夢も見ないほど深い眠りについた望美が、目を覚ましたのはもう辺りが
暗くなり始めたころだった。ふと、自分の手をしっかり握ったまま
将臣がうたた寝をしていることに気づく。
一緒に異世界に飛ばされた同い年の幼馴染は、時空のズレで三才も年上
になり望美の知らない大人びた表情で再会した。
少年から青年へと成長した将臣をみていると、なんだか気恥ずかしく
なっていく。そんなことを考えているうちに将臣が目を覚まし、望美の
瞳とぶつかった。将臣は我に返ったように、つないでいた手を離すと
望美に言った。
「腹へっただろ?飯取って来てやるよ。」
「将臣くん…。」
望美は将臣と離れたくなくて、名を呼んだが将臣は無視していってしまった。
「らしくないな…。」
「何がらしくないの?将臣。」
将臣が廊下で照れ隠しに呟いた言葉に返事が返ってきた。驚いて顔をあげると
白龍が嬉しそうに立っていた。白龍の神子である望美が倒れて寝込んでいるの
を知っているはずの白龍の態度に怪訝な顔をする将臣。
「神子の五行の力、すべて高まったよ。それも一気に…でもね、怨霊倒したり
してないのに変だね。」
「なにが原因なんだ?」
いやな予感に白龍に問いかける将臣。白龍の言い方にも引っかかる…。
「よくわかんないけど、八葉の気を受けたって感じかな。」
この言葉で将臣にも望美の身に起こったことをやっと理解した。
数日後惟盛をやっとの思いで封印した望美は、これでまた将臣が仲間から
離れることに寂しさを感じていた。こんな自分を見られたくなくて、
はやく離れてほしいと思っていたはずなのに…。
「将臣くん…これでまたお別れだね。」
望美が淋しそうな笑顔でいうと、将臣は少し困ったような顔をして答えた。
「それはお前らが京を離れるとき…だな。」
その日の夜、梶原低に戻った望美たちは夕食後それぞれに寛いでいた。
部屋に戻ろうとした望美は、廊下で朔に出逢った。
「望美、将臣殿が残ってくれてよかったわね。」
「そうだね…。」
複雑な表情で返事を返す望美を、不思議そうにみつめる朔。問いかけようと
口を開こうとした時、将臣が割り込んできた。
「望美、少しいいか?」
「う、うん。ごめん、朔。」
ふたりきりで話したそうな素振りをみせる望美に気を使い、朔はその場を
後にする。望美は自分にあてがわれている部屋へ、将臣を招き入れると
向かいあわせに座った。こんなふうにこの部屋を訪れた男は何人目だろう…。
体をあわせたのは…。そう思うと、望美の瞳から涙が溢れた。
普段、気丈な幼馴染の弱気な姿におもわず抱きしめてしまった将臣。
抱きしめられて嬉しい反面、戸惑っている望美。
「…将臣くんも皆と一緒なの?」
「は…?」
望美の発した言葉の意味に気づいた将臣は、少し体を離して険しい表情で
望美の顔をのぞきこんだ。怒らせたと悟った望美は顔をそむけるが、
将臣の手で戻されてしまう。
「お前が最近おかしかったのは、やっぱりあいつらのせいだったんだな。
無理やり…そういうことだろ?」
将臣から目をそらすことで返事をしてしまった望美から将臣は離れると、
戸へ向かって歩き出した。将臣が何をする気かわかった望美は、
将臣の前に立ちふさがる。
「どけっ!」
「いや!彼らだけが悪いんじゃないっ。私も…私も受け入れたのっ!」
そういって望美は顔を覆って崩れ落ちるように座り込んだ。
将臣は動揺しながらも望美の前に屈みこみ、背中に手を回して抱きしめた。
「…私…異世界に来る前の私には戻れない…みんな壊しちゃった…私のせいで。」
