「あああ……」
涙が頬を伝って零れている。両手で覆っても隠せない。泣き声をこらえるのがやっと。
まだ夜は明けない。虫の声が聞こえる。隣から安らかな寝息がきこえている。
運命を上書きしたのに、どうして記憶は残るのだろう。あのときの悲しみと苦しみはもう終った。
京で幸せな日々を手に入れたのに、時折悪夢は襲ってくる。
「何か怖い夢でも見たのかな?望美ちゃん」
起き上がる気配と同時に、一度に両手を取り払われて涙を隠せない。いつもの景時さんだ。
「ごめんなさい…起こしちゃったね」
この夢を見たときはいつも起こしてしまう。軍部行で忙しいから休ませてあげたいのに。
「謝らなくていいよ。こういう変化には気がついちゃうんだ。前歴があるからね」
「え?」
ふっと笑顔が消えた。「朔が黒龍を喪ったとき、何もかも突然だったから……いつ後追いするかわからなくて、気を張っていたんだよ。そしたら妙に敏感になっちゃってね〜」
「朔のこと心配だったんですね…」
「もう何年も前のことなんだけど〜また最近敏感になっちゃったなあ〜」
「私のせいですね……ごめんなさい」
「君が謝ることじゃないよ。俺のせいなんだから」
耳元で囁かれて思わず悪寒が走る。
「望美ちゃんがそんな顔してると、俺が眠れなくなっちゃうんだよ〜」
「ちょっと……それとこれとは違います」
「耳元は感じやすいところだったね〜望美ちゃん♪」
望美の声を無視して景時はそっと耳たぶを噛む。
「望美ちゃんってほんとに可愛いなあ〜声が上ずってるよ?」
「だめ…お仕事……」
「一日くらいなら部下がやってくれるよ。それに怨霊もいないから陰陽師の出番も少ないし」
首筋から鎖骨の辺りに頭が下がっていく。赤い跡を残しながら。
「それに無骨な男たちより望美ちゃんといるほうが楽しいし〜」
手は衣の上から胸を持ち上げるように撫でている。望美が思わず声をこらえる。とがり始めた先端から快感が伝わって望美を溶かしていく。
「望美ちゃんにはもっと気持ちよくなって欲しいんだ〜」
「ああんっ・・いやああん」
先端をつまみ上げられとうとう望美は大声を上げてしまった。思わず手を払いのけようとする。
「ふう…ほんとに恥ずかしがりやだねえ〜でもいい加減慣れてくれないかな?」
「景時さん…もう……」
「見られるのが恥ずかしいなら、後ろからしよっか?望美ちゃん♪」
さっさと後ろに回ると、望美の脇に手を入れて起き上がらせ、後ろから抱き込んだ。
「うん、こっちのほうが楽だね〜」
両手で再び胸を弄ぶ。腕の中で望美が喘いだ。
望美は景時の胸によりかかって、両手を投げ出し、与えられる刺激に体をひくつかせる。快楽に溺れ始めた体は徐々に両足を開いていく。何度も教え込まれて体は忠実だ。そうしたら一番強い喜びが得られる。
景時しか与えられないものが待ってる。
「好きだよ……俺の全てと引き換えにしてもいいくらい……望美ちゃん」
「ああん…かげときさあん…」
片手が蜜をあふれされた華に触れると望美が仰け反った。増やされた刺激に声が高くなる。
ぐちゃぐちゃとかき回されるたびに蜜は流れ出して太もものほうまで落ちていく。
望美の体が震え、頂点が近いことを知らせる。
「うんと気持ちよくしてあげるから」
「ひいいいっ……」
一番奥まで抉られ、柔らかな突起を押しつぶされて、望美は達した。胎内は景時の指を締め付けて、まだ足りないといわんばかりに蜜を流す。
弛緩した体を景時は脇から抱えた。先ほどから我慢していたものがせかす。
「せっつかないでほしいな……もう」
蜜を流し続ける華に狙いを定める。
ぐちゃっという音と体がぶつかる音が絶え間なく響く。もう望美の声は意味を成さない。景時の勢いは激しさを増していく。望美の体を気遣う余裕も失せた。
「ああ…いいよお……望美ちゃん…」
「ああっ……いっちゃう……」
ゆっくりと望美は大きな息を吐いた。動きが止まり、やっと終ったと思った。だが繋がったままで景時が起き上がる。再び始まった動きに望美が悲鳴を上げた。
景時が満足した頃には薄明かりが射していた。
翌日、朔が顔を真っ赤にして怒った。
「兄上…どうして夜の手加減ができませんの?」
「あははは…男はそういうものだっていっても、朔にはわからないよね〜」
「もうのろけ話を聞かされるのはうんざりです」
「そんなこと言わずに聞いてやってよ……朔ってば〜」
今日も梶原家は平和だ。