がだんだん白くぼやけてくる。やがて中から一気に体中に波が走った。高い声を上げながら望美は倒れこんだ。  
 
「まだだよ…姫君。ちゃんと目を覚ましていて」  
「ひのえっ…あ…ああ」  
「言ったよね?半月分、教えてやるって」  
「ああっ…ああーー」  
 
地面に座り込んだヒノエの上で望美は悲鳴を上げる。自分の重みで奥まで貫かれ、抜かれる。その繰り返し。理性も何もかも失せて、ヒノエにしがみついた。  
自分でも腰を動かし、さらに快感を強くしている。長い髪が波打ってヒノエの髪や肩にかかる。  
 
「ああ…ずっと夢に見てたよ…中はいいな」  
「ひのえっ…あああ…もっとっ…」  
「もっと…こうしてたい…のぞみっ」  
 
抱き合って上下に動いていた二人が一瞬動きを止めた。共に達した後、しばらく荒い息を繰り返す。ヒノエが望美の体を話した。ぐったりした望美の体から白いものが流れて落ちた。  
 
「今日は手加減してあげるよ。姫君。残りは戦いが終った後にね…」  
 
翌日、望美は桃色のいつもと違う着物で戦いに出た。陣羽織を羽織ればあまり分からない。  
「望美。それ、ヒノエ殿の贈り物ね。良く似合うわ」  
「うん。ありがとう。朔」  
望美の笑顔は少し引きつっていた。本当のことは言えない。  
「ああ、そう、望美は部屋より外のほうがいいって何のことかしら?」  
「ヒノエくんのいつもの冗談よっ」  
思わず大声になった。  
 
ヒノエくんは頭領と普通の男の子の二つの顔を使い分けてる。頭がいいというよりずる賢い。弁慶さんの甥だけのことはある。ああ、私はこれからも振り回されるのかな。  
 

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