「…俺も前の自分には戻れねえよ。あの時お前の手を掴んでいればこんな
ことにはならなかったのかもな。…守ってやれなくてごめんな…。」
将臣の言葉に驚いて望美は顔をあげると、将臣の瞳とぶつかった。
将臣が唇を塞ごうとした時、望美が問いかけた。
「こんな…私でいいの?」
「お前がいいんだよ。」
照れたように微笑むと将臣は望美の唇を塞いだ。軽くついばむように
口付けていたが、やがて深いものにかわり舌を絡めはじめる。
だんだん火照っていく望美の体から、衣服をはいでいく将臣。幼い頃一緒に
お風呂に入って以来、互いに裸を見せ合う…。なんだか気恥ずかしくなって、
将臣は望美の首筋に唇を這わせた。
わざと見えるところに花を咲かせ続ける将臣は、自分の行為によって鳴く
望美の姿に熱くなっていく。望美の柔らかな胸の頂にある突起は、
すでに硬く存在を主張していて将臣は突起を口に含むと舌で舐め転がした。
「あん…ぁ…。」
同時に指でもう片方の突起をこねると、望美はピクンと体を跳ねさせる。
将臣は望美の下着に手をかけると、スルリと取り去った。
望美の膝に手をおき、押し広げるともうすでに泉は濡れそぼってる。
将臣は泉へ唇を近づけると、入り口から蕾へとねっとりと舐めあげた。
「はぁ…ん…い…い。」
将臣は溢れ出す蜜を舌で絡めとると、泉に指を指し入れた。蕾を吸い上げながら、
抽出を繰り返すと望美の背中が魚のように跳ねる。
最奥を突かれるたびに、だんだんと広がる甘い痺れに望美は酔いしれていた。
「やっ…だめっ…あっ…あんっ。」
望美は身を捩じらせて、体を痙攣させる。荒い息遣いのなか、将臣は再び
望美に口付けを落とすと、歯列をなぞりじっくりと望美のなかを味わう。
ゆっくりと唇を離すと、望美は潤んだ瞳で将臣を見つめながら呟いた。
「お願い…将臣くん…。」
望美の願いに将臣は頷くと、泉に熱いたかまりをあてがう。
望美を気遣うようにゆっくりと腰を沈めていく。将臣は望美の体を
抱きしめると、腰を打ちつけ始める。
「はぁ…あ…あ…。」
眉根をよせて切なそうに喘ぐ望美をみていると、神聖なものを壊している
ような背徳感に将臣はますます気持ちを高ぶらせる。ぐちゃぐちゃと
望美と将臣の間から、いやらしい音がこぼれ出す。
望美の最奥を将臣が貫くたび、中心に甘い痺れが広がっていく。
「あぁ…ん…将…臣くん。」
「望美…。」
将臣の広い背中に手を回し、きつく抱きしめると望美は将臣のあたえて
くれる快感にのめりこんでいった。将臣は望美に口付けると、舌を激しく
絡めはじめた。激しく打ち付けるたび、望美の泉から蜜が溢れ出し
互いを味わうように絡み合う舌と舌。
「はぅ…あぁ…もう…だめぇ――。」
「っ…!」
ドクンと望美のなかに将臣の熱い欲望が注ぎ込まれる。繋がったまま
息を整え、お互いに顔を見合わせると同時に微笑んだ。
異世界に来なければ見つけられなかった大切な仲間…。いいこと
ばかりじゃなかった。けれど、元の世界にいたなら気づくことも
なかった本当の気持ち…。それを手にしたから、もうつらくない。
「あいつらにはきっちり落とし前つけさせてもらうから、安心しろよ。」
「え…?」
望美がみるみる青くなるのをみて、将臣は悪戯っぽく笑いながら言った。
「俺の女になったから、今度手ぇーだしたらわかってるよなって言う
だけさ。」
「将臣くん…。」
望美は将臣に抱きつくと幸せをかみしめていた。幸せがこの手をすり
抜けていかないようにと願いながら…。
【完】